今回の患者さんは、大友家に仕えた九州の猛将・立花道雪。
立花誾千代の父にして、立花宗茂の義父であり、1585年11月2日(天正13年9月11日)は命日となります。
その道雪さんが
【若い頃、雷に打たれて左足が不自由になった】
という伝承がありますので、何やら医学的に興味をそそられる事項。
いつものように現代医療の観点から斬り込んでまいります!
お好きな項目に飛べる目次
大木の下に居てはいけませんっ
雷に打たれたとはどういうことなのか?
まずは、その落雷伝説をwikipediaからの引用で確認してみましょう。
道雪が故郷の藤北で炎天下の日、大木の下で涼んで昼寝をしていたが、その時に急な夕立で雷が落ちかかった。
枕元に立てかけていた千鳥の太刀を抜き合わせ、雷を斬って涼んでいたところを飛び退いた。
これより以降、道雪の左足は不具になったが、勇力に勝っていたので、常の者・達者な人より優れていた。
さて千鳥の太刀だが、雷に当たった印があった。これより千鳥を雷切と号するようになった。
大木の下で昼寝をしていた道雪さんに落雷――。
このエピソードは必ず道雪の愛刀・雷切と一緒に語られますね。
今回はまず、医学的ではなく科学的なツッコミから進めてみたいと思います。
それは……
落雷の恐れがあるときに大木の下に居てはいけません!
というものです。
雷はどこにでも落ちる可能性がありますが、近くに高いものがあるとこれを通る傾向がある。
気象庁のホームページにも、“高い木の近くは危険ですから、最低でも木の全ての幹、枝、葉から2m以上は離れてください”と書いてあります。
道雪さん、木の下で昼寝をしている場合ではないんです。さらには
通電しやすい長いものを持つのも危険です!
落雷には、【直撃】と【側撃】という2つの落ち方があります。
木に雷が直撃した場合、電流は木を伝わって地面に流れますが、より伝わりやすい性質のものが近くにあればそちらにも流れるのです。
雷による事故の殆どは、こうした【側撃】によるもの。
高い木などから離れる必要があるのはこの側撃を避けるためなんですね。
道雪さん、も、も、もしかして、【千鳥の太刀】を持っていたのが雷に打たれた原因じゃないの?
黒焦げになっちゃうワケではありません
さてここからが本題『雷に打たれたらどうなるか?』のお話です。
そもそも雷に打たれたらどうして死ぬのでしょうか?
黒こげになっちゃうから?
実は雷による電流は一瞬で流れ終わるため、一般的な感電にくらべ火傷は軽度であることがほとんど。
死因の多くは『心室細動』なのであります。
ご存じの通り心臓は血液を送るポンプの役目を持っています。
心臓の筋肉が足並みをそろえて働かないときちんと血液を送り出すことができません。
そのため心臓には電気信号を出す場所がありそれが伝導路を伝わり心筋細胞の動きを統率します。
落雷を受けるとこの信号が乱れ、
【心室の心筋の興奮が無秩序になる(心室細動)】
場合があります。
心室細動になると、心室全体としての均一な収縮がなく、心室からの血液を送り出せなくなるため意識は消失、数分以内に正常調律に戻らない場合、死に至ります。
雷に打たれた場合の死亡率は10-30%といわれています(ただし日本は死亡率が高く70%)。
※続きは【次のページへ】をclick!