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【竹千代】
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増善寺の和尚に連れられ、コッソリと父の墓へ
元服して竹千代から元信となった翌年のこと。
父・松平広忠の墓参という名目で、岡崎への里帰りを許された。
公式には、これが初の墓参だとされているが、別の説もある。
増善寺文書や可睡斎文書には、竹千代が増善寺(静岡市葵区慈悲尾)の等膳和尚に「岡崎へ墓参に行きたい」と告げると、和尚が竹千代を藤篭(増善寺境内の案内板には「葛篭」とある)に入れて背負い、持舟湊(現・用宗港/増善寺境内の案内板には「清水港」とある)まで運んで密かに実現させたとあるのだ。

徳川家康公と増善寺の関係(増善寺)
この縁で、等膳和尚は、可睡斎(静岡県袋井市)の住職となり、駿河・遠江・三河・伊豆4ヶ国の曹洞宗を統括する僧録の位を得たという。
大林寺(岡崎市魚町)には、松平広忠の墓の横に奇妙な形の石が置かれている。

大林寺の獅子頭石(岡崎市)
案内板には「獅子頭の石 徳川家康公が八才の時、広忠の廟参の時に、納めたものと伝えられている」とある。
初恋の相手は鶴姫とも亀姫ともお田鶴とも
松平次郎三郎元信は、次に「松平蔵人元康」と改名した。
「信」は「信長」に通じるのでこれを排し、尊敬する祖父・松平清康の「康」に替えたという。

家康の祖父である松平清康/wikipediaより引用
竹千代(元信・元康)の駿府での人質生活は、8歳から19歳までであった。
今で言えば、小学2年生から大学2年生までである。その間、ごく普通の青少年らしく初恋もあったと伝わる。
竹千代初恋の相手は、鶴姫(瀬名姫・今川義元の姪で後の築山殿)とも、亀姫とも、お田鶴の方(引馬城主・飯尾連龍室)とも。
16歳のときに、今川義元のとりなしで築山殿(瀬名姫)と結婚。

築山殿/wikipediaより引用
井伊家の史料では、瀬名姫が井伊直平の孫であり、直平と昵懇の間柄であった松平広忠が相談して婚姻を勧めたとあるが、このとき広忠は既に他界している。
「竹千代君、御とし十五にて、今川治部大輔義元がもとにおはしまし、御首服を加へたまふ。義元、加冠をつかうまつる。関口刑部少輔親永(一本義廣に作る)、理髪し奉る。義元、一字をまいらせ、「二郎三郎元信」とあらため給ふ。時に弘治二年正月十五日なり。その夜、親永が女をもて北方に定めたまふ。後に「築山殿」と聞えしは此御事なり。」(『東照宮御實紀』)
そして1560年、今川、徳川、さらには井伊一族の運命を変えた大事件が起きる。
【桶狭間の戦い】である。
結果的に織田信長と今川義元が雌雄を決したこの一戦。
当時の井伊家宗主・直盛と共に先鋒を務めた松平元康は、敗戦後、岡崎へ帰り大樹寺の先祖代々の墓の前で自害(殉死)しようとした。

大樹寺(岡崎市)
しかしここで登誉上人に「厭離穢土・欣求浄土」と励まされ、自害を思いとどまったという。
「厭離穢土・欣求浄土」とは?
穢れた国土を嫌って離れ、清浄な国土を好んで求めよ。
自分の欲望のために戦っているから、国土が穢れきっている。
領民のために、平和のために戦うのであれば、必ず仏の御加護を得て事を成すであろう。
天下泰平を願った松平親氏の血をひくそなたであれば、平和な世に変えられる
なお、このとき岡崎城は今川方の飯尾乗連、二俣持長、山田景隆の3人が城代であったが、彼らが城を捨てて逃げたので、元康は、
「捨てられた城ならば、拾おう」
と言って城へ入り、岡崎城主となった。
「駿河衆、岡崎之城ヲ明て退キケレバ、其時、「捨城ナラバ広ハン」ト仰有て、城え移ラせ給ふ。」『三河物語』
桶狭間の戦いから岡崎城主への道のりについては、以下の記事にまとめたので、併せてご覧いただければ幸いである。
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著者:戦国未来
戦国史と古代史に興味を持ち、お城や神社巡りを趣味とする浜松在住の歴史研究家。
モットーは「本を読むだけじゃ物足りない。現地へ行きたい」行動派。今後、全31回予定で「おんな城主 直虎 人物事典」を連載する。
自らも電子書籍を発行しており、代表作は『遠江井伊氏』『井伊直虎入門』『井伊直虎の十大秘密』の“直虎三部作”など。
公式サイトは「Sengoku Mirai’s 直虎の城」
https://naotora.amebaownd.com/