千代の死から3ヶ月経過――。
渋沢栄一はムスッとした顔をしていて、落ち込んでいるというより、機嫌が悪いように見えます。
これも描き方ではないでしょうか。
『麒麟がくる』の光秀は、冷静に振る舞っているようで、家族の前で妻の爪を入れた小さな容器を鳴らしていた。
栄一のように仕事の場で露骨な表情を浮かべるというのは、ビジネスマンとしてどうなのでしょう。
麒麟がくる第40回 感想あらすじ視聴率「松永久秀の平蜘蛛(ひらぐも)」
続きを見る
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
幕臣が苦しんでいる最中に慶喜の茶席
徳川慶喜の茶席に栄一がいます。
香典のお礼にわざわざ訪問したようで、多忙極まりない最中に駿府まで行ったんですかね。
せっかくの茶席ですが……残念ながら緊張感がまるでない。
『麒麟がくる』における今井宗久、明智光秀、松永久秀、そして駒たちの茶席は、息を呑んだものです。
今年は「正座しっぱなしで足痺れていてかわいそう」というか、文化祭の茶道部ブースを見守る気分に。
そもそも慶喜を出す意義がよくわからないのです。
当時、職を奪われた幕臣たちは生きるか死ぬかの苦境にありました。
一方、徳川慶喜は優雅に趣味に生き、周囲を顧みない生活。そんなところを描きたいのでしょうか。
女性スキャンダルが痛すぎる斉昭&慶喜親子 幕府崩壊にも繋がった?
続きを見る
しかし、ガチャ運は今週も絶好調。世論のお陰でショッカー岩崎とデ・アール大隈は追い詰められていました。
岩崎を糾弾する明治人の滑舌が悪くて、何を言っているかイマイチ聞き取れないのが残念。
本作は絶叫で興奮を表現する演出を多用する傾向がありますが、聞き取りにくいことが多くて、意識がそっちに持っていかれてしまいます。
追い詰められたはずのショッカー岩崎は、アジトで高笑いでした。
「ショッカーはショッカーだから強いぞ!」と戯言を言っております。
町中には講談師の神田伯山もいます。
◆「青天を衝け」神田伯山 大河でドラマ初出演「光栄」二代目神田伯山役「NG出しても優しかった」(→link)
さすがプロだけにお上手ですが、役者が本業ではないゲストを投入し、単発の話題作りは『花燃ゆ』でもよく使われていましたね。
ただし、あまりに唐突であり、講談で誤魔化しているとしか思えません。
渋沢栄一が高速算盤を披露しないといけないって、どういう状況なのでしょう。
女衒やす
やすも再び登場。
伊藤兼子に妾話を持ってきているようです。
もう、やすは「女衒(ぜげん)のやす」と呼んでOKですね。
マトモな再婚話のように展開していますが、今でいえば愛人とか高級デートクラブの斡旋ですよ。
20代半ばを超え、年齢的には芸者になれない女性に、不惑すぎの金持ちを紹介しているだけです。
現代ものなら『新宿スワン』の世界観ですね。『龍が如く』でもしばかれる側です。
確かに伊藤兼子は女衒を仲介させて結婚しております。
その女衒をよりにもよってやすにやらせるって、このドラマの倫理観はどうなっているのでしょう。
曲がりなりにも彼女は徳川慶喜側近・平岡円四郎の妻ですよ。旦那が亡くなり、やすも落ちるところまで落ちたようにしか見えない。
平岡円四郎はなぜ暗殺されたのか? 慶喜の腹心で栄一の恩人だった侍の最期
続きを見る
再婚だって、通常の見合いのような流れではありません。
兼子は妾になっております。正式な後妻に決定するまでの間に、二人の乳児が亡くなっています。こんなこと指摘したくないですが、千代の死からほどなくして妊娠していました。
実際、当時も「同居している“くに”がいるでしょ!」と言われている。
渋沢兼子は妾として渋沢栄一に選ばれ後妻となった?斡旋業者が仲介した複雑な事情
続きを見る
結局、どんな言い訳をされても、”女のランク”を見ているとしか思えないのが渋沢栄一です(兼子は元豪商の娘)。
変にごまかして経歴ロンダリングするぐらいだったら、最初から経済の話を中心にして、プライベートのことなどすっ飛ばせばいいのに、なぜ恋愛ネタを引っ張るのでしょう。
女遊びが強烈すぎる渋沢スキャンダル!大河ドラマで描けなかったもう一つの顔
続きを見る
スピリチュアル岩倉
栄一の娘・うたが出産。
昭和のセオリー「3Bの法則」通りですね。
子供(Baby)、美女(Beauty)、動物(Beast)に頼って視聴率や好感度を狙う展開です。動物がいませんので、ここは猫でも出すとよいかもしれません。
「ああ……お千代に見せてやりたかった」
またも立ったまま、思ったことを全部吐き出す栄一。
孫だけでなく、その前に兼子との間にも子供が生まれ、不幸にも夭折しておりますが、完全になかったことにされ無情にも程がある。
千代を失った栄一に、さらに不運は続き、養育院も廃止されそうになりました。
最近はやたらと死の場面が続きますが、岩倉具視も病に伏せていました。
亡くなる間際で苦しいはずの岩倉は、滑舌良くペラペラと言葉が出てきます。
医療考証が皆無ですよね。病床にいる人間のセリフ処理で、明治時代の政治が説明されて戸惑いしか感じません。
岩倉が、三条実美や井上馨を枕元に呼び、絶叫するのも意味不明。かなり元気では?
しかもトメの声が聞こえてきて、急に立ち上がったかと思ったら、合掌して倒れて死ぬ――私は一体何を見せられてるのでしょう。もうワケがわからないとしか言いようがない。
岩倉具視の孝明天皇毒殺説をふまえると、とても皮肉が効いていて素晴らしいとは思いました。おそらく本作スタッフにそんな狙いはないんでしょうけど……。
それはそうと、岩倉に光が降りてきた最期は、
・お蚕ダンス
・狐の幻で人を斬った長七郎
に続き、またもやスピリチュアルな展開でしたね。
※続きは【次のページへ】をclick!