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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第9回「決戦前夜」】
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光源氏と称された維盛
治承4年(1180年)10月13日――平維盛を総大将とする平家の追討軍が東海道を進んできました。
この赤い旗が平家の証なのですが、戦国時代の軍勢と少し比べてみますと……。
もっと旗指物が細かいし、馬印や母衣もある。
それだけ進化していて、源平合戦が紅白に別れる小学校の運動会だとすれば、戦国時代は「クラスごとにTシャツ作ろう!」となった高校生の体育祭のようなもの。
凝っているし、複雑化している。この、まだまだ単純な合戦だということが、今回は大変重要です。
平維盛は「光源氏の再来」と称され、出陣の際も絵にも描けないほど美しかったと伝わっています。
濱正悟さんの姿は確かに美しい。花でたとえるのならば、さしずめ鉢植えの胡蝶蘭です。
グリーティングカードがついているけれども、祝いごとが終われば捨てられる。そんな虚しい美しさに思えるのです。
これが西の美しい武士の頂点ならば、東は畠山重忠です。
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重忠は愛馬を背負った伝説が有名です。
花は花でもこちらは山百合。豪華で綺麗だけど、山で手入れをしなくても咲き誇る。
日本だとおなじみの存在ですが、山の中に自生するのにあんなに綺麗なものかと海外では驚かれたといいます。
そういう力強い坂東の美と比べると、何か不吉なものを感じさせるのです。
義時は頼朝に、追討軍は5万とも7万ともいると報告しています。苛立つ頼朝は思わず叫ぶ。
「甲斐の武田はまだ来ぬのか! 武田がいなければこの戦は勝てぬ!」
と、ここで時政が武田信義を連れてきたと報告が入ります。
すぐに時政を席へ通すと、そこに信義はいません。時政は甲斐から連れ出しただけでした。
そしてキョトンとしながら「連れてきた方がよかったか?」と言い出します。
「当たり前だ! 源氏の棟梁が呼んでいるのに!」
源氏の統制が無茶苦茶で取れていません。基本ができていない。
しかし頼朝の伝え方にも問題があったのかもしれません。
これは何も頼朝一人の問題ではなく、平清盛も曖昧で「俺が思うことくらいわかれよ!」という姿勢があり、それでは何かと不備が出てきて当然ですよね。もっとキッチリとした指示が必要です。
宗時の化身となった観音像
武田信義は黄瀬川に陣を敷き、そこで佐殿を待っているとのこと。
出向けと言われて、頼朝はイライラしますが、かといって先にいる武田を呼び寄せるわけにもいかない。
時政が悪いですね。
あんな曖昧に「ともかく甲斐から出てこい」だけでは、こうした抜け駆けを許すことになってしまう。
苛立つ頼朝が思わず怒りを口にしてしまいます。
「舅でなければとっくに放り出している! 政子に感謝しろ!」
これには義時も辛そうな顔で「佐殿!」と嗜め、後で頼朝もきつく言い過ぎたとの反省は見せますが……。
父は戦場では優れているけれども、談判は苦手だと庇う義時。
頼朝と坂東武者のかすがいになれるのは時政しかおらず、頼朝としても辛い立場です。亡き北条宗時が惜しまれますね。
しかし感傷的になっていても仕方なく、その役目は義時が果たさねばなりません。
時政が邸へ戻ってくると、りく、政子、実衣が待っていました。
りくが京風ではなく、梶原景時が用意した坂東風の女装束であることにご注目を。珍しい姿といえます。
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政子が頼朝から譲られた観音像を示します。
「兄上、皆が揃いましたよ」
観音像が宗時の化身となりました。
観音像の前でこれから何が起こるのか。実衣は、これでしばらく皆でゆっくり暮らせると言うものの、すかさず「出陣する」と答える義時。
今度は平家の本軍が迫っている、いよいよ正念場だ。
政子は、佐殿をよろしく頼むと言い、りくは北条の名を挙げるときと語る。そんな妻の言葉に時政が心を掴まれているとわかります。目が潤んでいるように見える。彼も愛情が深いと思います。
夜、佐殿が強く言い過ぎたと反省していると、義時が時政に伝えています。
「別に気にしちゃいねえよ」
頼朝は石橋山の疲れがまだ残っているからイライラしている、だから言わせておくと時政。ちょっとそれはないという顔をしている義時。たしかに結構時間が経ってるってばよ。
義経を偽物だと一刀両断する全成
「出陣じゃ!」
頼朝が声をあげると、坂東武者たちは「おー!」と従います。
しかし、人間というのは気合いだけでどうにかなるものじゃありませんよね。
戦国時代ともなると、そこをしっかり学んでいるので、起請文を書くなり、あるいは人質を確保するなりして、命令に従うようなシステムを作り上げています。源平はまだそうじゃない。
10月16日、頼朝は武田との合流を目指し、黄瀬川へ出陣しました。
今年の大河は映像技術を洗練してきて、スローモーションや早送りを使ってきます。ここでスローにすると、重々しさが出ると思えます。
政子は兄の化身である観音像に祈っています。
一方でりくは、阿野全成と共に開運アイテムを自宅に置くようにしていました。
南西の方角に壺を置くと、運気が高まって健やかな子に恵まれるってよ。彼女は、悪いことが起こないように祈るよりも、よいことを呼び寄せたいんだとか。
ははぁ、そういう考えのもとで時政に接近したんですかねえ。京都で鬱々と過ごすより、坂東で一発逆転よ! そういうノリですかね。
連れてこられた全成は、宗時の事情も知らないようで、無造作に観音像の位置が悪いと動かしてしまう。
この人の占いってなんなんですかね。当たるのか、そうでないのか。あんまり合戦には向いていないとみた。
そして仁田忠常が、表に佐殿の弟・九郎がいると全成に告げてきました。
全成は鬱陶しそうに、九郎は奥州にいるから偽物だと断言します。今回の頼朝のように、名を挙げると急に縁者が来てかなわん……と面倒臭そうに追い払うよう指示を出します。
いやいや、全成さん、そこでこそ占うべきでは?
そう突っ込みたくもなるし、三浦義村あたりだったら、それこそ精密に裏付けを取りそうだと思います。
義経は鐘楼に登り、叫んでいます。
「いいから兄上に会わせてくれ!」
しかし忠常から、頼朝はもうここにはおらず、黄瀬川に出立したと聞いた義経はこうだ。
「よし、黄瀬川だ!」
そして弁慶も、フリスビーを取りに行く犬のように主君を追いかけてゆきます。弁慶がいないと義経は事故でえらい目に遭っていそうではある。よい君臣です。
義経が変人だのサイコパスだの言われていて、私はちょっと悲しい。
彼は純粋に生きているだけなのに、なんでそんなことを言われなければならないのだろう。
でも、そう言われる理由はわかる。菅田将暉さんだからこそ、この義経ができるとも思える。無邪気で、美形で、無茶苦茶。全部いっぺんに出ていてすごい。流石です。
黄瀬川で源氏の両頭相まみえる
10月20日――富士川に維盛が到着しました。
黄瀬川では、源氏の両雄が対面しています。
「兵衛佐殿か!」
「武田殿!」
にこやかなようで、どこかよそよそしい二人。お気遣い無用だの、手を組めば大勝利間違いなしだの言いながら、早速、いつ攻め込むか決めようと言い出します。
敵は大軍だから策を練る必要があると武田信義は言い、合戦の日取りは明後日に決まりました。
源氏の底力、清盛に見せつけてやろうではないか!
そう盛り上がり、酒盛りに……。い、いや……その前に軍議しなくていいの? もっと布陣図でも決めましょうよ。
思わずそんなツッコミが脳内で駆け巡っていると、二人の後について行こうとした義時が、信義に冷たくあしらわれます。
「お前の分はない」
そして後で迎えに来いと言われる義時。
こんな素っ気無く扱われる大河主人公がいていいものでしょうか?
いや、これでいいんですよね。吉田松陰の妹がおにぎりや野菜を作ると大絶賛されるとか(『花燃ゆ』)、そういう強引な主人公補正は不要です。
義時は、上総広常のもとへ出向きます。
なんだかんだで広常は義時が好きで、勝機は見えたとやる気を見せています。頼もしいお言葉だと義時は嬉しそうだ。
義時の言葉は裏表がないように思えるから、誰もが彼の言葉は素直に受け取れるのでしょう。
刀を抜きつつ、総大将をやってやると広常が若干凄むと、陣は武田ありきだと義時が答える。
それにしても……源平合戦って「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」が曖昧ですよね。
寒川町観光協会が、梶原景時は日本で初めて「ほう・れん・そう」を徹底したと主張されていましたが、確かにそうかもしれない。
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こういうのは本来、頼朝が酒盛りの前にでも「武田ありきの陣だぞ!」と念押ししておくべきだし、酒が入る前に陣を決めて通達するすればいい。
だからこそ広常も張り切ってしまい、この前の鎌倉入りみたいなことでは困ると真剣な眼差しです。
思わず義時が謝ると、見栄えが大事なら俺だって整えればそれなりに見えるとまで広常は言う。佐藤浩市さんですから、それはもうそうでしょう。
広常を見ていると心が痛みます。
先週爆笑を誘っていた「みんなで武衛になる飲み会」だって、あれは広常が「武衛」が「佐殿の上位版」という認識ができていないから成立した。
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状況を知っている畠山重忠なら、そうはなりません。
それだけに、広常が真実を悟ったら、ものすごく恥ずかしいし、残酷な話。そういうトリックを使った三浦義村は、やっぱり性格が悪いな。そこも個性だけど。
広常は今までなんでも大体自分の思い通りになってきて、その調子で生きていけると思っていたのに、それが変わってしまいました。
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