カロデンの戦い

カロデンの戦い/wikipediaより引用

イギリス

スコットランド人がイングランドを嫌うトラウマの一つ「カロデンの戦い」

平凡な女子高生がタイムスリップ――。

イケメン戦国武将と出会って恋に落ち……というパターンを最近よく見かけますよね。

作品によっては人気声優も器用されたり、戦国だけでなく幕末モノもあります。

ああいうのは別に日本人だけが考えることでもありません。

韓国でも大人気。

中国では人気が出すぎて、当局が

「あまりにバカバカしい、タイムスリップ歴史ものはやめろ」

とストップ指令を出すほどでした(バカバカしいのはドッチなのかと……)。

そしてスコットランドを舞台にしたドラマが『アウトランダー(→amazon)』です。

 

スコットランド戦士はハーレクインでも結構人気があるようで、ハイランダー(ハイランド地方の戦士)と恋に落ちるものがわりと出てきます。

屈強な武将や戦士に憧れる乙女心は全世界共通ってことでしょうか。

『アウトランダー』では、ヒロインはスコットランドで起こる悲劇【カロデンの戦い】を阻止するために奮闘します。

日本史で例えるならば、タイムスリップして斉藤一と恋に落ちたヒロインが、会津戦争を回避するために奮闘するようなものでしょうか。

1746年4月16日は、カロデンの戦いが始まった日。

どんな戦いだったのか、振り返ってみましょう。

 

17世紀末に登場したジャコバイト

17世紀のスコットランド。

「ジャコバイト」と呼ばれる人々が歴史に登場しました。

1688年に名誉革命が起き、スコットランド系ステュアート朝の王ジェームズ2世(スコットランド王としてはジェームズ7世)が追放され、ジェームズ2世の娘メアリー2世とその夫でオランダ総督ウィリアム3世(ウィレム3世)がイングランド王として即位。

これに納得ができなかった一派が「ジャコバイト」です。

彼らの主張はこのようなものでした。

「王位継承権は、ジェームズ2世の二男であるジェームズ3世にあるはずだ!」

何度かの反乱に敗れたあと「老王位僭称者」と呼ばれたジェームズは、フランスに逃亡します。

「これでジャコバイトもおとなしくなるだろう」

そう思っていたら、コトはそう単純でもありません。

今度は、ジェームズの息子チャールズ・エドワード・ステュアートこそが正式な王位継承者であるとして、担ぎ上げられます。

チャールズ・エドワード・ステュアート/wikipediaより引用

彼は、イングランド側からは「若王位僭称者」と呼ばれ、ジャコバイトやスコットランド人からは親しみをこめて「ボニー・プリンス・チャーリー」(美しいチャーリー王子)と呼ばれました。

ハンサムで勇敢――大変、魅力的な若者だったのです。

フランスで育ったチャールズは、1745年のジャコバイト反乱に呼応してスコットランドに上陸。

怒濤の進撃を続け、スコットランドの大半を手に入ると、そのまま南下してロンドンを目指します。

そこにたどり着けば、念願の王位継承権が手に入るはずでした。

 

手勢わずか5千 チャールズの誤算は身内に?

チャールズは快進撃を続けたとはいえ、手勢はたったの5千でした。

当時のイングランドはジョージ王戦争が起こっていて軍部は手薄。

あくまでこの間隙を突いたものであり、チャールズとて全土を軍事制圧できるとは思っていません。

実際、イングランド軍が戻って反撃に出ると、たちまちチャールズ側は不利な状況に追い込まれます。

チャールズは、イングランドやスコットランドのローランド地方では嫌悪されるカトリック教徒であり、期待したほどの協力も得られません。

イングランドは想定内とはいえ、ローランドの民衆までもが

「カトリックのチャールズを認めるよりも、プロテスタントのジョージ2世を認めたほうがよい」

と考えていたのは、チャールズにとって痛い誤算だったでしょう。

とはいえ、宗教で一致しなければ国王だろうと追い出すのがスコットランド人であることは、過去の歴史から学べていたはずです。

かつてのメアリー・ステュアートも、それで痛い目にあっています。

追い込まれたチャールズは、ハイランドへと撤退します。

このとき彼の軍隊は脱走兵が多く出て、崩壊状態でした。もはや決着はついているようなものであり、放置していてもジャコバイトの軍勢は虚しく散り散りになったはずです。

ところが、イングランド軍は指をくわえて見守るほど気が長くはありません。

チャールズの軍勢は、インヴァネス郊外のカロデン・ムアに追い詰められました。

1746年4月8日――ジョージ2世の次男であるカンバーランド公ウィリアム・オーガスタス率いる政府軍は、容赦なく彼らに攻撃を仕掛けます。

ウィリアム・オーガスタス_(カンバーランド公)/wikipediaより引用

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