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古代オリンピック想像図/wikipediaより引用

いだてん特集 ギリシャ

古代オリンピックは観客も超絶タフネス!酒あり、虫あり、動物の血あり

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2019年の大河『いだてん』は近代オリンピックがテーマです。
ストックホルム大会(1912年)に日本から初めて金栗四三三島弥彦が参加して、その後、スポーツの振興と共に嘉納治五郎氏が1940年東京オリンピックを招致――。

とまぁ、残念ながらそれは戦争やら過密スケジュールのせいで【幻の東京五輪】となってしまったワケですが、歴史サイトとしてはここで一つ気になることがございます。

そもそも五輪の起源となった【古代オリンピック】とは何ぞや?

そんな疑問を呈すると、多くの方が『えぇと、古代ギリシャでみんなスポーツっぽいことをしていたのよね~』と、なんとな~く思う程度ではありませんか。
しかし、これが探ってみると、なかなか面白いもので。

本日は、JOCのサイトには書かれていない、古代オリンピックの裏話に迫ってみましょう!

古代オリンピックの想像図(1915年作)/wikipediaより引用

 

古代オリンピックの基本情報

①どこで開催された?
→エーリス地方のオリンピュア(現在のギリシャ イリア県 アルヘア・オリンビア)

②いつ開催されていた?
→紀元前9世紀〜紀元後4世紀

③開催頻度は?
→今と同じく4年に1度

④どんな競技が行われていた
→主な陸上競技:短距離走、中距離走、長距離走

→主な格闘技系:レスリング、ボクシング、パンクラティオン(ルール無用なんでもありの格闘技)

→その他競技:戦車競走(流血もありの激しい競技だった)

戦車競走の様子/photo by Marie-Lan Nguyen 
wikipediaより引用

 

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害虫に襲われ、早朝から16時間立ちっぱなし

紀元前9世紀から紀元後4世紀にかけて行われたという古代オリンピック。

肉体を鍛え上げたアスリートたちが、己の限界を競い合う――。
それを観戦したいという願いは、今も昔も同じでしょう?と思いきや、古代ギリシャ人の方が熱心だったかもしれません。

なんせ観戦の環境がハンパじゃありません。

あの困難を耐えきるだけでも、相当なもの。
入場こそ無料ですが、それは苦行そのものでした。

・ギリシャに降り注ぐ容赦ない日光
→おまけに雷雨のときでも浴びっぱなしです

・早朝から16時間立ったまま
→選手より辛いんでは?

・蠅が大量発生!
→それ以外の害虫にも容赦ないほど襲われます

・不衛生
→下痢や発熱を訴える者が多数

・観戦中の食事はあやしい行商人が売る
→硬く、正体がわからないチーズやパンのみ

・川は干上がっていて水不足
→水分補給はワインです

・観客の汗
→猛烈に臭くなります

・宿泊施設レオニダイオンは一部しか利用できない
→一般客は野宿と自炊で乗り切らねばならない

いやぁ、これは厳しい。
観戦するだけで死にそうですわ。
それでも見たいという情熱が半端ないっすよね。

なんせ当時、奴隷に対して、
「反抗的だな。お前をオリンピック観戦させてやろうか!」
と脅すこともあったほどだとか。
こうなると、いよいよ観客の気持ちが理解できなくなってきます。

 

墓石にオリンピック観戦歴を彫りつけた人も

そもそも競技会場までたどりつくのも一苦労でした。

1日25キロ、熱暑の中、しかも水不足なのに歩いて会場まで向かう人もおりました。
どう考えてもキツイ。

ただし、幸いにも治安はよく、襲撃されることはありません。
オリンピックはゼウスや神に捧げる祝典であるため、観戦者を襲うことは罰当たりと信じられていたためです。

それでもくじけないのが、スポーツ好きの古代ギリシャ人です。

中には、墓石に自分のオリンピック観戦歴を彫りつけた人もいたほど。自慢したかったんでしょうねぇ。

古代オリンピックは女人禁制と言われておりますが、適用されたのは既婚者のみで、未婚女性は観戦できました。

スキタイ出身の哲学者アナカルシスからみると、古代ギリシャのスポーツ熱は理解しがたいものがあったようです。

「選手も悲惨、観客はもっと酷い。スポーツ観戦なんてあんなしょうもないことで、時間を無駄にしてなんなんですかね。私の国では暴力行為は犯罪ですけれども、ギリシャの人は大勢が見ている前で殴り合い(格闘技)をして、それを見て喜んで歓声まで送るなんて!」

そうボロカスに言うアナカルシスに、アテナイのソロンもぐぬぬぬ……となったようです。

「見ればわかるはずですよ! あの場で観戦して歓声を送れば熱気がわかるはず! 選手の見事さに拍手をせずにはいられないはずなんです!」

スポーツ観戦熱狂派とアンチのやりとりって、この頃から似たようなものかもしれません。

ソロンと称される胸像/wikipediaより引用

 

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酒とスポーツ観戦

スポーツ観戦しながら飲むビールは最高!
そうやってサッカーW杯やプロ野球を楽しむ方もおられるでしょう。
実際、スポーツバーでは、観戦と酒を同時に楽しむお客さんが大勢おりますもんね。

これは古代オリンピックでもそうでした。

オリンピックは神に捧げるもの。
酒の神であるディオニソスに祈りを捧げるといえば、ワインは飲み放題です。
競技場周辺はこうしたワイン屋台だらけでした。

古代ギリシャのワインを注ぐボーイ/wikipediaより引用

ワイン屋台はもともと都市部にあり、やや格が劣るものとして庶民的とされております。
しかし、オリンピック観戦者はそんなことはお構いなし。
好き放題に飲んだくれました。

古代ギリシャのワインは、アルコール度が15-16パーセントと高いことが特徴です。
現在のものは平均12.5パーセント程度。
ブドウの種やカスも浮かんでいて、強烈な味でした。

そのため、酒豪でもなければ、いったん漉してから水で薄めることが一般的な飲み方でした。
ワイン2:水3で薄めるのです。

こうした屋台ではヒヨコマメ、生イチジク、スライスしたソーセージ、ビーツ、豚肉の塩漬け等がおつまみに出されたとか。
このおつまみで足りなければ、食事を出す屋台に行くこともできました。

 

オリーブオイルなしじゃ入浴できない!?

オリーブオイルと聞いて、皆さんは何だと思いますか?
食材というのが一般的な答えになりますよね。

同じ質問を古代ギリシャ人にしたら、全然違う答えが返ってきます。

「入浴に欠かせないよなァ」
「スキンケアに必要でしょ」

現代日本でもオリーブオイルのスキンケア用品がありますが、古代ギリシャの使いっぷりの前ではガキの使い状態。
オリンピック選手の入浴でも、オリーブオイルは欠かせません。

練習で汗を流した選手たちが向かう浴室には、ライオンの頭の形をした蛇口がズラリ。
シャワーのように、高い所から流れる水もあります。

ここでまず、髪の毛や全身にすり込むのがオリーブオイルです。
石鹸のかわりに、アルカリ性の粉や灰など「洗うための粉」もすり込みます。

オイルとすり込んだ粉を、ストリギルまたはストレンギスという三角形のヘラでこすり落とすのです。

こうしてこすり落としたあとは、香料入りのオリーブオイルを、マッサージ師によって全身にすり込んでもらいます。

つまり、オリーブオイルはシャンプーとボディソープ、マッサージオイルを混ぜたようなものでした。
古代オリンピックの選手たちは、汗とオリーブオイルにまみれていたのです。

オリーブオイル抽出用の古代ギリシャ式石臼/wikipediaより引用

 

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会場は動物の内臓まみれだった!?

古代オリンピックは、スポーツの祭典だけではなく宗教儀式でもありました。
そうなると、神に犠牲を捧げる儀式も開催されるのです。

捧げられたものといえば動物です。
オリンピックの会場には、生贄のためのたくさんの牛が列を作って入場してきました。

神殿の祭司が、ゼウスはじめ神像の前で、こうした動物を解体してゆくのです。

オリュンピアのゼウス神殿跡/photo by Roccuz wikipediaより引用

スポーツ会場で動物が大量に解体されるのですから、現代人からすればびっくり仰天。
蠅を追い払うための礼拝も開催されたといいますが、そもそも動物が解体されるならば、そりゃあ蠅も大量に湧くことでしょう。

地面には血が流れ、内臓まみれとなったオリンピック会場。
しかし観客は、楽しみにしていました。

「やったぜ、肉が食える!」
庶民にとって肉は高級グルメです。
犠牲となった動物の肉は、宴会で観客にふるまわれたのですから、ありがたいものでした。

観客たちは肉を味わい、大いに騒ぎました。
スポーツと肉食ありの宴会があるのですから、ハマる人はハマったことがよくわかりますね。

 

美青年の汗と血! 熱愛のギムナシオン

現代のオリンピックでは、選手村で避妊具が配布されることがあります。

これは古代オリンピックと照らし合わせても、大いにアリの伝統。
観客側の下半身事情からしますと、彼らがどやどやとワインを飲んで騒いでいる横で、娼婦たちも大勢商売のチャンスを待ち受けておりました。

しかし、彼女らにとっても中々厳しい環境であったようで。
汗で化粧が剥げてしまったり、稼ぎ時とはいえ、なかなか辛いものでした。

選手たちにとっても、オリンピックはロマンスを得る場所です。

「性欲にかられると運動競技に悪影響がある!」
そう主張し、犬の交尾すら見ないようにする選手も中にはおりました。

しかし、これはあくまで少数派。
当時のスポーツ選手は、全裸で競技をしていました。しかも、古代ギリシャでは若い男性を愛することこそ神聖な愛と考えられていたのです。

古代オリンピック選手は全裸でした/wikipediaより引用

そんな古代ギリシャで、若くて健康、筋肉の引き締まった選手が、ギムナシオン(競技場)に群がるのですから、これはもうたまらないものがあったのです。

古代オリンピック選手は、走る時も全裸です。

何も起きないはずが、ない。
選手とのロマンスを夢見て、ギムナシオンに出入りする美少年たちも出没しておりました。

「幸せな恋人たちはギムナシオンで汗を流し、帰宅すると美しい恋人とぐっすりと安眠する」
そう詩人が表現するほど、ギムナシオンは熱愛の場になりました。

レスラーが競い合うレスリング、殴られて血を流すボクシング競技は、悶える美青年好きを悩殺しまくったようです。

古代オリンピック。
それは流れる選手の汗や血に身もだえし、
「美しいッ、辛抱たまらん!」
と、詩人が悶絶した句を残す場でもあったのです。

いかがでしょうか。
現代人からすれば過酷な観戦状況、動物の内臓まみれという、驚くべき古代オリンピック。

しかし、スポーツ観戦や屋外での飲酒飲食の楽しみ、スポーツ観戦大好き派の情熱は変わりませんよね。
スポーツ観戦は、昔から楽しいものであったのですね。




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文:小檜山青

【参考文献】
驚異の古代オリンピック』トニー・ペロテット
オリンピック物語―古代ギリシャから現代まで (中公新書ラクレ)』結城和香子

 



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