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【信長が右近衛大将】
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信長は、京都と岐阜をそれまで何度も往復していますし、わずかな手勢で自ら馬を飛ばすことも珍しくありません。
足利義昭が三好三人衆や斎藤龍興らに襲われた【本圀寺の変】でも信長は馬を飛ばして現地へ向かってますしね。
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このときは明智光秀らの働きにより事なきを得ましたが、自ら先頭に立つリーダーが慕われるのも無理はないでしょう。
まぁ「わずかな手勢で」というのが、後に信長自身の首も絞めることにもなるのですが……。
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官位のメリットとは?
信長は右近衛大将任官の御礼として、天皇に砂金と反物を献上し、天皇から公家たちにも分配されました。
また、それとは別に、信長から公家衆へ所領の分配が行われたです。
「誰にどこをどの程度」という詳細は『信長公記』に記されていませんが、越前に出した掟(125話)で申し付けていたように、こういうときのために残しておいた土地から割り振ったものと思われます。
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織田信長が家臣や他者から畏れられながら、同時に慕われていたのは、こうした有言実行ぶりからでしょう。
それにしても……。
官位を貰ったにせよ、朝廷側の財政・警備が助かるばかりで、信長は単に負担が増しただけでは?
そう思ってしまうかもしれませんが、むろん、利点はあります。
・大義名分を得やすい
例えば足利義昭を奉じて上洛した後、その名を使って越前の朝倉義景を呼び出し、これに応じなかったため攻撃を仕掛けたことがありました。
このときは浅井長政の裏切りで手痛い結果になりましたが、将軍の名前を利用したことに間違いありません。
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自身が右近衛大将となれば相応の大義名分は見込めます。
また信長包囲網を敷かれてピンチになったときは、将軍や天皇の名前を使って和睦に持ち込むことにも成功しておりましたね。
最終的に太政大臣・関白・将軍が提示され
メリットはもう一つあります。
・家臣たちに与えられる
当時の武士たちは、勝手に官位を名乗っておりました。
しかし、信長の父・信秀たそうだったように、正式に与えられる方が格上なのは言うまでもありません。
武田信玄も信濃への進出・平定にあたり、朝廷から「信濃守」を授かっているほどです(幕府からは「信濃守護」)。
信長の家臣たちにせよ、正式に就任していれば織田家全体の格が上がるのも自然のことで、既に明智光秀らに与えられたことがあります。
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なお、信長は天正五年(1577年)、右大臣へとステップアップしますが、程なくしてこれを辞退。次に左大臣をパスすると、最終的に太政大臣・関白・将軍を提示されます。
関白というのは何も豊臣秀吉の専売特許ではなく、織田信長も一足先に「なろうと思えばいつでもなれた」んですね。
しかし、実際はそうなりません。
天正10年(1582年)に本能寺の変が勃発。信長の真意不明のまま、豊臣秀吉の時代へと進んでいくのです。
右大臣以降の官位については、またあらためて触れさせていただきます。
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信長公記をはじめから読みたい方は→◆信長公記
長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
『歴史読本』編集部『日本史に出てくる官職と位階のことがわかる本 (中経出版)』(→amazon)
太田 牛一・中川 太古『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon)
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