鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第11回「許されざる嘘」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第11回「許されざる嘘」
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祐親の因果応報

そのころ畠山重忠が、館に入った盗人のことを梶原景時に話していました。

伊東家の雑色のようだ。主人の祐親が恩赦ならば、そうしてもよいようで、果たしてそうなのか? 男は、北条宗時の持ち物を持っていた。

「ひょっとして、三郎殿を討ったのはこの男では……」

そう訝しむ重忠。

これも捕まえたのが重忠だから通じる話でして、和田義盛ならば、とっくに盗人を始末していたでしょう。

畠山重忠
史実の畠山重忠が迎えた悲劇の最期とは?鎌倉殿の13人中川大志

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縛られた男は善児でした。

景時は鎌倉殿にお伝えすると、その身柄を預かります。

全成は恩赦のことを頼朝と話しています。

産まれてくる子を男とするためには、千鶴丸を成仏させねばならない。そうしなければ男として生きられないと。

条件として、千鶴丸殺害命令を下した伊東祐親の命を求めてきます。祐親が生きている限り、千鶴丸は成仏できないのだと。

八重は父の身支度を整えています。

父と娘は近況を確認しあい、穏やかな時が流れてゆきます。

八重に礼を言い、こう声をかける祐親です。

「八重! お前、後ろ姿が母親に似てきたぞ!」

父に頭を下げ、去ってゆく八重。

祐親と祐清父子は、久々に正装を確認しあっています。

と、そこへ善児が入ってきました。

「善児ではないか。生きておったか」

「へえ」

伊東父子を刺し殺す音が響きます。

盛長が頼朝に「すべて終わりました」と告げるのでした。

 

千鶴丸はまだ成仏できておらぬ

一体何があった。どういうことなんだ!

祐親が亡くなり、義村に対して義時が慌てています。

義村はそっけないようで、腹の底はわかったものでもありません。

ただでさえ頼朝を信じていないと言い切るこの男。憎悪と不信が煮えたぎっていてもおかしくはない。

景時に詰め寄ると「伊東祐親は御子息と共に自害された」と淡々と返されますが、義時はなおも食い下がります。

「あの方に限ってそのようなことは!」

正装だから刀があったとかなんとか、もっともらしい言い訳が語られます。

あまりにもっともらしい話って、実は怪しいんですけどね。

仕方なく義時は頼朝の元へ向かいました。

伊東祐親は自害したと穏やかに言う頼朝に、義時はこう言います。

「一度口にされたことは必ず守られる。恐ろしいお方です」

「口が過ぎるぞ、小四郎!」

それでも義時は、人を殺す徳を積めるのかと言い募る。伊東父子はそれで殺されたのかと訴えます。

「産まれてみればわかることだ」

「爺様はもう帰ってきません!」

そのことを義時は、歴史は、これから目にすることとなるのですが……。

全成は実衣に驚愕の占い結果を告げています。

「胎内のお子は産まれても定命短きと出ておる……」

「長生きできないんですか!」

全成はここで言います。千鶴丸はまだ成仏できておらぬ。千鶴丸を殺めた者が生きておる限りは……。

その千鶴丸を殺した善児は、梶原景時にこう言われました。

「わしに仕えよ」

「へえ」

さぁ目が離せなくなってきました。

 

MVP:義円と伊東祐親

平清盛のようで、実はそうでもない。平家以上の敵が見えました。

それは権力欲だ。

義円は初めて出てきた時から、なんて美しい人なのかと驚きました。

声音、所作、顔だち、目の輝き。

何もかもが常に涼しいようで、そこがかえって儚いと思えました。

彼は人を見下すとか、出し抜くとか、そういうつもりがない。

結果、義経と行家という野心の塊にすり潰されて散ってゆく。惨い話です。

そして伊東祐親。

あの爺様がこんな透き通った優しい顔になって……そうか、きっと孫たちはこの顔を見ていたのだろうと切なくなりました。

そういう爺様を、自分たちの繁栄だけのために殺す。

本当に源氏の連中は坂東武者の敵だ!

怒りが湧いて止みません。なんてことをしてくれたのだ!

 

【ネタバレ考察】善児の今後

ちなみに善児と千鶴丸ですが。

ネタバレですので嫌な方は飛ばしてください。

善児の死亡は、金剛(のちの泰時)の受胎の少し前になるのではないでしょうか。

つまり、千鶴丸が生まれ変わって、坂東武者の世を作ることは確かだけれども、その父は、頼朝ではなく義時ということです。

 

総評

よくこの脚本でOK出たな。今週はそう思いました。

もちろん悪い意味ではなく、三谷さんが推理もののノリを全開にしていて、すごいことになっています。

思えば善児が宗時の遺品を持ち去るところなんて、伏線がありましたね。

中世という時代をうまく使って、縦横無尽に推理ものとしても通じる話を組み立ててきていて、見ていて興味深いのです。

のみならず三谷さんは人間の心理操作をマスターしたとも思えます。

義経、りく、宗盛、頼朝……心理状態がどす黒く変わる人物が大勢でてきました。逆に憑き物が落ちた伊東祐親もおりましたが。

功名欲。対抗心。嫉妬。野心。

こうしたことがどれほど人を操り、変えてしまうか、三谷さんはわかっているのでしょう。

役者さんもそこは理解して演じています。

特に義経を見ていて、不安感や不快感がこみあげてきませんか?

あれはわざとノイズが入る演技にしていると思えます。従来の像を破壊するためにああしているはず。

『麒麟がくる』の信長も同系統ですが、こういう役目をあえてこなす役者さんはすごい。

そんな菅田将暉さんのような若い役者について、松平健さんが公式サイトで含蓄深いことを仰られてました。

――今回は若い役者さんもたくさん出演されていますが、若い人たちに伝えたいことはありますか。

私が若かったころから比べたら皆さんとても上手じょうずなので、私から伝えるようなことは特にありません。

逆に私が勉強させていただいているような感じです。

たぶん彼らがやっていることが、今の時代にあったお芝居でしょうからね。

時代に合わせて芝居も変わるし、人間像への理解も変わる。

義経の像は、近年最新の研究成果が反映されていると私は思います。

人間そのものへの認識だって変わるのだから、そこへ追いつき、異質な人も理解できるようになりたい。そう思えるのです。

 

映り込み謝罪とのこと

先週の放送で、こんなことがありました。

◆NHK、「鎌倉殿の13人」合戦シーンにカメラマンが映り込み謝罪 再放送では修正して放送(→link

再放送で修正されたとのこと。素早い対応お疲れ様です。

 

「創業」と「守成」

今週痛感したこと。

それは清盛にせよ、頼朝にせよ、「創業」の英雄だということです。

時代を切り拓くパイオニア。

しかし乱世に適応しすぎていて、体制を守るようにはできていない。

「守成」となると、これはもう北条泰時が該当するうえに、日本史でも上位に入ります。

義時は?

泰時への橋渡しというところでしょうか。

そんな「創業」型の限界が顕になる今回。

まだ生まれるまで時間のある泰時への期待感すら、芽生えたように思えます。

千鶴丸成仏の話が出たからですかね。

成仏するとしたら、坂東武者がのびのびと生きて、民を慈しむようになった時だと私は思います。

その時代を連れてくる泰時こそが大事!

今はまだ彼の両親すら結ばれていないけれども、だからこそ、そこを焦らすのかと思えば悪くない話です。

 

ブラックというよりも、梟雄では?

今週の義経を「ブラック」と呼ぶこともあるようです。それに対しは、個人的には異議があると申し上げたい。

ブラックというのは、失礼ではないでしょうか。

そもそもそんな外来語を使わずとも「奸悪」「狡猾」といった言葉が色々とある。

「梟雄」でよろしいのでは?

なぜ梟が悪辣とされるかというと、雛が母鳥を食べると信じられていたからです。

親ではないけれど、兄の肉を食う義経にはあっているでしょう。

 

源義経=チンギス・ハン説はそろそろ卒業

大河の感想なんて自由にすればいい……とはいうものの、悪いものはそう指摘したい。

こちらです。

◆「鎌倉殿の13人」菅田将暉演じる義経が光る 「これがオレ達の義経くん」「この義経くんならチンギスハンになっても納得」と視聴者夢中(→link

一部を抜粋させていただきます。

史実では、平家討伐の最大の功労者でありながら、兄の頼朝に疎まれて、最後は討ち取られてしまう義経。

一部では、義経=チンギス・ハーン説もあるが「今後の展開は悲しくなるので少しでも長い間元気な義経くんをたっぷり見ていたいものです」「この義経くんならチンギスハンになっても納得」と今後、どのような義経像が描かれるのか、期待が寄せられている。

そしてこちらの記事もそうですね。

◆【萌える日本史講座】ジンギスカン料理は義経が発明?「判官びいき」伝説の行き着く先(→link

義経のジンギスカン説には、どうしたって弊害があります。

ただでさえ元朝の人物は、モンゴル史か、中国史か、どちらの英雄扱いするか、そこで揉めます。

そこに日本まで加わって混乱を拡大させてどうしたいのか。

ハッキリ言いますと、他国の英雄を、勝手に自国の人物にすることは悪い。

端的に言えばモンゴルに対する「侮辱」です。

この伝説の誕生背景には、江戸時代以来のアイヌに対する征服観と、明治以降それを東アジアにまで拡大した思想がある。

そんな危険思想由来のものをカジュアルに持ち続けることの危うさがあります。

確かに、書いた側は、軽いトリビアとジョークだったのかもしれません。しかし危険を孕んでいるのも事実。

源義経は自国の英雄として慈しめれば、それで十分ではありませんか?

私は義経ファンとして言いたい。

彼を変な思想の道具に使わないで欲しい。そういうことをするから、義経像に変な要素が混ざってしまう。

ネットでの書き込みは仕方ないにせよ、大手紙で取り上げる内容でしょうか。

 

中世史を勉強するのも

こんな記事があります。

◆【深読み「鎌倉殿の13人」】フィクションと史実の狭間で、大河ドラマを楽しむ方法(渡邊大門)(→link

さすが研究者さんだけあって充実している。流石です。

一方で、そうではない層がいるのも事実。

今年の大河を見て「マウントw」「美女同士がw」と女同士の戦いを期待するネットニュースや、それにワクワクする層については、もっと勉強して欲しいと願ってしまいます。

このニュースが一例です。

◆ 三谷幸喜流「鎌倉殿の13人」“女の三つ巴バトル”の熾烈 時代劇評論家ペリー荻野氏も唸った(→link

結局、こういう感想を書いている人の偏見はわかる。

ミソジニー(女性嫌悪)ですね。

当時の人は本気で政子に「ビビって」ます。

「いや、その、御台所の嫉妬が怖いんで……勘弁してください!」

こういうことを頼朝からラブレターを送られた女性関係者は言い残している。

そうでなくてニヤニヤしながら「女の嫉妬は怖いねぇ」と言いたいから、こういう記事に需要と供給があるのでしょう。

現実的に考えれば、上総広常がキレて、いきなり佐竹義政を殺した方がはるかに怖い。

あんな殺し合いが苛烈なドラマをみて、女同士ばかりに注目するのは、何かバランスが偏っていませんか。

そんなゲンダイさんがコレです。

◆小池栄子“宇宙一のメロンパイ”から大女優へ 大河「鎌倉殿の13人」で北条政子役が高評価(→link

今の彼女を褒めるのならば、いちいち古くてセンス最悪なコピーを見出しに入れる必要もない。

なんですか、メロンパイって。

結局のところ、小池栄子さんに敬意がないからこうなる。

こんなもんいちいち突っ込むのも馬鹿馬鹿しいけど、弊害があるから見逃せません。

こうしたニュースは、大河が古くて性差別を放置しているという偏見をばら撒きかねない。

今年は昨年と真逆で、きっちり意識して作られているのに、こんな記事で偏見を撒き散らされたらたまったもんじゃありません。

今は韓流と華流が、ジェンダーをきっちり踏まえた良作時代劇を制作していて、VODで簡単に見られます。

性差別的でおっさん向けサービスばかりの大河はパス――若い世代がこうなったら日本の時代劇に明日はありません。

ゆえに見る側もそこはアップデートしていきたい。

小池さんを讃えるうえで、こういう身体的特徴を持ち出す必要は一切ありません……と、思っていたら彼までもか!

◆山本耕史は脱いでも凄い! 「鋼の錬金術師」で高まる“うっとりマッチョボディー”への期待(→link

女性はイケメンマッチョにうっとりするであろうという願望ありきの記事。

こちらもセクハラじみていて害悪でしょう。

山本さんの鍛錬は、そういうことを目指してのものではないはずです。

彼は殺陣で体幹がぶれない。

一本芯が入っているようで、常に流麗で美しい。相当鍛えないとああはなりません。

そういう美意識を、私は見ていきたい。

変なエロを期待する暇があれば、それこそ『孫子』でも読み、多くの方に読み応えのある記事を配信して欲しいと思うのです。

※著者の関連noteはこちらから!(→link

義円
義円(義経の同母兄)が墨俣川の戦いで呆気なく討死してしまった理由を考察

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◆鎌倉殿の13人全視聴率

文:武者震之助(note
絵:小久ヒロ

【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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