源明子

画像はイメージです(源氏物語絵巻/wikipediaより引用)

飛鳥・奈良・平安 光る君へ

道長の子を6人産んだ源明子の生涯~高貴な血を引く子供たちは順調に出世できた?

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没落した父のもとで生まれ道長の妻となる

源明子は天延3年(975年)の生まれ。

父の源高明が安和の変で失脚するのが安和2年(969年)のことですから、事件から6年後の生誕となりますね。

母は藤原師輔の娘である愛宮で、同母弟には源経房がいます。

父の失脚を受け、明子は叔父・盛明親王の養女とされ、その後は東三条院(藤原詮子)が庇護しました。

『光る君へ』では吉田羊さん演じていた野心的な女性ですね。

藤原詮子/wikipediaより引用

彼女は弟である藤原道長に、明子の面倒を見るように頼んだとされます。

明子にすれば自分の父を政治闘争により追いやった藤原兼家の子によって庇護されるという、かなり複雑な状況。

このころの皇室と藤原氏は婚姻関係が幾重にも絡まっていて、常に親戚同士で面倒を見ていたような構図とも言えます。

道長の結婚時期は諸説あります。

『紫式部日記絵巻』の藤原道長/wikipediaより引用

『光る君へ』では源倫子が先に結ばれましたが、史実ですと永延2年(988年)頃には、倫子と明子の二人とも結婚していたとみなされます。

当時は愛よりも、容姿よりも、血統が大事。

いや、それよりも権力が重要です。

源倫子の父・源雅信は当時トップクラスの有力者である一方、源明子は帝の血を引くとはいえ、父は没落しています。

道長は土御門殿の倫子を嫡妻として遇しました。

そうならなかった明子の心境は、道長の父・兼家への愛憎を綴った藤原道綱母『蜻蛉日記』が参考になるかもしれません。

浮世絵にも描かれた『蜻蛉日記』岳亭春信:画/wikipediaより引用

 


明子出生の子どもたち

源明子の夫・藤原道長だけでなく、その姉である東三条院(藤原詮子)も、国母として絶大な権限がありました。

道長の娘である藤原彰子を入内させるとなると、母である倫子の身分が障壁となる。

そのため東三条院は、倫子を従五位上から従三位まで昇格させました。

結果、倫子の産んだ男子は出世街道、女子は皇族に嫁ぐ、当時として最高の地位を得ることができています。

一方で、明子の子はどうか?

藤原頼宗:異母兄弟より遅れるものの、順調に出世

藤原顕信:突如出家する

藤原能信:悪質な暴行事件を度々起こしたトラブルメーカー

藤原寛子(小一条院女御):夭折

藤原尊子(源師房室):道長の娘の中では平穏な人生を送る/孫の藤原賢子白河天皇の寵愛を受け、堀河天皇の国母となる

藤原長家:兄や甥の出世に不満はあった

明子の子供たちの中で特筆すべきは藤原能信かもしれません。

ともかく気が強く、陰謀気質。

しかもその企みの中には性的暴行事件も含まれていて、道長は何度も激怒していたと伝わります。

他の兄弟は異母兄である藤原頼通と協調していたのに、能信だけは逆らっていました。

そんな歪んだライバル心から生じたものなのか。

能信は、藤原氏との姻戚関係が薄い尊仁親王(のちの後三条天皇)を支持するという、最大のやらかしを起こしてしまいます。

後三条天皇/wikipediaより引用

後三条天皇は名君であり、かつ政治的な力も十二分に発揮しました。

言い換えれば外戚の干渉を抑え込むことができた。

外戚の権威低下は、国全体の政治にとっては良くても、それを権力の糧としてきた藤原氏にとっては最悪の事態。

そこを考えると、藤原一族から見た能信のやらかしは決して小さくないでしょう。

道長を満月とすると、その後の藤原氏の外戚政治は欠けてゆく月となる。

明子の血を引く子孫は、そこに足跡を残したとも言えますね。

なお「源明子」という人物が『源氏物語』に登場する色好みの老女・源典侍(げんのないしのすけ)のモデルとされることもあります。

この「源明子」は同名の別人です。


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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考文献】
倉本一宏『皇子たちの悲劇 皇位継承の日本古代史』(→amazon
倉本一宏『敗者たちの平安王朝 皇位継承の闇』(→amazon
繁田信一『殴り合う貴族たち』(→amazon
橋本義彦『平安貴族』(→amazon

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