縄文時代における食文化(以下の記事)で、少し虫歯の歴史にふれたところ、
縄文人は貝ばかり食べて「ノロウイルス食中毒」にならなかったの?
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「もっと虫歯ネタが知りたい!」とのリクエストを頂戴しました。
本職は内科医ですので、ぶっちゃけ歯のことは詳しくありませんが……さっそく虫歯の原因や、その歴史を辿ってみましょう!
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原因はミュースタンス菌の作り出す酸
悪魔のような虫歯菌がツルハシやドリルで歯に穴を開ける――。
皆さんは幼い頃、絵本などでそんなシーンを見たことがありませんか?
虫歯をおこす代表的な菌は『ミュースタンス菌』です。
もちろん悪魔のような姿ではないですし、歯を溶かす道具はドリルではありません。
ミュースタンス菌によって歯が溶けるのは、菌の作り出す『酸』が原因なのです。
この菌は、食品の中の『糖質を原料にして乳酸などの酸』を作り、結果、歯を溶かすのですが、このことを『う蝕(うしょく)』と言い、溶けた歯を『う歯(虫歯)』といいます。
1881年頃にこの事実が判明するまで、虫歯の原因は『歯の中の虫』だと考えられておりました。
ミュータンス菌の酸によって歯表面のエナメル質が少し溶けた程度であれば自然治癒もありますが、象牙質まで進むと痛みが進行します。
そして、う蝕が歯髄(しずい)まで到達すると歯髄炎をおこし、放置をすると歯質がもろくなって最終的にはポロッ。
読者の皆さまの中で、これを経験した方はおありでしょうか?
ちなみに私は大丈夫です♪
縄文人に虫歯が多いのはナゼ?
ともかく糖質をとらなければ酸の原料がないので虫歯にはなりません。
よって野生動物には虫歯がないとの報告があります(チンパンジーなど果物を良く食べる種には虫歯ができることがあるそうです)。
旧石器時代の人類の化石にも虫歯はあまりなかったそうです。
しかし、狩猟採集生活から、農耕生活へ移行すると虫歯は増加しはじめます。
日本の縄文人の虫歯率は約8%。
実はこれ、世界の狩猟民族が1-3%の虫歯率であるのに対しかなり高率です。
前回の記事でも触れましたが、このことからも縄文人はドングリやクリなどの『炭水化物(糖質)』を多く摂取していた食生活がうかがえます。
それが証拠に、同じ縄文人でも針葉樹林ばかりでドングリやクリがない北海道縄文人では虫歯率が2.4%と狩猟民族の平均並みまで下がります。
歴史って本当に面白いですよねー。
弥生人の虫歯率は倍増でさらにドンッ!
さてさて農耕が始まると虫歯率が増えるのは世界に共通した現象ですが、日本でも例外なく倍増しております。
弥生人の虫歯率は16-19%で、世界の中でもダントツ!
西洋では西暦1000年頃までは3~4%であり、どの集団も10%以下だったそうです。
それが西暦1000年ごろ、サトウキビが西洋社会に紹介されたことを契機に虫歯率が大きく増加し、24~25%ほどになったとあります。
つまり日本の弥生人は時代を1000年先取りしてたんですね~。悪い意味ですが(笑)。
ちなみに今でも日本は虫歯が多い国です。
では、日本の歴史に歯科が登場するのはいつ頃か。ご想像つきますでしょうか?
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