鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第36回「武士の鑑」

2022/09/19

畠山次郎重忠、謀反の兆しあり――。

全ての御家人に、そんな命が下されました。

あの三浦義村ですら若干困惑しているのですが、北条時政がしれっと「ようわからんが武蔵で兵を整えている」と話を進めます。

鎌倉殿をお守りするため、これより畠山一族を滅ぼす!

もはや義村も、その命令に従うしかありません。

時政は狡猾です。爺様(じさま)こと三浦義明の仇討ちだとして三浦一門をけしかけている。

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義村は三浦一門をあげて討つと返しますが、同じく三浦一族の和田義盛は困惑しきり。これだけ長くいると情が移ってしまう。次郎って奴は見栄えはいいし、頭も切れる。

そう褒めてからこう続けます。

「何ていうか、自分と同じ匂いを感じるんです」

訥々と的外れなことを言う義盛には構わず、先へ進めるよう促す義村。

感情に流される義盛と、感情を一切断ち切って進む義村がそこにはいます。同族、同時代、似たような環境でこうも違うとなると、先天性の個性があるのでしょう。

では、どうやって重忠を鎌倉まで誘い出すか。

まずは息子の重保を由比ヶ浜に呼び寄せる作戦としよう。

義村がそんな提案をします。

そう、実は物騒な「鎌倉の浜」です。

今でこそ湘南リゾートのイメージが強い由比ヶ浜ですが、この浜では結構人骨が発掘されます。

当時から「処刑あり、火葬あり」といった調子で、かなり大量に出てくるんですね。

そもそもビーチリゾートとは、明治以降のヨーロッパから輸入した概念であり、東京からほど近い鎌倉は、この際、心霊現象なんてどうでもええわ、と観光地にされたのです。

今年の湘南は、爽やかなイメージではなく日本版『ゲーム・オブ・スローンズ』こと『鎌倉殿の13人』観光を展開していて、なかなかシュールなことになっていますね。

さて、由比ヶ浜と人骨の関係は、本日の豆知識にでもしていただき、話を戻しまして……。

その場には、重忠と同じく時政の娘婿である稲毛重成もいました。

時政から畠山重保を呼び出す役を命じられ、戸惑っています。

しかし目の前に「武蔵の惣検校職」をチラつかされ……乗り気になってしまう。

 


義時の継室・のえは早くも出産へ

かくして戦術は確定しました。

まず稲毛重成が、畠山重忠の子・重保を呼び出し、三浦義村や和田義盛たちと共に待ち伏せをする。ただし、「決して殺してはならぬ!」と時政が釘を刺したように、重保を人質にして重忠を降伏させる。

果たして、そんな簡単にいくのか……。

まだ気が乗らないと義盛が戸惑うだけでなく、三浦義村の弟・三浦胤義も「小四郎殿(義時)に伝えないのか?」と疑問を呈します。

これに対し義村は、教えたところで板挟みになって苦しむだけだと即座に却下。確かにそうかもしれませんが、周囲から冷酷と見られることを気にしない――そんな義村の個性が出ていますね。

しかし、義時には弟の時房が一通り伝えてしまいました。

「どうしてそういうことになる!」

怒りのあまり拳を床に叩きつける義時。

重忠は戦をする気なんてない!

しかし、父上に押し切られたと時房が伝えています。この我慢強い弟も、何かが溜まってきているようです。

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間が悪いのが北条泰時です。義時の継室・のえが実は悪女であることを伝えようとして、怒鳴り返されます。

「今はそれどころではない!」

時房に出直すよう諭され、廊下に出た泰時は彼女とすれ違うのですが……なにやらお腹を抱えて苦しそうな表情をして、うめいています。

のえこと伊賀の方は、このあと程なくして男児(義時四男・政村)を産んだと記録に残されています。

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実はその誕生日が畠山重忠の命日(元久2年6月22日)だったりします。

上総広常と北条泰時の間にはついては「輪廻転生」したような描写もある本作です。では政村と重忠についても何かあるのか? 現時点ではわかりませんが、あれば興味深いかと思います。

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ちょっと気になるのが泰時の性格です。

彼は空気が読めません。

どこかギスギスした雰囲気で、父も叔父もイライラしているとなれば、察することもできるはず。しかし彼はそういうことが苦手です。一言で言えば不器用なのでしょう。

そんな夫の欠点を補うのが初でしょう。

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これまでも義時と泰時の間でクッション的な役割をこなしてきました。

彼女がいないところだけに、泰時もああなってしまったと。

 


じっと俯くしかできない重忠の妻ちえ

蝉の声が響く中、武蔵の畠山重忠の館では戦支度が整えられています。

愛妻ちえが送り出すのは重忠その人。

「ご無事を」

「行って参る」

優しく微笑み、妻の頬をそっと撫でる重忠。

目には慈愛が宿っています。

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ちえは端正な横顔でじっと俯く。

泣くわけではない。叫ぶこともできない。引き止められない。

でも、これがどういうことか彼女にも理解できているのでしょう。

重忠の妻である彼女は北条時政の娘でもあり、これ以上、残酷なことがあるでしょうか。

視聴者にも、どうしたって哀しい最期を予感させる中、長澤まさみさんのナレーションが始まります。

頼朝死後の熾烈な権力の嵐。

それを制したかに見えた北条が全てを手にしたかに見えた。

しかし、その力に屈しない男がいる――。

武士の鑑、最期の戦いが始まります。

御所では実衣が、鎌倉殿こと源実朝の側で息巻いています。

「畠山が謀反をするなら討ち取れ!」

謀反の証拠はないと冷静に返す義時。

実朝は下文を取り下げたいと戸惑っています。あんな卑劣な騙され方を祖父にされて気の毒ですが……それでも義時は、一度取り下げたら威信に傷がつくと認めません。

これは世の真理かどうか?

一度決めたことを撤回することの是非とは面白いものです。義村あたりなら案外あっさり取り下げるかもしれない。

『真田丸』の真田昌幸はホイホイ方針を変えて、「朝令暮改の何が悪い!」と開き直っていましたね。

そうすることで「この表裏比興が!」と言われることをどうでもいいと割り切れた。性格が左右しますね。彼は少数派です。

実衣が、戦になるのか?というと、実朝は幼い頃から世話になった相手を殺したくないと訴えます。

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重保が討ち取られ重忠は二俣川で立ち止まる

そのころ義村と義盛は、鎌倉に畠山重保を呼び寄せていました。

浜に集まる謀反人を討つため――そういう理由で呼び出された重保は、自身が囲まれ、ただならぬ様子に驚きを隠せません。

「悪いな、謀反人たちとはお前らのことだ。手向かいしなければ命は取らぬ」

「謀ったな!」

重保は、窮地であっさり降伏するような武士ではありません。

結果、命を落とします。

鎌倉では、重忠が近づいているという報告が入り、時政が「重保は殺すなといっていただろ!」と慌てています。

しかし義村も、やらなければやられていたと振り返る。

「坂東武者の名に恥じない、立派な最期でござった」

そう感服したように言う義盛。

命より名を惜しむ、そんな坂東武者の誇りがじわじわと広がり、義盛を包み込んでいるようです。義村はそうでもないのか、どうなのか。

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武蔵から鎌倉へ近づいていた重忠は、二俣川の向こうで進軍を止めました。

重保の死を知り、所領に戻るかどうか話し合っている模様。

りく(牧の方)はすぐに兵を差し向けて、討ち取るように急かしてきます。「このまま戻るかもしれない」という意見など全く意に介さず、すぐに兵を出せとせっつきます。

義時が手勢が少ないと返せば、義村も戦ってもしょうがないと続ける。

そして時房がりくの心に踏み込みます。

「義母上、政範を失った無念はお察しします。けれどもだからといって全てを畠山殿に押し付けるのはよくない」

しかし、りくはますます激昂。自分が憎いから肩を持つのか? 政範が死んでいい気味だと思っているのか?と時房に怒りをぶつけています。

そもそも時房は、北条家の中でも立場が強くありません。異母弟である北条政範の下にいるような立ち位置であるからこそ、りくからも手厳しく言われる。

いずれにせよ状況は最悪です。

りくの苛立ち、時政の武蔵への狙い、そうした感情が絡み合って事態はどんどん悪化。

そこへ泰時がやってきて、重忠が鶴ヶ峰に布陣したことを伝えてきました。

鶴ヶ峰と聞いて時政も気を引き締めています。高台で、敵を迎え撃つには格好の場所である。それを聞いた義村も、重忠が戦う気だと悟った。腹を括って死ぬ気だと義盛が続きます。

「だったら望みを叶えてやりましょう!」

と、りくが再び煽ってきます。

しかしそのとき、時政が突然声を荒げました。

「それ以上口を挟むな! 腹を括った兵がどれだけ強いかお前は知らんのだ!」

通常の合戦は、生き抜くことが念頭にあり、仮に敗戦したとしても逃げ道を考えます。逆に、最後の最後まで追い込むと、敵も死ぬ気になって向かってきて味方の被害も大きくなる。

それゆえ“腹を括った兵”は怖いと時政も怒り、義村も、こっちも本腰を入れるしかなさそうだと覚悟しました。

ここで義時が父の前に座ります。

「お願いがございます」

「申してみよ」

「私を大将にしてはいただけないでしょうか?」

悲壮で、怒りを押し殺したかのような表情で、強く時政に迫る義時。

なぜ自ら大将に?

兄の意図をはかりかねるのか、時房は困惑しています。義村が理由を聞くと義時は「戦にはさせぬ」と……。しかし、いざ畠山が仕掛けてきたら強いと義村は一応の注意を促している様子です。

 


時政・りくの醜悪 義時の覚悟

時政は御所に待機すると宣言。

義盛が泰時に「戦は怖いか?」と尋ねています。

「怖いです……」

「隅っこで見てろ。まずは俺を見て学べ」

そう義盛は請け負います。

りくを一喝した時政は、二人きりになると謝っています。私に戦のことはわからない、的外れなこともそりゃ言うと拗ねるりく。

畠山は必ず討ち取るという時政に、しなだれかかります。

「しい様はいかないで」

「わしは御所に残って鎌倉殿をお守りする」

醜悪の極みを見せつける男女。この姿を覚えておきましょう。

我が身可愛さだけを考えている下劣さ。重忠とちえが蓮の花のような清浄の極みだとすれば、これは泥そのもの。

同じ夫婦愛でも大違いだ!

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なお、この一連の場面で、時政がりくを叱りつけた理由に「女子は黙っておれ!」という言葉はありません。

これは現代への配慮だけでもない。

巴御前のような女武者もいるし、当時は性的な役割分担がそこまで強固ではありませんでした。

本当に畠山は謀反を企んでいたのか?

報告を聞いた北条政子が訝しんでいると、義時はあっさりと「父上が言い募っているだけだ」と認めます。

驚いた顔で政子が口を挟もうとすると、しかしそれでも執権殿がそう申されるなら仕方ないと返す義時。

「姉上、いずれ腹を決めていただくことになるかもしれません」

「どういうことですか?」

政(まつりごと)を正しく導かない者が上に立つ。それはあってはならぬこと。その時は誰かが正さねばならない――そう据わった目で義時は言います。

何をする気か?と困惑するばかりの姉。

「これまでと同じことをするだけです」

そう言い切った義時。

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頭上に天命が降りてきた瞬間に思えました。

思えば源頼朝は、天命との対話を踏まえて行動していて、義時もその境地に今、立ったのです。

血を流してでも道を正せと天命が言うならば、それに従う。その覚悟が宿りました。彼はもう負けないでしょう。

 

足立遠元「執権殿が恐ろしい」

戦場に出向いた義時が、軍議を始めます。

畠山重忠は高所にいて、自軍の動きは丸見えだと確認。

さすがは畠山殿だと泰時が感心しています。

そうはいっても大軍勢で囲まれたら終わりだと三浦胤義が張り切ると、兄の義村が「黙っていろ!」と諭す。兄弟でも性格は正反対のようで、同時に兄として弟を導く気力もあまりなさそうですね。

義盛はわかっていました。

重忠に逃げるつもりはない。暴れるだけ暴れて名を残す気だと。

「死を恐れない兵はこええぞ」

と、いささか嬉しそうに語っています。

ここでちょっと気をつけたいのは、兵法の理解度です。

『孫子』や『呉子』などはこの時代にもあり、そういう書籍を読み、理解したとわかる武士の言葉も残されています。

とはいえ個人差があります。

布陣を理解している重忠と泰時は、漢籍を読みこなしているとわかります。重忠は「武衛」が「佐殿の唐名(とうみょう)」だと理解していたし、泰時は『貞観政要』を愛読していると判明しております。

義盛はそうではないですね……。

義時はまだ望みを捨ててはいません。次郎に会って矛を収めさせるつもりです。

「おさめるかな」

「望みは捨てぬ」

そう言い合う義時と義村。これもこの二人の教養が滲んだ言い回しともいえる。

矛というのは古代中国の武器で、それを収めるというのは漢籍を読んでいれば出てくる言い回しです。時政や義盛は使わなさそうですが、その義盛が重忠との交渉役に選ばれました。

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素朴な奴がよいかもしれない、という理由からで、それでも決まらなければ腕相撲で勝負するってよ。

そのころ御所では、足立遠元が暗い顔を浮かべて、北条政子と並んで座っていました。

尼御台に言うべきではないかもしれない。

そう躊躇していると、御家人の言うことに耳を貸すのが尼御台だと政子が促します。

遠元は言います。執権殿がおそろしい。自分と畠山殿は邪魔で仕方ないと思われている。

震える遠元に対し、「あなたにはそこまで重きを置いていない」と政子が言うと、「それはそれで……」と複雑な表情の遠元です。

相手の目がピクピクしていることに気づいた政子は、所領に戻ってゆっくりするよう告げます。

遠元も同じことを考えていたと言います。

「寂しい思いをさせてしまいますが……」

「寂しくなんかないわ」

「それはそれで……」

やはり複雑な遠元。

政子と大江広元が微笑みあったと指摘されていますが、政子はもう全御家人の母になったようなものなのでしょう。

色気ではなく、ただただ尊い、そんな敬愛がそこにはある。誰もがみんな政子に参ってしまう、魅力に溢れています。小池栄子さんの演技の説得力よ。

遠元は出番が最後です。

武蔵にいながら死なずに退場とは幸運かもしれません。大野泰広さんが親しみの持てる像を実現しておりました。

 

重忠と義盛

義盛が重忠のもとへやってきます。

「お前もいい歳なんだから、やけになってどうする」

「やけではない。筋を通すだけです」

そう言いながら瓢箪を差し出す重忠。

中身は水でした。酒がよかったのかと尋ねつつ、戦の前だからと重忠が答えます。

水でも結構だと返す義盛に、重忠は無念を語ります。

今の鎌倉は北条のやりたい放題だ。武蔵を奪われ、息子は謂れなき罪を着せられ騙し討ちにされた。私だって義時の言葉を信じてこの様だ。

そう語った後、こう叫びます。

「戦など誰がしたいと思うか!」

溜まりに溜まった怒りがついに爆発。

思いの丈を続けます。

ここで退けば、畠山は北条に屈した臆病者だと誹りを受ける。最後の一人になるまで戦い抜き、畠山の名を歴史に刻み込むことにした。

「もうちょっと生きようぜ。楽しいこともある」

「もはや鎌倉で生きるつもるはない!」

「よーしわかった。俺と……」

「腕相撲は、しない」

そう義盛の先手を読み、命を惜しんで泥水を啜っては末代までの恥だと言い切ります。さすがにこうまでなっては、その意気あっぱれだと義盛も納得せざるを得ません。そして戦で決着をつけようと言う。

武人なら当然よ。

「これより、謀反人畠山次郎重忠を討ち取る!」

「おー!」

義盛が戻ると、総大将・北条小四郎義時が全軍に開戦を告げました。

皆が正面から攻めるなら脇を突く――義盛が策を進言すると、一方の重忠もそれをわかっていて「和田殿が横から来る」と備えさせます。

義時は、息子の泰時に、功を焦るなと忠告。まずは戦がどんなものか、その目に焼き付けよと告げています。

「父上……父上は、怖くはないのですか?」

「敵は畠山重忠だぞ。怖くないわけないだろう。あっ! 小便ちびった!」

これには泰時の横にいた鶴丸が吹き出します。

「すぐに着替えを!」

泰時が焦ると、冗談だ!とあわてて訂正する義時です。

ここでも泰時の性格が出ていますね。言われた言葉をそのまま信じてしまい、比喩や冗談が通じにくい。だからストレートにズバズバ言う初とは相性が合うんですね。

「北条……三浦……案の定、和田はいないぞ!」

馬上の畠山重忠が鏑矢を天に向けて放ち、迎え撃ちます。

なんと綺麗な構えでしょう。これぞ坂東武士の鑑かと見入ってしまう中川大志さんの姿です。

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「目指すは……いくぞ!」

 

「手を出すな! 誰も手を出してはならぬ!」

御所では源実朝が、畠山が攻めてくるのかと不安な表情です。

流石にここまでは来ない、と三善康信が安心させようとすると、八田知家は気になることを言います。

御家人は畠山重忠を信じ始めている。

この戦はどう転ぶかわからない。

坂東武者の一人として知家がそう語っても、京都出身の文士である康信には理解できない感覚かもしれません。

そのころ戦場では、義盛の不意打ちがあっさりと見破られていました。

なぜわかったのか?

義盛は慌てふためいていますが、やはり兵法書理解の差でしょう。

進軍の際にズンズン歩いて鳥がバタバタと飛び去っていたら、一目瞭然でバレてしまいます。そもそも重忠は高所に陣取っています。

義時はまっすぐ来る相手に備え、守りを固めていました。

と、そこへ重忠が供一騎を連れて駆け寄ってきます。

刀を構え、馬を走らせると、馬上で斬り合う、義時と重忠。

いったん馬を止め、義時が兜を脱いで泰時に渡すと、重忠も同じく兜を外し、二人は「はっ!」と声を掛け合って、馬で相手に向かってゆく。

次の一刀で勝負はつくのか?

そう思った刹那、なんと義時は馬からジャンプし、重忠に飛びついて地面に落ちます。

周囲に武士や郎党が集まると、あの計算高い義村ですら、こう宣言します。

「手を出すな! 誰も手を出してはならぬ!」

総大将同士が組み合って戦うなんて、それこそ兵法書通りじゃない。

それでもあの義村すら天意に呑まれたように見守るしかない。

泥まみれになりながら組み合う二人。蹴り飛ばし、這いずり回り、拳で相手を殴り合います。

もうこれはただの殺し合いでもない。

拳と血飛沫での語り合いかもしれない。

ただただ、殴り合うことでしか伝えられないことがあるのかもしれない。

とうとう義時に馬乗りになった重忠。小刀で義時の喉を貫いて決着をつけるかと思えました。しかし重忠は手を止め、義時ではなく地面に突き刺す。

そして立ち上がりると、馬に乗ってゆらゆらと去ってゆくのでした。

倒れた義時の目からは一筋の涙がこぼれている。

あれほど端正で優しげな重忠が野獣のようになった。

義時ももう高みにはいられない。

この二人の勝敗は何が分けたのだろう?

天命の差でしょうか。この場面はかなりおかしいように思える。なぜ重忠はとどめを刺さないのか?

私は天命ということにしたい。

重忠を見る義盛も、泰時も、義村も、何かに打たれたような顔になっている。

もう重忠は人ではない何かになったのかもしれない。

こんなにボロボロなのに荘厳です。

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執権を続けるなら首を見るべきだ!

戦は夕方には終わりました。

源実朝のもとへ、時政と時房が勝利の報告。

重忠は、手負いのところを愛甲三郎季隆に射られて亡くなり、間も無く首が届くとのことです。

実朝が報告をねぎらいつつ衝撃を受けています。

そして首桶を持った義時がきて、父に訴えます。

「次郎は決して逃げようとはしなかった……逃げる謂れがなかったからです。所領に戻って兵を集めることもしなかった。戦う謂れがなかったからです」

「もういい!」

「次郎がしたのは、ただ己の誇りを守ることのみ」

目を光らせ、首桶を父の前に突きつけ、あなたの目で改めろと訴えかけます。

「執権を続けていくのであれば、あなたは見るべきだ!」

父上!そう叫ぶ義時です。

誇り高く、己の命より名を守った重忠。そんな巨大な星からすれば、保身に走る時政はなんと小さく醜いことか。

大江広元も、執権殿は強引すぎたと振り返っています。

御家人たちのほとんどは畠山に罪がなかったと語り、八田知家も同意。

ならば、どうすればよいのか?と義時は大江広元に尋ねました。

広元が鎌倉に来てから、頼朝による粛清は苛烈化してゆきました。同時に彼は対処法も考えられます。義時はそのことをつぶさに見てきたからこそ、彼の言葉を聞きたいのでしょう。

「畠山殿を惜しむ者たちの怒りを、誰か他のものに向けては?」

またまた広元が恐ろしい提案をしてきました。

罪を誰かに押し付けよ、とのことですが、では誰に?

「重成に?」

時政が義時にそう言われてギョッとしています。

執権殿をお守りするためだと言われても、乗らねえと時政。重成も娘婿の一人ですから、さすがに時政もバツが悪くなったのでしょう。

しかし、誰かに罪をなすりつけなければ、自分は御家人たちの重圧に晒されるわけで、矢面に立つ覚悟があるのか?と義時に煽られ、口ごもってしまいます。

子は父を超えた。

所詮は保身しか頭にない時政など、猿山の大将に過ぎません。執権になって上り詰めたはずが、小さく見えてきた。いや、それだけ天命が降りてきた義時が大きくなったのかもしれません。

「しょうがねえ……死んでもらうか」

結局、時政は覚悟を決めました。その結果、どうなるのか……。

 

老成できないバカップル

八田知家が、血の気の多い御家人の前で吹聴します。

今回のことは稲毛重成が悪い――。

そう煽ると、御家人たちが沸騰し始め、長沼宗政という、もみあげが一際ワイルドな御家人が怒りを燃やします。

この方は、あの琵琶の名手で、実衣がクラクラした美男の結城朝光、亀の前騒動の時に出てきた小山朝政ときょうだいにあたります。

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なぜ亀の前は政子に襲撃されたのか?後妻打ちを喰らった頼朝の浮気相手

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重成は一体何をしたのか?

御家人たちに急かされ、八田知家が答えます。

執権の娘婿として、ある事無い事を吹き込み、武蔵の惣検校職を狙った、そして討伐に至った――。

哀れ稲毛重成は縄で縛られてしまいます。

「執権殿に聞けばわかる!」と懇願するも、時政は読経するのみ。さっさと終わってくれ、とばかりに無視を決め込みます。

この非道っぷりには、時房すら理不尽だと義時に訴えました。

しかし、それこそが義時の狙いでした。

娘婿である稲毛殿を見殺しにしたとなれば、御家人たちの心はますます執権殿から離れる。これぐらいしなければ事は動かぬ。

「平六を呼べ。あいつにやらせよう。私に隠れてこそこそ動き回った罰だ」

そうあっさりと言う義時。

呆然とする時房です。

引っ立てられ、義村相手に命乞いをし、執権殿と叫ぶ重成の姿が切ない、切なすぎる……しかし、仕方ない。もっといい声で鳴いてくれ。そのほうが効果的なんだ。

「おい、執権殿はなぜお見えにならない?」

「あのお人が殺せと命じたのだ」

「何……」

案の定、単純な長沼宗政は執権殿が来ないことに怒りを炸裂させ、唖然としています。

義村があっさりと重成の首を刎ねたと義時に報告。

もみあげの長沼宗政も義時の狙い通りの配置でしょう。ああいう単純で声の大きな熱血漢を使えば、コトは一気に沸騰します。

陰謀を知らぬりくは、ようやく政範の仇を討つことができたと時政にしなだれかかっています。

おまけに重成の分までしい様に長生きしてもらうとまで言う。それが何よりの供養だってよ。

さすがに暗い顔を浮かべる時政に対して、楽しいことを考えましょう促しています。

畠山もいなくなり、武蔵守にふさわしいのはあなただとけしかけ、所領全ていただこうと企んでいます。

「それはいかん」

時政はその提案のおかしさを理解し、戦で働いた者に与えると言い出します。

「気前のよいこと!」

「わしはな、皆の喜ぶ顔を見ていると、心が和むんじゃ」

そうしみじみと語る時政は、やはり天命が理解できておりませんね。

時政はりくの言いなりだ。悪女とそれに翻弄される男、いわばマクベス夫妻のように思える。

時政とりくの老成できないバカップル。いたずらに歳っただけで、成熟はしていない。

この手の組み合わせは悪女論で語られがちですが、堕落させた女と堕落する男、悪いのはどちらなのか?

時政は優しい。気のいい頼り甲斐のある男。

その本質は不変のまま、しかし低い方へと流されました。

時政をこうも悪くしたのは確かにりくでしょう。

ただし、りくと時政の組み合わせだからこその話であり、要は、両者共に悪いのです。

「和む」という時政の言葉も、サイコパスでもなんでもなく、普通の人間がやらかしがちなよくある過ちでしょう。ダメ大河でもありがちで、具体例を挙げますと、2019年『いだてん』でこんなシーンがありました。

日本統治時代で朝鮮出身の陸上競技選手である孫基禎と南昇竜。

彼らはメダルが祖国ではなく日本のものとされることに悔し涙を流し、それを見ていた日本人の足袋職人がこう言う。

「俺はうれしいよ。日本人だろうが朝鮮人だろうが、アメリカ人だろうがドイツ人だろうが、俺の作った足袋履いて走った選手はちゃんと応援するし、勝ったらうれしい」

それはただの自分の気持ちだろう!

義時風に毒づくとこうなりましょうか。

この足袋職人は足袋を作った自分と、周囲にいる日本人の心情だけを見て、それで喜び「和んで」いる。そんなもの二人の選手や、その周囲からすれば心の底からどうでも良いことです。

時政のこのありえないセリフは、要は小悪党にありがちで普遍的なものなんですね。

2021年の大河ドラマ『青天を衝け』では、渋沢栄一が周囲を笑顔にするようなことを掲げていました。

だからこそ、信頼できない人物だと感じたものです。

「たとえ自分と周囲が血反吐に塗れようが、大目標へ突き進む!」

そんな人物の方が大河ドラマのスケールに相応しいと思いませんか?

歴史劇とはそれこそが醍醐味では?

今年はその点、安心できます。

 

「小四郎……恐ろしい人になりましたね」

鎌倉にとって、もはや害でしかない北条時政。

執権の父を貶めるため、義時はさらに策を練ります。

所領の分配を尼御台に任せると言い、広元もこれには納得です。

別に恋愛感情ではなく、このあまりに尊い何か特別な存在に心酔しています。

広元は色気がある方ではない。

比企能員が設定した宴で美女たちのお酌を受けていてもムスッとしていた。

そんな広元が甘ったるくなるとすれば、それは尊敬できる相手だからです。

「できません……」

政子本人は断ろうとしますが、それでも広元は、尼御台から御家人に所領を与えてやって欲しいと粘る。

自分が口を出せば政(まつりごと)が混乱すると警戒していました。彼女は頼朝の言いつけを心に留めている。なんと貞淑で素晴らしい女性なのでしょうか。

政が混乱してしまうと警戒する姉に対し、義時がこう言い出します。

「恐れながら……既にに混乱の極みにございます。今こそ、尼御台のお力が必要なのです」

「それでことがおさまるのなら」

そう政子が言うと広元も頷き、立ち上がって去ろうとする義時に政子は言います。

「稲毛殿が亡くなったそうですね」

「はい」

「あなたが命じたのですか?」

「命じたのは執権殿です」

「なぜ止めなかったのですか?」

「私がそうするようお勧めしたからです」

唖然とする政子、その前に座る義時。

これで執権殿は御家人たちの信を失った。執権殿がおられる限り、鎌倉はいずれたちゆかなくなる。父上から政から退いていただくためのはじめの一歩であり、重成殿はそのための捨石です。

そう淡々と語ります。

「小四郎……恐ろしい人になりましたね」

「すべて頼朝様に教えていただいたことです」

そう淡々と言い切る弟に、父上を殺すだなんて言わないで欲しいと政子は訴えます。義時は今の自分があるのは父上がおられたからだとそれは否定します。

「そのさき、あなたが執権になるのですか?」

「私がなれば、そのためになったと思われます」

「私が引き受けるしかなさそうですね」

「鎌倉殿が十分に成長なさるまでの間です」

政子にそう言う義時。この対話は重要だと思います。

姉も、弟も、どちらも権力が欲しいわけでもない。

幼主が成長するまで母が政治を行うことを、東洋史では【垂簾聴政(すいれんちょうせい・御簾の向こうで政治を聞いている)】と称します。

政子は仕方ないと折れている。そしてただひとつ、保証して欲しいことを訴えます。

頼家の二の舞にはしたくない。私にはもうあの子しかいない。

我が子を守るために、引き受けざるを得ないと腹を括る政子です。

しかし、実朝の乳母である実衣は、恩賞を尼御台がするなんて聞いたことがないと怒っている。そして姉上の考えそうなことだと吐き捨てる。

いつまでも鎌倉殿をお飾りにしておこうというのだろうけど、そうはさせないと言います。

そう毒づく実衣を止め、私は未熟だと語る実朝。

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義時が、時政に訴状を突きつけています。梶原殿の時の比ではないと煽り、父を相手に凄みます。

「少々、度が過ぎたようにございます」

「小四郎、わしをハメたな!」

「ご安心ください。これはなかったことにいたします。あとは我らでなんとか」

と言って、訴状は破り捨てる。

しかし、執権殿が前に出れば出るほど反発は強まる。謹んでいただきたいと釘を刺しています。

「恩賞の沙汰は? やらせてもらうぞ!」

義時は静かに首を横に振ります。

「すべてご自分の蒔かれた種とお考えください」

何もかも息子の義時にしてやられ、思わず高笑いする時政。

そしてこう言います。

「やりおったな、みごとじゃ!」

7月8日――尼御台の決めた恩賞の沙汰を二階堂行政が読み上げています。

動揺したりくが「執権殿をさしおいて政子がしゃしゃりでるとは!」と怒り、政子が口出しすると政(まつりごと)が混乱すると責めている。自分だって散々引っ掻き回していることは全く無視。

時政は怒り、脇息を蹴り飛ばします。

りくも驚くほど、時政は激怒しているのでした。

 

MVP:畠山重忠、北条義時、そして政子

この三人はそれぞれが天命を体現したように思えました。

不可解に思えた重忠と義時の一騎打ち。

あれはかなりおかしい。

重忠はとどめを刺せたのに、そうしなかったのはなぜか?

天命だと思えます。重忠は相手を殺すよりも、相手の一部に乗り移って目的を達成することを選んだのではないか?

ここで死ぬ運命ではないと相手に見てそうしたのではないか?

そんな戸惑いと悟りを感じました。

義時は吹っ切れました。

もう悩みません。自分がどんなに手を血で染めようが、策略を弄しようが、その結果よりよい政が実現できるならばよい。頼朝が到達していた天命を聞く境地へ到達したと思えます。

では尼御台こと政子は?

彼女こそが麒麟のような気がします。

2年前の大河と言われればその通り。ただ、政子は天命を受けたものを支えて推し出す役目があります。

頼朝は見てきた通りです。

義時のことだって責めるわけでもない。

悟ったように最低限のことを要望するだけになった。天命を受けて世を変えてゆく者を麒麟は見守り、支えるのです。それができなくなったら『麒麟がくる』の光秀のように邪魔なものを排除しますが……。

今回、のえが政村を産んだことが示唆されています。

のえが政村を執権にしようとしたとき、政子はそれを阻止し、泰時にその座を継がせるよう取り計らいました。

その一仕事を終えて政子は波乱の人生を終えています。

古代中国の聖王・堯舜(ぎょうしゅん)にたとえられる泰時を失権の座に送り出してから、生涯を終える。まさに麒麟の人生に思えます。

中世的な天命が見える。そんなドラマです。

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兵形象水――兵は水の流れのように形を変える

畠山重忠は高所に布陣しました。

凡そ軍は高きを好みて下きを悪み、陽を尊びて陰を賤しみ、生を養いて実に拠る。『孫子』「行軍編」

布陣するならば高所にし、低いところは避ける。日向がよく、日陰は避けたほうがよい。水や食料が補給できる場所にすること。

基本に忠実です。

そしてこれも使いました。

兵の形は水に象(かたど)る。『孫子』「虚実編」

兵士の形とは、水のように変化する。

重忠は自分の命と血でもって、義時はじめ御家人の心を変えました。

それまで執権に怯え、顔色を窺っていた御家人たち。そんな水を沸騰させ、牙を剥くようにしてゆきました。

重忠の策を義時が引き継ぎます。

流れを変えるその過程で稲毛重成を犠牲にしたけれども、やむを得ないことだと割り切っている。

義時は流れを変えられた水なのか、流れを変える者なのか?

義時はおそろしい男です。

はじめのころは普通のお兄さんだった。それが兄の北条宗時から坂東武者の世の中を作る思いを託され、頼朝のやり方を見ていく。

そして亡くなってゆく人々から思いを託されてゆく。

そのたびにどんどん強く逞しく大きくなってゆきます。彼はまるでありとあらゆる水が流れ込む大河のように思えます。

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総評

昨年、大河はもう本当に終わったのではないか?とため息をついていました。

その理由の一つが戊辰戦争です。

そもそも渋沢栄一は戊辰戦争で何もしていないに等しい。

ならばせめて彰義隊を率いた渋沢成一郎を取り上げないかと考えましたが土方歳三の横でウロウロしているだけでした。

その土方も、近藤勇を失った痛恨も感じさせず妙に明るい。

そういうノリだけでなく、アクションも酷かった。

戦場では、イケメンが切腹するまで敵軍が発砲せず取り囲み、長いセリフを高らかに読み終えるまで待っている、あまりに陳腐なシーンに絶望感しかなかったものです。

翻って今年です。

畠山重忠が散った合戦シーンは、今までで一番よく、かつ日本の大河でしかできないと思えました。

そもそも日本の時代劇は、『ゲーム・オブ・スローンズ』や華流、韓流ドラマと比較すると、圧倒的に兵力が少ないものです。

実際に動員兵力はそこまで多くないわけですし、兵器性能もそこまで高くありません。

しかし、今回の合戦シーンのように、草原をわらわらと駆けてくる武者はリアルで十分怖い。

日本の時代劇でしか出せない味ではないでしょうか。

他国を真似する必要はなく、自分たちのできる最善を尽くした感があります。

まさか馬からジャンプするとは思いませんでした。

落ちた時は本当に痛そうだし、殴られて歯の間に血が溜まって赤いのが見えるし、殴り合ったせいで頭がぼーっとしている様が伝わってきた。

重忠も義時も鬼のような形相になっていて、泥臭い迫力がありました。

そういう残酷さだけではない、崇高な精神性もある。

先週、三谷さんは『ゲーム・オブ・スローンズ』(以下GoT)をお手本にしていることを指摘しました。

しかし2022年にそれでは問題があります。

2022年はGoT前日譚である『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が配信中です。

私は熱心なGoTファンではあるのですが、どうにも見る気がしません。時系列が前日譚にあたり、どうせ支配者同士が内乱を起こすだけで大変革はないという理由もひとつ。

それに今更ああいう歴史劇は、何かもっと進歩が欲しいとも思える。

そのことをスピンオフを作る側もわかっているのか、新作は難産で企画も何度か流れています。

それは作品の受け止め方にあると思えます。

GoTの魅力とは、頭蓋骨を砕いたり、陰謀を繰り返すだけでもなく、豪華な映像美だけでもない。

命と引き換えにしても崇高な精神性を貫く。

愚直で誠意あふれる人物の高潔な言動と犠牲が見たい。

そうした犠牲の結果、新たな世界も欲しい。

要は「希望」ですね。

そういうものがなく、ただひたすら陰惨なだけでは出来の悪い二番煎じになってしまう。現に『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』にもそうした評価は出始めているとされます。

その点、『鎌倉殿の13人』はポストGoTを狙えると思えます。

ただひたすら陰惨なようで、希望もちゃんとある。

頼朝と義時という、創業の英雄が必死になって道を拓く。

麒麟のように天命を知る政子が彼らを見守る。

そしてそんな世界を見つめる目がある。

どうすればこうした世を変えられるのか、目を逸らさずに見ている北条泰時の姿があります。

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GoTは西洋史ベースで、大河は言うまでもなく東洋史ベース。宗教や道徳観を東洋にあわせつつ、希望を見出してゆきます。

畠山重忠はあんな酷い最期を遂げたけれども、そんな日本らしい希望に満ちた退場でした。

名誉を重んじる心。

名を惜しむ気高さ。

欲望にかられて生きてゆくのではく、高潔な精神性を求めてゆく姿勢は、武士道を先取りしています。

戦術が革新的だった源義経。

政治力や世の中の仕組みが先進的だった梶原景時

忠義の心を知って命を捨てた仁田忠常

時代を先んじているからこそ、命を縮めてしまう――その系譜に畠山重忠もいます。

彼はその命で武士を変えた。

彼のように生きて死ぬことが「武士の鑑」になった。

畠山重忠の流した血の中から、武士の新たな規範が芽吹いてゆく、ただ陰惨なのではなく、希望に満ちた回でした。

それは畠山重忠一人のことでなく、中川大志さんも、大河俳優として新たな道を切り拓いた存在になるのでしょう。

大河にはまだまだこういう芽が出る力がある。

そう示した今回は、紛れもなく希望に満ちた素晴らしいものでした。


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【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

-鎌倉殿の13人感想あらすじ

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