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風林火山 (前編) (NHK大河ドラマ・ストーリー)

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大河ドラマ『風林火山』 10年ぶり再放送(日曜)で特別レビュー! 真田丸を補完する武田全盛期

更新日:

 

武者震之助です。
2007年大河ドラマ『風林火山』の再放送が今月(4月2日)より開始されました。
古典的名作と呼ぶには最近の作品過ぎ、大ヒット作と呼ぶには視聴率が少し足りない。傑作と呼ばれるには何かが少し足りないかもしれないけれども、ファンからの熱い声により放送回数が増やされ、舞台化もされた、そんな根強い人気がある本作。
10年ぶりに再放送される今、どんな作品であったか振り返ってみたいと思います。
【TOP画像・風林火山 (前編) (NHK大河ドラマ・ストーリー)

 

上杉謙信にGackt起用で視聴者たちザワザワザワ

今となっては考えにくいのですが、放送前の本作はイロモノ扱い、NHKが「やらかしやがった」という下馬評も少なくありませんでした。
その最大の理由が、Gacktさんが演じた上杉謙信です。

「イケメンを起用して女に媚びる気かよ」
「あいつが上杉謙信? イメージ違い過ぎる」
そんな声すら少なくなかった本作。当時堅実にヒットを飛ばしていた『利家とまつ』や『功名が辻』とは路線が異なり、戦国三傑も出ない本作は、放送開始時はいまひとつパッとしない扱いで、視聴率も当時としては高いとは言えませんでした。
イマイチ冴えない大河が、Gacktさんのような隠し球で話題を作りたいだけではないか、そんな扱いでした。

GacktのHPに掲載されていた上杉謙信姿

本作の主人公である山本勘助は、むさくるしく薄汚れた中年男であり、愛くるしい子役が愛嬌を振りまく序盤の幼少期パートもありません。
どこか屈折し、脚をひきずった隻眼の男が就職活動を繰り返す序盤は華やかさもなく、地味。ふてぶてしく、哀れで、腹黒いようで、どこか純情。そんな複雑で、一見すると愛されにくい主人公を、内野聖陽さんは熱い役者魂で演じました。

それがじわじわと口コミで評価があがりだしたのは、春あたりからです。
「今年の大河は面白いって」
その頃は現在のようにSNSは発展しておらず、インターネット上での感想拡散はネット掲示板や個人ブログ頼りでした。そういったところで徐々に口コミ的に広まりだしたのです。
地味だけれども、噛みしめると味がある。そんなスルメ大河としての評価がネットを活用する若年層に広がりつつあるとき、起爆剤となる女優が出現しました。

勘助と恋に落ちる農民の娘・ミツを演じた貫地谷しほりさんです。

 

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上田原で重臣を失い「いたがぁきぃ~~!!!!」

素朴ながらも愛らしく、勘助との間に子まで宿したミツ。
なんと甲斐の大名・武田信虎に理不尽なかたちで惨殺されてしまいます。仲代達矢さんの信虎が、これがまた憎々しいんですよ。

ここで視聴者と勘助の怒りがひとつになり、武田への憎悪が燃え上がるのですが、この勘助がどういうわけか武田家に仕官してしまうわけなんですね。
勘助が武田に仕えるということは見ている側は皆わかっているわけで、それがこういうねじれた形のスタートでどうしてしまうんだろうか、そこが序盤のポイントであったと思います。本作は井上靖氏の原作はあるものの、原作は一年持つほど長くはありません。脚本家の大森寿美男氏が、プロットをうまく作っていたと思います。

中盤からは武田晴信という青年大名がのしあがっていく様と、それを支える勘助の活躍がメインとなります。
晴信を演じるのは2代目市川亀治郎さん(当時、現4代目市川猿之助さん)。このキャスティングは賛否両論ありましたが、前半の揺れる青年としての心理と、中盤の傲慢さ、終盤の円熟を巧みに演じ分けていたと思います。

同時に武田家臣団の豪華さ、渋さが際立っていました。
板垣信方役の千葉真一さんは、あれほどのキャリアを持ちながら本作が初の大河出演です。円熟の殺陣、存在感は作品の厚みを増しました。ちなみに千葉さんの娘にあたる真瀬樹里さんも真田の女素破役で出演していました。板垣信方と、竜雷太さんが熱演する甘利虎泰が、夏までの本作を支え、この二人が討ち死にする「上田原の戦い」で中盤のクライマックスに!
「いたがぁきぃ~~!!!!」
絶叫する晴信の声は未だ脳裏に焼き付いて離れません。
両雄を失った武田晴信ですが、欠けた穴と補うように真田幸隆が仕官し、宿敵・村上義清にも勝利をおさめます。
そしていよいよ、越後の龍こと長尾景虎との決戦の時が迫ります。

 

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ある意味人間ではない……からこそハマッたGackt謙信

本格的な対決の前に、景虎は既にチラチラと出てはいました。
「思ったよりも悪くないんじゃ」という声をもありましたが、それでも出番が増えていざ激突となると、本当にGacktさんで大丈夫なのかという懸念があったのは確かです。

これが実はハマリ役でした。

本作の景虎は、戦以外どうでもいい、毘沙門天の生まれ変わりという自分で考えたシナリオに陶酔する、見ようによってはちょっと危ない人でした。
彼が敵を前にして、矢が飛んでくる状況野中、悠々と酒を飲む場面はその真骨頂で、
「この人はある意味人間ではないから仕方ないのではないか」
と納得させられました。

本作には「俗世に嫌気がさした景虎が家出して高野山に来てしまい、そこで偶然山本勘助と出くわして斬り合いになる」という、今思い出しても形容に困るような場面があるのですが、それでもこの景虎ならば仕方ないと思わせる、そんな奇妙な説得力がGacktさんからありました。

当初は受け狙いのイロモノ扱いされていたGacktさん。
しかし蓋を開けて見れば、写真集は出されるわ、謙信公祭に何度も呼ばれるわ、本作を象徴するキャストに数えられていたのでした。

Gacktさんを支える軍師・宇佐美定満役は緒形拳さんで、これまたいぶし銀で画面を引き締めています。主君にあたる大名を大河では見なかったようなキャストで固め、家臣を渋く実力のあるベテランで固めた本作のキャスティングは実に巧みでした。緒方さんを筆頭に上杉家臣団もバランスがよく、敵でありがなら実に魅力的に描かれていました。冒険をしつつもしっかりとしたキャスティング、骨のある脚本、それに応える役者の熱演、こうした要素がかみ合って、本作は愛すべき作品になっていました。

 

合戦シーンで人馬も予算も不足している

ここまで本作の魅力を書いてきましたが、欠点がないわけではありません。
私が考える最大の欠点は、原作とオリジナル部分の整合性が悪いところです。

序盤はじめ、オリジナル部分の方が優れていて、原作の中核にあった「高嶺の花である由布姫を神聖化し、あこがれる勘助」という要素があまりうまく取り入れられていなかった気がします。私は原作からのメインヒロインである由布姫よりも、オリジナルヒロインであるミツの方に魅力を感じましたし、由布姫が前面に出てくるパートはあまり面白くありませんでした。

もうひとつは佐藤隆太さん演ずる平蔵。勘助と裏表を為す人物であったあまり、うまく使いこなせておらず、彼個人の強烈なアンチすら生み出してしまったことです。「本作は好きだけど、平蔵は大嫌い」という感想もあったほどです。

そして最後に、これは本作だけではなく大河全体の課題ですが、合戦シーンの迫力不足があげられます。役者の熱演と殺陣でカバーしようとしていましたが、正直、不十分でした。
本作の合戦は不自然なまでにバストアップばかりが目立ち、人も馬も予算も不足しているのは見ていてわかりました。そこはそういうもの、と割り切って見るしかないと思います。個人的にはこうした欠点をVFXで補う時代が来るのではと期待しているのですが、まだ少しそれには早いようです。
このように今振り返ってみると、傑作と呼ぶには何かが足りない本作ですが、全体的にみてとても魅力にあふれた作品であることは確かなのです。

本作を語ろうと思ったらまだまだ魅力はつきません。
「ネットでいじられる大河」の元祖が本作であることにも触れておきたいと思います。
勘助にあっさり斬られる青木大膳、台詞の読み方に特徴があったため動画サイトでさんざんいじられた庵原元政など、大河ドラマをフリー素材にして遊ぶ視聴者が多かったのも本作の特長です。

 

内野聖陽さん、高橋一生さん、貫地谷しほりさんなども出演

最後に「2017年に『風林火山』を見る楽しみ」についてまとめて終わりとさせていただきたいと思います。

まずは出演者です。
『風林火山』で実力を発揮して、その後大河常連となったキャストが大勢出ています。今年のキャスティングですと貫地谷しほりさん、高橋一生さん。昨年の場合は徳川家康役の内野聖陽さんなど、例を挙げたらきりがないほどです。

そして本作を今見る最大の楽しみは、やはり「真田昌幸があこがれていた武田全盛期を見る」ことではないでしょうか。
『真田丸』のファンにとっては見逃せません。
昌幸の父である幸隆、役名こそ違うものの、おとりの若い頃も見られるのです。昌幸自身、北条氏政、徳川家康の少年時代も登場します。

『真田丸』の前日談、『おんな城主直虎』で今後たちふさがる敵となる武田信玄の物語として、本作は昨年や今年とまとめて二度おいしい、今だからこそ見て噛みしめる、そんな作品となっています。日曜の楽しみが倍増すること間違いなしです。

そしてこれは完全に個人的願望です。脚本の大森氏はいつ、大河に登板するのでしょうか。

篤姫』や『天地人』の脚本家が10年以内に再登板しているのですから、彼もまた是非とも大河を手がけていただきたいところです。お願いします、NHKさん!

※『風林火山』の再放送はNHK BSプレミアムで毎週日曜12時からになります。

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