麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第31回 感想あらすじ視聴率「逃げよ信長」

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松永の懸念

そこへ松永久秀がやってきました。

気持ちが落ち着かん、飲んでも酔えんとある懸念を口にします。

手筒山では1,000人の兵を失った。それだけ激しかった朝倉方の抗戦。にもかかわらず金ヶ崎では自ら明け渡すように城が開けられ、火もかけられていない。これでは……。

「どうぞお入りくださいと言うようなものではないか。朝倉め、一体何を考えておる」

そう頭を悩ませています。

一方、越前・朝倉館では――。

朝倉義景がこう言っております。

「まだ動かぬか」

山崎吉家すら、理解できない言葉です。

「長政じゃ、近江の」

吉家は、浅井は織田の背後を守る役目だと答えます。南への備えとして、越前攻めに馳せ参じるはず。

それを「ちがう」と義景は言い切るのです。

確かに浅井長政は、信長に尻尾を振っている。しかし隠居した父・浅井久政は健在。朝倉と浅井の両家は、もともと強い絆で結ばれていた。

吉家がその長年の誼(よしみ)を捨て、長政が信長の妹・市を正室に迎えたと反論します。

「なればこそ、なればこそじゃ」

義景はそう言う、そのころ――。

 


板挟みの長政と市

近江・小谷城では、その市に向かって長政が語っておりました。

兄・信長に槍を向けることは本意ではない――その上で信長の落ち度と、こんな盟約違反を指摘します。

輿入れの際に、信長は浅井と長年誼を通じてきた朝倉には手を出さないと条件をつけていた。それなのに、越前攻めをしている。いかがなものか。万が一、朝倉が討ち果たされたら、面目が潰れてしまう。

信長の決定的な欠点が見えてきた。人の面子を潰し、プライドを傷つける。信長の気持ちは状況次第でコロコロ変わる。その変化の激しさに周囲は往往にしてついていけない。

市は叫びます。

「兄上はそのようなことは!」

「そなたの兄は、弟を己の都合で殺した男ぞ!」

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嗚呼、過去の悪事が響いてきましたね。

長政は、そのうえでこう念押しします。市はもはや信長の妹ではなく、この長政の妻だ。出陣するから見送りは無用じゃ。

市に抜擢された井本彩花さんも、長政の金井浩人さんも、見事です。

ご本人の熱演もよいし、キャスティングをした方も見事!

市はなまじ信長の妹であり、戦国一の美女とされていて、大物女優定番の役回りですから評価がぶれてしまう。

けれども、ここでの市は悲しいくらい、弱い一人の女性です。

いくら美しかろうが、そんなこと、ここでは何の意味もない。

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義景は、市にとって義父にあたる久政を出してきた。

長政は、実家ではなく嫁ぎ先の家族関係を強調する。

儒教倫理ですと、極めて正しい。父の言うことは軽んじられない。妻は夫の意見に従うべき。そういう世の中の規範に縛られて、彼女は無力に陥ってゆく。

いくら彼女が美しかろうと、そういう色に迷ったら、長政は面目が丸潰れだ。むしろ妻への愛を軽んじてこそ、守れる誇りがある。そういう規範と苦しみに挟まれて、長政も苦しんでいる。

そういう地獄の板挟みを生み出した信長が、朝倉軍と浅井軍による挟みうちにあう。混沌そのものの状況。

短い時間に、そういう悲しみと苦しみが詰まっていて、圧巻の場面ですね。

こんな悲壮な場面に、真偽不明の小豆袋エピソード※1は不要でしょう。

状況的に可能であったとも思えませんし、そんな不確定要素が強いことで信長が長政の裏切りを判断したとも思えません。

※1……両端を紐で縛った小豆袋を兄の信長へ送り、「朝倉と浅井に挟み撃ちにされますよ」と市が知らせたとする逸話

 


浅井の挙兵

金ヶ崎城では、柴田勝家が一気に一乗谷になだれ込むと勢をあげています。

一方で、松永久秀と徳川家康は、相手を探るべきだと反論。

すごく短い場面ですが、本作は一人一人の考え方が明瞭に見えていい。

織田方の中で、細かい要素を繋ぎ合わせて状況を考えられる武将は少数派ということです。桶狭間でも、家康は異変を察知していました。

そんな中、明智左馬助が光秀に書状を届けます。

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書状を読み、顔色を変える光秀。

勢いに乗る他の武将を、久秀と家康が抑えようとする中、光秀が信長を別室へ呼び出します。

信長に促されて光秀は、近江・浅井長政が出兵したと告げます。

しかし援軍を頼んだ覚えのない信長。長政は近江にとどまり南への備えをすべきだと言いつつ、顔を強張らせます。

「まさか……わしを? 何かの間違いではないのか?」

「おそれながら、まちがいではございませぬ」

9,000を率い、敦賀に向かっていると聞いて信長は唖然とします。信長は用意周到なようで、意外なところで抜けていますからね。

「なぜじゃ、なぜ、長政が……」

信長……最終回まで何度そう言うことになるのやら。最新研究を踏まえているなぁ。

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「織田信長は死んではならんのです!」

光秀は理由はわからないと言い切る。

正解だと思います。なんか適当な理由をでっち上げたら、そこにひっかかりかねないのが信長ですので。

いずれにせよ浅井の狙いが信長であり、一刻を争うと断言。

一気に朝倉を潰すか? 浅井を迎え撃つか?

いずれにせよ背後を突かれる!

南北の挟み撃ちでは、勝ち目はない。ことと次第では、命すら危うい――。

光秀は賢く仕事ができますから、プランを提案したうえでその結果まで予測しております。

選択肢を選んだ結果、どうなるかまで示せてこそ参謀としては上等でしょう。

「やはり信長様、一刻も早くここを……」

「逃げよと申すか!」

「他に道はないと存じます」

ここで信長、現実逃避というか、自分の心の中を開けっぴろげに言います。

帝に褒めていただいた。当代一の武将だと。そして託された、天下静謐のため! 逃げることなどできぬ、ただちに一乗谷を攻める、目障りじゃ、どけ!

そう光秀を蹴り飛ばします。

公式サイトでこのあたりの演出秘話が語られています。

蹴り飛ばすことは、長谷川博己さんと染谷将太さんが語り合って決めたことだそうです。役柄をきっちり掴んで理解している。そりゃうまいはずです。

信長はイライラすると、何かものに当たって解決したがる悪癖がある。今までも考え事をしながら体を叩いたり、扇をぶん投げていました。現代ならば、パンチングボールをお勧めします。

それでも光秀は言い切る。

「どきませぬ!」

ここで光秀の勤皇思想が垣間見えます。

帝がそのように仰せになられたということは、信長様の命はもはや一人のものではなくなった。天下静謐を果たすまで、生きていかねばならぬのだと。

織田信長は死んではならんのです! お願い申し上げまする」

土下座する光秀。

ここも信長のややこしいところですが、そんな光秀に感極まったかどうかわかりにくい。黙ってすごい顔をして、背を向け座り込んでしまう。

「一人で考えたい。先に戻っておれ」

光秀はそんな信長の背中を見送り、部屋を出るのでした。

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