伊豆山権現を逃げ出した北条政子たち一行。
潜伏先である秋戸郷の民家に仁田忠常がやってきて、「鎌倉へ向かう頼朝の報告」を聞き、政子と実衣は喜びあっています。りくは何やら外で若い男と談笑しておりますが。
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反乱の炎は、坂東中に燃え上がりました。
大軍となった頼朝勢は、様々な思惑を抱えた巨大な寄せ集めとして、鎌倉を目指しています。
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焦る清盛 呑気な宗盛
地元民に匿われていた政子たち――本作では、このように民が源氏に対して好意的である描写がしばしば出てきます。
平家の悪政に対する不満があったのでしょう。そんな燃料があればこそ、炎は燃え盛る。逆に、民の反発があると、進軍が思うようにいかぬこともあります。
上総広常を先頭に、進軍する坂東武者たち。
三浦義村が、義時に向かって「並びを考えたのか?」と確認しています。義時がそう応えると、佐殿のお気に入りは大変だとニヤニヤ。
今週も義村は、“友達がなかなかできなさそうな奴”感が満載で素晴らしいですね。
手伝ってくれと言われても、そもそも佐殿を信じていないと断る。いや、もうちょっと他に言い方ないんかい? そう突っ込みたくなってこその義村です。
同時代人からも「なんかアイツよくわからなくてキモい」と言われていたそうですし、そういう個性を味わえていいですね。
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かくして武蔵野に入る頼朝勢、都には、まだその規模は伝わっていません。
平清盛は、息子の平宗盛に追討軍の出発を聞くと、明後日の朝とのこと。なんでも必勝の吉日を選んでいたそうです。
勢いづいた軍勢は日に日に大きくなってゆく!
そう焦る清盛は、追討軍の軍勢が一万と聞き、さらにイラだちます。
「我らは官軍ぞ! 道中その倍は集めよ!」
“官軍”という単語が出てきました。
この言葉の威力は、源平時代より『青天を衝け』の舞台である幕末の方が効き目があったでしょう。 こういうところに人間と思想の関係が現れます。
そして、清盛が賢くて、宗盛が愚かというのも単純な決めつけかもしれません。
清盛は経験と感覚で身につけた危機管理をしていますが、そういうノウハウは書き記すなりして、伝達しておくべきでした。
特に日宋貿易に熱を上げているならば、『孫子』でも流行らせておくべきでしょう。
後世の武田信玄はそれができたからこそ、強かったのだと思います。
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後白河法皇をたしなめる丹後局
後白河法皇は、側近の平知康から追討軍のことを聞かされ、頼朝もこれまで……と言われて駄々をこねます。
「嫌じゃ! 嫌じゃ!」
救いの手を差し伸べるように、寵姫の丹後局が、勝つ手立てがないのか知康に聞く。
と、信濃(木曾義仲)と甲斐(武田信義)と手を結べば勝ち目があるとの返答。
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「それじゃ!」
後白河法皇はそう喜びますが、どうも源氏は互いに信頼関係ができていないという。
「嫌じゃ!」
「頼朝はお諦めになったらいかがですか?」
丹後局が宥めると「えーい! えーい!」と暴れ出す後白河法皇。頼朝たちの弟もどこに行ったのかわからず、後白河法皇はご機嫌斜めです。
どうしちゃったの法皇様?
視聴者がそう感じるのは、頼朝の夢、いや脳内にいる法皇の姿を知っているからでしょう。
実際には頭の切れる丹後局が動かしている。これはドラマの創作でもなく、当時から「あの楊貴妃の紅唇のいいなりだ」と評されていました。
後白河法皇も、今様(いまよう、流行歌)にハマりすぎて喉を潰したほどで、熱中しやすい変わったところがある人物ですからね。
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丹後局を魔女とするのではなく、聡明極まりな女軍師にする。それが本作の挑戦です。実際、ルイ15世とポンパドゥール夫人など、こういう女性は世界を見ても実在しました。
鈴木京香さんがこれまた素晴らしい。
お綺麗なのはわかっておりましたが、この圧倒的な聡明さ。北条政子と渡り合う女性がまた一人登場ですね。
狂気の天真爛漫 義経
富士の見える草原で、源義経が弓を引いています。
兎を仕留め、弁慶が誉める。今夜は兎汁だ!と笑顔で、後はお供におまかせです。
と、そこへ頭に布を巻きつけた野武士が出てきます。
なんだかRPGのように坂東武者が出てくる世界観ですが、そもそもRPGは中世の世界がモデルになることが多い。
出くわす相手を倒すと経験値、金、アイテム、食糧が手に入ることもある。倒すのは化け物ではなく、動物や人間なのですけれども。
野武士は、兎を射たのは俺だ、俺の兎だと主張してきます。矢を見ると、確かに赤い記しが……。
兎を渡せと言われて「断る」と言い切る義経。そこで提案します。
「弓を飛ばし、どちらか遠くへ飛ばした方の勝ちだ」
かくして義経と野武士が弓比べをするわけですが……。
キリキリと引き絞り、遠くへ飛ばし得意になっている野武士に対し、さぁ、義経の番! 弓の腕はさほど強くないはず……と思ったら、突如、相手を射殺しました。
しかも、その屍を踏みつけ、何事もなかったかのように矢を抜く義経。
「いくぞ」
あっさりそう言い切ると、弁慶は「“御曹司”ならば真っ向勝負でも勝てたのではないか」と戸惑っています。
カラッと笑いながら無理だと言い切る義経。しかも「俺の矢はこっちだった」と野武士の言い分が正しいことを確認している。
ここで義経が、屍に合掌でもすればいいんですけどね。
実際はこんな調子ですから。
「そうだ! 富士の山に登ったことがある人! 行こう! まずは富士の山だー!」
「待たれよ御曹司ー!」
弁慶がそう止めに入ります。後白河法皇も精神年齢が幼いと思いましたが、こちらもそのようです。丹後局と弁慶が引率の先生のようにも思えてきました。
それにしても、菅田将暉さんよ……。明るく無邪気で愛くるしいほどですが、この義経、相当酷いですよね。
野武士が正しいのに、騙し討ちで射殺。しかも全く反省していない。
亡骸をちゃんと埋葬するとか。みんな空腹ですぐに出発したいとか。野武士が極悪なヤツだったとか。
そういう理由があればいいのに、そうではないらしい。ただ自己都合のために、虫ケラのように相手を殺した。そのあと、はしゃいで富士山登山に向かってゆく。
天才戦略家とは……要するに、人間の大量殺戮を効率的にこなすということです。
この天才は、やはり“天災”でもあるようです。
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弁慶も弁慶です。あんなにも目を輝かせて義経に付いていくのは、もう何かを超越しているんでしょう。
御曹司という呼び方からは、まっすぐな愛というか、忠義というか、そういうものがあってもう感動してしまいます!
そうそう、義経は何か面白そうだったり、気になるものがあると、飛び出して走って行ってしまうんですね。
現代ならば、道の向こうに何かを見つけて、車が来ていようが飛び出しかねないタイプです。
重忠の降伏に対し義盛と義澄は?
岡崎義実が、何やら義時に話しかけています。
鎌倉の“亀谷”で、頼朝の父にあたる源義朝の御霊を祀ってきた。だから御所はそこにして欲しい。
「佐殿にお伝えしておきましょう!」
義実は上機嫌で応えますが、安請負をすると苦労するぞと義村がチクリ。彼は絶対にそういうことはやりそうもないですよね。
するとそこへ土肥実平が大変なことになったと告げてきます。
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畠山重忠が降伏してきたとのこと。
しおらしい表情ながら、どこか凛とした重忠。
「さぞや厚かましい奴と思っておられることでしょう」
義時に丁寧な挨拶をします。頼朝軍にとっては喜ばしいことではありますが、全員がそうでもなく、義時は「俺がなんとかする」と返します。おいおい、また請け負ってるよ!
「かたじけない」と、やはり丁寧な重忠。こういう素直さがいいですよね~。
そんな重忠に向かって、しばらくは目立たぬようにと告げ、平家との戦になればきっと目立つことはあると続ける義時。
地味とか頼りないなんて言われたりしますが、こういう潤滑剤がチームにいると、うまく回ってよい。強い集団には必須の存在です。本人は苦労しますけどね。
出演者のインタビューを呼んでいると、ともかく小栗旬さんは誉められている。
顔がいいとか、演技がうまいとか、そういうことだけでなく現場をよく盛り上げてまとめているのだそうです。義時と一致しますよね。だからこその起用ではないかと思えてきます。
重忠の降伏に対し、案の定、和田義盛が怒り狂っています。断じて許さん! だってよ。
重忠の父が清盛に仕えていて、平家に敵対するワケにはいかなかったという事情を説明されても、首を刎ねてやると怒っています。
というか、そもそも三浦義澄と義村は重忠との戦闘を回避しようとしたのに、義盛のせいで衝突しているんですけどね。
仲良く! 仲良く! そう実平からなだめられます。
三浦義澄にしても、重忠は父・三浦義明の仇です。それでも忘れると彼は言い切る。大義のためにはそうするのだと。
これには千葉忠胤も「よくぞ申した」と誉めています。頼朝に平家方の生首土産を届けたとはいえ、温厚でまともな方です。
しつこい義盛は、それでも追討軍がくれば裏切ると不満そうですけどね。
しかし、彼も三浦氏の出自であり、一族の上には義澄がいます。
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義澄が目を光らせていれば、義盛も重忠を襲ったりはできないでしょう。
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