鯉登音之進

ゴールデンカムイ

この歴史漫画が熱い! ゴールデンカムイ

中川大志さんが演じる鯉登音之進って一体何なんだ?ゴールデンカムイ深掘り考察

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制服もきっとムカつくオシャレを極めている

鶴見ら他の士官が黒い肋骨服である中、鯉登音之進はカーキ色のボタン式制服を着ています。当時の最新鋭です。

軍服は色等の規定を遵守していれば、生地や縫製はある程度自由がききます。

つまり、金に余裕があればおしゃれにできる。そうでないなら、安っぽくなる。軍服というのはなかなか残酷なものです。

ボンボンである鯉登の場合、あえて舶来ものの高級生地を用いていたり、あえてエルメスのブーツであっても不思議はありません。

そういうボンボンっぷりを見ているだけで、周囲はイラついていても不思議はないのです。

連隊旗手を意識しているためオシャレという設定ですが、周囲からすれば「それでもやりすぎでなんかイラつく」となっていてもおかしくはありません。

 


愛され、苦労をかけるバカ息子なのか?

鯉登父子は『ゴールデンカムイ』ではむしろ例外的な父子関係といえます。

月島や尾形のようにむしろ冷たい父の記憶を持つものもいる。ウイルクだって杉元が言うように、娘のアシㇼパを道具扱いしているともいえる。

キロランケだって北海道にいる妻子よりも、ソフィアとウイルクが大事にすら思えます。

しかし鯉登平二の場合、むしろ我が子を思いやっています。

軍人らしく愛情を前面には出せないし、突き放そうとするようで、結局は我が子のためならば何でもするという愛情深い父でした。

しかし、息子の鯉登音之進はどうか?

少年時代の彼はむしろ父からの愛が足りないと思っていました。

これは彼のコミュニケーション能力不足でしょう。音之進自身が悩んでいて、兄の代わりに死ねばよかったとすら思っているほど。何か問題があるという意識はあるようです。

平二も我が子との関係に何か悩みがあった。たった一人残された息子はどこかがおかしい。教育を間違えてしまったのかと、悩んでいてもおかしくはありません。

鶴見はそういう父子につけこんで洗脳したともいえる。やはり鶴見は、なかなか悪辣です。

そんな鶴見に対し、全面的に依存しているようでそうでないのが鯉登の面倒なところでもある。鶴見に叱られ、遠ざけられるのではないかとマイナス方面の妄想をこじらせています。

 


キルレシオが作中随一

『ゴールデンカムイ』のキャラクターは、当時の日本人離れした筋肉が特徴です。

腕力も当然ながら高い。日露戦争体験者も多く、戦うとなると皆高い戦闘力を発揮します。

そうしたキャラクターの中で、鯉登音之進には際立った特徴があります。

キルレシオ(殺害率)が高いのです。

腕力だけならば体重が重い谷垣の方がはるかに強いとは思えます。しかし、殴り合いならばともかく、致命傷を与えるとなると違ってくる。

初登場時、鯉登は鈴川聖弘を即座に射殺しています。

強キャラ感が半端ない鯉登の登場。これもこの過程を見ていくと、相当個性が出ています。ひっかけの会話術は後述するとして、この拳銃で射殺する攻撃が凄まじい。

作中でも、このとき鯉登が手にしていた拳銃は威力が低いと言及されます。

全体的に将校用拳銃は威力が低く、実質的に自決用と言われるほど。

しかも確実に死ぬためには口に咥えて引き金を引くべきと言われるほどです。しかもこの場面は不安定な片手撃ちです。

将校用拳銃の威力が低いことは、彼自身理解しているとも思えます。

鯉登が本気で相手を殺そうとする時は、軍刀を用いる。そして軍刀装備時のキルレシオはさらに高まります。

これは彼が幼少時から習得している薩摩ジゲン流が強いということももちろんありますが、それだけともいえません。

鯉登が軍刀で攻撃する際、当たる箇所はほぼ首から上です。これがキルレシオの高さと直結しています。

アシㇼパ追跡時にはどこか気の抜けた顔で拳銃を構えていました。やる気が出なかったのでしょう。

鯉登が致命傷を与える場所を狙いにいく点についていえば、先天性と思われます。

13歳で鶴見相手に杖を振り下ろした際にも、その特性は発揮されています。

先天的に、人間の弱点を狙いにいく特性を身につける人間はいるのか?

少ないながらも存在します。

成長してそれがタブーだとわかればやらなくなるものの、それができない幼少期にトラブルを起こすタイプの子です。

噛みついたり、思い切り叩いたりして、指導を受けるタイプの少年だったと思われます。

鯉登の幼少期は孤独で、友人がいない様子がみてとれます。手のつけられない子として、孤立しがちだったのでしょう。

徴兵制が導入される近代、人類はあることに気がつきました。大半の人類は、殺戮に対して抗うのだと。

当然至極のようで、これが体系立てて考えられるようになっていくのは、帰還兵が抱えたトラウマが社会を悪化させかねないと認知されてからのことなります。

作中の鶴見は、こうした原初の心理学を悪用していると思わせる描写があります。

しかし、鯉登は“普通”ではない。

花沢勇作と比較してみましょう。実戦経験のない少尉同士でありながら、勇作にはある殺人への禁忌がない。

鯉登がお銀を斬首した時、赤ん坊の声が響きました。母を殺し、その子が泣いたらトラウマにでもなりそうなのに、鯉登は平然としている。彼は“普通”ではないのです。

 

明治のコミュ障

サーカスで大人気となる場面が印象的であった鯉登音之進。

それでは彼が人気ものかというと、どうもそうではなさそうです。

顔がよく華があるにも関わらず、あまり周囲から好かれていないと思える場面が多いともいえますし、幼少期は孤立していました。

それもそうでしょう。落ち着きのない性格で、やたらとソワソワしている。苛立つと足を踏み鳴らし、眉間に皺を寄せていて近寄りがたい。避けられても仕方ないと思える特徴があります。

お嬢様たちから一方的に好かれるものの、デートのあとで幻滅されるタイプですね。

サーカスの場面も、実は孤立しがちな彼の特性がよく出ています。

サーカスに出演するという突拍子もない発案に、皆戸惑う中、鯉登はキリッとした真面目な顔で常に練習しています。

彼は素晴らしい動きで大人気となるものの、まったく周囲の空気を読めていないとわかります。

たとえば投げキッス。

鯉登は言われた通りに動いているだけで、周囲がどれほどざわつこうが気にしていません。

あれだけキャーキャー騒がれたら調子の乗ったり、頬を赤らめたり、ちょっとはサーカスで生きていこうかと思っても良さそうなのに、彼は目の前の目標到達だけを考えています。

鶴見の写真があればそれだけを目指す。

サーカスが終わればひたすらアシㇼパを探しに向かう。周囲の意図よりも目的達成が大事。彼には空気が全く読めません。

これは気前の良さにもつながっています。金を惜しみなく使うことは、もちろんボンボンだという家庭環境も大きい。それだけでなく、金銭交渉が面倒で言われるまま払っていると思えます。

月島はインカラマッが鯉登から金を巻き上げていると察知しています。いつもそんな大雑把さがあるのでしょう。金持ちなのに、気がつけば借金を作っていそうな性格です。

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