青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け第16回 感想あらすじレビュー「恩人暗殺」

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青天を衝け第16回感想あらすじレビュー
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リアル権現様は拒絶するだろう……

そういえば今週は家康が出てきませんでした。

円四郎が慶喜と家康の共通点については語っておりましたね。

慶喜と家康が実際に似ていたのかどうか?

私は懐疑的ですが。三河武士の良さが全部なくなったとイライラしていた福沢諭吉なら「ケッ」と笑い飛ばしそうだとは思います。

◆ なぜNHK「青天を衝け」のナビゲーターに家康? 徳川家の末裔に聞いた!(→link

その福沢諭吉はアメリカでこんな驚きを抱いています。

人々が誰も、ワシントンの子孫が今どうしているか知らなかった! 日本じゃ考えられない!

それからおよそ150年が経過。もしも今、福沢がこのドラマ関連報道を見たら絶望することでしょう。

子孫だからといって、正しいことを言えるとは限らないない。そこはむしろ研究者に聞いた方がよい。

それでも子孫に聞きにいくのはなぜか?

売れるから。

要は読者に求められているということで、血統主義はまだまだ現役ってことですよね。取材を受けた子孫の方を批判するわけがないと。

あの家康コーナーですが、はじめのうちはくだらないと思っていたものが、段々と気持ち悪くなってきました。

自分が作った幕府倒壊を語る。育てた豚さんを解体して食べるところを実況するような不気味さがあるんですね。

天狗党なんて、斉昭が唱えた理論に乗っかって暴れ、慶篤と慶喜の兄弟が潰した。あまりに悲惨な内戦で、水戸から人材が消失したともされる。失われた人材の中には渋沢栄一以上に才気煥発な誰かもいたかもしれない。

そういう幕末屈指の惨劇を語る上で、あの軽薄なナビゲーターは適切だと思いますか?

もしも会津藩祖・保科正之がチャラけた口調で「いやあ、私が制定したルールのせいで容保クンは苦労してね」と語る会津藩ものはあったら?

非難轟々でしょうし、まず企画の時点で止められると思います。

過去にはこういう事例もあります。

◆糞尿の謝罪放送でTBSが2000万円の損害! (2008年5月13日) (→link

ではなぜ、あんな酷いナビゲーターが通るのか?

・誠意と勉強不足

やったふりはうまいけれども、理解力や敬愛がない。そういう作り手だからこそ成立する怠慢です。

・水戸藩の人材枯渇

幕末の天狗党のおかげで人材が拭底した。それは過去のことでもない。会津のようにきっちりと歴史を伝える試みが残っていれば、そんな事例があれば、こんなことにはならない。

ちなみに『西郷どん』も、島津家当主が苦言を呈しております。水戸藩はそういうことすらできない。なまじ隣人同士が血で血を洗う内戦をしたため、語ることすらできなくなったのです。

水戸学そのものがタブー

水戸学そのものがタブー視されました。

なぜか?

第二次世界大戦に至るまで、日本を支配した皇国史観のルーツであったため。

実際に家康がいたら「お前らなんてことしてくれたんだ!」と嘆いていると思います。

これは何も私の妄想でもなく、天狗党の小四郎たちは、東照大権現から進軍しようとして、日光奉行所に断られています。参拝にとどめたのは、そうした経緯があったからですね。

リアル大権現は、そんな天狗党となかよしな慶喜なんて、好きじゃないと思います。

 


斉昭を演じた菅原文太さんも困惑していた

個人的な話で恐縮です。なぜこのドラマについて話が噛み合わないのか、理由がわかりました。

【天狗党の顛末がマイナーすぎるから】

今回の天狗党描写は、顛末やら何やらツッコミどころがありすぎてもう何が何やら。

栄一と慶喜周辺をキレイにしたい――そんな情熱だけは理解できます。

幕末水戸藩は、動向がわかりにくいものです。

私も自宅なり図書館なりを探してみましたが、一冊でスッキリわかるようなものはそうそうありません。

要は、断片的な情報を集めていくしかない。

天狗党の乱も、歴史にはそこまで大きな影響を与えてないので深くは突っ込まれない。

ゆえに、こういう慶喜ほっこりエピソードで感動して「いい人すぎ!」と盛り上がるのだと。

◆青天を衝け:頭に包帯の草なぎ剛“慶喜”「完全にコント」「ジワる」 猪飼勝三郎のやらかしエピソード登場(→link

研究者の本で慶喜評価をざざっと確認しました。

温度差はあれ、人間性を褒めるものはまずない。

天狗党がフックで、鰊倉(にしんぐら)の惨劇を知っていると「慶喜がいい人って、どうしてそうなるんだ……」と困惑してきます。

※鰊倉の惨劇……斬首刑を待つ天狗党メンバーが悪臭漂う鰊倉に入れられ、別の不幸も生まれていたこと(以下、武田耕雲斎の記事に詳細があります)

武田耕雲斎と天狗党の乱
夫の塩漬け首を抱えて斬首された武田耕雲斎の妻~天狗党の乱がむごい

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徳川慶喜』で斉昭を演じた菅原文太さんと半藤一利さんの対談本でも、慶喜へのやりきれなさが書かれております。

できればぜひ、手に取っていただきたいと願う次第。

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有害な大河ドラマ

既にこのドラマはもう取り返しのつかないことをしています。

公式ガイドブックを参照にして、天狗党の乱について解説している記事があります。

ドラマで創作された嘘を史実のように記述しており、大変有害です。

『麒麟がくる』では駒のような創作された人物がおりました。ああした人物は実在しないため、彼女の言動を史実だと信じる人はおりません。ゆえに良心的であり、かつ無害なのです。

それが栄一や喜作のような、知名度が高くなく、今後大河にも再登場しないような人物が創作で勝手な行動をすると被害甚大になりえます。

ゆえに歴史にまともに向き合う創作者であれば、そこは当然気を配るはずなのですが。

本作にはそんな最低限の常識も理性もないため、悲惨なこととなりました。

NHKは果たしてどう責任を取るつもりでしょうか?

 

必ずや名を正さんか

ヘラヘラと中身もなく、好感度だけで生きていくことがどれほど虚しく危険か。

NHK土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』で暴かれております。

松坂桃李さんが栄一だったら……そう思いますが、彼はこれから有望な役者さんですからね。

作品選びを慎重にして、再来年あたりいかがでしょうか?

家康が若い頃ですので、本多正信あたりを演じたらいけるんじゃないかと思いますね。はらわたが腐っていると言われても笑顔で受け流す策士。どうでしょう?

その『今ここに〜』では『論語』「必ずや名を正さんか」という引用が出てきて、最終回である人物が行う言動の説明として素晴らしい使い方をされていました。

『青天を衝け』では、当初あった漢籍推しが消えた一方、大河を皮肉っている土曜ドラマでこうなってくると、NHKでの内部闘争を想像してしまって大河ドラマよりこちらが面白くなってしまう。

一体どうしたものでしょうか。

◆『今ここにある危機とぼくの好感度について』第5回(終)(→link

※著者の関連noteはこちらから!(→link


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◆青天を衝け感想あらすじレビュー

◆青天を衝けキャスト

◆青天を衝け全視聴率

文:武者震之助(note
絵:小久ヒロ

【参考】
青天を衝け/公式サイト

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