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【八重の桜】
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魅力⑤哀切も何もかもがある脚本が丁寧だ
脚本家の描き方はともかく丁寧です。
時代考証という枠組みの中で、きっちりとドラマを練り上げる誠意を感じさせます。
会津の駄目なところにも踏み込む、そういう気持ちが実にいい!
考証と人情の細やかさに気を配る、脚本家氏の力量を感じます。
魅力⑥考証がきっちりしている
本作は、郷土史の専門家がきっちりとバックアップ。
川崎尚之助関連をはじめ、最新の学説を取り入れ、じっくりと丁寧に幕末史の向き合っております。
フィクションだけにアレンジや史実とは異なる部分もあるものの、悪意ある捏造は一切なし!
このレベルで考証をすればまともになるという、大いなる手本を見せ付けております。
魅力⑦新たな魅力が花開く出演者たち
ほんわか癒し系イメージがあった主演の綾瀬はるかさん。
しかし、実物に近いモデルガンを持ち、走り回る運動能力とスタミナがあるのは、若手女優で彼女くらいだったそうです。
長刀、銃――どれも扱いが見事でした。
運動能力のみならず、スナイパーとしての目線の鋭さも発揮されておりました。
綾瀬さんがこのあと、アクションに開眼したことは言うまでもありません。
西郷隆盛役の吉川晃司さんと共に出演するファンタジードラマ『精霊の守り人』も、本作の熱演評価があってこそのものです。
松平容保役の綾野剛さんは、これはもう、史上最高の容保像ではないか?と思われるほど本人にそっくりです。
あの苦悩と悲劇的な生涯も見事に演じており、これを超える容保像は二度とお目にかかれないのでは?と思うほど。
徳川慶喜役の小泉孝太郎さんも、多面性のある人物像を見事に演じておりました。
もう書き切れないほどですが、出演者全員の魅力が大きく開化し、桜のように咲き誇った――。
そんな風に大声で叫びたいほど皆さんの演技が見事で、そこだけ切り取ってじっくりと見たい、そんなドラマです。
綾瀬さんは、今なお地元で愛されており、2018年まで「会津まつり」のゲストとして呼ばれるほど。
その後、新型コロナの影響で開催が中止され、復活後の2022年にも改めて参加してくれることは冒頭でも述べた通りです。
作品に注がれる地元からの愛。
これぞ『八重の桜』が得たものなのです!!
★
いかがでしょうか?
この原稿のために『八重の桜』のことをしみじみと思い返しています。
見終えた当初は不満点もありましたが、戊辰戦争150周年を越え、コロナ騒動を越えた本年……もうこんな思いしかこみ上げてきません。
『八重の桜』は最高だった――。
本作は、これからも再評価されることでしょう。
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文:武者震之助
【参考】
大河ドラマ『八重の桜』(→amazon)