鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第11回「許されざる嘘」

2022/03/21

北条義時の八重を思う気持ちを汲み取り、二人の縁結び役を務めようとする頼朝。

しかし、政子はそれをキッパリと否定します。

単純な嫉妬とかそういう心情的な話だけではなく、政治的な絡みもあります。

滅びた伊東と縁組をするメリットはない!

と、表向きはそうですよね。もちろん嫉妬の気持ちもあるでしょうが。

 


ずっと八重を好きだった

政子の隣には全身真っ赤になった実衣がいます。

すっかり恋心がエスカレートしてきました。彼女は、全身真っ赤なコーディネートをしても平気なんですね。

むしろ、自分の持ち物すべてを赤く染め上げたいタイプ。小物や家具が赤くても驚きません。

頼朝は、八重が見知らぬ男に嫁ぐより、小四郎(義時)の方が安心だと言います。

そんな気持ちも理解できなくはないし、汚い下心もあるかもしれない。義時みたいに無粋な男なら、自分との恋が上書きされないという計算もあったりして。

政子にもメリットはあります。邪魔な女には信頼できる“門番”をつけたほうが安心できます。

と、そこで実衣が、兄はずっと八重を好きだったという観察結果を報告します。

頼朝も、小四郎を頼りにしていると断言。

そのころ八重は亀から体調を聞かれていました。

亀の前イメージイラスト
なぜ亀の前は政子に襲撃されたのか?後妻打ちを喰らった頼朝の浮気相手

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ナレーションによる解説が入ります。

義時と八重は、甥と叔母の関係にあたる。ただし、関係性は少し複雑で、義時の母と八重の母は異母姉妹となる。

中世はそうした縁者同士の結婚がさほど珍しくなかったという解説ですね。

ハードルをクリアしているようで、大事なことを忘れてはいませんか?

そう、八重の気持ちです。

義時は少し自信をみせ、彼女が自分のことを頼りにしてくれているから大丈夫だとニッコリ。

果たして、家族が見守る中、八重がやってきます。

答えはいかに?

「お断りいたします」

劇的なBGMが流れ、崩れた表情がアップになる失恋主人公・義時。

フられました。

やはり草餅ときのこを贈るような気の利かなさが悪かったのか。

最初から失恋する主人公、がんばれ!

 


「振られてからが勝負だ!」

挙兵の歳の暮れ、頼朝は力を蓄えています。

打倒平家の旗のもと、鎌倉には日々人が集まってくる。真に頼れるのは誰か? それが今回のテーマのようです。

「うわーん!」

頼れるのはやはり主役の義時でしょう……と思いきや彼は泣いています。

失恋のあとは友人の慰めが定番ですが、さぁ盟友の義村はどうか?

「八重さんにふられたらしいな」

うーむ。なんだか面白がりながら、義時や、隣にいる安達盛長に向かって話していますね。つくづく友達にしたくない奴だわー。

三浦義村イメージイラスト
殺伐とした鎌倉を生き延びた三浦義村|義時の従兄弟は冷徹に一族を率いた

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盛長はうろたえています。

義時よ、失恋情報が職場に広まっているって、気の毒すぎるな。

義村が八重は我が家に住んでいると何やら勝ち誇っていて、義時が振られたはずだと指摘しても、「男女の仲は振られてからが勝負だ」などと迷惑なことを言い出します。

いや、その考え方、場合によってはタチが悪いですよ。

しかし、義村はさておき、義時が誠実なのは間違いありません。

彼は、八重と政子のことで、頼朝は馬のように相手を乗り換えていると不満を漏らしていました。兄・北条宗時のセリフに、平家の連中は馬や女を奪うとありましたように、そういう時代です。

女は財産として奪われてしまう。

そんな風に女性が馬と同列に扱われることを義時は許せない。優しい男なんですね。それに夫が二人いた八重でも気にせず愛しています。

義村は、無駄に格好をつけて義時にマウンティングしています。

思わず顔芸をしてしまう義時をからかいながら、義村はこうきた。俺は友の女に手を出さないつもりだが、これからはちがう。好きにさせてもらう――。

「振られてからが勝負だ!」

負けじと言い返す義時ですが、義村はこうだ。

「お前の場合、勝負はついている」

恋愛観の中身が低レベルすぎて、京都からすれば大笑いでしょう。

『源氏物語』あたりでも、武士にせよ京都以外の人間は「ダサくてキモい人たちやわぁw」とコケにされていました。髭黒とか。

しかし、坂東にも京都よりよいところはあります。

『源氏物語』にせよ、その作者の紫式部にせよ、ガードが弱いとなると無理やり女性の寝所に忍び込む不埒な男がつきものでした。

本作の義時と義村はそうではありません。そこはきっちりとアップデートした良心的なドラマなんですね。

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景時を呼び出し

失恋を吹っ切るためか。義時は仕事をするべく頼朝のもとへ向かいます。

そして正直に、政(まつりごと)が大掛かりになって手に負えないと報告する。

政権運営のために人員が欲しい。そう願い出ると、頼朝は(京都の)三善康信に用意させると約束します。

義時は有能です。

古今東西、どんなときでも、こういう人物が組織には必須。

自分でできると言い切らず、限界を迎える前にこういう提案をする。

義時は策となれば義村にも求めるし、自分のできる範囲を把握している。そこが賢いのです。

彼は、さらなる平家との戦に備え、和田義盛だけでは頼りないと言い出します。

頼朝が、気になる者がいると言います。

いや、その前に指摘しておきたい。頼朝よ、なぜ隣に亀を侍らせているんだ? これだから京都から来た男は……。

かくして頼朝の命を受けた義時は、梶原景時の館へ向かいます。

即答するかと思いきや、自分の欠点を申告する景時。人の間違いをいちいち指摘して、かえって足並みを乱すことになったら申し訳ないと義時に伝えます。

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景時は“目”を持っている。

一度、何かがひっかかたらそこを観察して、隠されたしんそうを見つけてしまう“目”。シャーロック・ホームズが虫眼鏡で観察する様を想像してみると良さそうです。

そんな景時に対して義時は、頼朝が大庭方での働きを知り会いたがっていると返答します。

景時は、己の才能を認められて嬉しそうですね。

私も安心する。彼がいれば、指揮系統が無茶苦茶なことにはならない気がする。

 


清廉潔白な義時だからこそ

治承4年(1180年)12月12日――鎌倉に御所が完成しました。

御台所となり寝所に案内されてゆく政子。

そこに父の北条時政とりく(牧の方)もやってきますが、彼女は不満そうです。

義時は挙兵以来の武功をまとめていました。

信賞必罰、これは大事です。

隣の安達盛長も思わず泣いてしまう。彼の名前があるうえに「軍功特に大なり」と書かれていて感動しているのです。この時代はみんな涙もろいから。

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けれども頼朝がキッパリと「早く呼んで参れ」と仕事を促します。

そして盛長が去った後、ああいうところがあるとちょっと呆れたように言います。

そして頼朝は、また義時に無茶振り。平家から奪った所領を与えるから、義時がやれってよ!

でも、こういう仕事を任される時点で、義時が素晴らしい人間だということがわかります。

最も大切な恩賞の話ですからね。腹の底が欲深い人間に任せてしまうと、贈収賄したい放題になる。清廉潔白な人物でないと務まりません。

義時が戸惑っていると、頼朝はこう言います。

「わしが誰よりも頼りにしているのはお前だ」

わかりますよ。八重にきのこをあげちゃうくらい迂闊だし、彼女に惚れていても無理矢理ものにするようなこともない。金銭欲や物欲も薄い。

実力以上に清廉潔白さ、道徳心が重要です。

頼朝はそんな義時に、舅殿(時政)が欲しがっている江間を与えると言い出します。この程度の特典はありでしょう。

「ありがたくお受けいたします!」

義時が嬉しそうにするのは、八重たちのこともあるのでしょう。

自領にして、そこに伊東の人々を住まわせたら、きっと今より幸せになれるはず。あの鬱陶しい三浦義村とも引き離せますもんね。

 

侍所別当・和田義盛!

そこへ和田義盛がズカズカと入ってきます。

頼朝が侍所別当に任じました。

石橋山の戦いに敗れた頼朝一行が房総へ逃げた時、義盛がそんなアピールをしていましたね。

彼は、その場の勢いで、本気ではなかったと狼狽えています。こいつも無欲ですなぁ。

「いいから受けなさい」

「何をするんですか?」

何も知らないで言っていた義盛。

侍所別当とは、家人を取りまとめ役で、頼朝の命令を皆に伝える――いざ戦となれば軍勢を集めると説明されます。

「和田小太郎義盛! 佐殿のために命にかえて、いのちにかえて、い・き……」

「もうよい、だいたいわかった」

こうして素朴に、人事がまとまりました。

うまいと思います。兵糧管理を義盛にやらせてはいけない。

畠山重忠、三浦義澄あたりはオールラウンダーだけど、義盛はこういうノリと勢いだけでできる役目しか務まらない。

要は適材適所ですね。

華やかな役目でもあり、ムードメーカーの義盛にはピッタリだ!

彼も、これ以上の欲は持たずに、がんばって欲しいところではありますね。

御所に入ったこの日――。

頼朝は家人一同を集め、所領を与えて主従の契りを交わしました。

まさに関東に独自の政権が芽生えた瞬間ですが、ここにややこしい問題が出てきますね。

鎌倉幕府っていつできたの?

かつては「いいくに(1192)つくろう鎌倉幕府」でした。

その後に「いいはこ(1185)つくろう鎌倉幕府」が新たに挙げられ、他にも複数の候補が研究者たちの間で提唱されています。

そもそも「鎌倉幕府」なんて言葉もありません。

幕府ができるのが初めてだから、室町や江戸を比べる必要はなく、ただの「幕府」。当時は「関東」と呼ばれておりました。

ともあれ、時代が大きく動きます。

頼朝は今までの戦いぶりを褒め称え、これから平家をうち、いずれ新しい世を作ると言います。

上総広常がここで御家人を代表し、一丸となって支えることを誓う。

鎌倉殿と御家人の誕生です。

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日本初の幕府は、かなり原始的な制度の上に成り立っていました。

土地と権利をセットにして力を持たせるのは危ない――それを日本が見本としていた中国は学んでいました。

朝廷から節度使に任じられ、地方で軍閥を築いた安禄山による【安史の乱】により、唐は大打撃を受けたのです。ゆえに、その後の宋は、もっと違った統治を目指した。

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時間を飛ばして江戸幕府の末期となると、幕臣や藩士たちは己の忠誠心を元に戦います。

武士として生まれていない、新選組の近藤勇土方歳三もそう。

そんな人間としての美学が根付くには、まだ時間が必要です。

 

景時が義盛の下で大丈夫?

同じ日、西では――。

以仁王を匿った園城寺はじめ、南都が平重衡ら平氏によって焼かれました。

東大寺大仏殿が焼け落ちる様は見ていられなかったと、三善康信が頼朝宛の文に書いています。

今年の大河は、実に意義があることを描いてきました。

文化遺産や宗教施設の破壊は、戦争や政治闘争につきもの。心理的に打撃を与え、逆らうものには容赦しないと示すには有用とされます。

ここ数年でも、こんな事例はあります。

2020年『麒麟がくる』:織田信長による比叡山焼き討ち

2021年『青天を衝け』:水戸藩主・徳川斉昭による藩内寺社仏閣迫害。明治政府による廃仏毀釈

『麒麟がくる』では印象的に描かれておりましたが、残念ながら昨年はまるでありませんでした。

人類の普遍的な悪事ですので、ぜひともよく見ていただきたい。

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史実では、東大寺が焼け落ちると、その復興のために南宋から陳和卿(ちんなけい)という大工が呼び寄せられます。

彼の出番があるのかどうか、楽しみにしています。

そして梶原景時が頼朝の前に現れます。

「石橋山で見逃してくれたからこそ、今のわしがおる」

頼朝がその恩に報いたいと言い出します。

まだ幕府ができて間もなく、頼朝の個性とは思いつつ、どうにも甘いところがあるとも感じます。景時が、義盛が別当となる侍所の所司とされました。

この人事はどうなのか。景時のような切れ物を、大雑把な義盛の下につけるのはよろしくないのでは?

景時タイプは軍師役といいますか、盛長の代わりに頼朝側近あたりにするのがよさそうです。

 

りくの野望

時政が、赤ん坊をあやしております。

子の母であるりくは不満そう。頼朝が、しい様を軽んじていると不満なのです。

思惑が外れたんでしょうね。

舅として頼朝に睨みをきかせ、あわよくば幕府を仕切るくらいはして欲しかったのに全然そうなっていない……。上総広常や梶原景時に警戒心を募らせています。

それでも夫の時政は能天気に姫(娘のこと)を抱っこして喜んでいる。

そう、この赤ん坊は女の子です。りくからすれば、これも気に入らない。

なぜ妻が不機嫌なのか。真意を全くつかめない時政は、自分の代わりに小四郎(義時)が頑張っていると返します。

「あなたが頑張らないといけないのです!」

だんだんと“りくの野望”が見えてきましたね。

時政が幕府を仕切る

りくが男児を産む!

その男児が義時ら異母兄をさしおいて、北条家当主となり、幕府の頂点に立つ

時政と義時・政子の間で大事件となる……野望の行く末を見守りましょう。

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そんな、りくをよそに、時政は何かのにおいを察知します。

定番である赤ん坊のおむつ替えサインかと思ったら、そうではないらしい。実衣のもとに“あの男”が来ているとか。

別室で阿野全成と実衣が話していました。

彼は香を焚くので、時政はそれを嗅ぎ取ったのでしょうね。

占い好きな実衣は、全成に心を掴まれています。

彼女の幸運の門はすぐ目の前にあるとのこと。その扉を開ける人物は、癸酉の歳、卯月生まれの男だってよ。

細かい占い結果に驚いていると、こう来ました。

「ちなみに私は癸酉の歳、卯月生まれ……」

「えっ!」

仕込みじゃないか。そう突っ込みたいけれども、占いで実衣を釣る気満々の全成です。

 

弓の腕前があり孫子も引ける義円

なんだかしょうもない全成に対し、頼朝には優秀な弟もいました。

「お見事!」

と、言葉を発する源範頼ではなく、弓の腕前を誉められている義円です。

これには頼朝も満足気。続けて九郎の腕も相当だとフォローするかのように頼朝が言いますが、仏頂面の義経は、自分はたいしたことないと拗ねています。

平家を倒すためには何をすべきか。

そんな頼朝の問に対し、義経はぶっきらぼうに答えます。

「……武具を磨く」

次に義円が促されると『孫子』計篇第一を引きます。

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道・天・地・将・法が必要である。

と、義経が苛立ち、立ち上がります。

「もういい! なぜ平家討伐にでないのですか! 兄上は清盛に侮られてもよいのですか!」

義時が困り顔で、御家人たちが坂東から離れたがらないと言うと、今度は「お前がなんとかしろ!」と義時に凄む。

そんな義経を頼朝が嗜めると、義円はこう言います。

「九郎の兄上を思う気持ち、どうかわかってあげてください」

庇われた義経は、かえって燃えるような目で義円を見ています。

場面が変わり、義円が政子たちの前にいます。

そして紀貫之の和歌を詠んでいる。

春日野の若菜摘みにや白妙(しろたえ)の袖ふりはへて人の行くらむ

これには政子も、読まねばならぬ書物がたくさんあるから指南して欲しいと笑顔を浮かべます。

「小四郎、義円は頼りになるな」

「まことに」

頼朝と義時もそう頷いている。ますます憎悪をたぎらせる義経。

面白いことになってきました。

義経が不気味ですが、あえてその心を考えてみましょう。

史実の義円は、鎌倉ではなく西から【墨俣川の戦い】に向かったともされていて、坂東には顔を出していなくてもおかしくない。

本作では、そんな義円を敢えて登場させ、かつ『孫子』を読ませている。

そこに大きな意味があるのではないでしょうか。

義経は、鬼一法眼から兵法書『六韜』(りくとう)を習っていたとする伝説があります。

なんだか妖術のようですが、人間とは理解できぬものをしばしばそういう扱いをする。『六韜』は現物もあり、現代でも読むことができます。

そんな義経伝説を、ドラマでは義円がより現実的に上書きしている。

この義経が『六韜』を学んでいるかどうかはまだ判明しませんが、後天的な知識よりも先天的な何かを持っているようには思えます。

義円は、義経にはないほどの弓の腕前も持っている。

『孫子』や和歌の知識もある。

そして義円は優しい。義経を思いやることができる。

義経にはないものを持っているんですね。

同母兄の阿野全成は占いぐらいしかできず、軍事的にも政治的にもライバルにはなりません。

半兄の源範頼も、義経からみれば「無能」。佐竹攻めでは、兵糧攻めという全く役に立たない策を出してきた。

つまり、この二人の兄はどうでもいい。

しかし、義円は潜在的な敵となった。

この“敵”を義経はどうするのか?

 

清盛の死

治承5年閏2月4日――歴史が動きます。

平清盛が世を去ったのです。

「頼朝を殺せ……わしの墓前にあやつの首を供えるのだ」

享年64で死亡。

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頼朝は合掌し読経しているものの、大笑いをしてしまいます。

清盛の首をこの手でとることはできなかったが、平家のとどめはわしが刺す!

そう言い切り、我らの力で平家を滅ぼして見せると宣言します。

「兄上!」

「鎌倉殿!」

そう言いあう頼朝と御家人たち。なんともおそろしいことだと思います。

一見すると共通の怨敵である平清盛が死んだ。

そこから残党狩りが始まるわけですが、父の仇討ちという名目がある兄弟たちと、それがない御家人たちでは、何かが違うのでは?

一枚岩ではなく、亀裂が入ったままのように見えてしまいます。

後白河法皇は上機嫌です。

白拍子が今様に合わせて踊っていますが、今年はこの舞姿にも注目でしょう。

伝説の美しき白拍子・静御前を石橋静河さんが演じます。白拍子としての舞姿が一番美しくなると見込んでの抜擢でしょうから、どうしたって期待が高まります。

後白河法皇はこうきました。

「天罰じゃ! 天罰がくだったわ!」

隣で丹後局もニッコリ。彼女は口紅が誰よりも鮮やかな紅色をしていて、これが実によくお似合いです。

あとで文覚が呪詛が効いたとヌメヌメしながらやって来そうではありますが。

「まあ!」

そう驚く丹後局

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彼らの前に現れたのは、文覚ではなく、平宗盛でした。

後白河法皇に政権を返上すると言いに来たのです。そして、戦を止めるつもりがないとも言い切る。

「あらためて頼朝追討の院宣を賜りたく存じます」

頼朝を殺せ――。

そんな清盛の死に際の一言が、平家の運命を狂わせてゆきます。

安徳天皇を出家させてしまえばいいし、権力を手放せばなんとかなったかもしれない。このドラマでは、平家を滅ぼした最大の責任者は、平清盛その人であると描いています。

そしてこのことは何も清盛一人ではないと思わせる伏線がいくつも出てきています。

 

義経が跡取り候補だとぉ

頼朝が政子のもとへ向かい、これで亡き父上によい知らせができると告げています。

政子が祝うと、頼朝は苦労をかけたと労わる。

いい夫だなぁ。亀とのことがなければ100パーセントそう言いきれそうだ。

政子は、世継ぎの男児ができないことを謝ります。

亀との間で無駄にエネルギーを使う頼朝が悪いのではないか?と突っ込みたくなりますが、話を先へ進めましょう。

頼朝はさらにゾッとすることを言います。

もしも男児が生まれなければ、義経に跡を継がせるつもりである。あれには自分にはない軍を操る才能がある。

こういうセリフのためにも、前回の佐竹攻めがあったのでしょう。

武人としての才能は源氏の棟梁には欠かせぬものだと頼朝が言います。

頼朝も、人の上に立つ頭領としてはまずいのかもしれない。

ざっと挙げてみますと……。

・まだ自分自身も政子も若いのに、男児を諦めるようなことをいうのは不用意。北条の力を頼りにしているのに、これではあまりに無神経だ

・しかも後継者が義経、一番下だ。兄との間に不和が生じることをしている。義経の性格はこの際問題ではない

・武勇の才能が問われるとするのは、乱世が続くという認識があること。そうではなく、政治の才能がある人間のことを考えていかねばならない。義経の人望があると思っているのかどうか?

頼朝は危うい考え方をしています。清盛が平家を滅ぼしたように、頼朝も源氏を滅ぼすように思えてなりません。

そんな夫婦のやりとりを破るように、安達盛長がやってきて、叔父である源行家の来訪を告げます。

頼朝はうんざり。

行家と関わるとろくなことがない。今度は何か?と盛長に聞き返すと、清盛の死を受け、京都に攻め上れと言ってきました。

言われなくてもわかっておると不機嫌になる頼朝。

お会いにならなくてもよいのか?と政子に念押しされると、頼朝はこう来ました。

「鎌倉殿は多忙である!」

政子は安心して頼朝にしなだれかかっています。

衣装もすっかり洗練されて豪華で、ますます美しくなりました。

どうしてこんな政子がいるのに、頼朝は浮気をするんでしょうね。けしからん男だ! まあ、それもそろそろ天罰がくだりそうですが。

 

義円の出立を駆り立てる義経

怪しい叔父こと源行家はイライラしています。

「なぜ頼朝は京に攻め上らぬ!」

義時と盛長が、頼朝に代わって応対。にしても義時は、しょっちゅう貧乏くじを引かされますね……。

行家は兵を一万ほど貸していただきたいと言う。美濃と尾張で平家を討つんだそうで。

義時も、飢饉で兵を貸す余裕はないと即断ります。

そもそも、そんな大軍を簡単に貸せるわけないでしょ。そのまま引き返して鎌倉の御所でも襲撃されたら終わりですからね。

まったく、行家はノリと勢いだけの役立たずだなぁ。

そんな行家は、甥っ子たちに檄を飛ばしています。

全成は「兄上の赦しもなく、鎌倉を離れるわけには参りませぬ」と返答。

義円は「叔父上には京で色々とお世話になりました。お力になりたいのはやまやまですが……」と言葉を濁している。

「この恩知らずめが!」

毒づく行家。

範頼は、叔父上こそ鎌倉殿の元で戦わないのか?とツッコミます。

しかし、この野心家の行家は「家人になる気はない!」と本音を隠そうともしません。

そんな甥っ子の中で、一番危険な義経は離れて座って、このやりとりを聞いている。

彼は察知しました。義円の“義理固さ”という弱点を……。

そんな危険な思惑に露とも気づかず、義経と二人きりになった義円は、つぶやきます。

「叔父上に申し訳ないことをしてしまった……」

「行けばいいじゃないですか」

義経が義円に“毒”を含んだ言葉を飲ませようとします。

勘違いしているかもしれないけど、鎌倉殿はあなたのことをさほど買ってない。遅れたのがよくない。平泉からきた私より遅いとは!

御台所の前で和歌を詠んだのもよくない。鎌倉殿は、ひけらかすのが一番嫌いだから。能ある鷹は爪を隠すとやらなんとやら……。

義円は澄み切った目でこう言います。

「どうすれば?」

仕上げにかかる義経。

鎌倉殿に認めて欲しいんだったら、十郎叔父に従って手柄を立てろとけしかける。追いかけてゆけとけしかけるのです。みんなには自分から話しておくと。

兄に会いたいと義円が訴えると、義経はこうだ。

「鎌倉殿に? どうしてそういう考えになるかな。言い訳とか、ほんとうにあのお方は嫌いなのに」

これは嘘のようで、義経が頼朝の言動を記憶していて、自分がそう感じているということもあるのかもしれない。

ならば、文を書くと言う義円に賛同し、後で渡すと請け負う義経。

話を聞いてくれたと感謝する兄の義円に対し、兄弟なら当たり前と言い切りながら、笑い合っています。

義経が邪悪だと思われるでしょうか? よくも兄を騙せたものだ、と。

義経には、なんてことないかもしれません。

どうせ源行家についていっても軍勢として大したことはできない。討死する可能性もある。騙された記憶ごと死んでくれるのであれば、はなから何もなかったに等しい……とそんな風に考えているのかも。

 

手紙を破った義経にそれでも甘い頼朝

翌朝、思いを認めた文を義経に託す義円。必ず渡すと請け負っています。

一方で無策の源行家は、自分を助けなかった頼朝はいずれ後悔すると言い捨て、出立するのでした。

義経は、何ら躊躇もせず、義円の文を破り捨てます。

なんと禍々しいのでしょう。

今までの義経像を丸ごと粉砕するようで、腑に落ちる感覚はいつもある。

しかし、こうも己の利益のために生きる心を推察することは、楽しくもあり、苦しくもあること。作り上げる側も大変で、かつ楽しいことでしょう。

その義経が頼朝に呼び出され、こう切り出されます。

「義円がおらぬのだが、心当たりはないか?」

シラを切る義経。言伝もないと言います。

と、そこに破れた手紙が貼り合わせて置かれます。

「なぜ捨てた?」

「私ではありません!」

すると頼朝は、平三(梶原景時)が見ておったと言います。範頼が義円を追いかけていったそうです。

頼朝は怒ります。

「義円が目障りか! 我ら兄弟が力を合わせねばならぬというのに、愚か者! しばらく謹慎して頭を冷やせ!」

横で聞いている義時も、この兄弟のやりとりは、さすがに気まずい。

頼朝はさらに続けます。

「九郎。わしはお前を息子のように思っておるのだ。いずれはあとを継がせてもよいと考えておる」

義円のことをあげて義経が戸惑っていると、頼朝は戦場に真っ先に駆けつけた恩義を言い出します。

「あのとき、どれほどわしが嬉しかったか……」

弟の肩に手を置き、語りかける頼朝。

「心を磨いてくれ、九郎」

感動的なようで、またしても頼朝は源氏の命脈を縮めました。

頼朝はあまりに情けに流されている。兄弟が合流した順序でいえば、全成のほうが義経より早い。

それでも義経に対してああも感激したのは、坂東武者に素っ気ない態度を取られて精神的打撃を受け、人間不信であったところにスッと入り込むようにして義経がやってきたから。さして重要な理由でもないのです。

こんな特別扱いをされて、義円のこともうやむやにしたら、義経は反省するわけがない。内心かえって侮るかもしれない。

それに義経には、背後に藤原秀衡がおります。

藤原秀衡
藤原秀衡はなぜ義経を二度も匿ったのか|奥州藤原氏は頼朝に従属せず?

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息のかかった義経が権力者になれば、奥州藤原氏にしてみれば、してやったりでしょう。本人が望むか望まないかは別として、義経にはそういう政治力がある。

そして最悪の間違い――それは頼朝が我が子の命を危険にさらしたことです。

跡継ぎ問題で、最も面倒が起きやすい一例が【叔父と甥】の関係。

『麒麟がくる』の場合、明智光安が甥である明智光秀をたて、家督を譲りました。

あんな風に潔く振る舞えない叔父は大勢います。最初は違ったかも知れませんが、徐々に野心が湧いてきて、甥を殺してでも家督を奪うことは近隣諸国でもあります。

中国史ですと明・永楽帝による【靖難の変】。

朝鮮王朝では世祖による【癸酉靖難】。

そんな野望の種を義経の心中に蒔くなんて、頼朝はあまりに迂闊だ。随分と危険なことをしたものです。

義経はどんどん怪物になってゆく。野心が、彼を濁らせてゆく。

そんな義経のブレーキ役が梶原景時ですね。

彼は鎌倉に詳しいから見回りに向いていると自己申告をしていました。

鎌倉への土地勘のみならず、彼には“目”がある。不正を嗅ぎつけると、何かを見てしまう“目”が。

 

水上戦が重要

義経の企みを全く知らない義円は、源行家に従い、墨俣川で平家とぶつかりました。

功を焦る義円は、敵方の手により、水の中に沈められています。

そして、

「兄上!」

と叫びながら討ち取られました。

義円
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水死という状況にご注目ください。なぜ溺死させたのか。

僧侶を切りたくないから? いえ、それは南都焼き討ちで血を流していた僧侶がいたように関係ないでしょう。

甲冑は、水を吸うと致死率がほぼ100パーセントになります。

かなり先のことですが、北条泰時が川に甲冑のまま馬を乗り入れようとして「そんなことをしたから死ぬからおやめください!」と止められています。

ゆえに、三浦義澄と義村父子が、石橋山の手前で渡河を諦めたのも当然と言えます。

川を挟んだ戦いでの常識すら、源行家は把握していなかったんですね。

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渡河準備がお粗末でした。

ノリと勢いだけで合戦をしようとしたのでしょうから、勝てるわけがない。

そういう死地だからこそ、頼朝も助けません。武田信義のような脅威になると恐れてもいない。殺すために義円を送り出した義経の思惑通りですね。

そしてもうひとつ重要な点。

水上戦においては、平家に大きく劣る源氏ですが、この先はどうか?

源氏には三浦党(義澄、義村ら)はじめ水上戦ができる坂東武者がいます。

いくら義経が天才軍略家であろうと、水上での戦闘が実践できなければどうにもなりませんが、坂東武者の中にも対応できる勢力がいた。

つまり平家は水上戦でのアドバンテージを失っていたのですね。

もしも水上戦において、造船技術がより重要な役割を果たしていたら、財力のある平家が勝利したかもしれませんが、そうはなりません。

海上貿易となれば、それこそ2012年大河ドラマ『平清盛』に出てきた宋船が必須です。

しかし戦闘自体は、弥生時代からさして変わらぬ原始的な船ですから、そこまで差がつかないのです。

 

政子の懐妊で祐親に恩赦が

政子が懐妊しました。

妻の手を取り、今度こそ跡継ぎを産むよう願っている頼朝。

豆を食べるといいと実衣が言います。この子はこういうトリビアが好きですね。

しかし、それは子を宿す前だとりくが訂正します。

男児の出産に必要なのは、母親の険しい顔だそうです。そこで政子が般若面のような顔芸をすることに……。

阿野全成が、親が徳を積めば望み通りの子が生まれると言い出しす。

すかさず義時が、先の戦で捕らえられたものを許す恩赦を願い出ました。

「それ、いいかもしれない」

政子も賛同。

りくは、政子に男児ができるのではないかとイライラしています。彼女の野望プランからすれば邪魔者ですからね。

時政は近頃怒ってばかりだという。

「あなたにはわからないと思います!」

そう言い切るりくに、時政は政子の産んだ子が、北条の血が流れた子が鎌倉殿になると喜んでいます。

「私の血は引いていません!」

思わず固まる時政。りくも本音を吐き出してからは、しおらしく「わかってはいる」と言います。

りくの夢は京都に戻ること。それを叶えて見せると笑顔を浮かべる時政。

それでも、やはり彼女は悔しそう。

ただ京都に戻るだけでは済まされない。成功者として戻りたいのでしょう。

跡取りとなるべく男児が生まれてくるように、阿野全成が「変成男子」の法を行うと言います。

弟の源範頼も男子が産まれて欲しいと素直にいい、義経もそこに同意しているようで実際はそうも思えない。

りくも。義経も。権力欲が、人をおかしくする――。

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江間の館を用意した

ともかく頼朝の第二子出産により、伊東祐親と祐清の父子は、恩赦を受けられることになりました。

義時がそれを告げ、さらに条件を提示します。

御所に来て頼朝に頭を下げること。

戸惑いを見せる祐親ですが、いまさらおかしなことを言い出さないで欲しいと祐清が釘を刺します。

祐親が答えます。

以前なら、奴の前で舌を噛み切っていたかもしれん。しかし清盛が死んで、力が抜けた。今は早く八重と暮らしたい。

これには義時もにっこり。

「爺様は、顔つきが柔らかくなりました」

その通りですよね。祐親が優しい顔になっている。何かに取り憑かれていたものがすっと落ちて、透き通った綺麗な顔になりました。

義時はこのことを八重に報告しに行きます。失恋と仕事を分けて考えるえらい男よのぅ。

八重がお礼を言うと、義時はこう返す。

「礼なら、姉上とお腹の子に言ってください」

いや……その通りだけど、頼朝との子を失った八重に、それはちょっとつらい現実かも。義時、やっぱり鈍感だなぁ……。

爺様も憑き物が落ちたように穏やかになったと喜んでいる義時。

これからは親子で暮らせるよう支度をすると告げると、八重が答えます。

「私はここに残ります」

「また……」

「あの人とは暮らせません」

義時はじっくりと説得します。許せない気持ちはあっても、それでも一緒にいるべきだ。

許せないのに一緒にいるのは辛すぎると八重が切ない表情になると、初めだけだ、時はそういうものだと義時は訴えます。江間に戻れば懐かしい景色が待っている。

江間が誰のものかと八重が尋ねると、照れながら「私です」と打ち明ける義時。驚く彼女にこう返します。

「そういう意味ではないので、ご安心を」

”そういう意味“とは、要するに八重とセットで江間をもらったわけではないということでしょう。

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義時には、純粋に八重の幸せが見たいという気持ちがあるんですね。

綺麗事かもしれないけれど、実際にそういう行動に出ていれば、それで良し。欲望で目が濁った連中ばかりの中、義時は透き通っています。

 

祐親の因果応報

そのころ畠山重忠が、館に入った盗人のことを梶原景時に話していました。

伊東家の雑色のようだ。主人の祐親が恩赦ならば、そうしてもよいようで、果たしてそうなのか? 男は、北条宗時の持ち物を持っていた。

「ひょっとして、三郎殿を討ったのはこの男では……」

そう訝しむ重忠。

これも捕まえたのが重忠だから通じる話でして、和田義盛ならば、とっくに盗人を始末していたでしょう。

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縛られた男は善児でした。

景時は鎌倉殿にお伝えすると、その身柄を預かります。

全成は恩赦のことを頼朝と話しています。

産まれてくる子を男とするためには、千鶴丸を成仏させねばならない。そうしなければ男として生きられないと。

条件として、千鶴丸殺害命令を下した伊東祐親の命を求めてきます。祐親が生きている限り、千鶴丸は成仏できないのだと。

八重は父の身支度を整えています。

父と娘は近況を確認しあい、穏やかな時が流れてゆきます。

八重に礼を言い、こう声をかける祐親です。

「八重! お前、後ろ姿が母親に似てきたぞ!」

父に頭を下げ、去ってゆく八重。

祐親と祐清父子は、久々に正装を確認しあっています。

と、そこへ善児が入ってきました。

「善児ではないか。生きておったか」

「へえ」

伊東父子を刺し殺す音が響きます。

盛長が頼朝に「すべて終わりました」と告げるのでした。

 

千鶴丸はまだ成仏できておらぬ

一体何があった。どういうことなんだ!

祐親が亡くなり、義村に対して義時が慌てています。

義村はそっけないようで、腹の底はわかったものでもありません。

ただでさえ頼朝を信じていないと言い切るこの男。憎悪と不信が煮えたぎっていてもおかしくはない。

景時に詰め寄ると「伊東祐親は御子息と共に自害された」と淡々と返されますが、義時はなおも食い下がります。

「あの方に限ってそのようなことは!」

正装だから刀があったとかなんとか、もっともらしい言い訳が語られます。

あまりにもっともらしい話って、実は怪しいんですけどね。

仕方なく義時は頼朝の元へ向かいました。

伊東祐親は自害したと穏やかに言う頼朝に、義時はこう言います。

「一度口にされたことは必ず守られる。恐ろしいお方です」

「口が過ぎるぞ、小四郎!」

それでも義時は、人を殺す徳を積めるのかと言い募る。伊東父子はそれで殺されたのかと訴えます。

「産まれてみればわかることだ」

「爺様はもう帰ってきません!」

そのことを義時は、歴史は、これから目にすることとなるのですが……。

全成は実衣に驚愕の占い結果を告げています。

「胎内のお子は産まれても定命短きと出ておる……」

「長生きできないんですか!」

全成はここで言います。千鶴丸はまだ成仏できておらぬ。千鶴丸を殺めた者が生きておる限りは……。

その千鶴丸を殺した善児は、梶原景時にこう言われました。

「わしに仕えよ」

「へえ」

さぁ目が離せなくなってきました。

 

MVP:義円と伊東祐親

平清盛のようで、実はそうでもない。平家以上の敵が見えました。

それは権力欲だ。

義円は初めて出てきた時から、なんて美しい人なのかと驚きました。

声音、所作、顔だち、目の輝き。

何もかもが常に涼しいようで、そこがかえって儚いと思えました。

彼は人を見下すとか、出し抜くとか、そういうつもりがない。

結果、義経と行家という野心の塊にすり潰されて散ってゆく。惨い話です。

そして伊東祐親。

あの爺様がこんな透き通った優しい顔になって……そうか、きっと孫たちはこの顔を見ていたのだろうと切なくなりました。

そういう爺様を、自分たちの繁栄だけのために殺す。

本当に源氏の連中は坂東武者の敵だ!

怒りが湧いて止みません。なんてことをしてくれたのだ!

 

【ネタバレ考察】善児の今後

ちなみに善児と千鶴丸ですが。

ネタバレですので嫌な方は飛ばしてください。

善児の死亡は、金剛(のちの泰時)の受胎の少し前になるのではないでしょうか。

つまり、千鶴丸が生まれ変わって、坂東武者の世を作ることは確かだけれども、その父は、頼朝ではなく義時ということです。

 

総評

よくこの脚本でOK出たな。今週はそう思いました。

もちろん悪い意味ではなく、三谷さんが推理もののノリを全開にしていて、すごいことになっています。

思えば善児が宗時の遺品を持ち去るところなんて、伏線がありましたね。

中世という時代をうまく使って、縦横無尽に推理ものとしても通じる話を組み立ててきていて、見ていて興味深いのです。

のみならず三谷さんは人間の心理操作をマスターしたとも思えます。

義経、りく、宗盛、頼朝……心理状態がどす黒く変わる人物が大勢でてきました。逆に憑き物が落ちた伊東祐親もおりましたが。

功名欲。対抗心。嫉妬。野心。

こうしたことがどれほど人を操り、変えてしまうか、三谷さんはわかっているのでしょう。

役者さんもそこは理解して演じています。

特に義経を見ていて、不安感や不快感がこみあげてきませんか?

あれはわざとノイズが入る演技にしていると思えます。従来の像を破壊するためにああしているはず。

『麒麟がくる』の信長も同系統ですが、こういう役目をあえてこなす役者さんはすごい。

そんな菅田将暉さんのような若い役者について、松平健さんが公式サイトで含蓄深いことを仰られてました。

――今回は若い役者さんもたくさん出演されていますが、若い人たちに伝えたいことはありますか。

私が若かったころから比べたら皆さんとても上手じょうずなので、私から伝えるようなことは特にありません。

逆に私が勉強させていただいているような感じです。

たぶん彼らがやっていることが、今の時代にあったお芝居でしょうからね。

時代に合わせて芝居も変わるし、人間像への理解も変わる。

義経の像は、近年最新の研究成果が反映されていると私は思います。

人間そのものへの認識だって変わるのだから、そこへ追いつき、異質な人も理解できるようになりたい。そう思えるのです。

 

映り込み謝罪とのこと

先週の放送で、こんなことがありました。

◆NHK、「鎌倉殿の13人」合戦シーンにカメラマンが映り込み謝罪 再放送では修正して放送(→link

再放送で修正されたとのこと。素早い対応お疲れ様です。

 

「創業」と「守成」

今週痛感したこと。

それは清盛にせよ、頼朝にせよ、「創業」の英雄だということです。

時代を切り拓くパイオニア。

しかし乱世に適応しすぎていて、体制を守るようにはできていない。

「守成」となると、これはもう北条泰時が該当するうえに、日本史でも上位に入ります。

義時は?

泰時への橋渡しというところでしょうか。

そんな「創業」型の限界が顕になる今回。

まだ生まれるまで時間のある泰時への期待感すら、芽生えたように思えます。

千鶴丸成仏の話が出たからですかね。

成仏するとしたら、坂東武者がのびのびと生きて、民を慈しむようになった時だと私は思います。

その時代を連れてくる泰時こそが大事!

今はまだ彼の両親すら結ばれていないけれども、だからこそ、そこを焦らすのかと思えば悪くない話です。

 

ブラックというよりも、梟雄では?

今週の義経を「ブラック」と呼ぶこともあるようです。それに対しは、個人的には異議があると申し上げたい。

ブラックというのは、失礼ではないでしょうか。

そもそもそんな外来語を使わずとも「奸悪」「狡猾」といった言葉が色々とある。

「梟雄」でよろしいのでは?

なぜ梟が悪辣とされるかというと、雛が母鳥を食べると信じられていたからです。

親ではないけれど、兄の肉を食う義経にはあっているでしょう。

 

源義経=チンギス・ハン説はそろそろ卒業

大河の感想なんて自由にすればいい……とはいうものの、悪いものはそう指摘したい。

こちらです。

◆「鎌倉殿の13人」菅田将暉演じる義経が光る 「これがオレ達の義経くん」「この義経くんならチンギスハンになっても納得」と視聴者夢中(→link

一部を抜粋させていただきます。

史実では、平家討伐の最大の功労者でありながら、兄の頼朝に疎まれて、最後は討ち取られてしまう義経。

一部では、義経=チンギス・ハーン説もあるが「今後の展開は悲しくなるので少しでも長い間元気な義経くんをたっぷり見ていたいものです」「この義経くんならチンギスハンになっても納得」と今後、どのような義経像が描かれるのか、期待が寄せられている。

そしてこちらの記事もそうですね。

◆【萌える日本史講座】ジンギスカン料理は義経が発明?「判官びいき」伝説の行き着く先(→link

義経のジンギスカン説には、どうしたって弊害があります。

ただでさえ元朝の人物は、モンゴル史か、中国史か、どちらの英雄扱いするか、そこで揉めます。

そこに日本まで加わって混乱を拡大させてどうしたいのか。

ハッキリ言いますと、他国の英雄を、勝手に自国の人物にすることは悪い。

端的に言えばモンゴルに対する「侮辱」です。

この伝説の誕生背景には、江戸時代以来のアイヌに対する征服観と、明治以降それを東アジアにまで拡大した思想がある。

そんな危険思想由来のものをカジュアルに持ち続けることの危うさがあります。

確かに、書いた側は、軽いトリビアとジョークだったのかもしれません。しかし危険を孕んでいるのも事実。

源義経は自国の英雄として慈しめれば、それで十分ではありませんか?

私は義経ファンとして言いたい。

彼を変な思想の道具に使わないで欲しい。そういうことをするから、義経像に変な要素が混ざってしまう。

ネットでの書き込みは仕方ないにせよ、大手紙で取り上げる内容でしょうか。

 

中世史を勉強するのも

こんな記事があります。

◆【深読み「鎌倉殿の13人」】フィクションと史実の狭間で、大河ドラマを楽しむ方法(渡邊大門)(→link

さすが研究者さんだけあって充実している。流石です。

一方で、そうではない層がいるのも事実。

今年の大河を見て「マウントw」「美女同士がw」と女同士の戦いを期待するネットニュースや、それにワクワクする層については、もっと勉強して欲しいと願ってしまいます。

このニュースが一例です。

◆ 三谷幸喜流「鎌倉殿の13人」“女の三つ巴バトル”の熾烈 時代劇評論家ペリー荻野氏も唸った(→link

結局、こういう感想を書いている人の偏見はわかる。

ミソジニー(女性嫌悪)ですね。

当時の人は本気で政子に「ビビって」ます。

「いや、その、御台所の嫉妬が怖いんで……勘弁してください!」

こういうことを頼朝からラブレターを送られた女性関係者は言い残している。

そうでなくてニヤニヤしながら「女の嫉妬は怖いねぇ」と言いたいから、こういう記事に需要と供給があるのでしょう。

現実的に考えれば、上総広常がキレて、いきなり佐竹義政を殺した方がはるかに怖い。

あんな殺し合いが苛烈なドラマをみて、女同士ばかりに注目するのは、何かバランスが偏っていませんか。

そんなゲンダイさんがコレです。

◆小池栄子“宇宙一のメロンパイ”から大女優へ 大河「鎌倉殿の13人」で北条政子役が高評価(→link

今の彼女を褒めるのならば、いちいち古くてセンス最悪なコピーを見出しに入れる必要もない。

なんですか、メロンパイって。

結局のところ、小池栄子さんに敬意がないからこうなる。

こんなもんいちいち突っ込むのも馬鹿馬鹿しいけど、弊害があるから見逃せません。

こうしたニュースは、大河が古くて性差別を放置しているという偏見をばら撒きかねない。

今年は昨年と真逆で、きっちり意識して作られているのに、こんな記事で偏見を撒き散らされたらたまったもんじゃありません。

今は韓流と華流が、ジェンダーをきっちり踏まえた良作時代劇を制作していて、VODで簡単に見られます。

性差別的でおっさん向けサービスばかりの大河はパス――若い世代がこうなったら日本の時代劇に明日はありません。

ゆえに見る側もそこはアップデートしていきたい。

小池さんを讃えるうえで、こういう身体的特徴を持ち出す必要は一切ありません……と、思っていたら彼までもか!

◆山本耕史は脱いでも凄い! 「鋼の錬金術師」で高まる“うっとりマッチョボディー”への期待(→link

女性はイケメンマッチョにうっとりするであろうという願望ありきの記事。

こちらもセクハラじみていて害悪でしょう。

山本さんの鍛錬は、そういうことを目指してのものではないはずです。

彼は殺陣で体幹がぶれない。

一本芯が入っているようで、常に流麗で美しい。相当鍛えないとああはなりません。

そういう美意識を、私は見ていきたい。

変なエロを期待する暇があれば、それこそ『孫子』でも読み、多くの方に読み応えのある記事を配信して欲しいと思うのです。


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【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

-鎌倉殿の13人感想あらすじ

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