本日9月23日から朝ドラ史上最高傑作とも評される『カーネーション』が始まります。
デザイナーの小篠綾子をモデルとした物語であり、主演は尾野真千子さん。
史上最高傑作と評価されるのは、一人の女性の力強く生きる様が現代にも通じる骨太さを持ち、まさに王道を歩んだと言える作品だからでしょう。
では具体的に、この作品の何がいったい凄いのか。
初回放送の2011年から13年が経ち、全く見たこともないという視聴者に向けて、その魅力をまとめましたのでご覧ください。
なお、史実ベースの小篠綾子については以下の記事にまとまってますので、併せてご覧いただければ幸いです。
朝ドラ『カーネーション』のモデル・小篠綾子のパワフル生涯92年
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【放送スケジュール】
2024年9月23日から
◆月~土曜日:午前7時15分~30分(NHK BS・4K)
◆毎週日曜日:午前8~9時30分 6話連続(NHK BS)
◆毎週日曜日:午前10~11時30分 6話連続(NHK4K)
【TOP画像】
朝ドラ『カーネーション』DVD-BOX(→amazon)
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「うちのだんじり」を求めて
朝ドラ定番のヒロインといえば、おてんばで男子のような行動です。
高い所に登って叱られたり、男の子と同じように振る舞えないことを嘆いたりするものです。
本作の糸子もこの例から漏れません。
ナゼ、私は「だんじり祭り」に乗れないのか。
本作の素晴らしさは、糸子が最初に感じたこの理不尽さを持ち続け、自分なりのだんじりを探し続けることです。
やがて彼女が「うちのだんじり」を見つける場面は、その感動がこちらまで伝わってきます。
糸子にとってのだんじりは、メインビジュアルでも使われているミシン。
これを踏み続け、エネルギッシュに糸子は生き抜いてゆきます。
一人の自立した女性として職業人として輝くヒロイン
本作は王道と書きましたが、それは陳腐であるということではありません。
本作の糸子は、止まりません。
彼女はワーカホリックといってもよいほどの働きっぷりで、結婚式前夜でも激しくミシンを踏み続けるほど。
子供が三人産まれても、自分の仕事に夢中なあまり、子守に預けてろくに面倒を見ていません。
本作は【あのコシノ三姉妹の母】という触れ込みの作品です。
シングルマザーとして育て上げた三人の娘が、全員デザイナーになるのですから、さぞや苦労したのだろう、教育熱心だったのだろうと思わせますが、それは違います。
朝ドラあるあるの、陳腐な展開といえば、思春期を迎えた子供が、
「お母ちゃんは仕事に夢中で、うちを見ていてくれへんかった!」
と不満を言う……というものでしょう。
もしも本作が凡庸な作品であれば、糸子は仕事にかまけた我が身を反省し、涙をこぼし、徹夜して姉妹の服を縫う場面が出てきたハズです。
しかし、そんな話ではありません。
娘がスポーツ大会で日本一を獲得しても、なんと糸子は気づかない。
完全スルーしていて、周囲から指摘されてやっと気づくのです。
それでも娘は特にめげることもなく、
「まぁ、そういうお母ちゃんやからな」
と、納得しているのです。
そんな描写をされても、娘たちは糸子を冷たいと思わない。
むしろ娘たちは、母の背中に憧れ、母を魅了した服飾の楽しさを知り、その道を目指すのです。
糸子というヒロインは、母である以前に、一人の自立した女性です。
立派な職業人です。
母ではなく、人として、娘たちのロールモデルとなっているのです。
妻や母としてではなく、一人の女性が持つ可能性と輝きを、本作は見事に表現しています。
時代考証が正確 お仕事描写にも納得
本作は、時代考証が正確です。
登場人物は、現在からすればちょっとびっくりするような言動をしますが、それも当時の価値観に沿ったものですので、むしろ納得します。
例えば、日中戦争に突入した当時、出征する近所の青年たちを、糸子の父は気楽に見送るのです。
彼にも徴兵経験がありました。
糸子の父親世代の場合、数年で無事帰って来られることがほとんどでした。
そのため、彼は兵隊にとられるっちゅうのは、そないなもんやろと気楽に構えているのです。
こういう何気ない場面も、後世の「神の視点」で見るとか、「主人公周辺はともかく反戦的でないと!」と考えたりする作り手ですと、まったく見せ方が変わってくるものです。
ややもすれば、もう帰って来られないと悲観的な見方をしていたことでしょう。
戦争描写のシビアさは、見る側に覚悟を要求してきます。
戦争が終わってからも戦災孤児たちが町には残されていますし、主要登場人物の一人にいたっては、身を売るところまで落ちぶれてしまいます。
大正から昭和に至るまでの、暗部や嫌な部分も逃げずに、真正面から取り組んだ本作。
そうした世界観と考証の確かさが、骨太な作風を支えています。
主人公の欠点になり得る部分を逃げずに描くのも、本作の長所です。
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