こんばんは、武者震之助です。
前回、徳川家康の寝所で主君を救った井伊万千代(井伊直政)は、一万石に加増されました。
家康を襲った近藤武助は一族もろとも処断されたものの、岡崎衆への処罰はそれだけでは終わらないのです。
ここでちょっと引っかかることがありまして。
前回、万千代が肩の刀傷を見せ付けるまで、上層部以外の徳川家臣団は暗殺未遂事件を知らない様子だったことです。もしかして、万千代が啖呵を切るために重要機密をバラしてしまった?
その事件によって、裏切り者・武助の動きを見逃した岡崎の家臣たちは処罰を受けます。
城下町への居住を許されず、それぞれの領地から通うことにされてしまうのでした。
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家康と側室の間に弟(後の秀忠)が生まれた!
不満を漏らす家臣たちを、家康の嫡男である徳川信康(松平信康)は「さらなる武功を立ててこの決定を覆そう!」と励まします。
誠意とカリスマ性あふれる信康の元、家臣団の不満を漏らす声はおさまり、岡崎衆はさらなる活躍をすべく張り切るのです。
どうにもここは。岡崎と浜松の温度差が気になるところ。
そんな中、家康の側室に長丸(後の徳川秀忠)が誕生します。家康の実母である於大の方は、長丸の傅役を探したいと言い出します。
「武勇と学問に優れ、できれば若い者」
そんな条件を聞いて、「これって俺しかいないじゃん!」と一人で勝手に盛り上がる万千代。顔芸が面白いです。
榊原康政が万千代に何か頼もうとすると「いくら私でも傅役なんてぇ~」と先んじて浮かれます。
こういう漫画のような場面に説得力と愛嬌を加える菅田将暉さんの演技力よ。
しかしこれはぬか喜びで、「このことについて岡崎へ連絡に行け」と言われてしまいます。
万千代の浮かれぶりを冷静に見つめ、ビシバシと反論する康政が今週もカッコイイ。
信康に男児が産まれれば跡継ぎとして盤石に
万千代が岡崎で長丸誕生の件を伝えると、信康と瀬名(築山殿)は何やら微妙な雰囲気になります。
めでたいことであるとはいえ、複雑な様子。
岡崎は立場が弱く、弟・長丸の生誕すら素直に喜べないのです。岡崎のために何かしたい、と考え始める家康でした。
一方、瀬名は信康に側室をすすめようとします。
信康に男児を産ませ、跡継ぎとしての地位を盤石にしたいわけです。
側室腹であろうと、子は(正室の)徳姫の子にする――。
と、こういう台詞に、本作の良さが宿りますよね。側室を愛人扱いするようなドラマとは一線を画すところ。
織田信長にとっても、婿の信康が盤石の地位となるのはよいはずだ、と判断するのです。
かつて瀬名も、側室の存在に苦しめられたことでしょう。
今川縁故の正室である瀬名よりも、側室を可愛がる姑・於大の方に対して、苦い思いもあったはずです。
それでも瀬名は、勧めねばならないのです。
信康の弟誕生も方久にとってはビジネスチャンス!
井伊谷のおとわの元に、瀬名から「井伊関係の女性で側室候補はいないか」と手紙が届きます。
年頃の娘か、出産経験のある後家か。
そこへ瀬戸方久も飛んできます。
どうやら長丸誕生をビジネスチャンスと考えているようです。方久は側室探しすらビジネスチャンスと考えますが、おとわは断ります。
御家騒動に巻き込まれるなんて嫌だ、と考えたのでした。
苦い経験が彼女を成長させています。昔なら、高瀬あたりを勧めていたかも。
方久はもったいないと不満を漏らし、南渓は「竜宮小僧になると言っていたくせに、冷たい鬼ババアになってしまって」と不満そうです。
まぁ、これがおとわの成長ですから。
そのころ、信長の元にも、信康の妻であり信長の娘である徳姫から、手紙が届いていました。
岡崎の状況を聞いた信長は、何か考えがあるようです。
「徳は、夫思いじゃのう」
そう言うと、鳥籠の中にいる小鳥を火縄銃で撃ち殺すのでした。
この台詞と行動から、信長は徳姫とは別に何か考えているとわかります。
信長が、父と同等の官位を授けようとするのはナゼだ
信長の家臣・明智光秀が岡崎の信康のもとへやって来ます。
光秀は信長からの伝言を預かっており、まず『(信長が)義理の父として岡崎を助けたいと言っている』と伝え、更には「従五位下」の官位を打診するのでした。
信康はきっぱりと断ります。当然です。
それは父と同じ位なのですから、もしも勝手に受ければ波乱は必至。
『真田丸』でも真田信之・真田幸村兄弟が官位をめぐりギクシャクしていました。
官位というのは、それ自体に武力はなくても、時に取扱が厄介なものなんですね。
「お志のみ、ありがたく頂戴すると、そう信康が申しておったとお伝えくださりませ」
そつのない対応です。
信康は信長の狙いを見抜いておりました。
徳川父子の仲を裂き、父に叛旗を翻させたいのだと。その手には乗らないわけです。信長が与えようとした茶碗も固辞しておりました(第43回)。
家康は、岡崎衆に岡崎城下へ戻すことを許し、家康と信康の本拠地を交換しようと考えます。
浜松の家康が、岡崎に。
岡崎の信康が、浜松に。
万千代は、織田に対する徳川の過剰な気遣いに、ちょっと不満そうです。井伊が今川に頭を下げていたのを思い出すのです。
成長過程で「どうにもならないこと」を学んでいく。
屈辱的でも、頭を下げねばならないことを学んでいく。
そういうことなのでしょう。それはかつて、おとわたちがたどった道でもありました。
信長「(家康は)なぜ余を欺こうとするかのう」
酒井忠次が安土城の信長の元へ使者として向かいます。
スラスラと家康からの感謝の気持ちを伝えますが……信長はこう返します。
「信じているというのは言葉ばかり。なぜ余を欺こうとするかのう」
ひぃっ、圧迫面接か!
信長の冷酷な詰め方を前に、忠次は動揺するばかり。
徳姫から届いたという信康の悪行の数々を、光秀が述べ始めます。
岡崎が謀叛を考えているのだろう、そういう話も無理はないと半ば決めつけの信長。
反論を許さないまま、こう話を持って行きます。
「岡崎だけの謀叛として岡崎を処断するか? それとも浜松と岡崎両方で企んでいるとして、徳川ごと潰すか?」
いつの間にかこの二択をつきつけられ、まだマシな方の岡崎切り捨てを暗に認める羽目になる忠次。
これはつらい、辛すぎる……。
「つまり信康が勝手にやっておると、考えてよいのじゃな」
これにて誘導尋問、完成です。
この間一分もありましたっけ? 一瞬。瞬殺。辛い。
酒井忠次って、徳川家中屈指の切れ者という扱いですよね。
そんな彼が一瞬でこの状況です。今までどちらかというと嫌な奴扱いでしたけれども、ここは同情しかありません。
どれだけ信長強いんですか。
忠次でもこれなんだから、そりゃあ中野直之と奥平六左衛門が怯えるわけですよ(第43回)。
今年の信長は本当に恐ろしい。
まずは真意を探るため康政が派遣されるも……
戻った忠次の報告を聞いて、家康主従は愕然とします。
この場面、家臣それぞれの反応に個性が出ています。
家康は静かに、それでいてはっきりと怒りを見せます。
「まさかこの機に乗じて、信康を廃してしまおうと思うておるのではあるまいな?」
家康がそう言いだし険悪になったところで、康政が「岡崎が本当に謀叛を企むつもりか調べねば!」と止めに入ります。
そこで康政は岡崎へ向かい、家康と信康本拠地交換の話を瀬名に語ります。
岡崎に来るのが万千代ではなく、康政という時点で事態は悪化しているわけです。
康政の胸中は複雑でしょうが、表面的にはニコやかに、さわやかな弁舌です。
この辛い心境でありながらさわやかなふりをするという、そういう演技が素晴らしいですね。
「あの、側室たちを浜松へと連れて行ってもよいですか?」
そう言われ、さしもの康政も動揺します。
水面に小さな石が投げられたような、小さな動揺の表現がいい!
なぜ康政は動揺するのか。
それは、瀬名がふさわしいと選んだ側室が、武田旧臣の娘であったからなのです。
これはまずい、まずいですよ。
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