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『光る君へ』感想あらすじレビュー第19回「放たれた矢」

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伊周包囲網が進んでゆく

藤原伊周のもとに源俊賢がやってきました。

いかにもなご機嫌取りであり、ムッとした藤原隆家が突っかかるようなことを言います。

右大臣に言われて探るつもりか!

俊賢は、確かに妹が道長の妻ではあるものの、源家再興のためだとわざわざ断ります。

その上で、内大臣こそ若く聡明だ、先々のために種を蒔くために参じたというのです。

図々しい奴だと毒付く隆家。

俊賢は帝の意向として、右大臣に歯止めをかけるに内大臣を重視し、陣定にいて欲しいと思っていると伝えます。

さらに俊賢は、蔵人頭として仕えたからには目に狂いはないと言い切る。職権濫用にも思えますが。

参内を頼んでくる俊賢は、一見、信じてもよさそうな雰囲気です。

しかし彼は何重にも罠をかけてきている。失脚した源氏であるということをうまく活かし、道長に従うわけではないと装う。そのうえで帝の意向まで伝えてくる。

実際に帝が言ったかどうかは不明なれど、蔵人頭だと言われてみれば信ぴょう性は増すでしょう。それでも確たる根拠などなく、じっくり問い詰めればボロが出そうなものです。

それでも伊周と隆家は信じてしまいます。素直なところは父譲りでしょうか。

二人との面会を済ませた俊賢は、その首尾を道長に報告し、駄目ならば第二の手を打つと言います。

そのころ源倫子の邸では、母の藤原穆子が「大臣の妻としての心構え」を伝授していました。

初めてのことだと恭しく聞く倫子。

第一に丈夫であること。

次に、子どものことで心配をかけないこと。

例えば、彰子の言葉が遅いことなどは伝えないほうがよいと穆子は言います。

内裏では些細なことが噂になるもの。倫子はそんな風には見えないと驚いています。

実際、倫子の父上である源雅信も、何も考えずに出仕していたけれど、それでも頭には小さなハゲができていた、と穆子は懐かしそうに語り、母と娘で笑い合っています。

何度も語られる「彰子の言葉が遅い」というのは、今後の伏線でしょう。

 


宋人到来への対応はどうすべきか?

源俊賢に説得された藤原伊周と藤原隆家の兄弟も再び参内し、陣定となりました。

なんでも若狭に70人もの宋人がきたことが話題になっています。

これが当時の外交のやる気のなさといえるところです。そんなに驚くならば、あらかじめ警護でも管理でもしておけばいいのに、後手後手で対応しきれていない。

宋の産物は、貴族にとっても垂涎もので、なくてはならないもののはずなのに、受け入れ体制が非常に緩いのです。

非武装の70人程度を対応できなくて、国としてどうなのか。遣唐使のころと比べるとあまりにお粗末です。

藤原為時は家で紙に向かっていました。

いとが、申し文(自己推薦状)の季節になったのか?と問うと、為時に嫌味かと返され、慌てて否定しています。

しかし為時も、諦めはついているのでしょう。どうせダメだと思いつつ十年間申し文を書き続けたことを、今年で最後にしたいと言い出します。

すると驚き泣き出すいと。公任のような立場が出世を諦めるのとは違い、こうなると死活問題です。

あれもこれも人の世だと為時は諦観しているけれど、本当にそれでよいのか。だからこそいとは、せめてまひろが婿を取ればと思ってしまうのでしょう。

清少納言がまひろのもとへ遊びに来ました。

ききょうの予想に反して右大臣こと藤原道長は大したものだとか。疫病のために租税を免除したと聞かされ、まひろも喜んでいます。

ここの反応が興味深い。租税免除にこうも反応しているのは、実資、公任、そしてまひろです。

さらに話題は若狭の宋人70人のことへ。小さな若狭では対応できないとなると、道長は受け入れ先を越前にすると素早く決断しました。

まひろは宋人について興味津々です。どういう人かと問われても、清少納言だってわかりません。

するとまひろは、身分に関係ない官僚登用制度である【科挙】のことをいきいきとして話し始めました。

呆気に取られた清少納言は、そんな話は殿方に任せておけばいいと言いきる。

まひろの賢さはずば抜けているかもしれません。

身分に関係なく優秀な人間を選ぶことのできる科挙は、のちにヴォルテールが絶賛した制度です。試験による官僚登用は今にまで残っている。

科挙
元祖受験地獄!エリート官僚の登竜門「科挙」はどんだけ難しかった?

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清少納言はもはや話についていけず「中宮様がいればそれで幸せだ……」としみじみしています。

まひろが、中宮様にお目にかかってみたいというと、清少納言も乗り気。まひろはおもしろいし、中宮様もあってみたいかもしれないと言い、面会の算段をつけようとします。

まひろは父に似ていると言いますか、どこか浮世離れをしております。純粋な好奇心だけで、何も下心がないように思えます。

 


忠義に篤い清少納言

かくして宮中へ出向いたまひろ。

廊下を歩いていると、足元に痛みが走ります。見れば鋲のようなものがあって、踏んでしまったのです。

ここは、もっと古典的な“菱の実”の類でもよかったような気もします。金属はまだまだ貴重ですので。

それに対し、清少納言は「お気になさらないで」としれっと言い放つ。

なんでも彼女も三日に一度は何かを踏むとかで、それでも中宮様が楽しそうに笑っていればいい、嫌なことも全部吹き飛ぶと、奥に聴かせるよう大声で話しています。

源氏物語』にも廊下に何かを撒く嫌がらせは出てきます。

誰の仕業なのか。こんなことがしょっちゅう起きるならば、そりゃ女院が中宮をいびっていると噂もされることでしょう。

女房が御簾を下そうとすると、そのままでよいとして、定子がまひろを迎えます。

清少納言が、まひろの和歌や漢文、そして政治への知識を語ると、興味深そうな表情になる定子。

するとそこへ帝がお渡りになりました。

何も聞いていなかったと定子が驚いていると、なんでも帝は急に会いたくなったそうで、そのまま二人は奥の部屋へ消えてゆきます。

どこへ行くのだろうか……とまひろが不思議がっていると、清少納言が真剣な顔つきで「帝と中宮は重いご使命を背負っている」と答える。

これは『枕草子』にも書き留められたことであり、かつ道隆と伊周の言動を踏まえると重々しく見えてきます。

定子に対する厳しい姿勢だった、父と兄の言葉――それを、険しい顔で聞いていた清少納言。

中宮様は決して愛されていなかったわけではないと永遠に残すため筆を執り、このことを記したようにも思えてきます。

清少納言の忠義は篤い。

『鎌倉殿の13人』でわかるように、これから先、武士にも忠義はなかなか根付きませんでした。

しかし彼女には揺るぎないそれがある。実に清々しい女性ではないですか。

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