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『光る君へ』感想あらすじレビュー第46回「刀伊の入寇」悪女はどこへでも行ける

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第46回「刀伊の入寇」
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赤染衛門は大長編史書をめざす

そのころ、倫子は赤染衛門の書いた物語に目を通していました。

二人の周囲を可愛らしいキジトラ猫がウロウロ。

倫子は、道長の栄華を描いて欲しいと依頼したのですが、仕上がりを読むと、どうにも違和感があるようです。

それもそのはず、話は宇多帝から始まっているとか。

道長が生まれるかなり前のことですが、赤染衛門にしてみればそれでも足りないようで。

聞けば【大化の改新】から書きたいのが本音だそうで、それだと存命中に書ききれないから宇多帝で妥協したとのことです。

「太閤が生まれた村上帝のころからでよいのでは?」

源倫子がそう促しても、赤染衛門の真剣な眼差しは全く揺らぐことはありません。

清少納言は『枕草子』で明るく朗らかな定子の周辺を描いた。

藤式部は『源氏物語』という、人の世のあわれを大胆な物語にして描いた。

ならば私がなすべき事は何か?

歴史書である。

かな文字で書く歴史書だ!

歴史を押さえた上で太閤様の生い立ち、政の見事さ、栄華の極みを描き尽くしたい。そうすれば必ずや後世まで読み伝えられると熱く語るのです。

倫子は寛大なのでしょう。

「もう、衛門の好きにしてよいわ」

として赤染衛門に任せました。

紙の支給も踏まえれば、かなりの太っ腹といえます。

そんな倫子も素晴らしいし、かな文字で歴史書を書き残すという赤染衛門の大志も実に素晴らしいものがあります。

唐に班昭があるならば、本朝には赤染衛門がいる。そう言いたくなるような実に痛快な場面といえる。

歴史を記すのは男だけなのか? 否、女もできる――この高らかな宣言は、女性が中心となって企画を立てている本作チームの自負にも重なり合います。

「賢子の世代も華やかですし、王朝文化を描きたいなら、それでよいのではないかしら。紫式部が太宰府に行って【刀伊の入寇】に出くわすというのは、さすがに……」

「いいえ! 後の武士の世が訪れる予感まで描きたいのです!」

制作現場では、こういったやりとりがあったのでは?今回を見ていると、そんなことを考えてしまいます。

 


異国の賊徒を撃退すべし

「見事な働き、皆よくやった!」

兵を労う隆家。どうやら撃退できたようで、さらには援軍も到着しました。

「遅いではないか!」

隆家の部下がキツく当たると、すかさず隆家が、

「よくきてくれた、礼を申す」

とフォローに回る。

苛立つ部下とは違い、隆家は寛大です。慌ててやってきた財部弘延と大神守宮の二人は素朴な装備で、なんとかかき集めてやっと来たことが伺えます。

隆家は能古島に撃って出て、撃退すると言います。

そのためには船が必要となり、「朝廷の許可も要る」と言われても、隆家は断行します。

これが隆家のセンスですね。

いちいち朝廷の言うことを待っていたら、手遅れになってしまうのです。

では、敵が次に向かうポイントは?というと、船越の津が危ういと予測され……まひろたちが目指す港に危機が迫る――このあたりもプロットの組み立てが巧みですね~。

 


どこででも書けるのだから

まひろと周明は、船越の津で一夜を明かすことになりました。

すると周明が近所で干し飯をもらってきます。

「周明がいて良かった」

「筑前にきてもう二十年、このあたりのことはよくわかっている」

周明はこの二十年間のことを語り、そして「かつての左大臣が今は太閤か?まひろの想い人か?」と質問したかと思ったら、さらにグイグイ投げかけてきます。

「なぜ妻になれなかったのだ? 弄ばれただけか?」

こうした聞き方に、周明なりの熟成があるのかもしれません。

まひろは「(道長は)書くことを与えてくれた」と答えます。

書いたものが大勢の人に読まれる喜びを与えてくれた。私が私であることの意味を与えてくれた。

「ならばなぜ都を出たのか?」

「偉くなって世を変えてとあの人に頼んだのに、本当に偉くなったら虚しくなった」

あの「望月の歌」を詠みあげたとき、まひろが道長に虚しさを覚えたのだとすれば、なんと儚いことでしょうか。

そして、そんなことを思う自分自身も嫌になって、都を出ようと思ったのだとか。

周明はそれだけ慕っていたのだと言うものの、それでもまひろは離れたかったと言います。

「捨てたか捨てられたかもわからないのか。そんなことしてたら、俺みたいな本当の独りぼっちになってしまうぞ」

「もう私には何もないのよ。これ以上、あの人の役にたつことは何もないし、都には私の居場所もないの。今は、何かを書く気力も湧かない。私はもう終わってしまったの。終わってしまったのに、それが認められないの」

そう弱気になってしまうまひろ。周明はそんなまひろに向き合い、語りかけます。

「まだ命はあるんだ。これから違う生き方だってできる」

「書くことがすべてだったの。違う生き方なんて考えられないわ」

ここはなかなか興味深いですね。

まひろは、賢子のことも、これから生まれるかもしれない孫のことも考えていません。年老いた父も出てこない。

良妻賢母や親孝行な娘という像は一切なく、自分自身の心のことだけを語っています。

周明は「俺のことを書くのはどうか?」と提案してきました。

親に捨てられ宋にわたった男の話はおもしろくないか?そう自虐的に語ります。

これも重大な問題提起でしょう。歴史の狭間に埋もれたけれど、興味深い人の人生はもっとあるのだと思えてきます。

周明は、ならばまひろがこれまでやってきたことを書き残してはどうか?と提案します。

友のこと、親兄弟のことでもいい。それを書いている間に、次の物語が思い浮かぶかもしれない。

「書くことはどこででもできる。紙と筆と墨があれば」

「どこででも」

「都でなくても」

「そうね」

こう語りあう二人には、未来が見えていたのかもしれません。二人は笑い合うのでした。

翌朝、隆家は為賢に船で敵を追うように言います。

ただし、対馬を超えないようにと釘を刺すことは忘れません。高麗を刺激して侵攻と思われては困るという国境意識はあります。

まひろ、乙丸、周明は港を目指し浜を歩いています。

周明は、松浦に向かうまひろに対し、必ず太宰府に戻ってくるよう頼み込みます。その時に話したいことがあるのだとか。

「逃げてー!」

突然、逃げ惑う漁民たちが現れました。

何事なのか? 彼らがそう思う間もなく、漁民を追って刀伊の一団がやってきました。刀で脅かしながら漁民たちを囲い込み、隙あらば殺戮してやろう、という殺気に満ち溢れています。

まひろを連れて逃げようとする周明。

いよいよ乱戦極まりつつあると、双寿丸ら日本側の武者も駆けつけました。

逃げ出した二人は、まひろが転んでしまい、周明が手を伸ばし、その手をまひろが握ったその時――矢が周明の胸に突き刺さり、彼は倒れるのでした。

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