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【青天を衝け第8回感想あらすじ】
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闘犬は狆になった
栄一パートが一番いらないのはその通り。
では徳川慶喜パートはどうか?というと、これも不要に思えてきました。
だから徳川慶喜を将軍にしたらヤバい! 父の暴走と共に過ごした幼少青年期
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今週のオープニング家康は、井伊直政トークから井伊直弼について語っておりました。
井伊直弼は、初代大河の主役にも選ばれたぐらいなのに、その扱いがあまりに酷くありませんか?
大河を作り始めたころは、歴史に挑む気概があった。
当時が闘犬だとすれば、今年の大河はさしずめ狆ですね。かわいい。それだけだ。
そしてその井伊直弼らの雑トークがあんまりだ。
何度も指摘してきましたが、なぜ本作の幕臣は歩きながら重大事を話すのです?
謎は深まるばかり。
説明セリフラッシュでテロリズムを押し切る
しかも本作の人物たちは、往来でも平気で思ったことを口に出します。
居酒屋で会社の機密情報もペラペラ喋るダメなサラリーマンではないですか。
「くっそうおもしろくねえ」
こんなセリフを堤真一さんに言わせないでくださいよ……。
美賀君の京都ことばは今週も壊滅的。家定はわかりやすいバカ殿。説明セリフラッシュ。
将軍継嗣問題(本作では将軍世継ぎ問題という呼び方……)も説明セリフで畳み掛ける。
前述のとおり岩瀬忠震も無能扱いされていてなんとも渋い表情になるばかりです。
そして徳川斉昭の暴れっぷり。
思わず突っ込みたくなりませんか?
国の大事だというのに、自分のことばかりをぶちまけ、叫び、暴れ回る。水戸藩って一体何なのだ?と。
幕末はスゴイ人が出てきて国難を乗り切った――そういう歴史観は有害かつ時代遅れですが、本作はそういうものをバンバン流してきます。
大河が「教養の証」って、一体いつの時代のことなのか。
権力争いに天皇やら朝廷を利用しておき、何を正義ぶっているのでしょう。
そのくせ、紀州様で良いとペラペラ語る慶喜。ボソボソと喋る場面はセリフが聞き取りにくく、なんだか演技指導がおかしい。
家定が「むきーっ! みんな処分してえ!」と語るから【安政の大獄】になるとは……あまりに酷い……。この調子で天狗党もやっちゃうんですかね。
安政の大獄で命を落とす橋本左内が、平岡円四郎と話をしている。その場面に木村佳乃さん演じる妻までわざとらしくいるのはなぜなのか。
絶望的なまでに機密意識はなく、よってリアリティなんてものは何も感じられません。
まるでお笑い芸人に「ショートコント!時代劇!」と言われているような錯覚すら覚えます。
突如、水戸藩士が叫び声をあげ、テロをすると言い出すのも痛々しかったですね。『花燃ゆ』以来のテロっぽさ。
それを緩和するように、38分で千代が嫁入りしてました。
めでためでたのお嫁入り♪ ほのぼの嫁入りをウダウダと長い時間かけて……これがオナゴ泡ふきタイムなんですか?
そこへわざとらしい男の登場。
来週は『栄一と桜田門外の変』とは強引なサブタイトルで突き進みます。
幕末人に「お前が欲しい」と言わせるとは……
今週もニュースに注目してみましょう。
◆NHK大河「青天を衝け」リアル胸キュンに過酷登山…演技を超えた役者の表情が次回見どころ(→link)
◆岡田健史 大河「青天を衝け」の平九郎役に「愛情を持って寄り添う」(→link)
◆岡田健史×藤野涼子が『青天を衝け』に新風吹き込む 『ひよっこ』ファンには嬉しい一コマも(→link)
何度でも言うたる。
朝ドラのノリを持ち込んで勝てるなら、『いだてん』は負けてへんよ。
◆【大河ドラマコラム】「青天を衝け」第七回「青天の栄一」徳川斉昭の一言から浮かび上がる全編を貫く「思いやり」(→link)
こういう褒め方も危険です。
「こんばんは、徳川家康です。いやあ、インテリ武士が争いましてね。ヤンキー漫画なら殴り合って解決ですが、そこは幕末。処刑しまくるわけですよ」(※背後に燃える家屋や刀を振り上げる武士の絵)
ドラマ全体に思いやりがあったとして、その果てが天狗党の乱だとすれば、地獄としか言いようがない。
【水戸学】をほっこりきゅんきゅん扱いするのは、手榴弾でお手玉するくらい危険でしょう。
◆『青天を衝け』“インテリ農民”栄一、己の生きる道を見出す! 恋も動き出し… (→link)
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こちらの記事は、のっけからこんな一文が掲載されていました。
大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか』第7回「青天の栄一」(脚本:大森美香 演出:村橋直樹)で印象的な言葉は「インテリ農民」by 徳川家康(北大路欣也)。
士農工商を雑否定しておいて、「インテリ農民」アゲという、この調子。
幕末でもなかなか難しい問題を、世界史的な視野からも探りたい問題を、無茶苦茶雑駁に表現されています。
大河で教養を身につけたなんて今は昔、むしろ今回は毒のような雑知識が流れ込んでいて危険ではないでしょうか。
本作で身につけた歴史知識をドコかで披露すると火傷しかねませんので、ご注意ください。
『麒麟がくる』の斎藤道三は土岐頼純に毒入り茶を飲ませましたが、今年は大河ドラマそのものが毒入りの何かです。
本記事については、まだまだ芳しいところがあります。
「私は青天を衝く勢いで白雲を掴む勢いで進む!」
若く体力のある栄一は険しい山をぐんぐん登っていく。
はあはあとした荒い息遣いがふと静寂になり、360度の青い空。OP曲に乗って手を青天に突きつける。映画のようなワンシーンだった。
帰宅した栄一は猛然と走って、千代に「お前が欲しい」と告げる。
この「お前が欲しい」が……古い上に、当時の時代背景からしても不思議でなりません。
例えば近藤勇は、わざわざ見栄えのよろしくない女性を妻としました(京都の女遊びはさておき)。
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女の色香に迷い、しかも真昼間から堂々と叫ぶって、幕末の規範からいけばかなり恥ずかしいことだったんですね。
男女の色気がダメとは言いません。しかし、せめて日が沈んでからにしませんか。
この辺、少年誌に掲載されている『鬼滅の刃』の方が、はるかに時代考証が真っ当です。
あの作品では善逸の女性への執着心が恥ずかしいものとして周囲に認識されていました。
恋柱・甘露寺蜜璃に対しては、他の男性柱から「ちょっと肌出しすぎてるなぁ……」と困惑していることがファンブックで明かされた。
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萌えだのそういうことを露骨に表現するのは“軟派”であり、みっともないという認識が昭和初期あたりまではあったのです。
そのへんの兄ちゃんがデレデレするなら、別にいいですよ。
しかし、近藤勇にせよ、渋沢栄一にせよ、それこそ“インテリ農民”とか、他とはちょっと違うという認識を持つ者であれば、女が欲しいなんて絶叫するのは相当恥ずかしい。
まったくもって幕末規範じゃありません。
昭和か平成の「アオハルかよ」センスですね。
こうした状況に対して『アナと雪の女王』やBTSが大好きな今時の若者ならば、こうなりかねないでしょう。
「お前とか見下し感出てるし、欲しいって欲望丸出しっていうか。相手の気持ち尊重してないし、どうなんだろう?」
『青天を衝け』を幕末ものと呼ぶには、知識と時代考証が少年漫画以下ですし、若者向けとするにも古い。
そんな、どうしようもないドツボに陥っています。
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