こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【20人以上いた家康の妻たち】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
茶阿局(六男・松平忠輝 七男・松千代生母)
家康六男・松平忠輝と、その弟・松千代の母親です。
既婚者だったにもかかわらず土地の代官に言い寄られ、
「はねつけたところ代官が逆ギレして夫を殺したため、娘を連れて家康に直訴した」
という、なかなかインパクトの強い経緯で家康のもとに来ています。
その場で家康に気に入られ、娘と共に引き取られたのだとか。
彼女に迫った代官はもちろん処罰されています。
家康との間に子供を二人授かっていることからもわかるように、彼女は家康から寵愛された側室の一人です。
それでいて、上記の「阿茶局」と非常によく似た呼び「茶阿局(ちゃあのつぼね)」名をつけられた点がよくわかりませんが……。
さらに松千代は夭折してしまい、忠輝は順調に育ったもののいろいろとアレで両親を悩ませることになります。
忠輝は母に取り成しを頼みましたが、家康は最期まで許さず、生前の再会は叶いませんでした。
茶阿局も悲しんでいたでしょう。
養珠院(お万の方)
家康晩年のお気に入りだったと思われる人で、十男・頼宣(紀伊家初代)と十一男・頼房(水戸家初代)の生母です。
彼女はエピソード豊富な方で、気前の良い人物であったことが浮かび上がってきます。
例えば、江戸幕府ができてから神仏への寄進のために日本橋周辺でまとまった買い物をしたことがあったらしく、それを感謝した商人たちによって彼女の名を冠した”於満稲荷神社”が作られました。
残念ながら明暦の大火で被災してしまいましたが、その後、再建され現代にも残っています。
東京駅のすぐ近くであり、目の前の道には彼女の法名を冠して”養珠院通り”と名付けられており、長く親しまれていることがわかります。
また、彼女は異父兄の正木為春を家康に推挙したといわれています。
お万の方本人からは離れてしまいますが、この人に纏わる話も面白いのでついでにご紹介しましょう。
正木家はもともと桓武平氏系の三浦氏を名乗っていたのですが、戦国時代に正木を名乗るようになりました。
すると家康が、為春に三浦氏の名乗りを許したため、以降は三浦為春と名乗るように。
そして為春は家康の信任を受け、頼宣が2歳のときに傅役(もりやく)となり、その後、移封されるごとに供をしました。
また、南光坊天海が三浦氏の血を引いていたことから、為春と親しかったとされます。
そしてその縁から、天海は三浦家の秘宝・海老錠切(えびじょうきり)という刀を為春に譲ったのだそうです。
この刀がその後どうなったのかはよくわかりません。
おそらく三浦家に伝わったのでしょうが、八代将軍・徳川吉宗が作らせた名刀カタログ『享保名物帳』には載っていないので、紛失もしくは焼失してしまったのかもしれません。
あるいは、借金のために売ってしまった可能性も高いかと思われます。
紀州藩は「綱教の正室に五代将軍・綱吉の娘を迎えたこと」や「二代・光貞、三代・綱教、四代・頼職が全員宝永二年(1705年)に亡くなったこと」で経費が膨らみ、莫大な借金をしていた時期があるためです。
海老錠切のようないわくつきの名刀なら、借金の担保にするには十二分だったでしょう。
この借金は五代藩主となった吉宗がどうにかしたのですが、吉宗が将軍になったのは紀州藩の財政を改善した後。
もしもこのときまでに海老錠切が三浦家にあったのなら、吉宗は名物帳に書かせたのではないでしょうか。
自分の家老の家にあった名刀のことを全く知らなかったというのは考えにくいですし。
もし仮に海老錠切を担保にして金を借りられたのだとしたら、お万の方といい三浦家といい、他人に金運をもたらすような星の下に生まれたのかもしれませんね。
妄想じみた話ですが、まあロマンということで。
★
家康ほどの人物とその夫人となると、世の夫婦とは異なる点が多すぎて一概にはいえませんが、どうにもこうにも幸せそうな人が少なく見えますね。
強いていうなら、お勝の方や阿茶局は”自分の才覚を発揮した上で長生きした”という点で幸福でしょうか。
また、お万の方も息子二人が御三家となったことからすると、名誉に感じているかもしれませんね。
あわせて読みたい関連記事
家康の正室・築山殿(瀬名姫)はなぜ殺された?家康には重たい女と思われていた?
続きを見る
全裸で縛られた逸話もある於万の方(長勝院)家康に疎んじられた理由
続きを見る
於愛の方(西郷局)を側室にして 息子の秀忠を将軍にした 家康の狙いとは?
続きを見る
阿茶局は家康の側室か側近か?徳川政権で重要視された女性参謀の生涯
続きを見る
17歳で54歳の家康に嫁いだお万の方(養珠院)死装束の大胆エピソードとは?
続きを見る
長月 七紀・記
【参考】
歴史読本編集部 『物語 戦国を生きた女101人 (新人物文庫)』(→amazon)
国史大辞典
世界大百科事典
日本人名大辞典
ほか