麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第27回 感想あらすじ視聴率「宗久の約束」

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麒麟がくる第27回感想あらすじ
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三好の罠だ

そして光秀は、岐阜城にやって来ました。

しかし、織田家臣団は激昂しています。光秀から宗久の言ったことを聞かされて、怒っているのです。

柴田勝家は、それは三好方の罠だと怒る。

商人の戯言を聞いていられるかと苛立つ。

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稲葉良通は、そもそも光秀は朝廷の意向を聞きに行ったはずなのに、戦のやり方を指示されてたまるかと反発する。

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光秀は、将軍上洛の意義を語る。

戦に勝利するだけではなく、人心をしずめる重要性――新しき将軍が穏やかな世を作るアピールを説くのです。

そんな言い回しも、かえって将軍家の使番のような物言いと言われてしまう。

むろん織田家臣団の気持ちはわからなくもない。

2、3万という大軍を率いているのに。美濃にだって斎藤龍興の残党がいるのに。そういうリスクとリターンを天秤にかけて怒るのは、当然のことだとは思います。

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佐久間信盛も、戦を甘く見るなと言い切る。ヒートアップの極みです。

この叫びまくる場面が、本当に意義があって。所作や和装、乗馬は文句なしでも、時代劇特有の発声にはまだ伸び代がある、そんな安藤政信さんと金子ノブアキさんが叫ぶわけです。

そんな中で、村田雄浩さんはベテランの貫禄がある。

存在そのものが宝玉のようです。

村田さんの発声を聞いて吸収して、彼らがこれからどんどん伸びて、時代劇が継承されてゆく。そういう大河ならではの空気が醸成されていて、眼福でした。ベテランと若手の演技の違いもぎゅっと濃縮されていて、見応えがあります。

 


「三淵、よい案じゃと思わぬか?」

「もうよい」

ここで信長が止める。

織田の一存で決めることではない、公方様にもお伺いして決めると宣言します。

信長は、自分が興味を持っていないことは、なるべくエネルギーを使いたくない性格なのでしょう。

その上で、内心侮り始めた公方様パワーを使うことにした。

本作の信長は、はっきり言って性格が悪いとかよいとか通り越して、ひたすら癖が強くて変ではあります。しょうがない。そういう性格なんだ。

そして立政寺へ。

面倒なことは省きたいだけと、うっすらと舐め腐った表情にも出てしまった信長。素直な義昭は、鎧兜をつけない上洛に満足しています。妙案だと喜んでおります。

義昭は、上洛して京都の人々におそれを抱かせないようにしたい。京都を平安にできると約束したい。だからこそ、喜んでしまう。

「三淵、よい案じゃと思わぬか?」

そう聞かれ、相手は観音のような微笑みを浮かべます。義昭を演じる滝藤賢一さんが妖精なら、谷原章介さんは観音だ……。

「まこと公方様にふさわしい上洛となりましょう」

信長は、考えはいかがかとふられ、公方様の思し召し通りに行われるべき、我らは付き従うまでとしおらしく答えます。

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ああ、この新解釈信長が、染谷さんでよかった。

これから先、何度そう思うことやら。素直で無邪気な子どもの顔をできるから、染谷さんで圧倒的に正しい。でも腹の底は……。

このあと、廊下で光秀は信長を追いかけます。信長はしらけきった顔で、父の教えを思い出しています。

戦に出たら、勝って馬を降りるまで兜を取るなと教えられた。またこいつは、そういう親の教えをきっちり額面通りにとらえて……。

柴田勝家の言い分を是とすると。そのことをそなたの腹に秘めておけと言います。

怖い。

あの無邪気な素直さも全部計算していて、腹の底では苦いものと軽蔑と、ドロドロした感情を溜め込んでいる。

それは何も相手への敬愛ゆえでもない。

案じているのは、上洛したあとのことだから、近江で六角を討つ。それにしたって、宗久の手筈通りなら三好も援助できず、造作もなく勝てるはず。そう確信しています。

 


義昭に仕えるのか信長の家臣となるか

信長はそして続けます。

「いまひとつ、大事なことがある」

「は?」

「こののちのことに関わることじゃ。十兵衛……そなたは義昭様のお側に仕えるのか、それともわしの家臣となるか、今、それを決めよ」

はい、信長、いきなりオファーだ。しかも今決めろって!

光秀、どうする?

「私の心は決まっております。将軍のお側に参ります」

ここで信長、ショックを受けた顔をしている。

それでも切り替えて、こう言います。

「残念だがわかった……以後そのように扱う、よいな」

なんだかものすごいものを見た。

信長はショックを受けてはいるのですが、それだけでもない。

光秀は、ストレートすぎる。

もうちょっと言葉を濁すとか、顔で残念そうにするとか、言い訳を考えるとか、いくらでもあると思います。以前は越前の暮らしがあるとは言えたのに。

信長は面倒くさくて変な性格ですが、光秀も何かがズレている。かなり不思議な性格です。

両者ともにズレているので、なかなか理解が難しいかもしれない。高政相手にもなかなかきついことを言っていたっけ。

信長はショックを受けているけれど、ちょっと気持ち良いかもしれない。

のらりくらりと言い訳するよりも、素直に殴られた方がめんどくさくなくてよいかもしれない。

わけがわからん二人だし、演じる長谷川博己さんと染谷さんも、わけがわからんとは思う。

というのも、あの岐阜城での罵倒しあうバトルを思い出しまして。

声を聞いていると、二人とも楽器か、小鳥みたいで。無理して声を出して演じると言うより、するっと出ているような不思議なものを感じました。

この人ら、ほんとうに、いったい何なんだろう?

才能があるからと言えば簡単だけど、それだけではないだろうし。もちろん台本を受け取って、どうしようか考えて、練習して、ものすごい努力をしているのだろうけれども。それでも天衣無縫というか、するりと役になりきっている感がある。信頼感が毎週あります。

そしてその年の9月、近江の六角承禎を攻めて織田が勝利。

ここで合戦シーンが入ります。

倒れている兵士もおりますし、一瞬ですけど手間がかかっております。

そして上洛が見える。

悲鳴をあげて屋内へ退避する京都の人々。窓の隙間から怯えて外を見る民の顔まで迫真に迫っており、これまた丁寧な仕事です。

かくして織田信長は武装することなく、足利義昭を奉じて京へ入りました。

三好勢は既に京から去り、京は戦火に巻き込まれることはありません。

室町幕府が再び動き出す瞬間でした。

 

MVP:今井宗久

彼はひとりの人物というより、概念を象徴するような存在感がありました。

それはカネ――。

人を殺傷するものを売り捌く【死の商人】なんて、軽蔑されて当然のようで、そうでもない。これまたなかなか難しいものはあるのです。

遊郭のある街も出てきたことだし、やっぱり本作は、戦争のにおいがする。

それも戦国時代だけではなく、もっと普遍的なもの。

近代日本だって、全国各地で軍を呼ぼうとしました。

軍隊がいれば、軍需物資や兵士相手の遊郭で金が動く。

現代だって、軍需産業の金勘定は私たちの生活にだって関係があるわけです。

そういう普遍的な【死の商人】の顔を纏った今井宗久は、グロテスクなようで魅力的。

こんな概念がそのまま擬人化されたような、おそろしい人物像を任されて、陣内孝則さんがどれほど高揚したかと想像するだけで、いろいろ楽しくなってきます。お見事でした!

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総評

今週も盛りだくさんでした。

歴史を動かし、世界史的にも人類の動機として前面にグイグイ出てきた、金の話がドーン!とある。

今井宗久とは、歴史の中の金という概念そのもので、最高以外の言葉が思いつかないほど見事でした。ものすごく勉強になるので、受験対策としても見て欲しい。そう思える力作です。

それだけでなく、主役である光秀、そして信長、秀吉らの人物像にもますます磨きがかかってきました。

本作の登場人物は、承認欲求が強いとは言われる。

人間そんなものではありませんか?

ただ、それぞれ何かがズレているとは思う。

光秀:承認欲求が極端に低い。皆無。帰蝶が誉めていたと言われようと困惑する。自己評価よりも、社会改革が大事なんだ!

秀吉:承認欲求というよりも、まぁ、金と食い物がないと飢え死にするし。そういう幼少期トラウマ由来のところはあるよな。

信長:理解が、欲しい……。

光秀以上に、信長の面倒臭さがグイグイ全開になってきている。

信長は承認欲求というか、要するに理解が欲しいのだろうと。幼い頃から、自分の行動原理が理解されず、うつけだのなんだの言われて、彼は傷つき疲れていた。

だからこそ、そういう自分を理解して欲しいと願っている。

帰蝶との結婚でその願いは叶った。

となると、復讐したい気持ちも湧いてくるし、人生を無駄にしたくない気持ちもある。

世短く、意恒(つね)に多し――人生短いのに、やりたいことはいつもミッチミチだよな!

そういう彼なりの価値観ゆえに、めんどくさいとみなしたものを露骨に利用したり、軽蔑する傾向を感じるのです。

義昭に失望した、ハッ、あいつの言うこと納得していないけど利用してやるからな! そういう気持ちはわかりやすすぎて、今週は圧巻でした。

染谷さんはともかくうまいので、義昭敬愛モードと、軽蔑モードで、セリフがなくとも表情だけでわかってしまう。

もう、わけがわかりませんよね。

いちいちカメラにうつった自分の顔を見て「しらけ顔だ〜」と確認できないわけでしょ?

でも、彼は的確に感情を表情にこめて出す。

役者ってすごいものです。

人間そのものを描いていて、ものすごくおもしろい。そういう特別なドラマです。

※関連noteはこちらから!(→link


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文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
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