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週刊武春 災害・事故

ポンペイの悲劇~ヴェスヴィオ火山の噴火によって1万人の都市が一晩で消えた

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日本で言えば弥生時代に劇場や公衆浴場、下水道も

今から約2000年前の西暦79年、古代ローマでヴェスヴィオ火山が大噴火を起こし、当時1万人と推測されるポンペイの都市が一晩で消滅した。

後世の発掘調査により、逃げ遅れた古代ローマ人たちが多数死亡したことも明らかになっている。
が、なぜ、彼らは火山噴火から逃げることができなかったのか――。

ポンペイはイタリア南部に位置する保養地であり、当時の豊かなローマ人が過ごしていた。
日本で言えば弥生時代にもあたるこの時代の出来事が、ある程度詳細に把握されているのは、ローマの博物学者・大プリニウスの資料が残されているのに加え、発掘調査で住居跡や劇場、公衆浴場、下水道など、火山灰の下から当時の建造物や美術品が良好な状態で出てきたからだ。

発掘された遺跡からは確かに避暑地だったことを思わせるような風景も

発掘された遺跡からは確かに文明都市だったことを思わせるような風景も

と、ここで不思議に思われるかもしれない。

火山が噴火したということは、大量のマグマが流れ出て、街がその中に沈んだのだろう。そんな状況で建造物や美術品が残されているのか? それにマグマが流れ出てきたのに気づいたら、いくらなんでも事前に逃げたのではなかろうか?

その疑問を解消するために思い出して欲しいのが過去に雲仙普賢岳でマスコミクルーの犠牲者を出した火砕流だ。

火口からもくもくと溢れ出てくる煙のような火砕流。その何が恐ろしいのか。

 

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時速100キロを超える猛スピードの毒ガス

火砕流とは、高温の火山物質やガス、水蒸気などが混ざり合って流動化したもので、温度は数百℃にも達する。人が巻き込まれればどうなるか、火を見るより明らかであろう。

なによりも恐ろしいのはその流下速度で、時速数十キロから百数十キロもの速さに達し、あらゆるものを巻き込んでいく。
そのため、気象庁でも「火砕流から身を守ることは不可能で、噴火警報等を活用した事前の避難が必要です」と説明しており、目の前に現れた時点で、もはや絶望なのである。

ポンペイにいたローマ人たちは、当時、世界最高の学問・技術水準だったとはいえ、火砕流に関する対策までは万全でなかったのであろう。
ヴェスヴィオ火山が噴火し、その後、流れ出た火砕流の有毒ガスなどに巻き込まれて、人々は一瞬にして死亡。その後、一昼夜にわたって降り注いだ火山灰などにより、当時の荘厳な建造物や美術品と共に地中へ消えていったのである。

逃げ遅れた人々は、後の研究者が空洞に石膏を流し込むことによって復元された

逃げ遅れたポンペイの人々は、後の研究者が空洞に石膏を流し込むことによって復元された

 

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日本でも同様の悲劇は起きていた 榛名山周辺の遺跡群

そして後年の調査により、恐ろしい光景が浮かんできた。
火砕流に呑み込まれて死亡したローマ人たちはそのまま火山灰に埋もれており、そこにできた空洞に石膏を流し込むことによって、多数の人型模型が復元されたのだ。苦しむような姿で映っている写真がそれであり、あまりに生々しいため、一度見たら二度と忘れられないであろう。

ただ、それでも思うかもしれない。これはあくまでイタリア南部での出来事。日本人には関係ない、と。

今も苦しんでいるかのように生々しく復元された石膏

今も苦しんでいるかのように生々しく復元された石膏

そんな楽観論を吹き飛ばすような遺跡が日本でも見つかっている。群馬県の黒井峯遺跡をはじめとする、榛名山(はるなさん)周辺の遺跡郡だ。

 

今から約1500年前の6世紀頃。現在も活火山として気象庁に認定されている榛名山が突如大噴火を起こし、火山口から降り注いだ軽石や火山灰が辺り一面に降り注いだ。
数メートルの高さで埋め尽くされた集落の堆積物を掘り起こすと、そこに現れたのは住居跡や水田、畑、祭祀跡など。まるで昨日まで人が住んでいたかのような生活環境が浮かび上がってきたのである。最終的には甲冑を装着したままの人骨や、乳児の頭骨まで見つかった。

まるでポンペイのごとく遺跡は今まで残っており、犠牲者の中には火砕流に巻き込まれて亡くなられたような形跡も。そう、日本の生活地域でも火砕流の危険性が決してないわけではないのである。

実は、この原稿も今年6月発売の書籍に掲載されたものを加筆修正したものだが、その時点で「地球規模で見れば2000年という月日も大した昔の話ではなく、今も火山リスクは少しも減ってないのかもしれない」と記したばかりであった。

 

日頃から火砕流を気にして生活などはできない。が、少なくとも日本に110ある活火山は、いつでもその危険性をはらんでいるということだ。

我々は地震だけでなく火山のリスクにも常にさらされた災害大国に生きているのである。

 

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