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北条泰時は貴族と武家の間にいかなる“革命”をもたらした? 東京大学・本郷教授の「歴史キュレーション」

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日本中世史のトップランナー(兼AKB48研究者?)として知られる本郷和人・東大史料編纂所教授が、当人より歴史に詳しい(?)という歴女のツッコミ姫との掛け合いで繰り広げる歴史キュレーション(まとめ)。

今週のテーマは【北条泰時は貴族と武家の間にいかなる“革命”をもたらした?】です。

 

【登場人物】

本郷くん1
本郷和人 歴史好きなAKB48評論家(らしい)
イラスト・富永商太

 

himesama姫さまくらたに
ツッコミ姫 大学教授なみの歴史知識を持つ歴女。中の人は中世史研究者との噂も
イラスト・くらたにゆきこ

 

◆日本史上唯一の革命家は…北条泰時 大澤真幸さんの論考に注目 朝日新聞 11月23日

本郷「うわあ、これは腰を据えて話し合わなければいけない問題だねえ」
「こういう大きな事を歴史学者が言うんではなくて、社会学者が説く。その辺への思いはないの?」
本郷「そりゃあ、あるよ。似たようなことは歴史研究者だって言ってるはずだ。けれども、『革命』とか、みんながビックリするような内容のことを言うという点で、大澤先生の仕事の意義は大きい、というべきなのかな。あと、ほら、小者の歴史研究者が言っても、メディアは注目してはくれないでしょう?そういう問題もあるしね。でも、うーん、世の中が受け入れやすいように工夫しない歴史研究者が悪いんだよな、やっぱり・・・」
「あ、落ち込んじゃった。まあ、世の中に学問成果を浸透させるやり方についてはまた考えることにして、中味はどうなのよ、中味は」
本郷「そりゃあ、突っ込みどころはいっぱいある。まず、承久の乱を戦った主体は北条泰時ではない。北条義時だ。後鳥羽上皇の追討令は『北条義時を討て』だからね。つまり、こいつこそが朝敵だ!と名指しされてもそれを跳ね返して、上皇を隠岐島に流したのは義時なんだよね。泰時は義時の長男。代理に過ぎない」
「それは基本的なところね。その他には」
本郷「これは義時にも泰時にもいえることだけれど、彼らは天皇を頂点とする秩序を否定したわけではない。 義時は従四位下で陸奥守がいちばん高い位階と官職かな。泰時は正四位下で左京権大夫だ。こんなものどうでもいい、とは思っていただろうけれど、ちゃんと伝統的な朝廷の官位体系の中に身を置いているんだ」
「オレは日本列島の中で一番の実力者なんだから、太政大臣にしろ、とか言わないのね。それどころか、武士の分際をわきまえるかのように、一流貴族の証である『三位』には手を伸ばしてないわね」
本郷「それにね、なんといっても、幕府のトップとして貴族や親王を置くじゃない」
「4・5代の将軍は藤原摂関家から、6代以降の将軍は皇室から迎えられるのよね」
本郷「幕府としては初めから親王を将軍に据えたかったんだけど、後鳥羽上皇の拒絶にあって、4代、5代はやむなく摂関家から迎えたんだね。まあ、そのことからも分かるように、北条義時、泰時は『秩序』をひっくり返そうとはしていないんだ。『革命』というものの第一義は『秩序をひっくり返すこと』じゃないのかな」
「なるほど、そういう考え方もできるわね。じゃあ、泰時のやったことはちっとも大きなことではなかったの?」
本郷「いや、そんなことはない。法の問題だね。そこに着目した大澤先生はさすがだといえる」
「泰時は『御成敗式目』を制定し、それをもとに政治を行ったのよね」
本郷「そうだね。だけど、ここにも問題はある。泰時は、日本列島全体にこの法を適用しようとしたわけじゃない。ここは要注意だ。あくまでも武士の社会。武士の社会において有効だ、とした」
「あら?そうなのね。じゃあ、貴族が統治する荘園や、お寺、神社が支配する荘園には適用されないの?」
本郷「そういうこと。ただしね、貴族やお寺や神社が武士と争う場合。これには『御成敗式目』が用いられる。幕府の法廷の判定が有効となる。けれども、もう一度念を押すと、朝廷が昔から持っていた『律令』や、貴族や寺社(これをひっくるめて本所という)が作っていた『本所法』。これらについては関与はしない。『御成敗式目』はこれらを否定するつもりはない、と泰時自身が言明しているんだ」
「そうなんだ。じゃあ、泰時の功績って何なの?」

貴族

本郷「それでも、東国にきちっとした政権を作り上げた功績は計り知れないと思うよ。革命といっても、おかしくない。それから、法と権力の関係かな」
「うん?それは?」
本郷「楠木正成の旗印と伝える有名な言葉は知ってるかな?『非理法権天』というんだけれど」
「聞いたことある。『理は非に勝ち、法は理に勝ち、権は法に勝ち、天は権に勝つ』だっけかしら?」
本郷「よくご存じで。その通りです。この中でね、法と権力の関係が問題なんだな。この言葉では権力が法に優先しているわけだけれど、泰時以前の日本の政治権力はまさにこの状態だ。権力は法の拘束を受けなかった。権力はその都度、その都度、自分に都合の言いよいうに法を作ったり、決定を下したりしていた」
「そんな状態では、権力がわがまま放題をやり出したら、誰もそれを止められないわね。あ、でも、白河上皇や鳥羽上皇などの『院政』という政治形態はそういう状態なのか」
本郷「そうだね。泰時が直面していたのは、後鳥羽院政、と言うことになるかな。でも泰時はこれに『No!」を突きつけた。法が権力のあり方をしばる。そういう事態があるんだ、ということを世の中に明示した。この功績はものすごく大きいと思うよ」
「『御成敗式目』は天皇や貴族の行動を拘束できないんでしょう?それでも?」
本郷「うん。それでも。『法治』というものがある、ということをきちんと示した。政治的には貴族に比べて弱者であった武士がそれを成し遂げた。北条泰時はすごい人物だと思うな」

 

 

 

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