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山本権兵衛(薩摩出身の海軍大臣)が西郷兄弟の思いを受けて要職歴任

嘉永五年(1852年)10月15日は、後に海軍大臣や総理大臣などを歴任する山本権兵衛が誕生した日です。

海軍というと、もう少し後の世代である東郷平八郎や山本五十六のほうが有名ですが、彼らの活躍も権兵衛なしではありえなかった……といっても過言ではありません。

功績の面ではもちろん、性格においても、彼は海軍に大きな影響を与えました。

経歴等については先達の書籍などに譲るとして、今回は主に権兵衛の人格をうかがわせる話を振り返ってみたいと思います。

 

西南戦争に加わらなかった従道に詰め寄ると

山本の生涯には、それを貫く柱と呼ぶべきものがありました。

「自分が良い・正しいと思ったことは、誰に何を言われようと押し通す」ということです。

それもただの身勝手ではなく、「現実を踏まえて最善を導く」という筋が通っていました。

山本の行動は突飛に見えることでも、必ずこの柱に基づいています。いくつかの実例を挙げましょう。

まず第一に、西郷隆盛西郷従道兄弟に対してです。

山本は薩摩出身ですから、西郷兄弟は旧知の仲でもあり、尊敬する相手でもありました。

そのため、西南戦争の前に山本は、隆盛の真意を確かめようと、東京の兵学校を一時休んでまで鹿児島に会いに行っています。

場合によってはそこで西南戦争に加わったかもしれませんが、隆盛から「これからの日本には必ず海軍が必要になるから、今、学生の君たちは大いに学ばなくてはならない」と諭されました。

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山本は隆盛の言うことはもっともだと思い、東京に帰って学問に励むことになります。

ちなみに、このとき一緒に行った同級生は途中で薩摩へ引き返し、西南戦争で戦死しました。

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また、西南戦争からしばらく経った後、弟である従道に「なぜ兄に賛同しなかったのか」と迫ったことがあります。詰問といってもいいでしょう。

従道は

「兄弟揃って帝に背いては、他者への影響が大きすぎる」

「兄の考えに反対するために東京へ残ったわけではない」

と理由を話しました。

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従道には従道の考え方があり、保身に走ったわけではない――それを理解した山本は、従道と互いに信頼し合うようになっていきます。

後に、山本が海軍の改革を行う際も、大臣である従道が「責任は取るから好きにやれ」と全面的に後押ししてくれました。

 

「一夫一婦制は国法の定むる処なれば……」

二つ目は、妻・登喜子に対してです。

確たる資料はないですが、山本の妻・登喜子は新潟の漁師の娘で、品川の妓女をしていたそうです。それに山本が惚れ込み、船を使って妓楼から誘拐同然に連れ出したのだといわれています。

凄まじき情熱ですね。

このダイナミックロミオだけでなく、山本は妻に対して「筋」を通します。

正式に結婚するにあたって、山本は登喜子に七か条の誓約書を書きました。

大ざっぱにまとめると、「家の中のことは妻に任せるから、日頃からいざという時のために夫婦仲良くしよう」というものです。

一つだけ原文で抜き出すとすれば、

「一夫一婦制は国法の定むる処なれば誓って之に背かざること」

でしょうか。

当時のお偉いさんは(も?)女遊びをして一人前という風潮がある中、登喜子にとってこれほど心強い一文はなかったでしょう。

故郷から遠く離され、すぐに頼れるような親族もない状況で、唯一の味方に心の底から誠意を表されたのですから。

なんせ山本は、ほぼ教育と無縁の生涯を送ってきたであろう登喜子のために、わざわざふりがなを書いてまで自分の意志を伝えているのです。

これでついていかない妻はいないでしょう。

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もうひとつ、信憑性に欠ける話ではありますが、山本は自分の乗艦に妻を連れてきて案内したことがあるそうです。

しかも、そのとき妻の履物をわざわざ揃えてやったのだとか。

これより数十年前「和宮が将軍・徳川家茂の履物を揃えたことにより、真に御台所となった」という話と比較すると、山本の奇矯ともいえる誠実さがわかります。

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馴れ初めや履物の話は事実かどうかわかりませんが、いずれにせよ「山本ならやってもおかしくないことだ」と受け取られてきたからこそ、今に伝わっているのでしょう。

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