鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第9回「決戦前夜」

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酒に飲まれる時政

和田義盛も猛っています。

佐殿が武田と酒を飲んでる! 俺らとは一回しか飲んでないのにぃ!

時政もこれには「なんだと!」と動揺。義澄は「酒はもらった」といなします。

義澄は“商店街の気のいいおっさん”として佐藤B作さんは演じているそうで、善良だし、人徳があるし、賢い。

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水で薄めてあるに決まっている! と怒り冷めやらぬ義盛は、そう言いながらも酒を飲んでいる。

しかも、重忠が合戦の打ち合わせがあるんでしょ、と理解を示しても、なんで俺らに相談がないのか!と苛立っている。もうなんなんだよ。

重忠は陣立てをいちいち相談していては埒があかないと理解し、義盛は「なんだと!」とムッとしている。なんだか義盛と重忠がいいコンビになっていますね。

賢い重忠はこうも付け加えます。

「とはいえ、我ら坂東武者がないがしろにされるのはいただけませんね」

そこで義澄が時政に「お前の出番だ」と告げると、「よっしゃ、任せておけ!」と豪語する時政。

頼朝と信義の酒盛りの席へ入っていくと、酒を勧められてこうだ。

「ほれほれほれほれほれ!」

言われるまま酒を飲み干す時政を見て、義盛はますます猛っています。さすがに義澄も「自分が取り込まれてどうするのだ」と呆れるばかり。北条だけが取り込まれても意味がない。

すっかり出来上がった一同を、義時が迎えにいくと、ベロンベロンになった父までいました。

時政が使えない!

やっぱり兄上がいればなぁ……。死んで悲しいだけでなく、有用だったからこそ、宗時の喪失が惜しまれます。

彼は勢いがありすぎるところはあったけれど、だからこそ人を団結させる才能がありましたから。

 

武田が抜け駆け

その日の深夜――安達盛長が頼朝を起こします。

なんでも富士川の陣に武田が進軍しているとか。

明後日ではなかったか!

すっかり出し抜かれてしまった頼朝は、慌てて軍を出そうとして、いったん落ち着きます。武田は功を焦っていて、釣られても混乱するだけだから、夜が明けるまで待つ。

こう言うやりとりを見ていると、この先、頼朝が梶原景時を重用する理由も想像がつきますね。

もしも景時がいれば、状況を分析して最善最良の答えを素早く出してくるでしょう。頼朝自身はそこまで戦上手ではないので、景時は便利です。

いや、そもそもが景時がいたら、頼朝を酒宴に行かせなかったかもしれない。

景時が切実に必要です。景時のあの顔、あの声、あの所作、あの知能。すべてが懐かしくなりましたよ。

そのころ義時は武田軍にいました。

信義に、夜討ちをかけるつもりか?と問いただし、お待ちいただきたいと伝えると、駿河目代・橘遠茂の首桶を見せつけられます。

本作の人物は、ルンルンしながら生首を披露する。そういう時代なんですね。

信義は前哨戦である【鉢田の戦い】についてざっと語ります。平家方の目代を倒したから援軍の望みは潰えた、と。

「どうじゃ! 全てはわしの目論見通り! 頼朝を出し抜いてやったわ! ふはははは!」

そう聞かされ悔しそうな顔をするしかない義時。言い返すこともできません。

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ちなみに戦国時代ですと、抜け駆け行為等は禁じられていたりします。

源平合戦の味方同士の騙し合いを例に挙げ、

「うちの家でこういう味方を騙す真似をするのはダメだぞ!」

と、わざわざ掟を作っていることもありました。

敵はともかく、味方を騙すとなると収拾がつかなくなりますからね。「敵を騙すにはまず味方から」という言葉は、実践には移さない方がよいものです。

 

水鳥の音に馬が驚き軍は総崩れ

平維盛軍を前にして、川べりにいる三浦義澄北条時政

義澄は、幼馴染である時政の目を覚ましたい様子で語ります。

目の前の敵は平家の本軍であり、これまでとはまるで違う相手である。

しかし時政は、幼い頃の川遊びを思い出すってよ。

これも教育の差を感じます。

足利学校なり、藩校がある時代ならば、幼児期からルールを叩き込まれます。

会津藩の什の掟には「ならぬことはならぬ」という言葉があり、思考停止だのなんだの言われますが、時政みたいな子の教育にはうってつけです。

義澄はイライラしながら頼みます。

「四郎、頼むからもう少しちゃんとしてくれ」

それでもふざけた態度の時政。もう前とはちがう、大勢の坂東武者の命がかかった戦いだ、己が何をすべきか考えろ。そう説得しても、どこかマイペースなのです。

「しっかりしてくれ、四郎時政!」

義時がこの様子をハラハラしながら見ています。また胃が痛くなりそうだ。

敵軍の目の前で、さすがに危ないから、義時も二人に戻るよう声を掛けました。武田が夜討ちをかけるのに、味方で足を引っ張ってはまずい。

ここも父子の差を感じますね。義澄は我が子の義村の知恵を信頼していて、確認を取って行動している。それなのに時政はぐずぐずしている。

義澄は呆れ返ってこう言います。

「この世で一番見苦しいのは何か知っているか? しょげかえっているジジイだ」

ここで時政はこうきた。

「次郎、俺のほっぺたを思い切りぶん殴ってくれ! 頼む!」

義時が困惑する中、義澄が殴ると、時政はこう返して殴ります。

「やりおったな!」

ばかやろう!

思わず声が出る中、おっさん同士のしょうもない殴り合いに……。そして義澄が水に倒れ、大きな音を立ててしまうと……水鳥がバタバタバタッ!

何万羽もの鳥が一斉に羽ばたき轟音となって響き渡りました。

すかさず馬の顔が映ります。馬は慎重ですから突然の大きな音が苦手。

馬が驚くと、それが人にも伝播し、美麗な大将である平維盛も動じてしまう。

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「どうした?」

「少将様、お逃げください!」

「なにっ!」

敵か、味方か、それとも頼朝か?

赤い旗が無惨に倒され、平家軍は総崩れになります。

 

敵を追わない坂東武者

いわゆる富士川の戦い

平家にとっては悪い要素が重なりました。ざっと分析しますと……。

・維盛の経験不足

→清盛まで行かずとも、もう少し慎重な将であればもっと落ち着いて行動できたかもしれない

・士気の決定的なまでの低下

→援軍は期待できない、兵糧もない。数だけはいても、中身はスカスカだ

・信賞必罰が曖昧である

→『麒麟がくる』では、松永久秀が無断で陣を離れたことに対し、明智光秀がとんでもないことだと焦っていました。

戦国の織田家では、持ち場を勝手に離れただけでも処罰される、そういう信賞必罰があった。

そういうことがまだできていないから、勝手に持ち場を離れてしまう。

将兵の質はあるけれども、それ以前に軍としての統率も何もあったものではなく、これでは到底勝てません。

そして、これについては源平どちらも曖昧だったりします。

いずれにせよ頼朝軍にとっては願ってもない展開。

平家が総崩れになったと盛長から聞かされた頼朝は、追撃だ! 武田に先を越されるな!と張り切っています。

しかし……。

同時に坂東武者の士気も低下しきっていました。

京へ向かったら困ると皆やる気がない。追討軍を討伐して終わりだと思っていたとか。

なぜか?

兵糧不足でした。

もうあと十日しかないとか。尽きて分けてもらっているとか。三浦義澄も、千葉常胤も、土肥実平もそう言い出します。

義時が、戦には勢いが必要だからと言い募っても、義澄は「所領を守るために立ち上がった」と言うだけ。

平家は二の次――それを頼朝に伝えて欲しいと言います。

周囲の坂東武者も同意しているのです。

義時はわかりにくい人物かもしれない。あんなに優しく、米の収穫を気にしていたのに、今では平家を倒すことにこだわっている。

どうやら彼は兄・宗時の理想にすっかり取り憑かれているようです。

思わず義村に相談すると、すかした口調でこうきた。

戦は難しい、女と一緒でどう転ぶかわからない。

ってよ。

カッコつけてる場合かよー。と、突っ込みたいけれども、本人からすれば「いや、八重さん見てみなよ」となるのかもしれません。

女というより、義村は人間の感情そのものが理解しにくいのかもしれません。精緻な細工物じみた、そんな己の計画に挟まる砂つぶ――邪魔で厄介なもの、それが感情ってやつ。

義時が、今は戦うべきだと悔しがっていると、義村が逆に問いかけてきます。

「お前はどっち側なんだよ、坂東か、頼朝か?」

「決まってるだろ、俺も坂東武者だ」

「だったら手を考えろよ。お前はいつもそうだ。皆にいい顔して安請負いしてばかりじゃねえか」

義村にそう言われた義時は、思わずムッとしています。

二人の対比は面白い。互いに、自分にはないものを持っているとわかっています。

義時は、義村ほど理詰めでビシバシと進められない。一方で義村は、相手の感情を取り持ってバランスをとるなんて無駄でくだらないと思いつつも、それはできない自分ゆえの逃避だとわかってもいる。

ゆえに組み合わせるといい。お互い便利だ。幼いころからそれがわかっているから、なんだかんだで仲が良い。

義村って、感情なんてくだらないと思っていて、自分の本心すら隠して見せなくて、自分でもワケがわからなくなっているかもしれないけど、時折ふっと素の感情が出てしまうと、その思いが激しくて濃い。

そういう面白さがある。

山本耕史さんにしかできない役を、三谷幸喜さんが丹念に描き、劇中でも随一で興味深い。義村は可愛げがないけれども、組織構成員は、すべて可愛げがある必要もないわけで。

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