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『光る君へ』感想あらすじレビュー第19回「放たれた矢」

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この国に科挙があるならば

使命を果たした帝と中宮が戻ってきました。

まひろが紹介され、女ながら政に考えがあると知った帝は意見を促します。

私ごときが申し上げることはないと一旦はそれを辞するまひろに対し、ここは表ではないから思ったままを申すようにと帝が語りかけます。

そこで「おそれながら」と前置きしながら、夢があると語り始めるまひろ。

科挙制度の長所を語り、全ての人が身分を超える制度が欲しいと訴えます。

高き者未(いま)だ必ずしも賢(けん)ならず。下者未だ必ずしも愚ならず。

身分の高いものが必ずしも賢いわけでもない。身分の低いものが必ずしも愚かなわけでもない。

白居易の『新楽府』を引用するまひろです。

この新楽府については、以前、公任も学びたいと語っていました。漢詩で繋がりが見えてきますね。

まひろは熱心に「身分の高低で賢者か愚者ははかれない」と述べ、身分の低い者でも学んで出世できる世にすれば政がよりよくなると言います。

すると定子が「言葉がすぎる」とたしなめ、まひろは謝罪。

そんな彼女の姿を見て、帝はまひろの夢を覚えておくと言いました。

実は日本でも、科挙を導入しなかったわけでもありません。

しかし根付いていない理由は単純、実力重視となると自分たちにとってうまみがないと名門たちが気づいたのです。

その結果、実力重視で出世した者は菅原道真を最後とし、あとは形骸化してゆきました。

まひろの弟・藤原惟規が通う大学寮だって、中国では科挙のための最高学府――試験である科挙と、最高学府である大学寮がワンセットで導入されました。

しかし日本ではなし崩し的に薄れて、大学寮だけが残りました。

しかもその大学寮だって、名門貴族は熱心に学ばなくとも、出世はどうにでもなります。

大学寮
平安時代の大学寮とは?光る君へ まひろの弟・惟規が入って出世は望める?

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定子がまひろをたしなめたのは、こうした事情を踏まえたからかもしれません。

彼女のとって見れば複雑な感情を抱く話でしょう。

父・道隆の血筋は言うまでもなく名門です。しかし、母の高階貴子は身分ではなく才知で道隆を射止め、娘を中宮にしました。

上へのしあがるためには聡明さが重要だということを彼女も知らないわけではありません。清少納言を引き立てたのだって、定子です。

それにしても、結果的にいえば才能による抜擢を採用しないことが後々響いてきます。

不満を持った大江広元のような才知あふれる貴族が、行き詰まりを覚えて坂東へ向かってしまうのですから。

程なくして、藤原伊周藤原隆家の兄弟がやってきました。

帝と中宮が仲良くしているか見に来た、皇子産んでもらいたいと伊周。

遊ぶような、試すような、軽やかな音楽が場面を彩ります。今年の劇伴は本当に美しい。

帝はとりあえず、二人の参内に安心したことを告げます。

帝がそう言うだろうと見越していたからこそ、俊賢も強気だったのかもしれません。

伊周は、ご心配をかけたと謝りつつ、まひろに目を留めると、清少納言が、我が友で今下がるところだと言います。はからずも帝のそばに御する誉だと述べるまひろ。

隆家が、あんな女を近づけるなと言うと、伊周も、どうせお召しになるならば女御になれるくらいにするようにといい、中宮に子を授けるようしつこく圧をかけます。

それしか言わないのか、と呆れ疲れた様子の帝。

もうよいと下がらせるのでした。

 


この男は、女の才知を見出せるか?

帰宅したまひろは、申し文で越前赴任を希望するよう、父をせっつきます。

越前には宋人が大勢きているから、中国語が話せる父なら他の誰よりも役立つ。

しかし途方もないことだと驚く為時。

大きな国は五位でなければならず、正六位の自分では無理とのことですが……。

望みは大胆なほうが目に留まる。もう10年目であるとはいえ、千仞(せんじん)の谷に飛び込むつもりでやってみてはどうか、と強気なまひろです。

「おそろしいことを言う……」

「何かせねば変わらない」

まひろは臆病なのか大胆不敵なのか、振り幅が極端な性格ですね。

国司ならせいぜい淡路守で、それでも正六位なら出来過ぎていると為時は冷静で、宮中で娘がおかしくなったといささか呆れ気味です。

確かにこれで何か火がついたとすれば、清少納言としてはしてやられてしまったのかもしれません。

そのころ伊周は、斉信の妹である光子の元へ忍んでいました。

父を失い、身分が高い割に気軽に抱ける姫になった、お買い得の女性。

伊周が、中宮様が理解できないと嘆きながら、光子に中宮の気持ちを尋ねます。

入内したことがないからわからないと返すだけの光子。

伊周はそなたとおる時以外はつまらぬことばかりだと言いながら彼女を抱きます。

『枕草子』で描かれるキラキラと輝く伊周が、これでもかと言わんばかりに光らなういようにヤスリをかけられているように思えます。特に女性関係では顕著です。

父の道隆は才知ある母の貴子を愛した。

道長とまひろ、斉信と清少納言といった組み合わせも、男は女の才知に惹かれています。

帝だって中宮のあふれる知性が好きなはずです。

ところが伊周の場合、手頃で無難な女を抱いてスッキリしているようにしか思えません。

さらには公任の白い顔と、実資の輝く黒い瞳も思い出してしまいます。

公任は女を抱く以外にも、教養を高めることが楽しくて仕方ありません。

実資だって、ゴシップを集めつつ、先例はどうかとサッと当たる知性がある。

行成にしたって、おっとりしているようで能書家であることを生かせる切れ者です。

俊賢も計算高いといえばそうです。その賢さが魅力であると言える。

そうした公卿たちと比較して、伊周はどうしてこんなに魅力がないのか。

男の側は女を選ぶと思っているけれど、その審美眼こそ男の格付けをするものだと暴くような、挑発的な描き方です。

帝は、道長を呼び出し、「政を考える女がいた」と驚きながら報告しています。

冷静に、女院もいれば中宮もいると返す道長。

帝は、そうでなく身分の低い娘であり、名はちひろと言いかけ、まひろと訂正します。

道長の目にカッと光が宿ります。

帝は、優秀な者を起用すべきだという意見を面白がり、道長にどうかしたかと問いかけます。

恐れ多いことを申すものだと返すしかない道長。

帝はなおも、あの者が男であれば登用してみたいと言い出しました。

これはなかなか重要で、まひろの考えを参照にすれば道長の安泰ははかれるということですね。

道長は申し文を見返し、目的の文を探しています。

そして為時のものを見つけ、「淡路か……」とつぶやくのでした。

 


赤い装束を身につける為時

為時の家に、朝廷からの使者が来ました。

従五位に出世したと告げられ、一家はみな驚いています。

これは国司任命かと興奮するまひろ。

10年も放置されて突然どうしたことかと困惑する為時。

まひろはなおも、国司なら越前だと言い出します。

しかし、為時には内裏に上がるための赤い束帯がありませんでした。位があがることなど考えてもいなかったので、用意していなかったのです。

慌てて宣孝に借りてくると言い、まひろが出かける支度をします。

いとが、右大臣とまひろの関係を、そっと為時に囁きます。そうとしか思えぬと返す為時。

さて、ここで服を借りにいく宣孝は、宋人との商売で儲けていました。

まひろの言うとおり、為時が越前へ赴任することになればビジネスチャンス到来です。宣孝もこれには喜ぶことでしょう。

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赤い装束となった為時は、道長に丁寧にお礼を言いに行きました。

まひろは琵琶を弾いていますが、途中、弦が切れてしまいます。波乱の予感ですね。

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