べらぼう感想あらすじレビュー

背景は喜多川歌麿『ポッピンを吹く娘』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第20回寝惚けて候 ついに開くは天の岩戸か地獄の釜か

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第20回寝惚けて候
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なんとあの半額でできる『雛形若葉』

吉原では蔦重が歌麿に描かせた絵を尾張屋彦次郎が見ております。

鳥居清長『十体画風俗 武家の娘と犬』/wikipediaより引用

このクオリティで入銀は『雛形若菜』の半値で済む。同じ清長なのにどういうことか?というと蔦重が種明かしをします。

「実はこいつが描いてんでさ」

歌麿を推してくる蔦重に尾張屋は驚いています。画風はお手のもの。かつ無名なので安くできる。

尾張屋はどっからどう見ても清長だと感心しております。

蔦重は、そんなジェネリック清長は何者かと評判も見込めると言います。しかし、背後の歌麿は少し納得できていないような顔にも見えます。

かくして廉価版『雛形若菜』こと『雛形若“葉”』のセールスが展開されるわけですが、蔦重の手掛ける本は吉原の外には流れないのでは?と尾張屋が懸念。

「そのあたりも年明けまでにはなんとかできますかと」

りつが念押しして、まずは一名様の売上成立!

ちなみにこのジェネリック戦術は浮世絵の定番とも言えます。一人のスターが現れたら、そのフォローをして売れ筋が定番化されてゆく。

歌川豊国と弟子の国貞がそうですね。そこを自分なりのアレンジを利かせていく絵師がいたり、販売戦術を練る版元やスポンサーもいるわけでさ。

直後に、西村屋与八が『雛形若菜』を売り込んでも、断られることが増えたという場面が入ります。

どういうことかと困惑する西与。すでに5件目のキャンセルが入り、入銀が高すぎるのかと忠五郎も困惑しています。

するとそこへ忠七が、呉服屋の手代から手に入れたという絵を手にしてきます。

『雛型若葉』です。

蔦重による、なかなか汚ねえ潰し戦術が知られることになりました。

キレた西与は耕書堂へ乗り込んでゆく。

初代西村屋与八/wikipediaより引用

「おい! 随分汚い真似してくれるじゃないか、ええっ?」

「ほんとありがとうございます。汚ねえやり方もありだって教えてくれたのは、西村屋さんですから」

しれっと返す蔦重。西与は悔しそうに『雛型若葉』の滑り出しは『雛形若菜』あってのことだと言います。自分が潰さず育てた『雛形若菜』に便乗していると嫌味を言ってきたわけだ。

そこを認めつつ、だからこそ己の力で作るのだと蔦重は言い切ります。

「けどね、錦絵商いってなァ、お前が思うほど甘くないからね」

そう吐き捨てる西与。錦絵にばかり気が入っているとニンマリするのでした。

西与が店に戻ると、忠五郎が嘆いています。

今回の『細見』は直しが多い。奇妙に思い確かめて調べてたところ、『吉原細見 嗚呼御江戸』時点で女郎の名前を教えられていたんだとか。そりゃねえぜ!

既に在籍していない女郎の情報ばかりを手に入れては、意味がないわけです。

結局、西与は、7月予定の『細見』を断念することになりました。

鶴屋喜右衛門にその件を報告しながら『雛形若菜』を潰されちまったと言い訳をします。なんでもそちらが本丸なんだそうで。

鶴喜としては『細見』を断念するわけにはいかない。そこで、自分が請け負うと申し出て、改(あらため)の進行状況を確認すると、そこで半分ぐらいやり直しが出るとの真相を告げられます。

これはもう、休みにしねえとどうしようもない。

鶴喜は苛立ちを抑えつつ『細見』を大事にするようお願いしたはずだと苦しげな表情を浮かべるしかありません。

 


岩戸屋源八の叛乱

蔦重が恋川春町の新作を読んでいます。

りつは『雛形若菜』の売り上げが激減し、次で終わりじゃないかと噂になっていると続ける。

そして『細見』のことを聞かれると、どうやら西与は発注もかけていないと蔦重。こいつは完勝ですね。

りつも歌丸も嬉しそうな表情を浮かべ、蔦重は「頼みますよ、岩戸屋さん」と何やら含みの入った言葉を発します。

さて、その岩戸屋源八は地本問屋の集まりで、不満をぶちまけていました。

どこから『細見』を仕入れたらよいのか!

西与は今回だけの辛抱だと開き直っているものの、岩源はもううんざりだと跳ね返す。

蔦屋なんていずれ潰れる、潰すと言ってきたのに、そうはならない。むしろ勢いは増すばかり。そろそろ蔦重との取引を認めてもらいたいと言い出しました。

なんだろうね、こりゃ大庭景親源頼朝に降ったあたりみてえじゃねえか。蔦重がもちろん頼朝だぜ。

「でなきゃあ……」

ここで膝を叩いて、一斉に立ち上がる本屋たち。

画像はイメージです(地本問屋の様子/国立国会図書館蔵)

すると鶴屋喜右衛門が立ち上がり、宣言します。

「認めます。店の売上に関わるといわれりゃ、認めぬわけにはいかぬでしょう」

「蔦屋の本を入れてえから嘘を言ってんだよ」

そう強がるものもいますが、鶴喜はなにやら理解している様子。

「鶴屋さんが、それでってんなら……」

かくしてみなが靡いてゆき、岩源はやってのけました。堂々仕入れるってよ。岩源はさしずめ頼朝を見逃した梶原景時ってことかい?

「これを受け入れねば、あの連中は抜けるつもりだったのだろう」

地本問屋は株がないぶん締まりがない。で、そんなことになれば蔦重が頭となって、新たな仲間が作られてしまう。それが最悪の筋書きだと鶴喜は見抜いているのです。

そうそう、こういうのは町の住所のようなモンでなく、人脈で形成されるとなかなか厳しいんですね。

そして地本問屋の集団がこうもグラグラしているのは、『御成敗式目』制定前の坂東武者の如し。というわけで、ルール制定も後半の見どころでしょう。

ただし、鎌倉幕府北条泰時が作る、つまり坂東武者のトップが作ります。地本問屋は幕府側が制定するという違いがあります。

ともかく今は蔦重がグイグイ伸びている。

耕書堂では見事な働きをした岩源が、蔦重からタダで本をもらっていました。協力に対するお礼ですね。こりゃ自主的に見せかけたようで半分仕込みってこったね。

念願かなった蔦重としては数十冊の本ぐらいお安いご用でしょう。さらには岩源に、恋川春町新作『無益委記(むだいき)』を渡します。

前回放送で皆でアイデアを出し合って作った「お江戸SF」ですね。

このお江戸SFも今に活かせるかも。中国では『三体』はじめ歴史と組み合わせたSFがヒットしてますんで、日本史ものが読んでみてえんですよね。。

岩源はこれを手にすると、ウケるとピンときたのか、さっそく30部の注文。いいセールスだねえ。

岩源についてきた地本問屋は続々と注文を入れてゆきました。

 


蔦重と鶴喜の対峙

次郎兵衛は売り上げに驚いています。

「市中の釜が開くとこんなになるんだねえ」

地獄の釜みてえに言わねえでくれます」

すかさず蔦重がつっこみ、これで市中の本屋に認められたのか、と、りつが念押しすると、岩源の話ならそうなる――そう言いながら蔦重もどこか断言できません。

そこで、自ら乗り込んでみることにしました。

蔦屋重三郎/wikipediaより引用

「どうも、鶴屋さん」

「これはこれは……何の御用でしょうか、蔦屋さん」

真正面から向き合う二人。蔦重は『細見』を渡し、仲間に認められた礼を言います。

「何か……勘違いされていませんか?」

市中は取引をするけれど、うちがするかどうかは別と断る鶴喜。

「私は、蔦屋さんが作る本など、何一つ、欲しくはない」

「わかりました。鶴屋さんが取引したいと思えるような本を作るべく、精進します」

「ぜひ、楽しみにしています」

そうそつなく返す蔦重。かくして話は終わりました。

鶴喜が仏頂面をしていると、北尾政演が襖を開けて顔を出します。

「あのぉ〜今の蔦重ですよね。へへっ、仲直りしたんですか?」

「……京伝先生。ひとつ本気で、戯作をやってみませんか?」

そう切り出してきましたぜ。

戯作者としての“山東京伝”始動ですね。

春町先生ほど真面目じゃないから潰されねえし、万事洒落てる鶴喜好みのインフルエンサー気質だ。こりゃえれぇことになるぜ!

 

二人の女の恨みが募る

大奥で高岳があのワインを楽しんでいると、宝蓮院が乗り込んできました。

「ひと言もなく姫の縁組が決まったとは!」

高岳は動じず、種姫は田安家の生まれとはいえ今は家治の養女だと返します。

宝蓮院は上様の意向を確かめようとすると、高岳は返します。

「嫁ぎ先は吉宗公の故郷、紀州徳川家。田安の姫様にとってこれ以上の嫁ぎ先はなかろう……と、仰せにございます」

高岳からワインを勧められ、激怒し去ってゆく宝蓮院。

西の丸から連れ出される知保の絶叫も聞こえてきます。

『千代田之大奥 元旦二度目之御飯』楊洲周延・作/wikipediaより引用

知保は新たな将軍養母にもなれず、西の丸には豊千代の生母が入るのだとか。そのことを大崎がハキハキと説明し、その指示は田沼意次だとも付け加えます。

「私は西の丸におるのじゃ、ああ〜!」

そんな悲鳴を聞きつつ、宝蓮院はつぶやきます。

「田沼……いつか天罰がくだろうぞ」

宝蓮院と知保の策は砕け散ったわけで、豊千代が家治の養子として西の丸に入りました。

宝蓮院が田沼意次を憎む理由はあります。一橋の家老として、田沼意致が西の丸に入ったのです。

田沼憎しが高まっていることに家治は気づかず、世継ぎの問題も終わり、あとは田沼意次が羽を伸ばして政策を実現することだと言い切ります。

そのためにはこれもよい……ということは田沼意次の意向も入った人事ということになりますな。

徳川家治/wikipediaより引用

誰が将軍になろうとゆるがぬ政治をすると気を引き締める意次。

「そのためには余も使え」と家治はいうわけですが……募る恨みが気になるところです。

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