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『光る君へ』感想あらすじレビュー第13回「進むべき道」

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『光る君へ』感想あらすじレビュー第13回「進むべき道」
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笑わぬ美女が微笑むとき

藤原道長と横になっていた源明子が、懐妊を告げてきました。

それを聞きながら、こんな時でも笑わない妻に不信感を抱く道長。

明子はそれを侘びつつも、微笑むことすらなく生きてきたため、こういう顔になってしまったと答えます。それでも道長の子を宿したことは嬉しいのだと。

微笑ませることはできないが、立派な子を産んでくれと道長が告げると、明子が、藤原兼家の見舞いに行かせて欲しいと頼み込んでいます。

そして二人で兼家の前へ。

「お前は誰だ」

少し気の抜けた様子で、明子が誰だかわからない兼家に、道長が妻だと紹介すると、明子に父上はご息災かと訪ねます。

「父は太宰府から帰ったあと、身罷りました」

そう告げ、にっと微笑む明子。兼家が「ああ、それは気の毒であったのぉ」と返すと、道長はいてもたってもいられぬ様子で立ち上がり、部屋を出ていきます。

明子は笑みを浮かべつつ、兼家の扇が欲しいと訴えます。

兼家が「これでいいか、持ってけ」と無造作に扇を投げ渡す。

「ふふふふふ、ありがとうございます」

心の底からの笑みを浮かべる明子。

この場面は、兼家の背景が唐物(からもの)尽くしで、どれほど金持ちかよくわかります。

扇子も当時は高級品として贈答されたものですが、扇子は正真正銘日本人の発明品で、海を超えた宋でも珍重されました。

それにしても、この一連の場面は不吉でしたね。

明子が呪う気まんまんであることがわかりますが、それだけでもありません。

為時やまひろなら「褒姒(ほうじ)だ!」と驚いたことでしょう。

褒姒とは、殷・紂王の寵姫であった妲己(だっき)と並び称された亡国の美女。

周の幽王に愛された褒姒は笑うことがない美女でした。

それがあるとき、幽王が間違って諸侯の動員を促す烽火をあげました。諸侯はあわてて駆けつけたものの、間違いだとわかって帰ってゆきます。

これを見た褒姒は笑いました。

その笑顔があまりに美しく魅力的であったため、幽王は何度も烽火をあげ、諸侯は呆れ、ついには応じなくなります。

そして、いざ犬戎が攻めてきたとき、幽王はあわてて烽火をあげるも、諸侯は救出に駆けつけることなく、周は滅んでしまったのでした。

笑わない美女である明子の微笑み――それには家を滅ぼしかねない危険なものが潜んでいるようです。

道長は明子を微笑ませるために工夫をするつもりはない。明子が笑う気配があるとその場を立ち去ってしまう。本能で明子の笑みを危険だと理解しているような動きを示します。

そんな凄艶な笑みを見せる瀧内公美さんが大変素晴らしい。

瀧内さんは声も素晴らしく、NHKラジオで『平安ガールフレンズ』の朗読をしておりました。NHKらじる(→link)で配信中ですので、皆様もぜひお聞きください。

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兼家の扇を手にした明子が邸に戻り、今度こそ息の根を止めてやると兄・源俊賢に誓っています。

腹に子がいるのに呪詛はやめておけ。摂政は呪わずとも長くはないと俊賢が諌めると、兄上はいつからそのような腰抜けになったのかと返す明子。

父が亡くなった時、震えるほど怒っていた。それを指摘されると、月日は流れたと答え、自ら命を絶てぬならば、生きてゆくほかないと力なく返す俊賢。生きてゆくならば力のあるものに逆らうべきではないと学んだとのことです。

明子は諦めたように兄の生き方と処世術を認めつつ、私は必ずやり遂げると誓うのでした。

そんな明子の呪詛が効いたのか。

兼家はうなされて起き上がり、あの世なのかと廊下をふらふらと歩いています。そして使用人に、安倍晴明を呼んでこいと告げます。

夜勤から朝一番でやってきた晴明は、兼家から寿命を見ろと言われても、朝は力が衰えていてできないと返す。

ならば後継者は誰にすればよいか?と尋ねられ、その答えは兼家の心の中にある、それが正しいと告げる晴明。

そして晴明が帰ってゆくと、一人啜り泣く兼家です。

結局、この人の人生は何だったのかと思えてくる。

政治闘争で勝ち抜いた果てがこれではあまりに虚しい。

晴明も、素晴らしい心理操作を発揮していました。

宿直明けだともっともらしいことを言い、寿命を見ようとはしない。そして継者を指名しない。

晴明は賢い男です。寿命が尽きることは誰の目から見ても明らかである。権力者でも死にゆくのであれば、ぞんざいな対応でもよい。

そして後継者は、誰も指名しない。まだ不透明な状態です。

下手に指定をすれば、指定されなかった相手から恨まれてろくなことになりません。うまくスルリと躱している。

それにしても、結局のところ兼家は人格でも道徳心でもなく、権力だけを愛されてきた。我が子からすら突き放されている。

実に虚しい人生ではありませんか。

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一条天皇は定子にあこがれる

帝が、乳母の橘徳子と定子と共にかくれんぼをしています。

定子の衣の中に隠れる帝。かわいらしい場面ですね。

このころの貴人は衣装に香を焚きしめています。その香と体温を暗い中で味わい、帝は定子にたまらないほどの魅力を覚えたことでしょう。

彼女がどれほど愛されるか、今からもう伝わってきます。

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するとそこへ藤原詮子がしずしずとやってきて、帝は隠れていることをやめました。帝は母もかくれんぼに誘うものの「今度またね」とかわされてしまいます。

今度はいつかと食い下がる帝にそっけない詮子。手習の時間だと言います。帝が嫌だと騒ぐものの、定子が手習のあとまた遊ぶと約束しました。

定子に用件を尋ねられ、忘れてしまったと返す詮子。思い出したらまた参るとか。

詮子は、大人の中で育って遊び相手がいない帝は定子が来てから顔つきが明るくなった、せいぜい遊んであげておくれと言います。

今までは母が好きだった帝も、定子に愛情の上書きはされるとわかる場面ですね。

定子が春に咲く花のように明るく華やかであるのに対し、詮子は御影石のような冷たさがあります。

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兼家が道長を呼び出しています。

寒くないかと尋ねる道長に対し、兼家はしっかりしています。

どうやら道長が民に気配りしたことが気に入らないらしい。断片的にあのやりとりの記憶があるようです。

民に阿っているわけではない。民を虫ケラのように扱えない。道隆のような政治はおかしいと道長が訴えると、兼家が激しい口調で応じます。

「お前が守るべきは民ではない!」

ならば真の政とは何かと道長が尋ねると、兼家は返します。

「政、それは家だ! 家の存続だ!」

人は皆いずれ死ぬ。腐り土に還る。それでも家は残る。栄光も誉も死ぬが、家は生き続ける。家のためにはすことが政であり、その考えを引き継げるものこそ後継者だと。

道長は父に賛同するしかありません。父の言葉は子を縛ります。前回の藤原頼忠藤原公任もそうでした。

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