光る君へ感想あらすじレビュー

光る君へ感想あらすじ

『光る君へ』感想あらすじレビュー第21回「旅立ち」

2024/05/27

藤原伊周の捕縛が迫る中、二条第の庭に隠れ潜んでいたまひろと清少納言。

二人は藤原定子が髪を切る姿を見てしまいました。

あまりのことに目を見開く清少納言。

定子の母である貴子も悲鳴をあげます。

「出家いたします」

どうして、中宮様……清少納言はそう嘆くしかありません。最愛の女性がこの世を捨ててしまったのです。

 


定子落飾の衝撃

帝は藤原道長から定子落飾を聞かされ、「誰も止めなかったのか!」と嘆いています。

すかさず藤原実資が「この身の至らぬゆえ」と頭を下げると、実資を責めているのではないと答える生真面目で聡明な帝。

誰が彼女をそこまで絶望させたのか?

苦しそうに「朕のせいだ」と呟きます。中宮は朕に腹を立てて髪をおろしたのだと心を痛めている。

肝心の伊周はまだ捕えられていません。必ず捕えると道長が言いますが、帝の怒りは収まらない。

朝廷の権威を踏み躙り、朕の政治に異を唱えた中宮も同罪だ!

混乱した様子で、唐玄宗と立場が重なってきているようにも思えてきます。最愛の楊貴妃が、乱れた政治の原因だと処断を迫られ、玄宗はそれに応じてしまった。

誰が最愛の相手を殺すのか?

帝はよろめき、道長だけが見ている前でこう言います。

「愚かであった……中宮はもう朕に会わぬ覚悟なのだ……」

血を吐きそうな声を放つ帝と、その様をじっと聞いている道長。

君王面(おもて)を掩(おお)うて救い得ず

迴(まわ)り看(み)れば血涙相和して流る

皇帝が顔を覆っても救えない

血と涙がともに流れた

白居易『長恨歌』

 


「この騒動で一番得をした者は誰か?」

藤原宣孝は、まひろから二条第での目撃談を聞いていました。

利に聡いタイプの宣孝は、伊周の逃亡先を聞き出そうとします。実資にでも告げたら良い“貸し”になるでしょう。

しかしまひろは、逃げるところは見ていないとそっけない。色々なことが一度に起きて、ワケがわからなくなったとのことです。

宣孝は中宮のことが理解できません。

髪をおろしたのならばもう帝とは会えなくなるのに――そう言いつつ、顔を見たことはないけれど、帝の寵愛を受けるほどの美女が女を捨てるとはもったいないと惜しんでいます。

下品な趣味をぺらぺらしゃべらないで、と呆れるまひろ。宣孝は「下品な趣味を抱かぬ者はいない」と開き直ります。

こういう下品な会話でまひろとの距離を詰めてきていますね。そんな話は別のところでしてください、とまひろがキッパリ突き放しても、そもそもまひろが二条第にいた話題を振ってきたからだと言いながら……かしこまって、大仰に謝る。

しつこくしないからギリギリ許されるセクハラおじさんといったところですね。

そして宣孝は、見方を変えると宣言しながら、「この騒動で一番得をした者は誰か?」と囁く。

答えは明白、右大臣の道長ですね。

花山院との小競り合いを大事にして、女院詮子と手を結ぶ。関白道隆の嫡男を追い落とせば、もはや敵はいない。女院も中宮が気に入らない。

かくして右大臣と女院の利害が一致――こういう真面目な話ならいいだろう?と問いかけると、まひろは神妙な顔をしています。

「……なるほどとも言えます」

まひろはどうしてこうも猜疑心旺盛なのでしょうか。あれほど惚れているなら「そんなわけありません!」と返した方が可愛げというのものがある。

それでも物事の裏も表を知りたいのが彼女の個性なのでしょう。

越前への出発を控えた藤原為時は、知人たちへ挨拶に向かっていたところ、皆中宮の話ばかりで相手にされないとぼやいています。

間が悪かったのだと宣孝が慰めつつ、開き直って為時の装束を褒めています。

なんでも右大臣から早速お手当が出たとかで、笑い合う二人が考えていることは同じなのでしょうか? 宣孝は、越前守になることでいくら稼げるか、そればかり考えていそうです。

為時が儲ければ、まひろの価値も上がりますけど。

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清少納言は中宮の側に戻る

髪をおろした定子のもとに、清少納言が来たと報告されます。

「帰せ」

そう命じる定子ですが、清少納言は既に眼の前に参ってきて「かえりませぬ」と返事。

「少納言……」

「あのとき、里にさがったのは間違いでございました。どうか再び私を側においてくだされ」

「ならぬ。私は生きながら死んだ身である」

「なにがどうあろうとも、私は中宮様の側におらねばならぬと覚悟を決めてきました。命ある限り、私は中宮様の側を離れない。ご命令とあらば私も髪をおろします」

「ならぬ、さがれ」

必死に訴える清少納言にそう返すと、定子は倒れてしまいます。

「中宮様!」

そう支える清少納言です。

侍児(じじ)扶(たす)け起こせば嬌として力無し

侍女が助けて起こすとぐったりとして力が抜けている

白居易『長恨歌』

 


検非違使別当・実資により伊周捕縛

藤原実資が、妻の婉子女王からマッサージを受けています。

なんでも伊周探しで疲れ切っているとか。

教養あふれる実資がそんなことするなんておかしい!と、妻が訴えると、実資も同意しつつ、逃げた伊周を見つけなければ検非違使別当をやめられないとぼやいています。

婉子女王はつまらないそうです。なんでも帰宅しても疲れたと言ってすぐに休んでしまうのだとか。

「いま少しじゃ、今少し、今少し……」

身体をマッサージさせながら何気なく語る実資ですが、健康マニアらしい発言にも思えます。

相手がいかにかわいらしい妻であっても、実資は自己抑制ができている。かつて宣孝から贈られたスケスケ衣装美女の春画を喜んでいた実資は、色好みでもあります。

しかし、東洋医学で寿命を縮めるものといえば「酒」と「色」。

疲れが溜まっているときは、この二つは遠ざけるべし――そう考えていても不思議はありません。

疲れたと言いながらエッチなコンテンツに耽溺する誰かがいたら、実資は「ありえん、命を縮めるぞ!」と呆れることでしょう。

飲酒とエロスは健康なときに、ほどほどにしておくこと。

そんな実資は「北山から宇治まで探してもいない」と道長に報告しています。

「宇治」の地名に注目ですね。当時は都でも郊外で、少し離れていることが把握できます。『源氏物語』「宇治十帖」の舞台です。

やはり二条第に潜んでいるのではないか?と推察する実資。

そういえば、まひろも伊周が外に出ていく姿を見ていません。実資は、二条第捜索の許可を得て、再び探索へ向かいます。

と、伊周が現れました。

「探さずともここにおる!」

潔く名乗り出てきたようでいて、実際は、袈裟と頭巾をまといながら「出家したから任地にいけぬ!」と声高に叫び、その旨を帝に伝えよと言い切ります。

いかにも往生際が悪い態度であるのにに対し、実資は、被り物を取るよう執拗に指示。

「うるさーい!」

切羽詰まった様子で、その場から逃げ出そうとしますが、あっさり捕まってしまい、被り物を外せば髪の毛が出てくるではありませんか。

これから剃髪する予定だったと言い訳している兄に対し、定子が言います。

「見苦しい!このうえは帝の命にすみやかに従うように!」

かくして伊周は太宰府へ出立させられることになりますが、なおも嫌だ嫌だと激しく抵抗。

「ここを離れるわけにはいかぬ! 亡き父上に家を守ると誓ったのだ!」

藤原伊周なりに責任感もあったのでしょうか。

母の高階貴子は「私がいかせる」といいながら、優しく語りかけます。

「母と子で太宰府へ向かおう……」

事ここに至り、泣きじゃくるしかない伊周。

話の顛末を聞いた帝は、都に留まりたいというだけでなんと愚かなことをしたのか……と呆れ果てています。実資に、母と子を引き離せと命じるのです。

しかし、そんなことは知らず、牛車で都を離れる母と子。

多くを背負わせてしまった……と貴子が伊周に謝っていると、実資たちが追いかけてきました。検非違使の一行が凝った再現装束を身につけていますね。

実資が、母の同行は罷りならぬと帝が仰せであると告げ、貴子を連れ出そうとします。

泣き叫ぶ親子。

中宮の母に何をするか!と伊周が訴えるも通じません。

定子も出家し、もう伊周しかいないと貴子が訴えれば、伊周も道長に見逃してくれと懇願するしかありません。

しかし実資は、ここから先は騎馬で下向するよう淡々と告げ、母と子は引き離されるのでした。

道隆の死からわずか一年、その子たちは全て内裏から姿を消しました。

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中宮の失墜と女院の安堵

さらに追い討ちをかけるような悲劇が起こります。二条第から火の手があがったのです。

当時は、ろくに消火もできない。

炎が燃え盛る中、定子はジッと座ったまま。清少納言が駆けつけ、逃げるように促すと……。

「そなたのみ逃げよ。私はここで死ぬ」

「なりませぬ」

「生きていても虚しいだけだ。私はもうよい、もうよいのだ」

もはや死ぬ覚悟の定子に、清少納言は「お腹の子のためにも生きねばならない!」と訴えます。

かなり燃えていて、かつ逃げ出しにくい服装ですが、どうにかなったのでしょうか。

藤原詮子が、兄は自分の命が短いと悟っていたのかと源倫子に語りかけています。

定子を中宮にする。伊周の昇進を促す。今日の悲しいありようは、すべて兄上の焦りから始まっている。

中宮を憐れむ倫子に、詮子は先のことはわからぬとしみじみ。

死人に責任を押し付けるような誘導は、ちょっといかがなものでしょうか。

伊周の一件がようやく落ち着き、帝は、実資と道長を労います。

実資は昇進して中納言となり、検非違使別当を免じられました。道長は正二位、左大臣に出世。

めでたいことなのに浮かない顔をしている――実資がそう指摘すると、道長は否定していますが……。

気のせい、気のせい。そう自らに言い聞かせるようにつぶやく実資です。

定子の出家に伴い、詮子が、次の妃探しの話を始めました。

藤原顕光の女である元子が候補に上がると、それがいいと詮子。なんでも村上天皇の孫で、血筋がよいのだとか。

すると倫子が笑い始めます。

何かと思えば、詮子が元気になって嬉しいのだとか。もう呪詛はされていないと詮子が答えると、あの呪詛は不思議だと倫子が何やら意味ありげに語り始めます。

道長と女院の父である兼家は仮病が得意だった――。

詮子は焦ったように、倫子は出産が近いから気が立っている、労わっておやりと道長に告げていますが……きょうだいの中で最も兼家に似ているのは、やはり詮子でした。

呪詛の黒幕は詮子のようです。

皇室しか使えぬ呪詛の様式を利用できた謎も解けました。

だからこそ、わざわざ「兄のせいでこうなったのだ」と強調するようなことを、倫子の前で語ったのでしょう。

倫子がいつその真相に気づいたのか不明です。

ともあれ、詮子の策に乗れば夫の地位はますます盤石。

共犯者となったうえで、詮子にこうして脅しをかけておけば最善の策が取れるといえます。

こちらが恨んだ相手から呪詛されたら、安倍晴明にでも頼みましょう。

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ぞれにしても、道長が哀れです。

兼家はチーム内で策を共有していました。詮子はそれすらしない。倫子も放置。そりゃ顔色も悪くなりますよ。

 

悲しき中宮に捧げる『枕草子』

清少納言がまひろのもとへやってきて、藤原定子の懐妊をそっと漏らします。

呪詛を防ぐため、帝にすら告げていないんだとか。確かに判明すれば、それこそ詮子ならば呪詛しかねません。

まひろは驚いています。

清少納言は出家以来、生きる気力を失い、食事も召し上がらない定子が心配だそうで。

中宮様を元気にするにはどうしたらよいか?と、まひろに尋ねています。

なかなか重たい話題に対し、「さぁ……」と戸惑うばかりのまひろ。さすがに清少納言も「そうよね」と返すしかありません。

しかし、まひろがふと思い出す。

清少納言は以前、中宮から高価な紙を賜ったはずだ。伊周が帝に献上したときにもらったもの。

帝が司馬遷『史記』を映す。ならば中宮様は何を書くべきか。そう尋ねられ、清少納言は「枕詞」を書くようにと申し上げました。

史記=しき=敷

敷に対して枕というわけです。

まひろが読み解くと、中宮様がおもしろがってくれたと清少納言は思い出しています。

ここでまひろが「その紙に中宮様のために何か書いてはどうか」と提案するのです。

“しき”だから“春夏秋冬”(=四季)ではどうか。

そんなまひろのアイデアに、「言葉遊びがうまい」と感心しきりの清少納言。笑い合う二人です。

ここは予告の時点で、どうしたものかと思っておりました。

清少納言の動機を、よりにもよって紫式部が提案するという誘導はいかがなものかと……。

ただし、会話のキャッチボールで決まるのであれば、よいかもしれません。

会話の中でアイデアが思い浮かぶことは多々あります。まひろが女諸葛だと思えば、これも許容範囲でしょうか。

早速、清少納言は墨を擦り、筆を執ります。

根本先生の指導を受けたファーストサマーウイカさんの所作が見事ですね。

そして、書いた紙を定子のもとに置き、それを手にして目を通す定子。

春はあけぼの――そう書かれた『枕草子』を読み進めています。

たった一人の悲しき中宮のために『枕草子』は書き始められた。

なるほど、こうきたのか、と腑に落ちました。

『枕草子』の様々な内容が、今回と重なって見えます。

藤原伊周の泣き叫ぶ姿は「上に候ふ御猫は」を思い出します。

帝や内裏の人々に愛されていた犬の翁丸が、猫の命婦のおとどに飛びかかったために、打ち据えられ、宮中から追い出されてしまう場面です。清少納言は翁丸が戻ってきたことに気づき、哀れむ様が描かれています。

あれはただの微笑ましい記録ではなく、帝の意思ひとつでああも寵愛を受けていた存在が、追い出されてしまうことを嘆いたのかもしれません。

「木の花は」は、植物をランクづけするような内容です。ここで清少納言は、梨の花はいまひとつ、どうにもパッとしないと思っていたと言います。

けれども『長恨歌』にはこうあります。

梨花一枝 春雨を帯ぶ

梨の花が春の雨を帯びた姿のようだ

楊貴妃の魂が玄宗の前にあらわれた姿のことです。

こう例えられるのならば美しいのかもしれないとじっくり観察すると、確かに趣があるとわかったと記しています。

今回の落飾した定子を見ていると、この段を思い出しました。

かつては満開の桜のようだったけれども、今は常にどこか寂しい。悲しみの色がある。そんな憂いを帯びた姿も尊く美しいのだと、そう腑に落ちる気がしました。

楊貴妃にせよ、後世の白居易が『長恨歌』を詠んだからこそ、その美貌が伝説になったといえます。

定子も清少納言の筆が、その魅力を残してきたといえる。

最愛の人が永遠に生きて欲しいと願い、筆を執ったと思える。

圧巻の場面でした。

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宋人の狙いを見極めよ

藤原為時が藤原道長のもとへ挨拶に来ています。

共に参る娘が一生懸命準備をしていると語る為時。

道長には懸念がありました。

肥前博多に来ていた宋船なのに、若狭に来て新たな商いを求めてきた。

しかし、大湊もなく、異人をもてなす館もないゆえ、越前に移して松原客館にとどめおくことにした。

朝廷としては新たに商いの場を作りたくない。越前は都に近いから、乗り込む足掛かりを作らせたくない。

そんな懸念です。

しかも船には70人もの宋人がいて、中には商人だけでなく、官人や戦人も紛れ込んでいるかもしれないとのこと。

穏便に博多へ戻し、帰国させたいというのが道長の狙いであり、越前守の最も大きな仕事だと打ち明けられるのでした。

この場面は『鎌倉殿の13人』の序盤を思い出しました。

序盤の坂東武者はとても素朴で、地形を用いた戦術を献策する将が梶原景時だけで、絶望感が頭をよぎりました。

何が言いたいのか……?というと、

道長も為時も、もっと『孫子』でも読んでください!

本気で攻め込むつもりなら、さすがに70人は無理があるでしょう。

大湊がない場所にはそもそも狙って漂着するとも思えない。越前は中国大陸に近く、風や潮の流れのせいで偶然流されたと考えた方がしっくりきます。

いくら都に近かろうが、大型軍船が往来できる航路が確実に確保できなければ、日本に侵攻なんてできやしない。

道長は作中でも頭が切れるほうには属していないし、都の貴族は兵法を学ぶつもりが全くないと見た。

そこまで弱いからこそ過剰に怯えているように思えます。

彼を知り己を知れば百戦殆からず。『孫子』

これに尽きます。

外交的に引きこもっていないで、以前から遣宋使でも派遣していれば、こんなマヌケなことは言い出さないはずです。

宋は、北の遼や契丹へ軍事力を割かねばならず、日本に攻め込む余裕などありません。

そもそも中国は、どの時代も外に出ていくパターンがそこまで顕著ではありません。

広大な大陸を統治するだけで骨が折れる。

朝鮮半島すら制圧は難しく、攻めた結果反撃にあい、大変な目にあうことがしばしばあります。

このことは現代ニュースを読み解くうえでも重要です。

昨今、中国の脅威が盛んに喧伝されています。

主に英語圏が発信する脅威論が焚き付けられているものの、不発気味に思えます。

笛を吹いても、踊る国は限定的なのは、歴史を紐解けばヒントがあるかもしれません。

先日、『黒人の歴史』という本を読みました。

明代の鄭和の艦隊遠征が、アフリカ黒人の目線からだといかに斬新に思えるのかと書かれています。

鄭和はただ交易だけを求めてきました。

中国からアフリカまで、あれだけの大艦隊で遠征できるのに、奴隷貿易もしないし、攻め込むこともない。なんて素晴らしいことだ! 西洋諸国とそう比較して、称賛しています。

グローバルサウス相手に中国脅威論を西洋諸国が吹聴しても「ふーん、どの口が言うんだ? 中国の艦隊は貿易だけで戻って行ったけど、あなた方は何をした?」そうしらけられても何も不思議はないのです。

ちなみにこれは沖縄にしてもそうなります。

中国は琉球とは朝貢関係を続けてきた一方、無理矢理武力制圧したのは薩摩藩です。密約外交で手を結び、琉球王朝を滅亡に追い込んだのは日本とアメリカです。

歴史的に見て、日米が沖縄に中国の脅威を説いても、説得力がどの程度あるか、考えた方がよいのではないでしょうか。

そういうことをすっ飛ばし、自分たちの過去のこともさして反省せず、英語圏の雑誌や書籍が「中国は有史以来、周囲の国を脅していた!」と語ろうと、それこそこれで終了するような雑な論が実に多い。

彼を知り己を知れば百戦殆からず。『孫子

貶すなとは言いません。ただ、そうするにせよ、中国史や思想をもっと学ぶ必要もあるのではないでしょうか。

話を戻します、道長の宋脅威論はトンデモ、当時の朝廷の外交がお粗末だったと示していると思えます。

そんなことだから、平清盛が日宋貿易に開眼したら、あっけなく政治の実権を握られてしまったのでは?

インフラ整備を輸入に頼っているのに、まともな外交をしないのでは限界に到達して当然でしょう。

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そうはいっても、お粗末度は鎌倉幕府よりはまだマシかもしれません。

NHKで放映中の『三ヶ月でマスターする世界史』では、以下のように身も蓋もないことが語られていました。

元寇とは、日本の世界史デビューにあたる事件である。

元という世界史規模の大帝国にお粗末外交を展開した結果、無駄な戦争をした。

日本は元に異常対応したことで世界史デビューを果たした。

そんな血も涙もなく反論できない理論で、いろいろと考えさせられました。

今回の道長の見解からは、もう一つ、日本史のイヤな一面が凝縮している要素もあります。

それは兵站補給の把握が雑であること。70人を派遣したところで、兵站が整っていなければどうしようもない。道長はそこをすっ飛ばしているように見える。

迎える側がそうだと、ただの過剰な心配性で終わります。

しかし、外に出る際に兵站を軽視すると悲惨なことになります。

『麒麟がくる』では、光秀が信長に絶望する一因として、海を超えてまで戦うと言い出すようになったこともありました。

そんなことしたら泥沼に突っ込む。地獄だ!

光秀はそう理解していたように思え、身の程をわきまえない桂男こと呉剛まで持ち出されました。

光秀は理解できるそのことを、信長と秀吉はわかっていない描き方が秀逸であったと改めて思います。

とはいえ為時は真面目ですし、兵法書を読んでいるわけでもないでしょうし、道長の密命にちょっとやつれ気味です。

だいたい道長の命令はふわっとしていて具体性に乏しいんですよね。兼家の方がもっとしっかりと為時を使おうとしていましたよ。

道長は上司としては性格はいい。優しい。でも有能ではないかもしれない。

為時が、そんな苦労を背負い込んでいる最中、宣孝は儲け話に夢中でした。

国司は楽だ、土地で仲良くして懐を肥やせと語り、まひろはそんな宣孝を軽薄だと叱っています。

父はそういうものが苦手だ。

宣孝はしゅんとして、真剣に謝っています。とはいえ、いとがめざとく見抜いているように、叱られると嬉しそうでもあり……。

まひろは宋人に会うことを楽しみにしています。

宋人のよき殿御とかの国に行ってしまうかも――そう浮かれていると、宣孝もそれもよいと同調しつつ、もう叱られないと思うと寂しいと甘えます。

またもや、まひろとの距離を近づけたいように思える宣孝。

彼女はこのドラマの軍師、女諸葛ですので、道長の抜けた外交感覚とセットで、何かやらかす伏線は張り巡らせてあると言えるでしょうか。

すると弟の藤原惟規が帰宅し、出立に間に合ったと嬉しそうだ。

聞けば、文章生に合格したそうで、めでたいことばかりだと皆浮かれています。

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いとは、越前にはついていかないと為時に告げます。

大学寮からでて惟規がここに戻る。悪い女に誑かされぬように見張らねばならない。四年後の帰りを待っていると告げます。

為時も同意し、達者でいるよう答えるのでした。

 

二人の再会

越前への出立前、まひろはあの廃屋で道長と再会します。

越前守にしてくれたことを素直に感謝するまひろ。道長は、お前の書いた文を帝が誉めていたと伝えます。

なぜ私が書いたとわかったのかと驚く彼女に対し、まひろの字はわかると答える道長。

明日の出立を控え、まひろは最後に聞きたいことがあって文をさしあげたと、再会を求めた理由を語り始めます。

「なんだ?」

「中宮様を追い詰めたのは、道長様ですか?」

小さな騒ぎを大ごとにし、伊周を追い落としたのはあなたの謀(はかりごと)かと、問いかけるのです。

「そうだ。だからなんだ」

「つまらぬことを申しました」

そう謝るまひろ。世間の噂に惑わされ、一時でも疑ってすまなかったと謝ります。あなたはそういう人ではないと今更ながらに悟った。

道長も、怒るわけでもなく自虐的にこう答えます。

「似たようなものだ。俺の無力のせいで誰も彼も全て不幸になった。お前と交わした約束は、いまだ何一つ果たせてはおらぬ」

確かに倫子が見抜けた詮子の策を見逃すほかなく、道長は傍観者になっていました。

これからどうしたらよいかもわからないし、もしもあのとき、まひろと遠くの国に消えても、守りきれなかっただろうと冷静に振り返っている。

するとまひろは、かの地であなたと滅びるのもよかったかもしれないと言い出します。

何もできない道長でも、愛する人を思うことはできます。

越前は冬は寒いから体をいとえと告げ、二人は抱き合う。

この十年、あなたを諦めたことを後悔しながら生きてまいりました。

妾でもいいからあなたのそばにいたいと思っていたのに、なぜあのとき、己の心に従わなかったのか。

いつもいつも、そのことを悔やんでおりました。

いつの日も、いつの日も――。

道長に抱かれてそう思うまひろ。

それは彼女だけでなく、道長も、いつの日も、いつの日も、まひろを思っていました。

やっと身を離し、今度こそ越前で生まれ変わりたいと願っていると語るまひろ。

「そうか。体をいとえよ」

頷くまひろ。二人はここで唇を重ねるのでした。

それにしても、感動的な場面ではあるものの、別の男の影は落ちています。

まひろがどうして道長を疑ったのか?というと、宣孝の推理のせいです。

別の男が吹き込んだことのせいで、疑われてしまった道長。そう考えると、それをわざわざ確認するまひろもなかなかの策士に思えます。

道長が流されやすいお人よしで、感情ケアが得意な劉備タイプだとすると、やはりまひろは諸葛亮なのでしょう。

道長がオロオロ系のドジっ子になる一方、まひろがどんどん腹黒くなる現象は興味深い。

道長の後年の権力者ぶりはどうするのかと考えていましたが、まひろの方がどす黒くなるのかもしれません。

いっそ『鎌倉殿の13人』の北条義時超えでも狙っていきましょうか。

気が早いけれども、来年の蔦屋もなかなか悪どいといいますか。

近年NHK大河は嫌われる勇気があるほど、良い出来だと思えます。つまり、来年も期待できる!

まぁ、こういうニュースもありますが……。

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主人公は吉原ガイドブックでブレイクしています。題材の時点でNHKは覚悟はできていることでしょう。

 

越前へ

琵琶湖の上を船が進んでゆく。

指で琵琶を弾くまひろ。

彼女は白居易『琵琶行』を写していたことがありました。

女性が水の上で琵琶を奏でる姿は美しいものです。一瞬だけれども、素晴らしい絵になる場面です。

月岡芳年『月百姿』の「はかなしや波の下にも入ぬへし つきの都の人や見るとて 有子」/wikipediaより引用

船を降り、越前の山道を進んでいくと、「国府に行く前に立ち寄るところがある」として、為時は松原客館へ向かいました。

宋人の様子を見るために立ち寄ったのだとか。

迎える側は予想外の来訪に驚いています。

館の中で宋人は互いに怒鳴りあい、ざわめき、大変なことになっています。

ここで為時が「粛静!」と宋語で「静かにするように」と言うと、宋人が振り向きました。

ただし、この宋語はわざとたどたどしくしているとのこと。

遣唐使があるころはちゃんと先生を招聘したものの、そんなことはとっくに途絶えています。たどたどしい発音でこそリアリティがあるのでしょう。

中国語指導ではなく宋語とあるので、昔のものにするのかと思っていましたが、さすがにそこまではしないようです。華流時代劇に出てくるような、現代人でもわかる時代劇調の言い回しになりそうです。

ここでオウムが「你好!」と言います。声優の種崎敦美さんです。

それには全く文句はありませんが、劉セイラさんもいつか吹き替えてくれたらよいかな、と思います。

ここでざわつく中、ひとり距離をとり、無言の男がいます。

周明です。

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彼は他の宋人よりも肌を出しておらず、幞頭(ぼくとう)付きの頭巾をかぶっていて、文人らしさを滲ませていました。

 

MVP:清少納言と定子

生きながら死んでしまった――そんな最愛の人の命を吹き込むべく、清少納言が筆を執るさまが圧巻でした。

思えば、春のあけぼのの美しさを語るところから、その景色と定子を重ねているようにも思えます。

こんなにも美しい人がいた。素晴らしい場所があった。そう永遠の命を与えるために書く。

そんな清少納言はなんて素晴らしいのでしょう。

純粋に愛する人に捧げたからこそ、こうも美しいのだと思えてきます。

政治的野心、自分の功績アピールではなく、ただただ根底に純粋な想いがあるからこそ、『枕草子』はあんなに瑞々しいのか――改めてそう思いました。

天長く地久しきも時有りて尽くるも

此の恨みは綿綿として絶ゆる期とき無からん

天は長く、地は久しいというけれども、いつか尽きる時が来るだろう

けれどもこの思いはずっと続き、絶えることはないのだ

白居易『長恨歌』

ちなみに美しい思いに水をさすようで申し訳ありませんが、この『枕草子』の対極にあるのが『徳川慶喜公伝』だと思います。

渋沢栄一は根っからの商売人ですから、慶喜の賛美も算盤を弾いて出した結果なのだろうと思います。

あまりに捏造が多く、発表当時から揉めています。

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朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや

中国語圏にも大河の固定ファンはいて、今年も興味津々で見ています。

そこで自分なりに調査してみました。

まず、朱仁聡のこと。

「日本人が宋人を演じるのか。でもまあ、矢野浩二(浩歌さんのこと・中国語圏では旧芸名が通じます)の中国語は間違いないな!」

国境を超えて、そう受け入れられています。

彼は今、北京に戻っているようなので、越前編の撮影はあまり長くないようです。

周明については「衣装がちょっと気になるけど、イケメンだな」とのこと。

中国のドラマファンはルックスへの評価が大変厳しいものですが、そんな彼らが認める松下洸平さんは自信を持って挑めると改めて思いました。

◆松下洸平『with MUSIC』苦戦で囁かれる"賞味期限切れ説"…「光る君へ」登場もNHKの尽きぬ不安(→link

こんなニュースは気にすることは全くないでしょう。

中国語の発音チェックはネイティブならば厳しいでしょうが「でも顔がいいから許す」となればいいですよね。

日本と唐の関係性は、中国語圏でも有名ですが、宋との関係となると改めて考えさせるもののようです。

越前編は注目ですね。

予告では、まひろが拱手礼をしています。中国語圏では絵文字もありまして、挨拶の仕草です。

朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや。

遠くから友達が来た。楽しいね!

『論語』

ドラマでの国際交流はよいことではないでしょうか。

日中韓の人的交流を促進する首脳会談があるタイミングで出てきた周明は、なにやら象徴的に思えます。

交流しましょう。最近店が増えているガチ中華はよいものですよ。

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【参考】
光る君へ/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

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