お好きな項目に飛べる目次
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「ひ~か~え~よ~」と幾島登場
斉彬は篤姫の輿入れの件を言い出します。
今更、動揺する篤姫は、さすがに白々しいというか記憶ぶっ壊れちゃったか心配になるレベル。
「於一」から「篤姫」に改名した時点で、そんなのわかっていたでしょう。
彼女が改名した「篤姫」とは、第11代将軍・徳川家斉の正室である「広大院」にあやかった名前です。
それを知らないのだとしたら、不自然です。
西郷どんも「公方様ち?」と驚いています。
自分の仕事場のことをここまで理解していないっていろいろビックリですよ。
リアクションの仕方、脚本の段階で間違えているっぽいです。
ここで篤姫教育係の幾島が「ひ~か~え~よ~」と出てきます。
幾島と篤姫のベタな大奥トレーニングコメディが延々と流れます。
思わず
『主役は誰だっけ?』
と本気で忘れそうになる展開。
方言矯正だの、春画を見せるだの。ここで必要?というディティールの細かさ発揮されまして。
性教育も、そりゃあするでしょうが、真っ昼間から、西郷どんがいる前で始めるとか、デリカシーなさ過ぎですよね。
そもそも春画の場面も必要なんでしょうか。
この場面は、ニュースでも「みどころ」として盛んに喧伝されていました。
今週の前半は遊郭。
後半は春画。
ゲスの極みだなぁ……。
以前から将軍家と姻戚関係ありまして
いつしか説明は関ヶ原後の薩摩へ。これが少々おかしくて。
確かに島津家は関ヶ原で西軍につきました。
家定も、「神君(家康)に背いた薩摩の姫を迎えるとは……」と不満はあったそうですが。それはそれとしまして。
島津家は、5代藩主・継豊に8代将軍吉宗の養女・竹姫(浄岸院)が輿入れしてきて以来、将軍家と姻戚関係にある希有な家柄なのです。
8代藩主・重豪の娘である広大院は、前述の通り11代将軍・家斉の正室になりました。
そのため重豪はかなりの権勢を誇り、「高輪下馬将軍」と呼ばれたほど。藩主であり、しかも将軍の岳父になったというのは、かなり凄いことなのです。
そういう関係性が築かれていなければ、篤姫を輿入れさせられるわけもないのです。
薩摩藩にとって極めて重要な歴史をスッ飛ばす、この説明は叱られるレベルですよ。
あと細かいことですが、桜が咲いている今は一体いつなんでしょう。
本作ってロケの都合もあるのでしょうが、季節感がよくわかりません。
西郷の部屋にあの医者が
西郷どんが部屋に戻ると、瀉血男がおりました。
そして西郷どんを突然ホメ出す瀉血男。
なんでも西郷どんを腰の短刀でスパイと見破っていたそうです。
そんな正体ばれるものを身につけている西郷どん……。
瀉血男は自分も密命を帯びていると、一気に「将軍継嗣問題」の説明を始めます。
島津家の立場の説明についてもそうですが、こういうことは雑な説明台詞ではなくて、もっとやり方あると思うんですよね。
しかもダラダラと遊郭やらビーチ、大奥教育で時間つぶししていないで、こっちを真面目にやりましょうよ。
密命のわりに、大声でペラペラ喋る瀉血男。
瀉血男の正体は、福井藩の密偵・橋本左内だそうです。
もう本当にいい加減にして欲しいorz
あふれる才知で藩政の改革にも取り組んだ橋本左内が密偵?それこそお庭番にやらせろと。
この人、堂々としすぎていて適性ないですし。
西郷の心に居続けた橋本左内~福井藩の天才が迎えた哀しき最期 26年の生涯
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あと橋本のバイアスかかりまくった、一橋派の説明は……忘れた方がいいかもしれません。
不正確です。むしろ有害です。
幕臣幕府を無能な集団と決めつけるような言動がありますが、そもそも自分たちは?と言いたくもなります。
「篤は、不幸になる……」じゃなくて政局、お願いします
ここで、いかにもアホっぽい徳川家定が出てきます。
これが、本作のCPが『篤姫』の「堺雅人を超えているんじゃないか」と太鼓判を押す家定ですか……。
◆「西郷どん」CP 家定役の又吉直樹を絶賛「堺雅人を超えているのでは」(→link)
そんな橋本も、西郷どんのアホさ加減に呆れていました。
まぁ、その気持ちだけは理解できますね。
しかし、たとえそうだとしても、面と向かって「買いかぶっていた」とか言うのは、さすがに失礼過ぎるでしょう。
大山と有村が戻ってくると、
「今のは僕の妄想だから忘れてください」
だそうで。
そう言われて「はい、わかりました」と答える人もいないと思うのですが、実際、本作で幕末史を学ぶのは危険なのは間違いない。
西郷どんは、なぜ篤姫は輿入れするのか?と斉彬に聞きます。
慶喜を次期将軍として推す理由も同時に聞きます。
無知な主人公サイド(西郷どん、篤姫)に周囲が教え諭すという形で幕末の政局を説明する本作。
『花燃ゆ』のように、主人公が歴史的局面に関われないドラマであればそれでもよいでしょうが、主役の西郷隆盛にそれをさせるのはマズイです。
西郷どんが馬鹿にしか見えません。
「篤は、不幸になる……」
そう語る斉彬。
その前に、政局をきちんと描いてください。
MVP:藤田東湖
西郷が水戸藩邸で出会った男。
徳川斉昭に大きな影響を与えた思想家、それが藤田東湖です。
彼あってこその幕末水戸藩……って、ドラマではカットされるんかーい!!
すみません、MVPとか言って、実は登場しておりません。
しかし、それが結局一番いいんじゃないかな、と最近思いました。
どの人物も出るだけで智謀が50程度下がる呪いがかかっているので、藤田も出ていたら何をされるのかわかったもんじゃない。
ヒー様のことを叱り飛ばしてあわあわするとか?
『花燃ゆ』の時は、西郷しかいない状態の薩摩藩を「ワンマン薩摩藩」「ひとり薩摩藩」と揶揄していた気がします。
ちなみに土佐藩も坂本竜馬だけの「ワンマン土佐藩」でしたね。
会津藩は消滅。
どぶろっくが島津久光と徳川慶喜を演じてワンシーンしか出なかったことにも散々文句を書きました。
しかし、あれはあの作品なりの良心だったんじゃないでしょうか。
藤田のように原作だけ出てくる。それが彼らにとっての幸せなのです。
藤田東湖は水戸藩を過激化させた危険人物だった?斉昭や西郷の思想に影響与える
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マッド総評 怒りのデスロード
突然ですが、私はキアヌ・リーブス主演の『47 RONIN』という映画が割と好きなんですよね。
ただ……あの映画を題材にして、「忠臣蔵」や「赤穂浪士事件」について語れ、と言われたらブン投げます。
なんせ、あまりにも違いすぎるのです。
本作も、史実再現度では『47 RONIN』程度なんじゃないかと確信しましてね。
なまじNHKの大河ですから、『そうなんだ……』と信じる人が多い可能性もあり、そうだとすれば意識はしていなくても“悪質”だということになってしまいます。
そこで本レビューでは、史実との違いも明示して、本稿を読んでくださる方には一緒に史実を確認しておきたい――なんて考えていたのですが、いや、もう、今回ばかりはムリでございます。
何もかもデタラメすぎて、打つ手がない。
間違っているところを指摘するより、正しいところを指摘した方が早いんでしょうけど、そうすると語るべきものが何もなくなるのです。
そういう意味では、歴史に関してノータッチで好き勝手なコスプレラブコメ状態だった『花燃ゆ』より悪質なんじゃないかと思います。
『軍師官兵衛』が再放送されるそうですが、個人的には『八重の桜』がよかった……。
それならば、本作で植え付けられた幕末の歴史をある程度修正できたはずです。
比較されると本作の公開処刑になるというのは、まあわかるんですが。
ともかく、これは声を大にして言いたい。
本作を信じるな!
本作で幕末史を学ぶと、確実に詰む!!
あと、今週叫びたくなったのは、本作はとことんゲスの極みだということですね。
最近、本作関連の好意的なニュースを見ていると、
「相撲シーンで尻の筋肉に大興奮!」
「遊女姿の女優が綺麗だと評判に!」
とかそういうのばかりで、かなり複雑な心境です。
部数が落ちた週刊誌が、往年の美人女優のヌードグラビアを袋とじで、起死回生を狙っているような、と言いましょうか……あまりに品がない。
効果はあるのでしょう。
視聴率は去年よりは上です(それでも一昨年よりは下)。
テコ入れのためにエロに頼るのって、かなりの末期症状でして。
中身で勝負していたころについたファンが離れてしまい、エロを求めるファンのために過激化して、どんどんドツボにハマっていくんですよね。
昨年、一昨年は、序盤こそ批判的なニュースが多かったものです。
が、だんたんとそれが減ってゆきました。
今年はむしろ褒めるニュース、視聴率が好調というニュースばかりですが、中身を褒めるものはむしろ少ない印象。
エロ関連ではないものでも、
「子役が健気!」
「ロケが豪華」
ですからねえ。どうしたものでしょう。
2015年『花燃ゆ』は、思想面でのねじ曲げは今年よりは少なく、何よりも低視聴率でした。
悪影響を最小限に抑えたという点では優等生的。
今年の方が、長い目でみた場合、はるかに危険なシロモノになりそうです。
それにしても、今週は迷子になる篤姫がメインねえ……。
本作では、セキュリティガバガバ設定の薩摩藩、またもどでかいセキュリティホールが発覚しました。
厳しい展開の『ゲーム・オブ・スローンズ』だったら、2話目で滅亡するレベルのユルさ。
なんで、こういうつまらない創作話を性懲りも無く入れるのでしょうか。
主役が山本八重や井伊直虎ならば、ヒロインのなにげない日常を描いてもしょうがないと思いますよ。
昨年も中盤かなりダレてはいましたが、そもそも史料が少ない制約上、仕方ないと思えました。
西郷の場合、イベントをクリックだけで進むゲームのようにダラダラと並べていくだけで、それなりの出来にはなりえます。
今度再放送する『軍師官兵衛』程度にはできるはず。
原作もそういう作品です。
しかし本作は、歴史イベントを極力無視して、『花燃ゆ』レベルの話をガンガンぶっこんでいくスタイル。
今にして思えば『花燃ゆ』は気の毒でした。
ヒロインを前面に立たせるという前提からして無理のある条件の中、あがいている感じはありました。
ところが本作は、露骨に手抜きをしている。
歴史を調べたり追いかけたりしたくないから、やらない。
そういうサボタージュ感が強くて腹が立つのです。
また、
◆鈴木亮平の主演「まだ早い」と発言も 「西郷どん」脚本家が明かす舞台裏(→link)
こちらは、脚本家さんの姿勢がよくわかるインタビューです。
「肝練り」をああいう形で使うあたり、いろいろとガッカリさせられます。
何度も書いていますけど、本作の下品さが本当に生理的に受け入れられない。
品川宿でこれみよがしに置かれた赤い夜具とか無理やめてホンマに、という。
いやね、これは何度でも言いますけど、愛するドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』はエロいですよ。
ヒロインの結婚式で、上半身裸の女がズンドコ踊りしているようなR18ドラマですけどね。
が、しかし。
エロを目当てにあの長くて人がやたら多いドラマを見る人はおそらくいないんですよ。
純粋に面白いから。
面白いからなんですよ!
エロで人を釣ろうなんて考えていない。必要に応じてエロも逃げずに表現するだけです。
蛇足:謎の男は何人目だよ問題
「本作は歴史ものとしては駄目かもしれないけど、ドラマとして見たら面白いよ!」
という擁護があるそうです。
が、私はドラマとして見ても純然たる駄作としか言いようがないと思っています。
その要素のひとつが、
【同じ展開を性懲りも無く繰り返す】
問題です。
主人公が出会う謎の男。
その男の正体は【歴史上のビッグネームだった!】という展開を、呆れたことに本作は4度も採用。
10話中4度ですから、つまり2.5回に1度は起こるようなペースで繰り返しています。
◆偶然出会った謎めいた天狗男はなんと! 薩摩藩世子・島津斉彬だった!(第1回)
◆偶然出会った謎めいた洋服姿の男はなんと! アメリカからの漂着民・ジョン万次郎だった!(第6回)
◆偶然出会ったチャラそうな「ヒー様」という男はなんと! 徳川御三家にして将軍候補・一橋慶喜だった!(第9回)
◆偶然出会った謎めいた医者はなんと! 福井藩の高名な学者・橋本左内だった!(第10回)
もう、ほんと、フザけんな!ですよ。
現代のサラリーマンものドラマだったとしても、10話までに4度も
【主人公が偶然、お忍びの国会議員やCEOやアイアンマンと出会う】
ことを繰り返したら「アホかっ!」とツッコまれるでしょう。喜劇ならまだしも。
アメトークで『西郷どん芸人』でもあったら、ケンコバ氏あたりが好意的な笑いに変えるところでしょうね。
出会いのシーンを写真で並べて、
「ほら、ここでも出会う! こっちでも! ほら、ここでも!」
なんて場面が想像できる。
それと、江戸編に入ってからのキャラたちが、忍ぶ気ゼロなところが設定とまるで合っていない。
例えば、密書を堂々と運ぶ西郷どんも大概ですけど、「ヒー様」って変名は何ですのん?
ケン・ワタナベ島津斉彬のクチからも、この言葉が出てきたときには、チョット、泣いてしまいそうになりました。もちろんイイ意味じゃなくて。
こんな調子ですと、
偶然出会った謎めいた物乞いはなんと! 長州藩の桂小五郎だった!
偶然出会った謎めいた江戸っ子はなんと! 勝海舟だった!
偶然出会った謎めいた漁師はなんと! 土佐藩の坂本竜馬だった!
とか繰り返すんじゃないか?と今から震えております。
って、いい加減にしろ!
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著:武者震之助
絵:小久ヒロ
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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等