東洲斎写楽の作品/大河ドラマ『べらぼう』で話題の写楽がついに登場・その作品『三代目大谷鬼次』と『三代目澤村宗十郎』

東洲斎写楽『三代目大谷鬼次』と『三代目澤村宗十郎』/wikipediaより引用

べらぼう感想あらすじ

『べらぼう』感想あらすじレビュー第47回饅頭こわい

一橋治済そっくりな男は、替え玉でした。長谷川平蔵が大崎を探していた時に偶然見つけた人物です。

阿波蜂須賀家抱えの能役者・斎藤十郎兵衛――生田斗真さんの一人二役となります。

阿波にいた柴野栗山はこの人物のことを知っておりました。治済と斎藤をすり替えるという作戦であり、だから治済の顔を驚きながら凝視していたわけです。

柴野栗山の肖像画

柴野栗山/wikipediaより引用

大崎が見せられた人物は彼でした。彼女を引き込み、治済の癖を教え込んだんですね。

蔦重はここでやっと計画を知らされました。

それは謀反だと訴えます。斎藤は蜂須賀の殿と話をつけて、替え玉を承諾させたんだとか。そして主命として替え玉を命じられたそうです。

しかもこの計画はしくじってしまったわけで、次の計画はあるのかと蔦重は問いかけます。

これだけのことをしなたらも、次の手はないそうです。

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やってはいけない禁じ手

本作は、大河ドラマとしてどころか、歴史ものでやると滑るお約束をいくつも使っております。

こういうことをしてよいのは伝奇もの。『柳生一族の陰謀』あたりですぜ。

アレクサンドル・デュマの『鉄仮面』を連想する方もおられるようですが、あれは歴史小説というより伝奇ものですね。

・毒殺

毒殺の成功率は、実はあまり高くはありません。個人差があるため、確実に殺せる可能性はあまり高いとはいえません。失敗例としては幕末の岡田以蔵が有名ですね。

史書に毒殺と記されていても、実際にはアレルギーや中毒の可能性もあります。

毒饅頭でそんなにコロコロ殺せません。

確実に仕留めるのであれば、『鎌倉殿の13人』のようにどこかに閉じ込め、複数名で囲んで始末することが重要。暗殺をするなら、もっと確実に仕留める手段を用いるべきです。

・瓜二つの人物がいる

双子であるとか、血縁が濃いとかならまだしも、他人の空似というのはあまりに厳しい設定。

・しかも偶然、通りすがりで見つける

偶然に偶然を重ねても通用してしまうのはもはや禁じ手。

これが通るなら、もうなんでもありですよね。

 


怯える耕書堂の面々

蔦重は危険なので店を閉め、従業員たちには「外に出るな」と言い渡します。

すると、みの吉が倒れてしまいます。

「吐き切れていなかったかも……」

みの吉がそう言うと、毒饅頭を知らないていが驚いています。

写楽の計画を悔やみながら、彼女は諦めるしかないと言い出す。

すると、女中のたかが怯えながら、井戸に毒を入れられたらたまったもんじゃない、気をつけるにも限界があると声を張り上げます。

その上で、ていが諦めるといったことを咎める。奉公人の身に危険が及んでいるのに諦めるとは、確かにらしくねえ話っちゃそうですな。

奉公人たちが揃って「やめたい」と訴えてきました。

やめれば毒饅頭を食わされねえと言い出す彼ら。みの吉がうなされながらも、相手が毒饅頭を食ってぽっくり死んだら面白いと言い出します。

場面変わって一橋治済が映し出されます。

松平定信に対して勝ち誇ったように「芝居町で白河の者が食あたりで亡くなった」と語りかけている。

屈辱感をこらえながらも、治済の煽りを受けるしかない定信。

治済の取り巻きたちも同調し、恥ずかしいことだとして定信を煽ってきます。

松平定信の肖像画

松平定信/wikipediaより引用

いやいや、食あたりで大量死となると、恥なんかでは済まない大問題になるのでは?

定信は、治済から隠居まで迫られ、嫡男の太郎丸がまだ幼いと狼狽するばかり。治済はそこへ世継ぎを入れようかとまで言ってきました。

さらには扇子で頭を叩いて煽る、煽る。

定信は怒り、殿中で斬りかかると言い出します。そんなことをしては身の破滅、家まで断絶だと平蔵が止めています。

 

饅頭の仇討ちは毒饅頭で

そこへ蔦重が入ってきました。

閉店することになったと嫌味を告げ、傀儡好きに毒饅頭を食わせると言い出します。

「毒饅頭の仇は毒饅頭で取る」んだとか。

定信がふざけるなというと、ふざけるのが分だのなんだの言い出します。

繰り返しますが、あっしは毒殺は好きでねえんです。

船遊びに誘って転覆させるとか。落馬を装って転落させるとか。もっと確実性のある手は考えられませんかね。

人を始末する覚悟があるならば、もっと確実にできる手を真面目に考えて欲しい。

『鎌倉殿の13人』を見習って、気合の入れた謀殺を練ってこそ東国の誇りでしょう。

どうせやるなら、とことんやりましょうよ。

無惨絵の再現になるくれえガーッと派手にやっていただきたい! もう最終回間近なわけですし。

月岡芳年『英名二十八衆句 炎上』

月岡芳年『英名二十八衆句 炎上』/wikipediaより引用

しかし、このドラマの陰謀チームは脳天気なのか。

毒饅頭を食わせる方向で行くようです。ちったぁ柳生一族でも見習って欲しいところですぜ。

定信は密告奨励、隠密政治も行なっていました。一線を退いたとはいえ、それでいて使える手駒が長谷川平蔵と蔦重というのも意味がわかりません。

確かに平蔵は強い。けれど、あまりに本業そっちのけでは?

蔦重はソシャゲならNランク程度じゃないですかね。コーエーテクモゲームスに出てきたとしても、そんなにパラメータが高いとは思えません。

なぜこんな迂闊な輩を、大物退治に使うのか理解できません。主人公補正と言われればそうなんですが……。

しかも、そんな蔦重が諸葛亮顔をして、無茶苦茶なことを言い出す。上様ならば誰に毒饅頭を食わせてもいいってよ。

上様を動かせるならもうなんでもアリじゃねえか!

そういうのは『暴れん坊将軍』でいいじゃねえか!

あれだって上様が切った張ったをするから決まるのであって、甘やかされたボンボン家斉が、父親に毒饅頭を食わせたからなんだというのか。ただの冴えねえ父子喧嘩になっちまうわ!

皆もいきり立ちますが、あっしも気持ちはわかるぜ。それができるなら苦労はしねえっていうか。そんな禁じ手をドヤ顔で提案されても無言になるしかねえンだわ。

しかも、ここでの蔦重の理論は破綻しています。

上様は悪党を倒す分をおさめなければ道理が通らないと言います。

しかし、家斉にとって治済は父です。

家斉が父に手を下すことは「孝」に反する。柴野栗山がそう止めに入らないとおかしいのです。朱子学をあれだけ打ち出しておいて、これに乗っかるのはあり得ないでしょう。

蔦重の幼稚で破綻した論理に皆が打ちのめされるなんて、全員が愚かに思えてきて実に辛いものがあります。

 

祟りに怯える家斉

鈴が鳴り、その上様こと家斉が大奥へやってきます。

そして「きく」という女に声をかけると、皆怯えているとのこと。徳川家基の祟りのせいだそうです。

定信は清水重好にあの手袋を見せ、仇討ちを頼んでいます。

それにしても、毒を仕込んだ手袋で家基を殺したということは、視聴者ならばいざ知らず、突如、言われて信じ切れるものかどうか。乱心扱いされてもおかしくないのではないですか。

それを重好も乗っかってくるのだから、この陰謀論者しかいない江戸幕府体制が恐ろしくなってきます。

重好の理屈としては、徳川家治が死の間際、治済に向かって「天が許さぬ」と語っていたことがあります。そしてその場に、まだ幼い家斉がいたことを定信は聞き出し、何か閃いたようです。

家斉は梅の方という側室を亡くしたそうです。

重好は家斉にお悔やみを述べつつ、亡き上様が夢に出てきて、家基の無念を晴らすと語り出したと告げます。

と、そこへタイミングよくやってきたのが治済。

「体が悪いのに何しに来たのか?」と重好を圧迫します。

体が悪いからこそ先に来て、今後の家督について定信と相談しに来たと答えるしかない重好。

あれほど恐ろしかった治済も、もはや陰謀論者のように見えて胡散臭いだけですね。

すっかりオカルトにやられた家斉は、怯えて何やらあわくって言い出しております。

徳川家斉の肖像画

徳川家斉/wikipediaより引用

もうこちらはすっかり陰謀論ウォッチャーなので、人を騙すにはこうした祟りだのなんだの言い出せばよいのかと学びを得ています。

清水重好は、うっかり定信の名前を出したことを当人の定信に報告。

こんな穴だらけの策をどうフォローするのか?というと、蔦重がペラペラ凧がどうこう話し始めます。

蔦重の偉そうで、皮肉っぽくて、常に逆張り冷笑して語る姿が本当に不愉快で仕方ありません。

と、そこへ平蔵が来て、大崎が最後にやりとりをしていたのは蔦重だと言い出しました。

蔦重は、クエストクリアに必要なアイテムを渡されていたことを思い出します。これもご都合主義なんですよねぇ……。

大崎が、なぜ蔦重をそこまで信じるのかも理解できませんし、蔦重は受け取った中身を確認せず、ここで思い出すというのも理解できかねます。下手すりゃ捨ててたんでは?

 


大崎の告白

そして、そのアイテムを柴野栗山が家斉に届けます。

中身は、死を覚悟した大崎による罪の告白でした。

・徳川家基

・徳川家治

・田安治察

・松平武元

・数多の民や女子供たち

これ全て治済の指示通りに殺してきたという内容でした。そのうえで父の悪行を止めろ、止められるのは上様だけだと励ます内容です。

大崎と蔦重は計画を話し合ったわけでもないにも関わらず「止められるのは上様だけ」という結論ありきなのも妙なことに思えます。

このあたりはSF設定のドラマ10『大奥』と重なってしまう。スタッフとキャストが重なるだけに、既視感があって大変よろしくないと思います。

治済が人を使って毒殺を連発している。そしてその実行者を用済みだからと殺す。毒を仕込む対象が菓子。ここまで展開が一致するとなると、相当まずいのではないでしょうか。

それに、そこまで大事な内容を、不確実な方法で残すというのもよくわかりません。なんせ蔦重は中身を確認しておりませんでした。

家斉が大崎のものだと確認した理由として、筆跡が彼女のものであり、家治の最期を見ていたからだと言い出します。

そして栗山に次の行動を尋ねるというのも、毒饅頭という結論ありきに思います。

なぜ毒饅頭に持っていくのか。

出家でもしてもらって、寺に向かってもらったほうが、祟り相手ならば効果的では? 毒饅頭には除霊効果もあるのでしょうか?

大河ドラマについて書いていたはずが、どうして陰謀論ウォッチャーのような語り口になってきたのか、もう理解が追いつきません。

治済はノコノコと、清水の家督に釣られて家斉の前に来ます。

そのころ三浦と蔦重は囲碁を打ちつつ、清水の茶室で毒饅頭プロジェクトが実行されることを話し合っていました。

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BUSHOO!JAPAN(五十嵐利休)

武将ジャパン編集長・管理人。 1998年に大学卒業後、都内出版社に入社し、書籍・雑誌編集者として20年以上活動。歴史関連書籍からビジネス書まで幅広いジャンルの編集経験を持つ。 2013年、新聞記者の友人とともに歴史系ウェブメディア「武将ジャパン」を立ち上げ、以来、累計4,000本以上の全記事の編集・監修を担当。月間最高960万PVを記録するなど、日本史メディアとして長期的な実績を築いてきた。 戦国・中世・古代・幕末をはじめ、幅広い歴史分野をカバーしつつ、Google Discover 最適化、クラスタ構造にもとづく内部リンク戦略、画像最適化、SEO設計に精通。現在は企業のオウンドメディア運用およびコンテンツ制作コンサルティングも手がけ、歴史 × Web編集 × SEO の三領域を横断する専門家として活動している。 ◆2019年10月15日放送のTBS『クイズ!オンリー1 戦国武将』に出演(※優勝はれきしクン) ◆国立国会図書館データ https://id.ndl.go.jp/auth/ndlna/001159873

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