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【『どうする家康』感想あらすじレビュー第36回「於愛日記」】
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衆人皆酔えるに、我独り醒めたり
衆人皆酔えるに、我独り醒めたり。屈原『漁夫辞』
みんなハッシュタグで無茶苦茶盛り上がっているけど、自分はそういう性格じゃないんだよね。
上掲の記事「なぜ大河は10パーセントをとれるのか」について、少し考えてみました。
一定の数字を確保できる理由――それは大河というフォーマットの特性ではないでしょうか。
同じことは朝ドラでも言えます。
大河と朝ドラは、本タグなり、反省会なり、ハッシュタグで放送時間やその前後にX(旧Twitter)に投稿することが盛んです。
配信は放映中以降で、同時刻に全国で放送される(BS等の先行放送を除く)。
今の若い世代はもう配信で好きな時間に見ることが当たり前でしょうが、中高年以上はテレビの放映時間に一斉に見ることが習慣としてありました。
大手掲示板で実況書き込みをする人も多かった。
その若い頃の習慣が抜けず、みんなが見ているときに投稿することで承認欲求を満たすことができるのです。
そりゃ楽しいとは思いますよ。
考えに考えて投稿してもろくに「いいね」も「リポスト」もされないのに、ハッシュタグつけてドラマのことを語ったらそれがドッとつく。中毒性もあるでしょう。
それに気づいているのか、いないのか。
こういう記事も出てきます。
◆ちむどんどん、イライラしても「見てしまう」視聴者達 一体なぜ?識者が推し量る「制作側の意図」(→link)
ハマって見ているならまだしも、つっこんで見ることが中毒性になってしまうですね。
ネットニュースの書き手もそこに乗っかり、PVを狙う。
『ちむどんどん』についていえば、反省会タグに夢中になっていたと思われる方と実際に話したことがあります。
その方は、反省会タグで猛威を振るっていた“ある誤認”を元に批判してきたため、それに対し論拠を示しつつ、否定しました。そのときの相手の不機嫌な顔は今でも思い出せます。
どうやら「いいね」や「リポスト」に溺れていると、自分に確固たる自信が湧いてくるようで。
私の指摘に対して「この番組の識者である我が意に背く気か!」とイラつく様子なのです。
しかし、だからといって論拠立てての反論はしてこない。
こんなとき怒りに震える人間はどうするか?
定番の一つが「トーンポリシング」ですね。
こちらの態度がいかに無作法で腹立たしいか。本筋とは関係のないところで攻撃をしてくるもので、そのときも嫌味っぽく何か言葉を吐き捨てておりました。
同じ時刻に多数が見る。投稿すると、承認欲求が刺激される。投稿していくうちに、自分がドラマ通で一味違う個性があるという気持ちになれてくる。
こういう経験をしていれば、そりゃあ気持ち良くなり、ドーパミン中毒にもなりえるでしょう。
正直なところ、私はちょっとうらやましい。自分がそういうことができる性格ではないので、どうにもならない。
今にして思えば『ちむどんどん』はアンチが強いだけで、そこまで悪くなかったのだと思います。
その次の『舞いあがれ!』は本タグもアンチタグもあそこまで盛り上がっていない。
ただひたすらつまらない、突っ込む価値がないと思われたドラマは、無言の離脱視聴者が増え、ただ単に数字が落ちるだけです。
SNSを見ると『どうする家康』も、反省会投稿そのものが減っています。「いいね」や「リポスト」がそうそうつかないんでしょう。数字や関連商品の落ち込みぶりと一致します。
今も稼働中の「反省会」は、滝行に挑むようなストイックな心境だと思いますね。
バズって気持ちよくなりたいんじゃない。きっと精神修練だ!
牝鶏晨す
牝鶏(ひんけい)晨(あした)す。『書経』
フェミがでしゃばると世の中終わるしw
一体いつの時代の話だ――そう言いたくなる言葉ですが、令和になってもこれが好きでたまらん人はいます。
かつて、倫理、教育、道徳、人権、生真面目さを冷笑する態度こそがかっこいいとみなす風潮がありました。
親の世代の反戦運動だの、民主主義の価値観だの。そういうものの偽善性を暴くという意味合いもあったからでしょう。
おりしもその頃は冷戦も終結し、インターネットが広がり、巨大掲示板が生まれた。
クールな本音をネットに書き込む自分たちこそが情報強者で特別だという特権意識が広まっていったのです。
そういう世代が、今ではそれなりの発言権を持つようになり、今、いろいろと弊害が出てきています。
典型的な逆張り冷笑欲求として、草を生やしながら女性蔑視をキメたいというものがあります。
その失敗事例がこちらです。
◆アツギのタイツ企画炎上「性的で怖い」 SNSに潜む罠(→link)
◆「明らかな女性蔑視」アート作品とその解説投稿が物議「様々なご意見が…」美術館“無言削除”の裏事情(→link)
◆ 「美女とホテルへ」浦添市長のTikTok動画、批判集まる 松本市長「ぎりぎりのライン心掛けたつもりだった」(→link)
やっている側はギリギリを攻めたつもりなんでしょうね。
でも痛々しいし、どこかセンスが古いし、公私混同なんだよね――そんな虚しい気持ちになります。
あと何回炎上したら無くなるのでしょう。
こうした当事者の赤裸々な本音が明らかになっている事例もあります。
◆ジャニーズのコンサートに出現して女性転売ヤーを狩る“私人逮捕おじさん”が物議!(→link)
ジャニーズのチケットを転売していると疑っただけで女性を強引に「私人逮捕」して、その様子をネットに晒した男性が炎上しました。
ちなみに彼女はチケット転売そのものをしていなかったそうですが、男の言い分はこうです。
「“女性叩き”というのもあるんですよ。今の日本って、女性のほうが立場が強いんです。女性が悪いことをしても叩かれない。パパ活も、男だけ叩かれて女の子は叩かれないところがある。それを変えて、男女平等にしたいんですよ。その一環として、女性が多いジャニーズのチケットをやっている感じです」
話題作りや数字狙いだとしても、“女性叩き”を本気でかっこいいと思っている様子が気味悪い。なぜ、こんな感覚になるのか?
考えられるのが「エコーチェンバー」です。
◆「エコーチェンバー」極端思考が仲間内で加速…抜け出した男性「集団はカルト宗教のよう」(→link)
あるいは焦燥感なんかも影響しているでしょう。
◆「性的同意ってなに?」灘校生が甲南女子大生と学ぶ、生理の悩みとデートDV【ルポ・男子校の性教育】「お姉さん」目線で「男子のノリ」の限界を克服(→link)
自分たちの下の世代は、性的同意を学べる機会を得た。
すぐ下ネタにはしる自分たちのノリは、近い将来「会社でヌードカレンダーを飾って鼻の下を伸ばしていた昭和のおじさん」と同じ痛いノリとなってしまう。
そんな現実を受け入れたくなくて、“女性叩き”やセクハラを優しく認め、それでいいと甘やかしてくれるコンテンツに抱きつきたくなるんでしょうね。
『どうする家康』は、こうした状況と非常に似通っている。
側室オーディションだけで一回使う。
マザーセナ信仰で何もかもばっちりだ。
バカな女をおちょくる女叩き要素も小ネタとして入れてくる。
団子売りだの大政所だの、ババアはちゃんとコケにしてくる。
『麒麟がくる』の”駒ちゃん“みたいな生意気な女はいないし!
ああ、なんて甘い世界なんだ!
そういうノスタルジーには合致しますよね。同じ脚本家の『レジェンド&バタフライ』もそうでした。
ド派手な話題作りで中身は空っぽ?映画『レジェンド&バタフライ』
続きを見る
そうやってミソジニーで中年男性の心を掴み、ジャニーズタレントで中年女性の心も掴む。
広告代理店の売り込み戦略としては上出来なのでしょう。
ただし、時代を読むセンスがあまりに古かった。
櫝を買いて珠を還す
櫝(はこ)を買いて珠(たま)を還(かえ)す。『韓非子』
ブランドのわかる箱だけ欲しいんです。中身はどうでもいいし。
気になるニュースがありました。
◆ソムリエに「最もまずい」と評価された400円の激安ワインが国際コンクールで金賞を受賞してしまう(→link)
ワインは中身でなくてラベルが大事――これは心理学者が実験していることでもありました。
安いワインと高いワインを自称ワイン通にブラインドテストさせて、結果を見てみる。
すると評価が価格と比例しないことが多い。
結局、中身よりブランドで選んでいるんじゃないの? と、突っ込まれてきた。
それは「ビジネスとしてできる」と、このニュースでは示されています。
今年の大河ドラマを熱心に擁護している方たちの中にも、一部過激な方たちがいます。
ドラマを批判するSNSの反省会タグまで乗り込んできて、批判的なファンを攻撃していくのです。
彼らを見ていると、大河ドラマの出来がよいかどうかより、誰かを叩いたり、仲間同士で承認欲求を満たすことが大事なように思えてきます。
もしも『どうする家康』が民放ドラマや映画だったら。
あるいは女性主人公や女性脚本家であったら。
もっと徹底的にボロボロに叩かれていたかもしれない。
つまり、「男性向き大河」という“ラベル”に『どうする家康』の真価はあり、それを褒め、自己と一致させることが、自我の一部になっているのかもしれません。瓶の中身がまずかろうがどうでもいいと。
自分と仲間が推すと決めた大河は意地でも褒める。そこを抜け出そうものなら里を抜けた忍者のように叩かれる。
そんなギスギスした村社会のシステムが見えてきたように思え、興味深い。
そんな世界の先に何があるのか?といったら時間の浪費としか思えませんが、人間、なにかに没頭しているときは気づかないものです。
そして一定の時間が経過すれば、他人を攻撃していたことも綺麗サッパリ忘れて生きていくのでしょう。
明哲保身
すでに明かつ哲、以ってその身を保つ。『詩経』
思慮深いことこそが、その身を全うする。
たとえ伝統ある大河ドラマとはいえ、酷い作品が続けばブランドは毀損します。無くなる可能性だって出てくる。
大河とて決して安泰ではない。
こちらの記事が話題になっていたので、読まれた方も多いでしょうか。
◆【独自】《ジャニーズCM打ち切り問題》元ネスレ社長独占告白! 看板商品のCMに退所後の香取慎吾さんを起用...「タレントには罪がない」という理由(→link)
元ネスレ社長の見解が述べられています。
ジャニーズ起用の危うさとともに、ネスレは東京オリンピックスポンサーにもならなかったと指摘されています。
どうにも危ういと感じていた。その感覚を重んじたことが今になって急激に評価されています。
オリンピック負の歴史~スポーツと政治・経済・戦争は切り離せない宿命なのか?
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ではNHKはどうか?
大河ドラマは『いだてん』で東京オリンピック、『どうする家康』でジャニーズとズブズブな関係にあった。
危機管理体制がネスレ元社長に遠く及ばない。
報道機関、しかも公共放送とは思えないほど、あまりに迂闊な姿勢です。
本来なら視聴率に左右されず、中立の立場を保てるはずなのに、目先の数字が欲しいためジャニーズに頼り、今になって右往左往している。
みなさんも大河やNHKに対して何かご意見がありましたら、SNSに投下するのではなく、直接送ってしまいましょう。
以下のリンクから送信できますよ。
◆NHK みなさまの声(→link)
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【参考】
どうする家康/公式サイト