一本の矢が放たれ、4年7ヶ月の源平合戦が始まった――。
敵の邸に襲い掛かるのは頼朝配下の兵たち。暗闇の中、槍や刀を持った者たちが激闘しています。
安達盛長の声を受け、
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頼朝も遠くから火の上がる様子を見守っています。
「もうあとには引けぬ」
そう語る夫の手を、政子がそっと握る――と、戦でスタートした第5回放送、この場面はかなりの高等技術が発揮されています。
照明がかなり暗い。
近年、ドラマの明度は落ちてきています。機材の大型化もあるのでしょう。
大河は海外の歴史劇と比較すると明るすぎて、ちょっと味が足りなかった。そこを克服していて、よいアプローチですよね。
殺陣も野生的で、後世からすれば「汚い」と言われそうな動きをします。
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人を殺すことはやはり気が重い
兄が弟を呼ぶ声がします。
「小四郎、父上から離れるな!」
「はい!」
北条宗時と北条義時がそう声を掛け合っています。普段はノーテンキなお兄ちゃん宗時は、こんなとき非常に頼りになる。
建物の中に入ると無人で、北条時政が荒々しく戸を開けながら探し回っています。坂東彌十郎さんがやはり素晴らしい。立ち姿ひとつとっても絵になる。
と、堤信遠が見つかりました。
「こんなことをしてどんなことになるかわかっておるのか! この田舎者めが!」
うずくまる相手を切りつける父子。とどめを刺すよう、父に促される義時です。
「武士の情けじゃ、一思いにいけ」
しかし義時はかなり苦しそうに刀を突き刺します。サウンドエフェクトに迫力があり、これぞ殺し合いという気合いを感じる。生々しい。
宗時は山木の館へ向かうといい、時政はこう言います。
「これで終わりじゃあねえぞ。始まったばかりだ」
そう言いながら堤の首を切り取る光景に義時は衝撃を受けています。小栗旬さんが実によい顔をしている。
武士だろうが、この時代だろうが、人が死ぬことはやはり重い。人間はそんなに簡単に人間を殺せないものです。
『麒麟がくる』の明智光秀もこういった描写が秀逸でした。今年も期待しています。
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かくして頼朝は立ち上がり、未曾有の大戦、源平合戦が始まりました。
目指すは源氏ゆかりの地・鎌倉。義時はたどり着けるのでしょうか?
と、ここでナレーションが当面の目標設定をしますが、果たしてそれだけなのか。注目したいところ。
北条宗時は、山木兼隆と堤信遠の首を取ったことを、大勝利として振り返っています。政子たち女性も見守っています。
頼朝はここで合掌しています。18日は殺生をせず、神仏に祈る日だそうで、北条時政が伊東を攻めるべきだと反論しようとすると、宗時が「伊東はいつでも倒せる」と父を制します。
「方々、戦はこれから。よろしくお頼み申す」
「おー!」
こうして見ていると、宗時は立派な若武者だと思えてきます。リーダーシップがある。
宗時ってよくわからない人物像というか、難しい。
言動は単純で愚かにすら時には思えるけれども、人を率いる魅力はあるのです。片岡愛之助さんがそんな像をきっちり演じています。
『麒麟がくる』の今川義元でも思った。この人は頼りになるリーダーを演じることに向いている。
同じころ、伊東祐親はやはりあの時頼朝の首を打つべきであったと悔しがっていました。
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頼朝が東国の所領を差配する!?
頼朝はここで緒戦勝利、次の一手を指します。
戦よりも大事なことは、後白河法皇をお救いするまで坂東の政治(まつりごと)を頼朝が担うということ。
土地の分配です。
この時代は土地管理システムが限界に到達していて、それまでの荘園制度ではもうやっていけなかった。
しかし、そんな世の中の仕組みを勝手に変えたら、そりゃまずい。
所領を召し上げてもよい誰かはいないか?と問われ、「あの馬面の男」があげられます。
下田の中原知親です。
宗時が馬面だと説明すれば、頼朝は顔が長いだけで所領は奪えぬと言います。
すると義時は、平家の家人であることを鼻にかけ領民の評判が悪く、土地の者が苦しんでいるとフォローしました。観察眼があり、民衆の苦しみに敏感なのですね。
そして東国は、源頼朝が荘園や公領が管理することに……。
根拠は以仁王の御令旨。これを掲げて土地を管理するのです。
これぞ頼朝の所信表明であった――と説明されますが、なかなかクレイジーな話だと思います。もう無茶苦茶で、当然のことながら平家は激怒します。
平家や西側の連中には、読みの甘さがありました。
頼朝に動きがある、と報告されても、清盛は「東の野蛮な連中など、奴らで勝手に始末をつけておけ」と認識が緩かったわけです。
しかし、もはやそうも言ってられない。
平家の信頼が最もあつい大庭景親が命を受けました。
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その側には「平三」と呼ばれる梶原景時がいます。
景時は、頼朝は相模や武蔵の豪族に声をかけて東に向かうと予測。そこで迎え撃てばよいと進言します。
「出陣の支度じゃ!」
アッサリとそれに乗り、景時の進言をベースに作戦を立てる景親です。
相変わらず計画性のない作戦
来ましたね、梶原景時。公式サイトでは「謎の武将」とされていました。
思わず何が謎なのか?と突っ込みそうになりましたが、確かにこれは謎かもしれません。
だって今までの劇中では、相手の行動を先読みして布陣の位置を考えるなんて誰もしていなかったんですよ!
なんという大戦略家……いや、『麒麟がくる』ではだいたいどの勢力もそうだったんですけどね。
大庭景親は3000――それに対し、頼朝・北条軍は?
「膨れ上がっているから大丈夫!」と北条時政が自信満々ながら、実際はまだわずか300だそうです。三浦の援軍が向かってはいても、どこまで頼ってよいものか。
鎌倉に入り、源氏の棟梁であると宣言したい頼朝。それに対し、甲斐の武田信義も挙兵していました。
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そんな武田の動きがおもしろくないのか。
頼朝は、血筋を比べるまでもないと吐き捨て、ますます鎌倉に急ごうとしています。
ハイ、頼朝〜、あなた嘘つき~!
頼朝がやたら、自分のことを名門だと言いまくり、それが定着しているから名門だということになりますが、そう明確明瞭に言い切れるかどうかは保留で。
薄々自覚しているからこそ、頼朝も武田信義に対抗心を燃やしているのでしょう。
毛利元就なら「ダメだろ、同族同士団結しなくちゃ!」と言いたくなるような状況です。
源平時代は戦国よりずっと原始的だから仕方ないですね。この身内同士で争う体質が、頼朝の子孫短命につながるとも思うのですが……。
ともあれ、土肥郷で三浦と共に大庭を挟み撃ちにし、一気に鎌倉を目指すことになりました。
清盛が慌てる顔が目に浮かぶだの、目指すは鎌倉だの、ノリノリな頼朝勢ですが、梶原景時の進軍計画と比べるとあまりに雑。
自分達に都合のいいシナリオしか考えてねえじゃねえか!
時政の口調を真似てそう毒づきたくもなりますよ。んもー、なんなのこの計画性の無さは……。
政子が伊豆山権現へ 頼朝は何処へ
北条宗時は、北条政子たちを伊豆大権現に預けるよう、北条義時に言い渡します。
戦から外されるのか?
そう不満げな弟ですが、勘ぐるなと兄が諭す。なんでも頼朝の命令だとかで、土肥郷での再会を誓います。
宗時はこの先、佐殿のそばを片時も離れないそうです。
「お気をつけて」
「案ずるな。俺は戦うために生まれてきた男さ」
そう爽やかに立ち去る宗時が素敵ですね。いざ戦が始まったときの宗時は、これまでよりずっと頼りがいがある。
伊豆山権現に移ると聞かされた政子は、今後は戦で忙しい佐殿に代わって勤行すると納得している。
しかし妹の実衣は、不満顔だ。
姉上だけ行けばいいと言い、「敵が攻めて来るのだ」とりく(牧の方)に諭されると、実衣は「わかって言っていることをわかって欲しい!」んですと。
だだをこねる実衣は、わがままで子どもっぽいようで、なかなか侮れぬものを感じさせます。この得体のしれなさがよいんですよね。
政子が、妹ではなく、妊娠中のりくを気遣うと、むしろ動いたほうがいいとの返事。
実衣は生まれたときからずっとこの家にいるという。別れを惜しむとか、そういうのはないのかと不満を募らせています。
「佐殿が決めたことです」
政子はキッパリ! 妹の不満は完全シャットアウトです。
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夜――暗闇の中、八重のもとに誰かが来て、声をかけています。
「久しぶりだのう」
頼朝です。
「人に見られたら……」
戸惑う八重に「覚悟の上じゃ」と返す頼朝。八重のおかげで山木を討ち取ることができたから、どうしても礼が言いたかったとか。
「どうぞ中へ」
「それはできぬ」
そうやりとりをしていると、八重が江間は伊東に行っていると言います。
「そう?」
八重が盛長にも懇願し、頼朝が家に上がってしまいます。
「達者であったか」
「はい!」
こう言い合っていると、江間次郎の声がします。
「今、帰りました」
伊東に行っているはずが、戻ってきてしまったようです。
「早すぎる!」
そうさっさと立ち去る頼朝。にっこりと微笑む八重。
八重の笑顔があまりに愛らしくて忘れそうになりますが、この人らどうなんですか!
実は頼朝のこの行動は伏線でもあります。
頼朝は気の小ささとゲスさが同居しているような男で、政子が遠ざかると他の女に接近する――そういう悪癖があるのですね。
また頼朝はやりますよ、こういうゲスなことを!
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