鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第9回「決戦前夜」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第9回「決戦前夜」
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義時は広常を動かそうと説得するも……

周囲の坂東武者にそっぽを向かれた義時は、頭をフル回転させたのでしょう。

上総広常に追撃の提案しています。

残った兵糧を集めて計算し、残りが七日ならその日数で京都の上のはどうか。

「こんなに愉快なことはない」と言うあたりに、広常を動かそうとする義時の工夫が見て取れます。

義時は広常と接するうちに、その自尊心や求めるものがわかってきた。功名をあげる機会に飢えていると分析して、そう刺激したのでしょう。

しかし、相手は乗ってきません。流れが変わったと諦め顔です。

聞けば留守の間に、北の動きが怪しくなってきたそうで、以前から折り合いの悪かった常陸の佐竹義政が狙ってきているそうです。

そりゃそうですよね。二万を率いる連中が目の前からいなくなれば、佐竹も動く。ただ、事前に大庭や伊東と連携しておけば、もっとスムーズに事を運べたでしょう。

義時の読みにも限界がありました。

広常だって所領が大事です。

義時には、こんな言葉を提示したい。

強弩の末、魯縞(ろこう)に入る能わず

強い弩が放った矢でも(勢いが衰えたら)、薄い絹すら射抜けない

勢いがあっても衰えたら無力という意味です。

『史記』が出典で、かつ諸葛亮が曹操の遠征軍について述べた時もこの言葉を使いました。遠征軍は移動だけでエネルギーを使うから、それだけ弱くなるということですね。

そもそもが前提として、飢饉で合戦したらいけません。ヘロヘロになって引き返すのは、この場合、正解です。

そしてこのことを義時が覚えているとして、後に京都へ向かうことに危惧感を覚えるのであるとすれば、伏線としてよくできているのかもしれません。

平家だって、水鳥程度で大敗とは情けないけれど、遠征で疲れ切っていたのであれば、説明はつきます。

なんだかわけのわからない富士川の戦いの顛末ですが、消耗しきっていた上に、兵法が成熟しておらず、統制が取れていなかったのであれば致し方ない、と。

 


「兄上! 兄上がいる、兄上だ、兄上だなあ!」

頼朝も悟りました。

坂東武者の助けがない限り、進軍はできない。

一日も早く清盛の首を取りたいのに、この機を逃せと言うのか!

そう悔しがる頼朝に時政は言います。

坂東武者に大事なのは所領と一族だ。清盛はどうでもいい。所領がかかっているから戦うまで。そこのところをお考えくだされ。

「戦で命をはるのは、わしらなんだ!」

「時政、よう言うたな」

「ご無礼をお許しくだされ」

頼朝も何か思うところがあるようで、武田も撤退したと報告が入ると腹を決めます。

「致し方ない。鎌倉へ帰ろう」

「ありがとうございます」

かくして鎌倉撤退が決まります。

しかし、理屈はわかっても感情は整理できないのか。頼朝は「小四郎!」と義時に呼びかけます。

「おまえはわしと坂東なら、どちらにつく?」

義時は迷っています。義時のように裏表がない人間が迷うと、それだけでもう、相手の心はざわつく。

八重はそこにいるだけで周囲がざわつく、そんな罪な女だと思った。義時って、そういう罪な男なのかもしれない。

本人にはその気がないのに、周りが勝手にこの人に好かれたいと思ってしまうような。そんな魅力の持ち主です。

頼朝はこう返します。

「もうよい。とどのつまりはわしは一人ということじゃ。流人の時も今も……」

思わず寂しげに力が抜けてしまう頼朝。こんなに哀しい頼朝は今まで見たことがなかった。

そこへ盛長が呼びに来ると、「あれがおったか」とホッとしたように言います。そんな風に言われる盛長もなんだか……。

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それにしても、頼朝よ。あんなに囲まれて酒を飲んだりしつつも、孤独感を味わっていたんですね。

と、そこへ佐殿に会いたい若武者が来ているとの報告が。

九郎義経――。

その名を聞いて頼朝は、九郎は奥州の藤原秀衡に養われていると聞いていると返します。

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そうして会うのを断ったはずなのに、自らやってきた義経。

「兄上ー! 兄上ー!」

一方的に自己紹介を始めます。

兄上の挙兵を聞いて奥州から馳せ参じました! ずっとこの日を待ち焦がれておりました!

そしてこうだ。

「兄上! 兄上がいる、兄上だ、兄上だなあ!」

オイオイと泣き出してしまう。

はー、つらい……。この野生動物のような愛くるしさ、誰かと分かち合わないとつらい!

この場面の写真に映る義経は、まるでフレーメン反応を起こした猫のようで動揺しました。人というより、動物のような愛くるしさがある。

「顔! 顔! 顔そっくり!」

はしゃいで叫ぶ義経に対し、頼朝は困惑しながら「そうかな」と返します。盛長も同様に「いや……」と困惑するばかり。

「そうだ! 御館から兄上への文がございます!」

御館(みたち)とは奥州藤原氏当主のこと。ワイルドな義経も、ここでは頼朝の前に跪いて渡します。

文を読み、感極まっている頼朝に対し、義経が思いを訴える。

「父上を殺し、母上を奪った清盛への恨みを、忘れたことは片時もございませぬ。兄上とともに必ずや、必ずや、父上の仇を討ちとうございます!」

「九郎……九郎……」

「兄上のためにこの命捧げます!」

感極まって抱き合う兄弟。

「兄上!」

「よう来てくれた!」

「兄上!」

「よう来てくれた!」

兄弟は泣きながら抱き合っています。その姿を義時は見ているのでした。

頼朝は、坂東武者を籠絡していた時とは声音がちがいます。

一人きりで孤独を味わってしまう――そんな頼朝の前に、わかりあえる身内が駆けつけてきた。

孤独を味わう気持ちに入り込んできた義経は、天からの恵みのように思えたのでしょう。

そんな大事な弟を、なぜ、兄は討つのか?

そのこともこれから見通したいと思います。

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MVP:北条時政

政子の父親でなければこんな対応ではなかった――という頼朝の叱責はきつい。

けれども仕方ない。

そう思いませんでしたか?

私は仕方ないと思えました。

しかも、その叱責後に、水鳥を怯えさせるわ、頼朝が納得する坂東武者の理論を告げるわ、なにがなにやらわからないまま大活躍ですよ。

こういう作劇もありなんですね。

これはもう時政しかいない。そう思える活躍でした。

演じる坂東彌十郎が素晴らしいのでしょう。

共演者が皆さん大絶賛するけれど、理由はわかります。

ものすごく考えて演じているのだろうけれども、何も気負わずスルッとできているように見えます。

天衣無縫はこういうことかと思う。

映像が初めてで苦労していると仰られても信じられないと思ってしまう。

圧倒的な魅力がある、それが本作の時政です。

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総評

今週は超絶技巧が光ります。

扱いが難しい八重をうまくおさめてきました。

八重はなんなの?

そんな問いかけはきっとあり、私は慈愛の人だと思う。

江間次郎へ、父・祐親へ、我が子・千鶴へ、頼朝へ。

どの愛もまっすぐで混じり気はない。江間次郎に対しては冷淡だったけど、ここにきて愛を見せました。

富士川の顛末も見事でした。

水鳥に驚いた無様さでなく、近年、実は武田信義主体の勝利と言われている。それをうまく反映させた描写です。

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そして黄瀬川の対面――「ネットで号泣」みたいな記事は好きじゃないし、大河を見て泣いたとは言いたくないのですが。

今回は何度もこの兄弟対面を見て、しかもそのたびティッシュを鼻に当てました。

まさに名場面。

兄弟の対面に疑いを挟む側に主人公・義時が回っているのも面白い。

いやでも、これは、もう、感動した。

頼朝の孤独がこれでもかと伏線で示されて、そこへ義経がやってくる。

義経を厚遇したのは、藤原秀衡の勢力目当てともいうけれど、こういう解釈もありではないでしょうか。

大昔に読んだ『義経記』を実写化されたようで、いや、そうではない。

義経像はきっちりアップデートしていて、この義経は猛獣が人里におりてきて、駆除しなければいけなくなったようなものだと思います。もちろん、かわいそうなのはそうだ。

そう上書きする本作は、凄まじいと思う次第です。

※著者の関連noteはこちらから!(→link


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文:武者震之助(note
絵:小久ヒロ

【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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