こんばんは。
『西郷どん』でも、ついにあのビッグネームのキャストが決まりました。
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小栗旬さんは、若手とはいえ7度目の大河ドラマ出演です。
納得感のあるキャスティングではありますが……正直なところ、
「京都の飲み友達」
にならないか不安です。
一橋慶喜と橋本左内も今のところ飲み友達ですし。
あっ、でも、今回で慶喜は変わるかな。
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やっぱり幕府は無能ですか……
さて今週ですが、のっけから
【アメリカ総領事ハリスが将軍・徳川家定(又吉直樹さん)に謁見するが、幕府は対応策がなく混迷を極めていた――】
という、あらすじの時点で軽くキレそうになりました。
幕府に対応策がない?
それって昔の子供向け歴史マンガのようでして……。
幕府には、対応策がないどころか、ハリスが絶賛するほど当時の幕僚は真面目に、しっかり仕事をしていたんですってば。
一橋派も理解していて、ハリスと交渉した岩瀬忠震と親しかったんですよ。
それを無能で成長性ゼロの島津斉彬がダメ出ししたり、遊郭で瀉血していた橋本左内が批判したりするんかいな?とか思うと、やるせないんですよね……。
慶喜だけじゃなくて、制作者も全員で本気出してください。
日米修好通商条約でバリバリ活躍された岩瀬忠震のお話は下記に詳細ありますので、よろしければ皆様ご参考までに。
実はアメリカを圧倒していた幕臣・岩瀬忠震の何が凄い? 日米修好通商条約の真実
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「御台ともいくひさしくゆーこーをたも」
【わっぜよかBGM】を流しながら、西郷どんと大久保正助どんが熊本で別れます。
正助は鹿児島へ戻り、吉之助は江戸へ。
そして安政4年(1857年)10月21日。アメリカからタウンゼント・ハリスが将軍・家定に面会にやって来ました。
ちなみにハリスの横にいるのが通訳のヒュースケンです。
日本を愛した好青年でありながら、刺客の刃に斃れてしまう切ない運命の持ち主でして。
そのヒュースケンを斬った一人が薩摩藩士の伊牟田尚平であり、西郷どんは後に、彼を使って江戸で暴力的なテロを繰り返させるわけですが、本作ではやらんでしょう。
幕末日本を愛したオランダ青年 ヒュースケン殺害事件が悲し過ぎる
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せわしなく足をふみ鳴らす家定。
「いくひさしくゆーこーをたもつ」
そう何度も繰り返します。
ハリスとの会見について篤姫に報告する家定。御台が笑うと余もうれしい、だそうです。
家定のドラマ初登場前、
「堺雅人さんすら超えるかも」
とCPが自信満々だったワケですが、すみません、私にはやっぱりわかりません。
単純に、あまり魅力を感じられないんですよね。
「御台ともいくひさしくゆーこーをたも」
ってさぁ。
うつけのようだけども、一年経てば心を通わせるようになったとナレーションが語りますが、そんな場面、今やっと出てきたところですよ。さすがに唐突過ぎやしませんか。
悪いのは堀田じゃない 斉昭なんだ
西郷どんは、島津斉彬からの手紙を松平春嶽に届けます。
春嶽の外交事情に対する理解度もあやしい――ほんの僅かながら、そんなアヤフヤな会話が続きます。
ここの場面で堀田正睦が出てくるのですが……。
彼もまた無能で気弱という設定です。
これはむしろ真逆でしょう。
調整派タイプの阿部正弘と違って、堀田はガツンと徳川斉昭にダメ出しをして、幕政から追い出しているんですよ。
なんだか、堀田が悪いような誘導を感じましたが悪いのはどう考えても斉昭でして。
後年、幕府崩壊の一因として、
【徳川斉昭を幕政に参加させた】
ことがあげられるくらいトラブルメーカーでした。
実際、一橋派が失敗したのも、この人を引き込んだということが大きいのです。
どうせ本作は、そのへん曖昧にしてすべて井伊直弼あたりに押し付けるんでしょうね。
つくづく本作から幕末政治史を学んではいけない。
しかも本作の一橋派の何がダメかって、肝心の一橋慶喜のやる気がゼロどころかマイナスなところなんですよ。
今週のサブタイトルからして、そのマイナスをやっとゼロまで持っていくようです。
篤姫の時も思いましたが、
【マイナスからスタートさせてゼロに持っていくことを、成長と言い張る】
のはもうやめましょう。
まあ、西郷どんと島津斉彬に関しては、ゼロに到達できるかもあやしいです。
特にもうすぐ退場の斉彬が……。
左内が『慶喜言行録』を刊行して
その慶喜説得のために、品川宿・磯田屋へ。
毎回、【品川宿】と出ると憤怒の形相になる私がおります。ぬぐぐぐぐぐぐ……。
一年ぶりに登楼した西郷どんは、橋本左内と一緒に何やらやっております。
ドラマではなく、私事で恐縮ですが、この前、福井の知人から、
「幼い頃、左内公園で遊びました。大河に出ると知り期待していたのに、遊郭に引きこもっていて辛いです」
と愚痴られまして。
辛いですよね。
やっていることが駄目治療法だった【瀉血(しゃけつ)】と、遊郭引きこもりでは……。
んで。
ドラマに戻って、公式設定では【バディ】だという西郷&左内の二人が何しているかというと。
「慶喜がいい人だとわかってもらえるよう、言行録=慶喜公ちょっといい話みたいなのを書いて刊行する」
というもの。
はー……中学校の生徒会選挙じゃないんだからさ……。
これに慶喜が文句を言い出すのですが、いくらびっくりエピソードがあっても、品川宿で女遊びしている時点でマイナス一億点ですってば。将軍失格じゃないでしょうか。
しかも、そのエピソード集が慶喜本人に破り捨てられてしまうのです。
じゃじゃーん、写し! って、そりゃそうでしょうよ
慶喜の説得を始めるバディ。
左内はここで、
「異国の脅威を知って言うからこそ逃げているのでは?」
とかヌカします。
いい加減にしてくれよ。
こいつら、いつまで
「俺は外国の脅威知っているんだ! 危機管理能力あってすごい!」
とか眠たいことぬかしとんねん。
幕閣はそんなんとっくに通過して、開国しかないという結論に至っているというのに。
地方でイキッてる尊王攘夷派の青年ならまだしも、橋本左内にこんな馬鹿な台詞を吐かせないで欲しいのです。
それよりなにより、なんでこんなサボタージュしているバカボンを必死で説得しているのか、という疑問。
こいつが本当に日本を守ると思っているのでしょうか。
もう駄目だよ、一橋派。戦う前から負けてる。
慶喜が出ていくと、左内は破られたエピソード集の写しはいくらでもあります、と言い出します。
そんな当たり前の工夫ごときで知性をアピールしないで……。
こんな調子ですと、デタラメ治療だった瀉血の時が、智謀が輝いていた頂点になりそうで不憫です。
大声で名や身分を語るってどうかしてる
島津斉彬が幕府へ建白書を出した、と語られます。
内容は、将軍継嗣問題について、【慶喜で決めるように】と書かれておりました。
慶喜がああいうバカボンですので、何寝言をぬかしとんねん、という気持ちになってしまうのが、ドラマとして大問題でしょう。
幕閣を馬鹿みたいに描いているのはわかりますけど、それ以上に一橋派が残念に見えてしまう状態です。
相手がどんなに幼かろうが、こんなの徳川慶福一択でしょ。
そのころ、西郷どんと左内は磯田屋で何かしています。
まさか、ほっこりエピソード集の書写とか言いませんよね?
てか、印刷ではダメ? 割に合いませんかね。コストならいくら負担しても良さそうですけど。あるいは機密文書だからってことですかねぇ。
それにしても本作の制作者はおかしいと思わないのですか。
主役とそのバディはナゼ夜、誰がいるかわかったものではない遊郭で仕事するのですか。
ここまで人を馬鹿にした設定もないでしょうに。
実際、そこにアヤシイ男が登場。追いかけて行くと、長野主膳がいます。
この脚本家さんは、長野がどういう男か調べたんですよね?
そうとは思えない無茶苦茶っぷり。大声で、自分の身分とどの家に仕えているか名乗るってアホではないだろうか。
吉之助さぁ、冷静になって 幕府は、外国の言いなりではないですよ
井伊直弼の屋敷で茶を飲む西郷どん。
ここでさして中身のない会話が交わされます。
慶喜のような男じゃ駄目と言う相手に、
「一筋縄ではいかんからこそ、異国の言いなりにならんのでごわす!」
とイキリ顔で決める西郷どん。
井伊殿。茶釜ぶつけていいですよ、こんなん……。
一橋派は何から何まで駄目なのか。
ハリスと対等な交渉をした岩瀬忠震がいるのをガン無視したムーブにめまいが止まらない。
確かに当時、ハリスと幕府が交渉したことにキレている人は大勢いましたけどね。
そういうのは中央の情勢に疎い尊王攘夷派の青年とか、そんなんですよ。
幕政に近い立場にいながら、
「異国の言いなりになるなんていけないんだァーッ!」
とか言いつのる一橋派どもにはウンザリです。
水戸はまあ徳川斉昭があんな調子ですから仕方ないけど、君臣共々開国支持派だった薩摩と越前、何やってんすか!
幕府は、決して言いなりになってねえっす。
関税だって清が5パーセントだったのに対して20パーセント以上なんだからむしろ健闘しているんですよ!(※関税が清並に下げられたのは、このあと続発した攘夷事件のせいです)
もうさ、ほんとうにさ。
ここまでジョン万次郎とか強引に出して、異国を追い払うのは無理っていう結論に至ったじゃないですか。
吉之助は、ナゼ、そういう事情を知らない?
それどころか
『異国の言いなりになっては駄目だ』
ってイキるのはどうして?
正論をかます井伊と長野にガチ切れて、
「殿を愚弄するな!」
と言うのはあまりにトンチンカン。愚弄しているのは吉之助のほうになっちゃってます。
明治政府の政策は、幕臣のアイデアをトレース!?
「殿はこん国を守るため、国を変えようとしとっちょじゃ!」
私の困惑をよそに、なんかカッコイイと思っているらしい決め台詞を言う西郷どん。
嗚呼もう嫌だ、心底ガッカリです。
島津斉彬が【倒幕】を意図していたかどうかは脇に置いて……単純な幕府無能論は、あまりに浅はかです。
幕府は変わろうとしています。
だからこそ、外様の薩摩でも建白書を出して風通しをよくしているわけなんですよね。
そういう状況を全部無視して、いくら何でも酷すぎやしないですか。
なんせ、明治政府のした政策って、この時点で幕臣が考えていたことのほぼトレースです。
倒幕=世直しと言いたいのでしょうが、本作からは何も伝わって来ません。
極めつけは、ここで井伊が西郷どんを自分の陣営に引き入れようとする点です。
理解不能。
だって西郷どん、あまりに無能過ぎるのですよ……。
スパイになって書状の内容を伝えさせるだけにしても、手の内に置いたらリスキーな気がします。
パンチのある台詞を、顔芸しながら、やたらと叫べばドラマチックだと思っているらしいですね。そんなことないですよ。
西郷どんを買いかぶることで、井伊も残念な人に見えます。
本作の問題点はまさにそこで、糸や篤姫が西郷どんに惚れる理由も、斉彬や井伊が高く評価する理由もわかりません。
西郷どんがモテたことがポイントなのに、その魅力が未だにわかりません。
もう14回なのに。
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