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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第36回「武士の鑑」】
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時政・りくの醜悪 義時の覚悟
時政は御所に待機すると宣言。
義盛が泰時に「戦は怖いか?」と尋ねています。
「怖いです……」
「隅っこで見てろ。まずは俺を見て学べ」
そう義盛は請け負います。
りくを一喝した時政は、二人きりになると謝っています。私に戦のことはわからない、的外れなこともそりゃ言うと拗ねるりく。
畠山は必ず討ち取るという時政に、しなだれかかります。
「しい様はいかないで」
「わしは御所に残って鎌倉殿をお守りする」
醜悪の極みを見せつける男女。この姿を覚えておきましょう。
我が身可愛さだけを考えている下劣さ。重忠とちえが蓮の花のような清浄の極みだとすれば、これは泥そのもの。
同じ夫婦愛でも大違いだ!
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なお、この一連の場面で、時政がりくを叱りつけた理由に「女子は黙っておれ!」という言葉はありません。
これは現代への配慮だけでもない。
巴御前のような女武者もいるし、当時は性的な役割分担がそこまで強固ではありませんでした。
本当に畠山は謀反を企んでいたのか?
報告を聞いた北条政子が訝しんでいると、義時はあっさりと「父上が言い募っているだけだ」と認めます。
驚いた顔で政子が口を挟もうとすると、しかしそれでも執権殿がそう申されるなら仕方ないと返す義時。
「姉上、いずれ腹を決めていただくことになるかもしれません」
「どういうことですか?」
政(まつりごと)を正しく導かない者が上に立つ。それはあってはならぬこと。その時は誰かが正さねばならない――そう据わった目で義時は言います。
何をする気か?と困惑するばかりの姉。
「これまでと同じことをするだけです」
そう言い切った義時。
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頭上に天命が降りてきた瞬間に思えました。
思えば源頼朝は、天命との対話を踏まえて行動していて、義時もその境地に今、立ったのです。
血を流してでも道を正せと天命が言うならば、それに従う。その覚悟が宿りました。彼はもう負けないでしょう。
足立遠元「執権殿が恐ろしい」
戦場に出向いた義時が、軍議を始めます。
畠山重忠は高所にいて、自軍の動きは丸見えだと確認。
さすがは畠山殿だと泰時が感心しています。
そうはいっても大軍勢で囲まれたら終わりだと三浦胤義が張り切ると、兄の義村が「黙っていろ!」と諭す。兄弟でも性格は正反対のようで、同時に兄として弟を導く気力もあまりなさそうですね。
義盛はわかっていました。
重忠に逃げるつもりはない。暴れるだけ暴れて名を残す気だと。
「死を恐れない兵はこええぞ」
と、いささか嬉しそうに語っています。
ここでちょっと気をつけたいのは、兵法の理解度です。
『孫子』や『呉子』などはこの時代にもあり、そういう書籍を読み、理解したとわかる武士の言葉も残されています。
とはいえ個人差があります。
布陣を理解している重忠と泰時は、漢籍を読みこなしているとわかります。重忠は「武衛」が「佐殿の唐名(とうみょう)」だと理解していたし、泰時は『貞観政要』を愛読していると判明しております。
義盛はそうではないですね……。
義時はまだ望みを捨ててはいません。次郎に会って矛を収めさせるつもりです。
「おさめるかな」
「望みは捨てぬ」
そう言い合う義時と義村。これもこの二人の教養が滲んだ言い回しともいえる。
矛というのは古代中国の武器で、それを収めるというのは漢籍を読んでいれば出てくる言い回しです。時政や義盛は使わなさそうですが、その義盛が重忠との交渉役に選ばれました。
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素朴な奴がよいかもしれない、という理由からで、それでも決まらなければ腕相撲で勝負するってよ。
そのころ御所では、足立遠元が暗い顔を浮かべて、北条政子と並んで座っていました。
尼御台に言うべきではないかもしれない。
そう躊躇していると、御家人の言うことに耳を貸すのが尼御台だと政子が促します。
遠元は言います。執権殿がおそろしい。自分と畠山殿は邪魔で仕方ないと思われている。
震える遠元に対し、「あなたにはそこまで重きを置いていない」と政子が言うと、「それはそれで……」と複雑な表情の遠元です。
相手の目がピクピクしていることに気づいた政子は、所領に戻ってゆっくりするよう告げます。
遠元も同じことを考えていたと言います。
「寂しい思いをさせてしまいますが……」
「寂しくなんかないわ」
「それはそれで……」
やはり複雑な遠元。
政子と大江広元が微笑みあったと指摘されていますが、政子はもう全御家人の母になったようなものなのでしょう。
色気ではなく、ただただ尊い、そんな敬愛がそこにはある。誰もがみんな政子に参ってしまう、魅力に溢れています。小池栄子さんの演技の説得力よ。
遠元は出番が最後です。
武蔵にいながら死なずに退場とは幸運かもしれません。大野泰広さんが親しみの持てる像を実現しておりました。
重忠と義盛
義盛が重忠のもとへやってきます。
「お前もいい歳なんだから、やけになってどうする」
「やけではない。筋を通すだけです」
そう言いながら瓢箪を差し出す重忠。
中身は水でした。酒がよかったのかと尋ねつつ、戦の前だからと重忠が答えます。
水でも結構だと返す義盛に、重忠は無念を語ります。
今の鎌倉は北条のやりたい放題だ。武蔵を奪われ、息子は謂れなき罪を着せられ騙し討ちにされた。私だって義時の言葉を信じてこの様だ。
そう語った後、こう叫びます。
「戦など誰がしたいと思うか!」
溜まりに溜まった怒りがついに爆発。
思いの丈を続けます。
ここで退けば、畠山は北条に屈した臆病者だと誹りを受ける。最後の一人になるまで戦い抜き、畠山の名を歴史に刻み込むことにした。
「もうちょっと生きようぜ。楽しいこともある」
「もはや鎌倉で生きるつもるはない!」
「よーしわかった。俺と……」
「腕相撲は、しない」
そう義盛の先手を読み、命を惜しんで泥水を啜っては末代までの恥だと言い切ります。さすがにこうまでなっては、その意気あっぱれだと義盛も納得せざるを得ません。そして戦で決着をつけようと言う。
武人なら当然よ。
「これより、謀反人畠山次郎重忠を討ち取る!」
「おー!」
義盛が戻ると、総大将・北条小四郎義時が全軍に開戦を告げました。
皆が正面から攻めるなら脇を突く――義盛が策を進言すると、一方の重忠もそれをわかっていて「和田殿が横から来る」と備えさせます。
義時は、息子の泰時に、功を焦るなと忠告。まずは戦がどんなものか、その目に焼き付けよと告げています。
「父上……父上は、怖くはないのですか?」
「敵は畠山重忠だぞ。怖くないわけないだろう。あっ! 小便ちびった!」
これには泰時の横にいた鶴丸が吹き出します。
「すぐに着替えを!」
泰時が焦ると、冗談だ!とあわてて訂正する義時です。
ここでも泰時の性格が出ていますね。言われた言葉をそのまま信じてしまい、比喩や冗談が通じにくい。だからストレートにズバズバ言う初とは相性が合うんですね。
「北条……三浦……案の定、和田はいないぞ!」
馬上の畠山重忠が鏑矢を天に向けて放ち、迎え撃ちます。
なんと綺麗な構えでしょう。これぞ坂東武士の鑑かと見入ってしまう中川大志さんの姿です。
坂東武士の鑑とは一体どんな武士なのか?畠山重忠がなぜその代表とされたのか?
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「目指すは……いくぞ!」
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