光る君へ感想あらすじレビュー

光る君へ感想あらすじ 光る君へ

『光る君へ』細かすぎて伝わらない名場面・小道具・海外の反応をもう一度味わおう!

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・小道具

昨年、私はニコライ・バーグマン調のフラワーボックスに愕然としました。

もはや時代劇ですらない、オーパーツの出現、SFなのか?と困惑した次第です。

今年は小道具を見るだけでも至福のときでした。

まひろと三郎を描いた檜扇は中でも出色の出来でしたね。

実資が眺める春画もよい味を出していました。

その道の専門家が手掛けるだけに、間違いのない品と申しましょうか。

一つ一つの出来がよいだけではなく、登場人物の個性や性格、資産の程度も示しています。

兼家の背後にずらりと並べられた磁器。

妍子が夢中になる唐物。

どれも素敵でした。

繊細な磁器で酒を飲む場面は眼福です。博物館で酒器を眺めても、実際に飲む姿は見られません。

大河ドラマの意義を感じたものです。

藤原伊周の呪詛は強烈でした。まさか木の人形を噛み締めるとは想定外です。

この呪詛道具は、本物を完全には再現しておらず、効果は発動しないようにされています。演者を気遣う優しさがあります。

呪詛対策までバッチリ、まさしく小道具担当者の鑑といえる配慮です。

 


・衣装

昨年の衣装について、例えば大久保忠世は「まるでスイカバーのようだ」と嘆いたものでした。

決してあのデザイナーさんが嫌いなわけではありません。他の作品では素晴らしい衣装だと思いました。

しかし『平清盛』の時も昨年も、日本の時代劇に求めているのはこういうものではないと感じたものです。

一方で批判が多かった『麒麟がくる』の衣装は、私は違和感は覚えませんでした。

確かに鮮やかだし、江戸時代中期以降のものとは異なるけれども、特に違和感がなかったのです。

昨年は「東洋色彩のパレットではない」という結論に落ち着いています。使っている絵の具が、東洋の色彩ではないと感じたのです。

今年はこの「パレット」が正しいと思いました。

東洋には独自の色彩があります。それを知り尽くし、キャラクター像にあわせてアレンジしつつ、楽しみながらデザインしていると伝わってきます。

日本の伝統色はこんなにも美しく、可愛らしく、素敵なのだと、弾むような楽しさまでもが伝わってきたのです。

デザイン画も、衣装そのものも、目にしたものは鮮やかで美しいものでした。

デザイナーの諫山恵実さんは日本画を学んだ方で、それならば納得できると思いました。中でも安倍晴明の衣装は、歴代大河でもトップクラスの見事な物だと思います。

宋人衣装も見事でした。

昨年の唐人医衣装は「横光三国志でも参考にしたのか!」と頭を抱えたものです。

それが今年は、あの細かい『清明上河図』を参照し、職業ごとに再現したというのですから、驚くばかり。まさかそこまでするとは脱帽です。

 


・音楽

昨年はオープニングテーマから辛いものがありました。

曲そのものは悪くない。でも、体育祭ぽいというか。コンセプトが曖昧なまま動き出しちゃった感があるというか。

今年の冬野ユミさんは、軽やかで自由自在だと思いました。

平安時代でこれなのか。そう戸惑うこともありましたが、当時の楽器だけにするわけにはいかないのだから、これはこれでよいものだと思いました。

場面ごとにちゃんと合っていて、時に荘厳、時に軽快で、ストレスがなかったものです。

音響も気配りがあって、うるさすぎると思うことがありませんでした。

 

・実写映像

昨年のVFXは一体何だったのか。

日本というよりMMOかと思わせる謎めいた景色には言葉を失いました。

南に虹が出る世界観だったし、戦国時代ではない、別の世界を目指していたのかもしれません。

これは『SHOGUN』でも感じました。

VFX全盛の時代とはいえ、そればかりにすると画面が見ていておもしろくない。どうしたものかと思わされます。

これは大河チームもそうなのか。

スタジオ撮影が多いとされる本作ですが、肝心なところで日本の景色の美しさが堪能できました。

鳥辺山の鬱蒼とした景色。琵琶湖の湖面。筑前の浜。どれも実写でなければ出せない光と影がありました。

VFXに頼りすぎる弊害は、昨年ではなく一昨年の『鎌倉殿の13人』でもありました。

ウクライナのVFXスタジオに外注していた結果、仕上がらないというハプニングがあったのです。

むろんVFXを一切使わないことはありえないにせよ、使い方の加減を考えつつ、映像を作り上げていくことはよいと思います。

 


・乗馬

昨年のVFXメリーゴーランドじみた乗馬は何だったのか……。

「打毱」の項目でも触れましたが大河ドラマに乗馬シーンは欠かせません。

出演が決まり、乗馬もあるのかとワクワクする俳優の方もいると思います。極上の体験にもなります。

それをタイムパフォーマンスだか何だか知りませんが、VFXで済ませるとは何事か。しかも品質は最悪でした。

そう思っていたら、今年は打毱までしました。

ただの乗馬ではない、本当に高度な技術が要求される。

乗馬を毎年することは技術の継承としても重要です。

今年は平安大河なのに乗馬が昨年より充実していて、本当に眼福でした。

 

・殺陣と武器考証

昨年はウケ狙いだかなんだかしりませんが、プロレス技を入れていましたよね。

そういうものは求めてないんですよ。

死ぬ間際の信長の無双も、現実世界を超越していたし、岡田准一さんの身体能力無駄遣いにもほどがありました。

現実社会を超越しているといえば、火器考証もおかしいですよね。

「慈愛の国」構想では空鉄砲を撃ち合っていましたが、その火薬にせよ輸入抜きにしてはできない。

装填を考慮していない発射速度の火縄銃。火縄の扱いが無茶苦茶な茶々。そしてレーザーバズーカのような射程距離の大砲。思い出すだけで憤激させられます。

一方、平安大河で殺陣を求めても仕方ないか。

そう思っていたら、双寿丸がキレキレのキックで悪党を倒したものだから、驚かされました。

さらには【刀伊の入寇】です。

なんとマニアックな武器考証でしょうか。

中国の影響下から抜け出してゆく甲冑の変遷。

素朴な長柄の武器。

補強がそこまでされていない当時の和弓。

そして刀伊側のみが用いる弩。

刀伊側は日本とは異なる中国の特徴が出ていて、比較も実に興味深いものがありました。

こんなにマニアックな武器が見られるなんて……感無量です!

 


・ジャニーズ問題後のキャスティング

この問題は終わっておりません。

局内でも昨年の大河は問題視されているのではないでしょうか。

10月20日放映の『ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像』では、2023年度大河決定時、理事を務めていた若泉久朗氏の姿も映っておりました。

この番組放映後、昨年に続き、今年も紅白歌合戦へのジャニーズ出演はなくなったと報じられております。

この問題は大河ドラマはじめ、朝の連続テレビ小説等、他のNHKドラマにも影響を及ぼすことでしょう。

ジャニーズが出なくなった今年の大河ドラマにおいて、若手男性俳優に注目が集まらなかったら、批判は避けられない状況になりかねません。

しかし、今年は大河を契機にブレイクする若手男性俳優がおります。

一条帝、三条帝、伊周、隆家など、みな輝きがあった。

ジャニーズに頼らなくても日本はちゃんと個性あふれるイケメンを用意できると証明できましたね!

さらに彼らは事務所の力に頼らず、己の演技に賭けているのか。時代考証担当者が著書を差し出すと、既に読んでいる人も多かったそうです。

実に希望に溢れる展開です。頑張った分だけ皆光っておりました。

このドラマは『スカーレット』から再登板する俳優も多いものでした。

中でも一際重要な再登板となったのは伊藤健太郎さんでしょう。

彼は『スカーレット』で幅広く知られるようになりながら、不祥事で活動が停止状態になってしまった。その再登板といえば賛否両論あることは間違いありません。

それでもこのドラマは彼の再起に賭け、重要で個性を引き立てる双寿丸に起用しました。この義侠心はあっぱれだと思います。

2019年大河ドラマは、朝の連続テレビ小説『あまちゃん』からキャストとスタッフの続投が目立ちました。ファンダムそのものも、同窓会のような様相を呈していたものです。

しかし、私はそれがかえって気持ち悪かった。肝心の主演俳優が再登板されていないのに、そのことを見ないような明るさで盛り上がるとは、なんと残酷なのだろうと。

『スカーレット』組の伊藤さんがこのドラマに再登板しなかったら、私はまたあのときと同じ苦い思いを噛み締めていただろうと思います。彼が戻ってきて、本当に嬉しく思います。

大河の伝統として、役者のキャリアを伸ばすこともあります。今年はその原点にも回帰したでしょう。

2023年の激動後、今年はかえってキャスティング面において大きな進捗がみられました。雨降って地固まるとはこういうことですね。

なお、大河ドラマでは基準があるようです。

ジャニーズ出身であっても、事務所を移籍すれば採用されるようで『べらぼう』には移籍済俳優が起用されます。

2023年大河ドラマについていえば、再放送枠から外しているのではないかと私は推察します。局内でも不快だと思っている人はいることでしょう。

私が蒸し返さなくとも、誰かがこの作品についてはこれから何度でも蒸し返すものと予測されます。

 

・労働環境の改善

『鎌倉殿の13人』では、主演の小栗旬さんが先頭に立ち、大河チームの環境改善に取り組んでいたと報道されました。

それが2023年には週刊文春でスタッフの苦境が告発される事態にまで陥った。

いくら2023年大河の良いところを指摘されようと、私はこの一点で断固支持できません。

パレスチナ問題を踏まえて、スターバックスやマクドナルドでの食事を避けるように、パワハラが文春砲で暴かれるようなドラマを誉めることも避けたい。

スタッフが苦しみ抜いて作り上げるものなんて、とてもじゃないけれども肯定できません。

そういう意味では昨年の大河、2019年大河(脚本家が消耗し、無理矢理作らされたと暴露した)2024年下半期朝ドラ(劣悪な環境だと文春で明かされた)は出来が悪くて助かります。

もっとも、スタッフがいやいや作ったドラマが面白くなるはずもないとは思います。

そこを踏まえて、今年です。

まず、主演の吉高さん以下、顔色が大変よろしい。

楽しんで撮影していることが伝わってきます。空気が澄み切ってとてもよいと思えます。

昨年大河関連番組では、主演の話を聞いているスタッフは具合が悪そうな顔色で、とても心配だったものです。

出演者だって誰かが文春に台本を流出させたからには、不満が充溢していたのでしょうね。

今年は職場環境がよくなって、ほんとうによいことだと思います。澄み切った水で、綺麗な花が咲く。そんな大河チームでありますように。

こんなに改善点があるのに、昨年と今年をまとめて「どっちもどっち」とするとすれば、それはおかしいと思います。

それこそ玉と石の区別がつかないようなもので、鈍感だと告白するようなもの。私としては避けたいところです。

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