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『どうする家康』新たなる失敗の境地へ
思えば『どうする家康』は、本能寺の変どころか放送開始以前から『天地人』と『江』に通じる要素はありました。
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ゆえにワースト本能寺についても、過去の反省などありえず、失敗を繰り返してこそ本作の特徴と言えるかもしれません。
実際の放送がどうなるか?
むろん、それは不明ですが、すでに発表されているあらすじから予測はできるでしょう。
以下の記事を参照に、
◆どうする家康「本能寺の変」家康は戸惑う…第28回あらすじ(→link)
気になる部分を引用してみました。
こちらです。
信長(岡田准一)が本能寺へ入ったという知らせを受け、家康(松本潤)は堺へ向かう。
堺の商人たちと手を結び、家康は信長を討った後の体制も盤石に整えていた。
だが、そこにお市(北川景子)が現れる。
市から、あることを聞かされ、家康は戸惑う。
信長を討つなら今夜しかないーー家康は、一世一代の決断を迫られる。そして迎えた夜明け、本能寺は何者かの襲撃を受け、炎に包まれ……。
・堺の商人と盤石の体制を整えている
盤石の体制とは何なのか。
軍備のことなのか。あるいは堺から逃げる算段のことなのか。だとしたら、それは如何なるルートなのか。
結局、危険な伊賀越えをすることは変わらず、ストーリーの破綻を払拭することにはならないのでは?
そもそも、本作の家康は緻密で計画的な行動をしたことが描かれておらず、説得力がありません。
・お市から戸惑うようなことを聞かされる
偶然による偶然ばかりを頼りにしていませんか?
お市の情報という一手で崩れるような計画は、そもそも「盤石」ではないでしょう。
・本能寺は何者かの襲撃を受けていた!
その盤石な計画を立てる情報網で、誰がまずいかどうか、察知することはできなかったのか?
前回、信長が破滅の予感を匂わせていて、光秀は下劣さを見せつけていました。
それを察知できない家康は、あまりに鈍感では?
・信長無双
このドラマはストーリーの整然さより、役者の特性を落とし込んできます。
瀬名は癒し系のほんわか美女。
武田勝頼は偉大なる父の寵愛をずっと受けてきた息子。
織田信長は、高い身体能力を落とし込んできます。
つまり、この信長は最後まで無双をやらされるのでしょう。
『どうする家康』はアクションでもおかしなことになっています。
サウンドエフェクトからして、斬撃のアクションと音がくいちがっていることもしばしば。熱演が虚しくなる、お粗末な信長無双が予測できます。
予告映像をみると、血糊がペンキをぶちまけたようにしか見えない。しょうもなさが既に伝わってきます。
・『レジェンド&バタフライ』という合わせ技
同じ脚本家の『レジェンド&バタフライ』も合わせてみることで、「本能寺をなんだと思っているのか」という嘆きの気持ちは相乗効果でさらに高まります。
映画レジェバタでは、信長が「本能寺を抜け出し、帰蝶の元へ戻り、船で外国へ」というシーンが流れます。
結果的にそれは単なる妄想だとわかるのですが、見ている方としては「ただでさえ長いのに夢オチか! 貴重な時間を返せ!」と言いたくなるほど無駄でした。
ちなみに、こうした死の直前の妄想は『どうする家康』でもありました。武田軍に捕まる直前の鳥居強右衛門が長篠城へ無事に戻ることができたという妄想です。
両作品をご覧になられた方はすっかり脱力されたことでしょう。
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・高まる『首』への期待感
北野武監督作で、テーマは本能寺の変という映画『首』の公開が秋に控えています。
大河ドラマは草創期から映画と競ってきました。その決着がついについてしまうかもしれません。
『レジェンド&バタフライ』なんかとは違う。まっとうな映画が勝つに決まっているじゃないですか。
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・高まるマスメディア不信
主演と準主演が所属する芸能事務所が、大規模な性犯罪およびその隠蔽により、厳しい目を向けられています。
そんな中、平然と放映し続ける。海外配信すら狙う。
NHKそのものの姿勢が問われかねない事態が起きています。こんなことは二度と起きてはなりません。
逆張りだけなら是非もなし
こうして眺めてみると、大河ドラマの「本能寺の変」は炎上の宝庫のようにも思えるかもしれませんが、むろんそんなことはありません。
近年、快挙も成し遂げました。
2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』では最終回で大幅に視聴率を上げたのです。
◆「麒麟がくる」大河最終回18%超は「江」以来9年ぶり快挙“勝因”は本能寺の変 普段見ない層も視聴(→link)
意図的なのでしょうか。『どうする家康』は、この『麒麟がくる』の逆張りをしているような描写が多くあります。
大河ドラマは、過去に重要な役割を果たした人物には、それなりの描写がされる傾向があります。大河ドラマという枠のファンが多いため、その配慮が必要とされるからですね。
しかし本作は真逆のことをしています。
対抗意識なのか。自分たちの方がうまくやれる、人気を得られるという自信でもあったのか。
理由は不明ですが、一つ決着がつくとしたら「本能寺の変」かもしれません。
破綻した「勝利の方程式」
『どうする家康』は、一見、民放ドラマや映画での成功要素「勝利の方程式」を取り入れているように思えます。
・人気脚本家
・一話形式のシナリオ
・豪華な出演者
・出演者のファンに対するサービス要素
・SNSで「バズる」盛り上げ方
・どんでん返し、意外性のある展開
・宣伝展開
残念ながら、こうした方程式は、大河ドラマでは通じないのでしょう。
結果が決まっている歴史フィクションでは、下手にトリックを入れたり、その過程を動かすと、プロットそのものに歪みが生じます。
派手な宣伝展開でどうにかしてやる!
そんな形跡は、2023年公開映画『レジェンド&バタフライ』からもわかります。
派手なキャスト、広告、褒めちぎる記事、脚本家インタビュー、宣伝番組といった要素で、とにかく「成功した!」という雰囲気作りだけはさかんに行われていました。
それにも関わらず、映画は赤字となりました。Amazon Primeにも異例の早さで登場し、無料視聴できるように……。
今や、かつて往年の広告代理店が手掛けたような手法は通じないのでしょう。
色褪せて急激に萎んでいく「勝利の方程式」に安易に乗った結果、『どうする家康』は破綻しかけています。
今からでもできることは、この失敗を糧にすること。
2024年以降の大河ドラマに期待するしかありません。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
NHK出版『NHK大河ドラマ大全』(→amazon)
一坂太郎・星亮一『大河ドラマと日本人』(→amazon)
呉座勇一『陰謀の日本中世史』(→amazon)
他