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【青天を衝け第35回感想あらすじレビュー】
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相撲
栄一は「お千代のあんな顔を見るのは初めてだ」とかなんとかカッコつけてますが、典型的な“ダメ男あるある”でしょう。
来客をもてなすことは精神的な疲労も大きいし、作り笑顔もしなくちゃいけない。
それを「心の底から笑ってる」と誤解するのは心理的決裂の第一歩。
このあと、ジュリア夫人が料理指導をする場面もワケがわからなかったなぁ。
それにしても物騒なおもてなしでした。
『真田丸』の真田昌幸や『麒麟がくる』の斎藤道三の思考回路をどうしても思い描いてしまいます。
真田昌幸「毒味もしないでホイホイ食う! こりゃアレですな」
斎藤道三「うむ。毒殺の好機到来だ!」
とにかく警備を考えてくれ!
要人が最も避けたいことは暗殺です。それが本作では場当たり的な展開ばかりで、渋沢邸でのパーティには何一つ警戒感がない。
そして“日本スゴイDEショー”のしめくくりは、これです。
「感動したね! 相撲とろう!」
今は終わってしまったフジテレビ『めちゃイケ』に、相撲取りが出てくるコーナーがありました。
今回、渋沢邸に出てきた力士とその姿がかぶり懐かしい気持ちに。
もっとも『めちゃイケ』はバラエティだからちょうど良かったけど、大河ドラマでこの相撲取りは弛緩しきっているように見えてしまい……。
ここは柔道で良かったのでは? 史実でも大河でおなじみの彼がグラントの前で披露していることですし。
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まぁ、相撲って、偉い人と若い人が身分の垣根を越えて友情を育む、わかりやすいシーンですもんね。
しかし、あれだけ攘夷を連呼してた渋沢も、綺麗サッパリ忘れたものですね。
悪いのはショッカー岩崎と大隈
このあと夫婦の場面へ。
栄一は二人きりになっても、舞台役者のように過剰にハキハキと話します。そうしてハキハキと臭いセリフを吐いてハグ。
やはり地雷夫にしか見えなくて辛い。苦労をかけても妻にハーゲンダッツを買って、抱き寄せればリカバリできると思っている。典型的じゃないですか。
爽やかイケメンの吉沢亮さんだから絵になるだけです。
このあと、ショッカー岩崎と悪徳教頭・大隈がまた何か悪いことを企んでいるそうです。今週も早稲田に喧嘩を売るストロングスタイルは継続。
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北海道開拓のことを伏線として話してます。
彼等を悪人に見せたいのでしょう。いかにも北海道を搾取するスタンスで語ってはいますが、現地の惨状に一切触れないところを見ると、所詮は物語を展開させるネタでしかない。
しかも散々五代友厚を持ち上げてきただけに、後はこういう流れにするのでしょう。
「開拓使事件は五代様が悪いんじゃない! ショッカーとそれにそそのかされた大隈のせい!」
まぁ、次週以降の放送を見てからの判断ですが、そんな臭いがプンプン漂ってきますね。
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ここで自由民権運動が雑に入ります。
政府批判が悪いことだと言わんばかり話す赤い蝋燭好きな明治政治家のみなさん。
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そして栄一も睨み顔で語りかけてきます。
「ショッカー三菱が悪い! がっぽん、がっぽん、真っ向勝負だ!」
ファミコン8ビットで処理するRPGドラマだけに「おかしれぇ」と「がっぽん」、それに「ぐるぐる」の呪文を唱えておけば、最終的にはタップゲーのようにクエストがクリアできてしまします。
そして千代が新聞を読むのですが……小道具がおかしいため、もう何も頭に入ってきません。
総評
毎週毎週、文化祭だと言ってきましたが、今週こそまさにスペシャルな文化祭でした。
海外ドラマを見た後に本作をみると、柱に頭を打ち付けてそのままぶっ倒れたくなります。
もう、外交も、何もかもが、高校生が考えたみたい。いや、高校生でもない。
これをきっかけにして、外交交渉がうまくいった!
まさか、そんな馬鹿げた展開にするつもりはありませんよね?
外交というのは、偉い人と偉い人がご飯を食べたり、ゴルフをしたり、そういうことではない。
国同士のパワーバランスやら何やら、とにかくあらゆる要素が絡んでくる。
会食だの記念撮影だのなんて、腹の探り合いを覆う薄い膜程度のもの。
そういう膜を「すごい!」とでも言いたげだから、文化祭大河なのです。
グラントが、渋沢に対して「なんか、がんばれ」的に誤魔化していますが、こんなもん所詮はおべんちゃらって歴史が証明しています。
第二次世界大戦時、対戦国の人間だからと日系人は強制収容されました。しかしドイツ系とイタリア系はそうならない。
アメリカでのアジア人差別が払拭されていないことは、2020年代だって明白でしょう。
現地で暮らしている日本人に聞くと、白人が黒人を差別し、黒人がアジア人を差別する、まさに「弱い者がさらに弱い者を叩く」構造は、誰でも感じられるはずと言っています。
そんなグラントと栄一が文化祭で焼きそば食べたところで何なんですか?
貴重な大河枠を使って、日本人に伝えたいことって、こんなことなんですか?
さすがに渋沢栄一のおかげ(あるいは縁の下の力持ち)で不平等条約解消なんて持っていき方はしませんよね?
岩瀬忠震、川路聖謨、小栗忠順、栗本鋤雲、永井尚志らの功績をまるっと無視し、徳川慶喜の手柄にした本作だけに、それが怖い。
そういや近藤勇や永倉新八、榎本武揚らの活躍も土方歳三に吸収させていただけに、本作ならやりかねないですね。
井上馨「鹿鳴館外交より渋沢邸宅外交なんだな……」
陸奥宗光「えっ? 俺の外交活躍吸収されるってマジ?」
小村寿太郎「そんなことをして司馬遼太郎ファンが許すと思っているのか?」
黒田清隆「オイの悪事はむしろ消えててありがたかっ! まあ功績が五代どんに吸い取られてるけど」
一体どんな明治時代を描いているのでしょうか。
そんな本作もクランクアップです。
老けメイクが半端だなぁ。そして、ある意味本作は初志貫徹だと思いました。
本作の役者さんは、『麒麟がくる』とは違い、史実についてあまり調べていないような発言が目立ちました。
もしかして制作サイドが資料を渡していない?そんな疑念が湧いてきたほどです。
過去の大河では「史実と照らし合わせて脚本がおかしい」という発言をする役者さんもいましたので、もしかしてそういった事態を未然に防ごうとしたとか?
特に渋沢栄一は、経済の話で登場するキラキラした経歴と、私生活における激しい女遊びで、あまりに落差があるため、役者さんがうっかり発言してしまうと、炎上しかねませんので。
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