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『光る君へ』感想あらすじレビュー第11回「まどう心」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第11回「まどう心」
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高御座の生首

わずか7歳で即位することになった一条天皇

先代の花山天皇は出家し、数珠を握りしめています。

一条天皇の儀式を進めるにあたり、即位の時にだけ用いる高御座(たかみくら)が準備され、即位の時に被る冕冠(べんかん)は中国風ですね。

なんとも貴重な映像が続くドラマです。

本作は、地味だのなんだの言われますが、ここでしか見られない調度品や衣装が登場して実に見応えがあります。合戦だけではなく、こうした儀礼の映像もよいものでしょう。

すると、高御座の準備中に悲鳴があがります。

慌てて道長が中を見ると、高御座の上に生首が置かれていました。

穢れてしまった……と内匠司と女官が動揺する中、道長が冷静に生首をとりのぞき、座を拭くと、鴨川に捨てるよう命じます。

そして何事もなかったかのように即位式は執り行われるのです。

この高御座の生首事件により、道長の人物像に深みがでてきましたね。

こんな恐ろしいスキャンダルが現在まで伝わっているのは『大鏡』に書かれているためで、ドラマの描写はそれを混ぜ合わせたような作り。

一体どんな内容か?

と言いますと、『大鏡』の高御座に関する話の一つ目が、兼家の息子である三兄弟の肝試しです。

花山天皇が「女が鬼に喰われた場所に行けるか?」と提案すると、道隆と道兼は怯えて引き返し、道長だけが肝試しを終えた証拠を出してきました。

二つ目は、即位式で生首があると報告を受けた兼家のものです。

兼家はその話になると、眠りこけました。一件を報告した者が『よく寝ていられるな……』と思っていると、話が終わった途端に起きました。寝たふりをしていたのです。

道長には、怪異を恐れぬ度胸がある。花山天皇の挑発をも恐れない。穢れを隠し通す度胸は、父と同じである。

そう組み合わせることによってあらわれています。

道長は、首のことは誰の仕業かわかっていると達観したように言います。花山院かもしれないし、それ以外かもしれない。

怪異を信じるのであれば、花山院でしょうか。信じずに解釈を見出すのだとすれば、兼家の強引なやり口に起こった誰かです。

道長は、怪異も、現実も、もはや恐れていません。

敗北した花山院の数珠は、北斗七星の形に飛び散りました。そして都を後にすることが語られます。

北斗七星を司る北斗星君は、人の寿命を決めるとされる道教神です。南斗星君が長寿を司る一方、北斗神君は死を象徴する。

仏僧が祈り、数珠が北斗七星を思わせるこの演出は、仏教と道教が混ざってしまう当時らしい描き方です。

さて、高御座の首が誰のものか、気になる方もいるでしょう。

当時の平安京は死体が楽に調達できます。子どもの生首くらい、探せばどうにもなるはず。

飢えて行き倒れているか、野犬に食われかけているか。罪の意識さえ捨てれば、犯行はそこまで難しくありません。

直秀の死に泣いた道長はもういません。

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生首を鴨川に捨てるよう指示を出す、豪胆な政治家が生まれつつあり、この顛末を聞いた兼家も誉めています。

もしもことが知れ渡ったら即位式は中止だった。誰の仕業かつきとめなくてよいのかと道長に聞かれると、新たな帝が即位したことが全てだと言い切ります。

即位式の日、道長は五位の蔵人となりました。

 

笑裏蔵刀の宴

安倍晴明を前にして、藤原道隆の家族が揃っていました。

嫡男の藤原伊周は元服し、颯爽たる貴公子に。晴明が立派だと誉めると、聡明で物怖じしないところは貴子に似ていると兼家も笑顔です。

すると伊周が、父は「笑裏蔵刀」だと言います。

笑顔の裏に刀を隠しているという意味で、『兵法三十六計』第十計ですね。

母の貴子が慌てて、大人の話に口を挟むべきではないとたしなめると、自分はもう大人だとして動じない伊周。藤原の将来を背負う覚悟があると言い切ります。

晴明が、頼もしい嫡男だと誉めると、今度は一の姫である定子も紹介されました。

ゆくゆくは入内させ、皇子を儲け、家を盛り立てるようにするとのこと。晴明は、そんな定子のこともじっと見つめています。

これから先は道隆の世であるとして、晴明によろしく頼む兼家。

すると、そこへ藤原道兼がやってきました。

父のご機嫌伺いに来たらこの宴は何かと憤っている。なぜ自分が呼ばれていないのか。

慌てて父の兼家が道兼を連れ出すと、道兼が不満を露にします。

帝を退位させる陰謀で一番活躍したにも関わらず、兄に出世が及ばないのはなぜか。

兼家が、道隆ではなく定子の宴だとごまかしつつ、現在3歳の道兼の娘もいずれ入内させると言い始めます。

孫娘二人が后になるとは、なんという幸せものか。そう語りながら、道兼が道を切り拓いてくれたと褒めつつ、道兼に公卿たちの心を掴めば兄を追い抜けると語る。

ここでもう、道兼の最盛期は終わったことが作劇上わかってきます。

道隆の子である伊周が颯爽と出てくる。そのうえで、父自身か、己のことかわからないような「笑裏蔵刀」を投げかける。

これは名のある武士が、名槍でも振り回し、ポーズをつけて登場するようなものではないでしょうか。

そんなふうに颯爽と出てくる伊周の一方で、道長が策を練る政治家として老練が始まったことが見えてきている。

兄弟の中で道長は妻がおらず、娘がいるわけもない。それでも彼は変わった。打毱のころは、娘を入内させるのは不幸にすることだと語っていました。

そんな道長は変わりつつある。この時点で両者が対立していく構図が見えます。

その構図から道兼は振り落とされたと言うことです。

道兼がレースから落ちていくのに対し、そもそもがレースに参加できていない者もいます。

能天気な道長の異母兄・藤原道綱です。

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道綱は無能でも人がよいらしく、俊古が道綱から「美味しいお菓子をもらった」と嬉しそうにしています。

俊古は長いこと蔵人を見てきた。そう聞いた道長が、藤原為時について尋ねると、「実資と為時があんな形で道を閉ざされるのは惜しい」と語っていました。

それにしても「おいしいお菓子」とは一体なんなのか?

以前、SNSで中国の伝統菓子という触れ込みで和菓子のような写真が投稿されました。

中国ではなく和菓子だ――そんな反論が渦巻きましたが、中国では食文化や調理法が変化し、伝統的な菓子も変わっていく一方、日本に伝えられた中国の伝統菓子はそのまま残ったりする。

結果、中国の伝統菓子が和菓子に思えてしまうと言う現象が起こります。

これは菓子だけでもなく、屠蘇、抹茶、下駄、褌も該当します。

三国志』の諸葛孔明が草庵で畑仕事をしている時、下駄を履いていても考証としては間違いではありません。

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倫子とまひろ、勝者はどちらだ?

ここで為時の家がもう限界だとわかる場面へ。

まひろが使用人に暇を出しています。父が官職を得たら戻って欲しいと告げるものの、実質的に永遠の別れと言えるでしょう。

そして、まひろは道長の文を見つめる。

道長も、まひろの文を見ている。

まひろが陶淵明の『帰去来辞』を送ったことが刺さってきます。

あれは決意の歌で「これまでとは別の道に行こう……」と誘うものとしても詠めます。

しがらみを捨てて愛の道へと向かうか。それとも愛を捨てて政治へ向かうか。どちらにも解釈ができます。

道長の心を反映する。この前は愛への逃避行を選んだけれど、今回は逆転してもおかしくありません。

君やこむ 我やゆかむの いさよひに 真木の板戸も ささず寝にけり

あなたが来るのかな、それとも私が行こうかな。そう悩んでいるうちに、十六夜の月が見えてきて、私は閨の扉も閉めずに寝てしまいました。

新古今和歌集』を学んでいる姫君サロンの面々。

おなごはひたすら殿御を待つだけなんて! 待っているうちに寝てしまうなんて寂しい!

そうキュンキュンしていると、まひろが「寝ていない」という持論を展開します。寝てしまったことにしないと自分が惨めになると思ったのだろうというわけです。

赤染衛門は言葉の裏を感じるようになると、歌がよりよく詠めると満足気な様子。本日はこれまで。

すると倫子がまひろを呼び止め、二人で話すことになります。

父上のことはどうなったか?と問われ、なるようにしかならないと吹っ切ったまひろは、亡き母のように家のことをすると言い切ります。

それでもここへは息抜きに来て欲しいと頼む倫子。

するとまひろが、婿を取らない理由を倫子にたずねます。山のように文が来ていると噂なのだとか。

まひろも変わってきました。恋心の歌を深く読み込み、婿取り話を知りたがるようになったのです。

「私、今、狙っている人がいるの」

親ですら猫にしか興味がないと思っているけれど、実は思う人がいると告げる倫子。いったい誰のことなのか?まひろが聞き出そうとするものの、倫子は「言えない!」と返します。

まひろも納得していますが、なかなか残酷な話ですね。

文が山ほど届く倫子は、相手を選ぶことができる。一方でまひろは、愛情よりも財産を見て選べと宣孝に言われている。残酷女子トークだ。

倫子は必ずこの家の婿にすると決意を語り、その時までは内緒だと言います。

「それは楽しみでございますね!」

「私も楽しみ!」

そう笑いあう二人がおそろしい。

倫子が恋する相手は、もうまひろと枕を交わしています。しかしまひろは、夢なんて見ていないで経済力で婿を探すしかない現実があります。

もしも倫子が真相を知ればすればまひろが憎たらしくて仕方ないかもしれませんが、まひろにしても所詮は精神的勝利法でしかないともいえる。

こんな激しい毒を飲ませてきてどうしようと言うのですか。おそろしい。

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