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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第33回「裏切り者」】
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落ち込んでいくばかりの信頼感
視聴者だけでなく、作り手すらも信頼し合えていない。
そんなギスギスした不幸な関係は、ドラマの描写にも反映されているようで、先週の放送で、秀吉が吐いたセリフが注目されていました。
◆NHK大河「どうする家康」ムロ秀吉の悪口に対するアンサーが話題に 視聴者「全てのSNSユーザーが胸に留めたい」「正論かましてきた」(→link)
徳川軍に罵詈雑言の看板を掲げられた秀吉が、「人の悪口を言うやつはどうしようもない」という趣旨の発言をしたものですね。
この秀吉のセリフを、私のように批判を記す不届者へのカウンターと捉えた意見は多かったようです。
しかし、だとしたら非常に妙なことになる。
秀吉の発言が向けられたのは、あくまで「徳川軍」です。
罵詈雑言の看板を立てた徳川軍に対し、秀吉が「どうしようもない連中だ」と罵り返したわけで、もしも秀吉の発言が肯定的に捉えられるなら、表向きは徳川軍の連中がどうしようもないということになる。
SNSでのアンチを叩きたいあまり、主人公側をぶん殴るとは、あまりに筋が悪い。
そして、今まで散々秀吉を貶めるような描写をしてきたドラマの制作者も、批判される側になるでしょう。
作り手の自己批判だったのでしょうか?
そもそも作り手の個人的な意見を、こうもわかりやすく直接代弁させるのは、制作サイドの力量不足でしかありません。
面白い作品を作り、視聴率にも反映させれば、ほとんどの方は文句を言いません。
結局、現状それができないし、その見込みもないのでしょう。
どうする提灯記事
ジャニーズ事務所における性加害の実態が明らかになるにつれ、芸能事務所と記事の関係も見えてきて興味深いことです。
匠の技を見てみましょう。
この記事の褒めるところがすごい。
・本多忠勝が十年前に死んだ叔父さんのことを覚えているなんてすごい!
→いや、大事な人の死は何年経過しようと忘れないものでは?
・忠勝は「たわけ」しか思いつかないのに、康政はいっぱい悪口を思いついてすごい!
→いや、それにしてもひねりのない凡庸な語彙力でした
・『論語』を読んでいてすごい!
→『麒麟がくる』では、光秀が幼少期に「四書五経」( 「四書」は『論語』『大学』『中庸』『孟子』、 「五経」は『易経』『詩経』『書経』『礼記』『春秋』)を二年で読みこなしていました
・「無」を旗印にするなんてすごい!
→戦国武将の旗印ひとつでそこまで褒める、そんなポリアンナっぷりがすごい。二男であるから先がないと誘導していますが、当時は乳幼児死亡率が高いし、戦死もするし、二男の将来性が極端に落ち込むのは江戸時代以降では?
・『東京リベンジャーズ』のキャスティングとかぶっていて納得!
→なぜ、そこで納得するのか理解できません
・あの芸能事務所に所属していてすごい!
→人の魅力を所属芸能事務所で考えたことがないので、どうにも理解できない感覚です
ジャニーズほど大手で、かつ特殊な売り込み方ならば別ですが、別にいちいち、芸能人がどこの事務所所属かなんて私は気にしません。大半の方がそうでしょう。
それにこの連載は、ここまで芸能事務所推しをしていたかと考えてもいます。
ただ、ニーズには応じているのかもしれない。
私としては、榊原康政はどこにいるのか覚えていないほど存在感がありませんでした。
しかし、この記事を読むと印象がガラリと変わってきます。
芸能事務所を褒め称える。
関係ない同じ事務所俳優のことまで褒めるようなニュアンスで出す。
民放ドラマのヒット作もさりげなく入れる。
文字数稼ぎのような美辞麗句をたっぷりと織り込む。
これは確かに、商品を売る文章としては秀逸かもしれない。そんなプロの仕事術に感服しました。
このへんは孤独のグルメ要員として松重豊さんを取り上げる、日刊ゲンダイのニュースでも引っかかったのですが。
死亡退場した人物を「後半のキーパーソン」にするのはおかしくありませんか?
ただ、それでいいのだとも思いますね。
この記事のキモは、13歳の子役を妖艶だと見なしてもいいと、読む側にアリバイを与えることだと思えます。
人間の叡智として、ただのゲスエロ欲求をコーティングするというものがあります。
たとえば『金瓶梅』のようなえげつないポルノ。
あれは最後に主人公が頓死します。それでこういう言い訳が通る。
「エロい生活をすると死んでしまう。そういう教訓があるんだなぁ」
日本の春画だって、繁栄の象徴だの、魔除けだの、いろんな言い訳がなされてきました。
そして令和はこうだ。
「このエロい子役は後半のキーパーソンだからね。私は別にエロい気持ちで興奮しているんじゃないぞ、ドラマとして考察しているんだ」
そう盛り上がっているところで
「そもそも年齢的に家康とお市の恋愛関係は成立しない、家康が織田にいたころお市はまだ乳幼児です」
と指摘しても、通じないんですよね。
さらに白鳥玉季さんについては、今後のキャスティングまで占えるかもしれないとのことです。
◆低迷「どうする家康」の救世主は松重豊の「孤独のグルメ」化?「家康ツアーズ」で“食べる姿”熱望の声(→link)
「白鳥さんは昨年公開の映画『流浪の月』でヒロイン・更紗の子ども時代を演じていましたが、子どもながらあふれ出すような魔性の魅力に何度もドキッとしたことを覚えています。大人になった更紗を演じたのは広瀬すずさん。そんな経緯もありますし、私はひょっとすると茶々は広瀬すずさんの可能性もあるんじゃないかなと思っています」と話すのは芸能ライターのエリザベス松本氏。
たしかに「淀の方・広瀬すずさん」というキャストはありえるでしょう。
磯Pの作品である『なつぞら』で主演を演じた経緯があり、姉の広瀬アリスさんがすでに出ている。話題性も十分です。
一方で、BL推しの悪寒を告げる記事も出ています。
◆『どうする家康』が放送開始以来の大ピンチ…「BL展開」しか逃げ道がない「ヤバすぎる事情」(→link)
「山田(本多)が上半身裸となって槍の稽古をする、杉野(榊原)が家臣と相撲を取る、といった演出プランがあると聞きます。松本家康の相手役になるのは、おそらく板垣(井伊)でしょう。美男子の井伊が、風呂場でふんどし一丁になって家康の背中を流すというシーンが今後の見せ場になるそうです」
一言だけ言うなら「しょーもな!」でしょう。
こんな安っぽいBL展開でしか数字を狙えないドラマとは一体なんなのか。
本当に大河ドラマなのか。
分析も間違っていると思われるし、そもそもトレンドとして狙う層は動画配信を見ているでしょうよ。
中国史のBL事情ってどうなのよ?イケメン・ブロマンスと併せて真面目に考察
続きを見る
確かに『鎌倉殿の13人』で若い層を取り込んだという分析結果もありましたが、今年はもう今さら頑張ったところで無理。
ここから制作陣を入れ替えたって、とても挽回できるものではないでしょう。
◆中国ドラマ「陳情令」配信4周年記念の切手セット販売、五大世家シーリングスタンプも(→link)
◆アニメ第2シリーズ「天官賜福 貮」字幕版&吹替版で放送決定! PV第1弾が公開&新キャストに子安武人(→link)
桃李成蹊
先ほどの記事で名前が出てきた松坂桃李さん。
実は彼の「桃李」とは、桃李成蹊を由来としていて、成蹊大学の由来でもあります。
桃李もの言はざれど、下自ら蹊(みち)を成す。『史記』
桃やスモモは何も言わない。しかしその下には、その花と実を求めた人が集い、自然と小道ができるものだ。つまり、優れた徳や誠意の持ち主のもとには、宣伝などせずともそれを求める人が集まってくる。
大河ドラマもそうだと示すニュースがありました。
◆綾瀬はるかさん、今年も特別ゲストに 9月23日の会津藩公行列 福島県会津若松市 福島民報(→link)
もう十年間ですよ。
彼女を呼ぶ会津の期待や信頼感と、綾瀬はるかさんの誠意が今なお合致していて、
「さすけねぇか」
と呼びかける綾瀬はるかさんはすっかり名物です。
『どうする家康』でも、まだ祭りのゲストに出演者が参加することがあるようですが、その一方で一切関わらない祭りもあります。
その代表例が、信玄公祭りでしょう。
◆第50回信玄公祭り 信玄公役が決定しました!(→link)
以前にも触れましたが、信玄公を務めるのは阿部寛さんでも眞栄田郷敦さんでもなく、『大奥』で徳川吉宗を演じた冨永愛さん。
意思決定の経緯は不明ながら、ともかく結果は結果。
なぜ大河ドラマが回避されたのか。あらためて考えていて浮かんできたのが脚本家の得意とする描写手法です。
『どうする家康』にせよ『コンフィデンスマン』などにせよ、この脚本家については
「二転三転する展開で視聴者が軽妙に騙される」
といった趣旨の文言が必ずのようについて回ります。
徳川家康はむしろ誠実さが売り物です。
むろん誇張や美化もあるでしょうが、裏切られることの多かった織田信長に対し、一度もそんな素振りを見せていないのが家康。
秀吉だって、死を前にして、家康に秀頼を託しています。
実際の内面はともかく、誠意ある人物に思われていたのでしょう。
そういう人を主人公にして、どうして、軽妙に騙すのが得意な脚本家に依頼したのか?
そんな不誠実なドラマのもとには綺麗な花も咲かないし、美味しい実もならない。
騙されて近づくと造花がつけてあって、実はただのハリボテ。しかも蜂の巣が仕掛けてあって、逃げ惑う羽目になる。
それを「斬新だ!」「シン・桃李成蹊だ!」「ただの桃とスモモじゃつまらないでしょw」と木の周りにいる連中がニヤニヤと笑いながら見ている。
せっせと小道をわざとらしく作り、そんな罠のある木に近づけようとするものもいる。
「この素晴らしい木がわからないなんてバカw 怠慢だw」と嘲笑う者までいる始末です。
2013年と2023年の大河ドラマの違いとは、誠意の問題だと思います。
信頼関係を無茶苦茶に破壊しておいて、この後どうするつもりなのか。
皆さんの意見はNHKへ直接送りましょう。
◆NHK みなさまの声(→link)
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【参考】
どうする家康/公式サイト