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『光る君へ』感想あらすじレビュー総評 まひろは難ありな私を生きてみせたのだ

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ミソジニーを超越する

こんなミソジニーがファンダムの共通意識となりがちな大河ドラマで、不明点も多い紫式部を扱う。

しかも脚本家はベテランで実力が十分であるとはいえ、女性の大石静さんである。

それを踏まえると、非常に心配でもありました。

案の定、発表記者会見で大石さんが語った言葉が大仰におもしろおかしく語られだしました。

放送開始後も、絶対に「戦がない」といった叩きはであるだろうと思っていました。確かに2月頃まではそういう記事があったものです。

叩きが定番となり、それがアクセスを稼げるとなれば、どんどん回されていくだろう。

しかし、叩き記事は春ごろからは消えてゆきました。

視聴率は伸びないものの、大幅に落とすこともない。定期的に紙媒体の雑誌記事や関連書籍が発売される。

源氏物語』だけでなく、『枕草子』、はたまた『小右記』まで売れているとのことで、異例づくしだと感じたものです。

大河ドラマとミソジニーといえば、信頼できるのが日刊ゲンダイさんです。

ゲンダイさんはとにかく「大河は男のものだ」という意識が強い。ゆえに『光る君へ』を貶してくれたら、ミソジニーが強い人にとっては鬱陶しい大河だと証明されます。

すると予想通り、序盤は叩きに回りました。そして12月には「テレビが10倍おもしろくなるコラム」にて、『光る君へ』を「ズッコケた」と断定する総括記事が出ました。

これだ!

これを待っていたのだと私はガッツポーズをしました。

そして、嬉しい予想外のこともありました。

ドラマのファンダムのみならず、複数の媒体でこの記事への反論が見られたのです。

そればかりか、同月には、ゲンダイさんでも『光る君へ』を成功したと認める記事を掲載していた。

ドラマだけでなく、こうしたメディアの動向を鑑みても、時代の流れは変わったのだなぁとしみじみさせられました。

 


ズレた彼女を世が受け止めること

『光る君へ』の「月夜バージョン」というビジュアルには、こんなコピーがつけられていました。

「わたしを 生きてみせる」

ドラマを見て、紫式部について調べれば調べるほど、なんて秀逸なコピーなのかと腑に落ちました。

ドラマのまひろは、どこかズレている。

紫式部も、生きづらさを感じている。

彼女の著作を読んだ後世の人間も、彼女はこの世に生きていて良い人だったのだろうか、とすら思っていることもあります。

水鳥を見て美しいとだけでなく、その苦労を想像してしまう彼女。

そんな感受性の持ち主にとって、“普通の人”が生きている世界は、それだけでも違和感を覚えるものであったのかもしれません。

『紫式部集』巻末にはこうあります。

いづくとも 身をやる方の 知られねば 憂うしと見つつも 永ながらふるかな

わたしが身を落ち着けて生きていける場所はどこなのか。でも、この世しかわたしは知らない。だから、どんなに辛くとも、わたしはこれまで生きてきた。これからも、生きていくしかない。

生きづらいこの世で、どうすればいいの?

人生の終着においてまでこう思うほど、彼女は辛かったのか。

そんな彼女に『光る君へ』はもうひとつの解決策を見せてくれたと思います。

尖った彼女でも、周囲が「この人はそういうものだ」と受け入れたらよい。彼女にこの世界を受け入れろ、どうにかしろと言うだけではなく、相手も受け止めるようにすればよいのだと。

紫式部日記』に、ああも悪様に書かれたことを、ききょうは知っているのか、知らないのか。

私は読んだ上で諦めて受け入れているのだと思いたい。

まひろは大河史に残る変人主人公で、癖があり、しかも女で、クリエイターでした。

こんなややこしく、難ありのヒロインなのに、その人柄も、不倫愛も、肯定的に受け止められたのは奇跡的なことです。

空気を読まずに突き進んだまひろ。

そんな彼女を世に送り出し、演じきり、認めさせたこのドラマは、まちがいなく大河の歴史を変えたと思います。

上半期朝ドラが『虎に翼』。大河ドラマは『光る君へ』。

そんな2024年のNHKは、多様性の重要性を知らしめることに成功したと思います。

『光る君へ』の評価は今後ますます高まり、伝説の作品となると信じています。


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文:武者震之助note

【参考】
光る君へ/公式サイト

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