歴史ドラマ映画レビュー

大人になってホロリとさせられる……映画『ハイジ アルプスの物語』

2020/04/16

なんか毒々しいっつうか、普段はトンデモ映画ばっかりチョイスしているのに、たま~にこういうのを取り上げたくなるんですね……。

映画『ハイジ アルプスの物語』、なんとなく見たんですけど。

すみません、初めは完全にナメきってました。

「ハイジでしょ? ファミリー映画でしょ? あらすじ知っているしどうでもいいかな〜」くらいで。

それが開始10分くらいで涙が頰を流れていた……そんな作品です。

基本DATAinfo
タイトル『ハイジ アルプスの物語』
原題Baahubali: The Beginning
制作年2015年
制作国スイス、ドイツ
舞台スイス・アルプス地方、ドイツ・フランクフルト
時代19世紀
主な出演者アヌーク・シュテフェン、ブルーノ・ガンツ
史実再現度歴史的背景をもとにしたフィクション
特徴ハイジそのもの! ハイジそのもの!

 


あらすじ

あらすじはアニメと同じだよ!

アルプスの大自然、チーズおいしそう、おんじが恋しい、白パンをおばあさんに食べさせたいんだ。

クララが立った!

 


ウッワァー、アルプスの大自然だよ! 本物だよ!!

高畑勲さんの代表作『アルプスの少女ハイジ』は、再放送も盛んですので、私も何度か見たことはあります。

ただ……どうしても、もっと戦闘シーンなんかがある、少年漫画原作アニメが好きで。そこまで真剣に見たことはありませんでした。

ところが、です。

本作を見ると眠っていた記憶が蘇るように、バッチリ思い出してくるのです。

アニメで描かれたあの景色が、かわいいヤギが。美味しそうなパンとチーズが出てくるだけで、感動してしまいます。

アルプスを駆け回るハイジも、そのまんま。まさにハイジです。

ハイジはハイジとしか言いようがありません。

おんじの頑固さ。

ペーターの田舎の牧童感あふれる風情。

クララの儚げな美少女ぶり。

キャストも全員、選りすぐっただけあった、そのまんま。まさにイメージ通りで、その時点で尊いという思いしかありません。

あれ、そんなにハイジが好きだったっけ……と戸惑いながらも、もう感動しかないのです。

 

ヒトラーを熱演したブルーノ・ガンツが

本作はファミリー向けですが、だからといって大人の鑑賞に堪えないわけではありません。

むしろ大人目線で見ればこそ、わかる部分もあります。

おんじを演じるのは『ヒトラー 最期の12日間』でヒトラーを熱演したブルーノ・ガンツなのです。

ヒトラー最期の12日間
『ヒトラー最期の12日間』で凄惨な過去を直視|安易なパロディからの脱却を

続きを見る

アニメを見ているときはただの気難しいおじいさんとしか思いませんでしたが、彼の過去はスイスの傭兵なのですね。

山岳地帯であり、めぼしい産業がなかったスイスでは、傭兵が主力産業でした。

フランス革命の時、蜂起した民衆に虐殺されたスイス傭兵が出てくるのも、そうした背景がありました。

主力産業とはいえ、田舎の村の人々からすれば、人殺し。しかもおんじの場合、そこそこお金があったのに、ギャンブルで身を持ち崩し兵隊になったというのですから、そりゃ後ろ指指されますわな。

そう考えると、無邪気に見えるハイジの身の上も、なかなか大変だろうな、ということが見えてきます。

ハイジを育てておきながら、邪魔になったらおんじに預け、金儲けできるとなればフランクフルトに連れて行く。

デーテおばさんも身勝手ですよね。

ただ、人の命が軽視され、子供の福祉なんて概念がない時代です。

あれも当時としてはごく当たり前の対応なのかも……。

 


大人の目線で見えてくること

憎まれ役のロッテンマイヤーさんも、境遇を考えるとなかなか大変な人物です。

当時、「ガヴァネス」という女性がいました。女性の家庭教師であり、クララのようなご令嬢やご令息の指導をする女性です。

ただ、恵まれない境遇の場合が多いのです。

働かなくても食べて行けるほどの財産はない、結婚できるほどの持参金もない、落ちぶれた上流階級女性の就職先。結婚できるあてもない、哀れな女性というイメージもありまして。

『ジェーン・エア』のヒロインもこれにあたります。

社会からは「まあ、あの人結婚できないのよ。可哀相ね」と思われ、クララやハイジのような子供からはガミガミおばさんと煙たがられる。

そう考えると、なかなか気の毒な女性です。

恵まれた環境にいるかに見えるクララのお父さんも、なかなか気の毒です。

愛妻を失い、商売に追われるばかりで、一人娘の成長もじっくり見守れないのですから。

と、大人になったら、本作の大人たちが抱えていたホロ苦さもわかってしまう……。そんな作品です。

ついでに書いておきますと『アニメで読む世界史』という本には、世界名作劇場で取り上げられた作品の、時代設定について解説されていてお薦めです。


あわせて読みたい関連記事

ヒトラー最期の12日間
『ヒトラー最期の12日間』で凄惨な過去を直視|安易なパロディからの脱却を

続きを見る

『ブルックリン』ばあちゃん世代の甘酸っぱい青春物語に奥深いテーマ

続きを見る

英国王のスピーチ
映画『英国王のスピーチ』ジョージ6世に娘のエリザベス女王2世は?

続きを見る

プロパガンダは単に悪なのか?歴史映画レビュー『人生はシネマティック!』

続きを見る

ケネディの妻 その後を描いた『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』

続きを見る

【参考】
『ハイジ アルプスの物語(吹替版)』(→amazon)※2024年7月17日現在 レンタル400円
『ハイジ アルプスの物語(字幕版)』(→amazon)※2024年7月17日現在 視聴不可

TOPページへ


 



リンクフリー 本サイトはリンク報告不要で大歓迎です。
記事やイラストの無断転載は固くお断りいたします。
引用・転載をご希望の際は お問い合わせ よりご一報ください。
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

-歴史ドラマ映画レビュー
-

右クリックのご使用はできません
目次