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麒麟がくる第1回 感想あらすじレビュー「光秀、西へ」

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麒麟がくる第1回
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この父にして、この娘あり

同じ頃、尾張の織田信秀は美濃に攻め込む構えを見せていました。

一方、美濃の稲葉山城では、一人の女性がやってきます。

ドスドス歩く――彼女はいったい誰なのか?

父上が戦をする。御陣に加えて欲しい。そう熱く主張する彼女は、帰蝶(濃姫)でした。嫁に出した娘に加勢を頼むほど、落ちぶれてはおらんとつっぱねる利政。

でも、この場面は変なんですよ。
儒教の規範ですと、嫁いだ女性は婚家に従うもの。ですので、そういう規範を大事にするのであれば、道徳でお説教タイムなのです。それがこの父娘は、父のプライド問題にした。

帰蝶は、明智の叔父上のことを言い出す。
そして十兵衛は息災かと聞く。旅に出ていると聞いて、驚いています。

「旅?」

一瞬とはいえ、帰蝶の性格も掴める。
彼女が袴姿であるのは、あくまで実用性大好きタイプだから。ドスドス歩くし、加勢したがるし、男に生まれたかったと舌打ちをしているタイプなのでしょう。

典型的とはいえますよね。

定番といえば『独眼竜政宗』の義姫。近年ならば『おんな城主 直虎』の井伊直虎もそう。
ただ、本作はただのボーイッシュさだけではない、何らかの個性はある。そういう人物設定にしているとは思います。

現代にいたら性格も想像がつく。気に入らないプレゼントをフリマサイトで売り飛ばして、そのことを開き直るタイプだ……。

時は天文16年(1547年)、冬間近――。

明智十兵衛光秀が美濃まで戻ってきます。

 

MVP:駒

光秀の妻ではない。そんな駒。彼女はどうしてここまで大きい扱いなのか?

彼女は創作された人物であり、光秀の動機と象徴そのものなのです。

「麒麟? それ、目撃情報あるの? いつ、どこで?」

光秀がそう突っ込むような性格であれば、このドラマは始まらない。タイトルは別のものになる。

彼女と光秀に、恋愛感情はない。生じるわけもない。彼女が動機そのものであり、象徴なのです。

「戦災孤児」というキャッチコピーも興味深いところ。

みなしごでもない。
ただの孤児でもない。
彼女は戦国時代にだけいるわけではない。

今もどこかにいる。そういう普遍的な象徴だと思えます。

彼女らを救おうと誰かが思うこと。そのことを、理想主義だのお花畑だの、言っていることは果たして正しいのか?

駒はとても大切で、一年間を通してMVPになる可能性がある、そんな人物です。

 

総評

盤石です。あっぱれです。

カメラワーク、殺陣、演出、セット、衣装、主演からエキストラの演技、ライティング。
着想から再撮影まで、過不足なく制作されたものに宿る。そういう魔法がある。

構成が極めて整えられている。

それでも本作を「王道」だの「手垢のついた」だの「ジジババの好きそうなもの」と呼ぶつもりにはなれません。

否定的な見解も想像できます。

松永久秀がすぐにホイホイ鉄砲をくれるか、だの。

光秀が少年漫画の主人公じみた、完璧超人だの。

目が肥えたドラマ通からすれば、退屈。

と言ったものは無視してよろしいでしょう。

本作は策士が紛れもなく一枚噛んでいる。
その人が誰か、名前も、性別も、年代も、何人いるかも知らない。けれどもどの本を読んだかは、なんとなく想像がつきます。

なかなか意地悪で、主演の長谷川博己さんにすら、伝えないで何かをしている気配も感じる。

どうして昨年わざわざ2010年代大河を振り返ったのか、そういう疑念はある。

昨年の大河に、その理由はない。
基本的な、いわばOSのアップデートが2015年前後(これは2015年の作品が画期的という意味ではありませんので、ご注意を)にあり、大河だけではなく朝ドラやEテレでもあったと思えるからなのです。

そのへんをじっくり事前予想として送り、かつ来年と再来年も予測できたのですが、難解すぎて不採用でした。
まぁ、ややこしい話を展開したし、手札をばらまくのも考えものですから。そこは編集さんの判断だ。

予想だけさっくりと書きましょう。

・2021年『蒼天を衝け』は2015年後半期朝ドラと、2019年大河の悪いところを集めた結果になる。成功する理由がない。失敗する理由は? 2010年代後半にバグが発生したためOSをアップデートしないで使い回すから。

・2020年、2022年は視聴率が2010年代後半のプラスマイナス1〜3パーセントで落ち着く。枠、地上波全体が衰退気味なのでそこは仕方ない。

・とはいえ、2020年と2022年の作品としての出来は上々。高評価。主演はじめ、出演者がスタッフには好転となる。そこからVODに引き抜かれても、そこは致し方ないところではあるけれども。

・脚本家の作風を過大評価してもいけないし、過小評価してもいけない。彼らは一人の将であり、ブランドのラベルであり、あくまで総大将ではない。これは主演もそう。

・2021年はそうなるにせよ、2020年と2022年は2019年の再来、大コケにはならない。

ついでにネタバレに踏み込むとしつつ、予測したいと思います。

【本能寺の変】の動機と理由は、光秀の精神的疲労です。
怨恨に一周回って回帰する。

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ここで考えたいこと。
黒幕説や陰謀説が渦巻いたのはナゼでしょうか?

それはこういう前提あればこそ。

「賢い人間は、怨恨くらいであんなことはしないもの!」

「賢い人間は、あんなスキだらけの状態で本能寺に宿泊しない。しかも嫡男まで手薄だった? あの天才信長が? そんなわけないでしょ!」

これは、人間の精神を過小評価と過大評価した結果です。

人間の知性は、いともたやすく崩壊する。判断力は下がる。知能だって不変ではない。洗脳は案外簡単にできます。
そういう人間の精神を見誤った結果、陰謀論が跋扈するのです。

人間の精神を破壊する方法はある。コツさえつかめば、騙すことはできる――そういうことを学んでいる誰かが、このドラマの背景にはいる気がしてなりません。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

※麒麟がくる第二回「加納口の戦い(井ノ口の戦い)」については、下記に関連記事がございます

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【参考】
麒麟がくる /公式サイト

 



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