2013年の大河ドラマ『八重の桜』で主役を務めて以来、会津の人々に愛されてきた綾瀬はるかさん。
以来、会津まつりの時期になると、名物でもある「会津藩公行列」に参加。
本年2025年もその姿を見せ、「会津はふるさとのように感じています」と挨拶しておりました。
すっかり会津のシンボルともなった彼女ですが、皆さんは、そのキッカケとなった『八重の桜』をご覧になられましたか?
最近はNHKオンデマンドでいつでも視聴が可能(→amazon)となりましたので、まだ見ぬ方も、あらためて見てみたいかも……という方に向け、本作の見どころや魅力を語らせていただきます。
まずは
『八重の桜』って、どんな大河なの?
という方のため、ありがちな誤解にQ&A形式で答えてまいりましょう!
Q1: 八重ってマイナーな人?
A1: 全国的にはそうですが、地元では会津戦争屈指の女性戦士としてそれなりの知名度がありました。
籠城して、以下の和歌を詠み刻んだことが有名です。
あすの夜は 何国の誰か ながむらむ なれし御城に 残す月かげ
“誰かの妹”という点では『花燃ゆ』と同じですが、あちらは吉田松陰の妹で最も存在感の薄い三女が主役でした。
一方の八重は、存在感がある女性として昔から地元で認識されております。
薩摩の指揮官であった大山巌を狙撃した説もあり、武功面でもかなりのもの。
後半生も、新島襄の妻として、女子教育者として存在感を残しております。
誰かの妹や妻としてだけではなく、自発的に激動の時代を歩んだ――そんな芯の強いヒロイン像でした。

新島八重/wikipediaより引用
Q2: 会津視点だから薩長がワルなんでしょ?
A2: いいえ。『花燃ゆ』よりも長州が、『西郷どん』よりも薩摩が、それぞれ激しくカッコいい、それが本作です。
及川光博さんの桂小五郎。
吉川晃司さんの西郷隆盛。
素晴らしかったです。

西郷隆盛(左)と木戸孝允/wikipediaより引用1200
伊藤博文役の加藤虎ノ介さんなんて、イケメンをアピールする『花燃ゆ』、『西郷どん』より正統派イケメンだったんだなあ、これが。
劇中での後半は、誰にも正義があったと登場人物が繰り返すほど――人の数だけ正義があると体現できていた良心がありました。
Q3: 女性主人公だから政治描写は雑でしょ?
A3: えぇと、それって『花燃ゆ』のことじゃなくて? いやいや、『八重の桜』は、維新三傑が主役の『西郷どん』よりも、ずっと複雑な幕末政治がわかります。
『八重の桜』の場合、京都時代は兄・覚馬が視点人物となって描かれるので、問題はありません。
山本兄妹を主役とする意義はそこにあるのです。
京都政治パートは兄、会津パートは妹に分けることで、巧みに幕末を描いています。
Q4: 恋愛メインで戦闘シーン少ないでしょ?
A4: これもありがちな勘違いです。
八重は周囲の勧めですんなり結婚しますし、そんなにロマンチックタイプではなく、サバサバしています。
といっても、結婚相手との交流は感動的で、見応えがあります。
尺だけやたらと割くのに全然面白くない駄作と一緒にしてはいけません。
戦闘シーンは、まともに見ていてはトラウマになるという嘆きが一部から見られたほど、生々しい迫力がありました。
ライフルを抱えて激しいアクションを見せる綾瀬さんの身体能力には息を呑みます。
また、VFXを多用した映像も美麗!
城のような広い屋内の場面でも、奥行きがありました。
鶴ヶ城の屋根瓦が一枚一枚吹っ飛ぶVFXなんかは、お見事としか言いようがありません!

会津戦争(会津と長州)/wikipediaより引用
なぜ、こういう良心が、後の幕末大河で活かされないのか?
それが激しく残念であり、そして同時に謎でもあります。
Q5: 視聴率や評価はどうでしたか?
A5: 20パーセント超えをしたこともあり、近年の幕末ものでは随一です。
クオリティとしても、国際エミー賞にノミネートされるほどの高評価を得ました。
本作のあと制作された『精霊の守り人』に共通点が多いのは、成功とみなしたからこそでしょう。
八重の桜あっての精霊と言えるかもしれません。
綾瀬はるかさんの身体能力が証明された、記念すべき作品でもあります。
Q6: 歴史的な正確性はどうですか?
A6: 長州幕末史の専門家が軒並み逃走したとしか思えなかった『花燃ゆ』。
島津家現当主が苦言を呈した『西郷どん』。
一方、本作は会津の郷土史エキスパートが考証を担当し、会津松平家当主も絶賛したほどです。
地元からも会津の魅力が伝わったと、感謝されておりました。
時代的な正確性は高く、最近の学説を積極的に取り入れております。
むろんフィクションですから、創作部分や誇張はありますが、『西郷どん』のような、
「幕府が薩摩をフランスに譲ろうとしていた!」
なんて、やってはいけない一線を越えてはおりません。それが良識的な大河ドラマのはずなんですが……。
Q7: 会津の魅力は伝わって来ますか?
A7: はい。ロケ撮影の美しい景色、女性キャストの着用する会津木綿、登場人物が食べる料理。
全部考証バッチリです。
謎のおにぎり推しの『花燃ゆ』、薩摩でも京都でも鰻をずーっと食べている『西郷どん』とは違います。
会津観光にも大きく貢献しました。
Q8: 男尊女卑や身分格差等は押さえてます?
A8: バッチリです。
八重は、女なのに鉄砲を学ぼうとして、いくつも壁に当たります。
そんな八重が、明治以降は、自分の味わった女性ならではの壁を取り払うため、女子教育に尽力するのです。
謎のヒロイン補正がかかる『花燃ゆ』。
薩摩なのに男尊女卑のかけらもない『西郷どん』とは違うのだ!!
Q9: 会津の悪いところも描きますか?
A9: はい、会津のダメさ加減もバッチリ描いています!
会津だけが正義ではありません。
金がない。
保守的。
思考に柔軟性が欠ける。
とまぁ、ズブズブと泥沼に突っ込んでゆく悲劇性もきっちりと描いています。これはちょっと容赦ないんじゃないか、と思えたほど。
しかし、そこを逃げない誠意こそが面白さに繋がったのです。
それでは以下の本文にて、更に7つの魅力を語らせていただきます!
魅力①再評価ラッシュ!それが『八重の桜』
人間の評価とは、生きている時ではなく墓に入ってから定まると言いますね。
これは作品にしても同じこと。
『八重の桜』は、再評価されまくり、放映後にうなぎ登りであります。
それはナゼか?
2015年『花燃ゆ』
2018年『西郷どん』
この二作の幕末大河が、史上空前の最低クオリティだったからでしょう。
確かに戦国モノでも
『天地人』
『江 姫たちの戦国』
という厳しい作品がありましたが、幕末大河は常にそこそこのクオリティを保っておりました。
その底を……2015年と2018年がブチ抜いた!
そして、この二作に漏れる大河ファンの嘆きは、こんな意見へと収束していきます。
「あぁ、やっぱり『八重の桜』はマトモな大河だったんだ……」
『八重の桜』の後半である明治編は、確かに前半と比べて面白みに欠ける部分はありました。
それでも『花燃ゆ』の明治編と比べたら、考証の正確性、気品、クオリティ、その差は明らかです。
『西郷どん』は、薩摩の特性を描かず、歴史から逃げまくりです。
なにせ主人公サイドの悪事は「敵対する勢力がゲスだから」の一点張りで、あまりに幼稚というか稚拙な手法。
しかも、ラブシーンだけは長ったらしいくせに、幕末の政治外交を簡略化しまくりで、何一つマトモに筋を追えない崩壊っぷりになっています。
と、申し訳ございません。
本作の魅力というよりも、別の大河について語ってしまいました。
以下、八重の桜の魅力や特徴について迫りましょう。
魅力②どの勢力にも義がある
本作は会津藩の義について描きながら、その暗い側面まで描きあげております。
義ゆえにがんじがらめになり、破滅の道を歩まざるを得ない悲しみ。
そんな義に縛られた八重たちも、後半になると『敵対者にも義はあったのだ』と悟ります。
そうなのです。
京都で起きた「禁門の変」の後、逃げ惑いながら思わず落涙する桂小五郎。
西南戦争で、会津を攻めたことを山川浩から詰め寄られ、それに応じる西郷隆盛。
誰も彼もが義ゆえに戦い、血と涙を流し、苦しんできた――その結果に勝敗が付いてきたのです。
本作は、そこをキッチリ描きます。

山川浩/wikipediaより引用
魅力③女として戦を、この世界を生きる
本作は、幕末という時代を生きた八重の苦闘も描きます。
女だてらに鉄砲をやることに対して、周囲は奇妙な目で見つめます。
父の権八は、娘の才能を認めながらも、そんなことをしても評価されないだろうと苦悩を滲ませるのです。
そう、女は才能を発揮できないという苦しみをしっかり描いています。
八重が「女のくせに戦おうとするのか?」と籠城戦で言われ、「こんな時に男も女もない!」と啖呵を切る場面は、胸がすくような迫力がありました。
明治以降、八重は銃を知識に持ち替えます。
自分のように枠に収まりきらない女たちが道を切り拓けるよう、導いてゆくのです。
幕末から明治という時代を生きた女性の人生。
その苦しみだけではない輝きを、しっかりと描いています。
魅力④美麗な映像~VFXとロケの迫力を見よ
本作は、一目で吸い寄せられるほど奥行きがあり、精密なVFXを多用します。
戦闘場面だけではなく、広大な建物の奥行き表現等も凝っています!
毎年このレベルのVFX、映像美であれば……そう思いたくなるほど、映像が美麗です。
魅力⑤哀切も何もかもがある脚本が丁寧だ
脚本家の描き方はともかく丁寧です。
時代考証という枠組みの中で、きっちりとドラマを練り上げる誠意を感じさせます。
会津の駄目なところにも踏み込む、そういう気持ちが実にいい!
考証と人情の細やかさに気を配る、脚本家氏の力量を感じます。
魅力⑥考証がきっちりしている
本作は、郷土史の専門家がきっちりとバックアップ。
川崎尚之助関連をはじめ、最新の学説を取り入れ、じっくりと丁寧に幕末史の向き合っております。
フィクションだけにアレンジや史実とは異なる部分もあるものの、悪意ある捏造は一切なし!
このレベルで考証をすればまともになるという、大いなる手本を見せ付けております。
魅力⑦新たな魅力が花開く出演者たち
ほんわか癒し系イメージがあった主演の綾瀬はるかさん。
しかし、実物に近いモデルガンを持ち、走り回る運動能力とスタミナがあるのは、若手女優で彼女くらいだったそうです。
長刀、銃――どれも扱いが見事でした。
運動能力のみならず、スナイパーとしての目線の鋭さも発揮されておりました。
綾瀬さんがこのあと、アクションに開眼したことは言うまでもありません。
西郷隆盛役の吉川晃司さんと共に出演するファンタジードラマ『精霊の守り人』も、本作の熱演評価があってこそのものです。
松平容保役の綾野剛さんは、これはもう、史上最高の容保像ではないか?と思われるほど本人にそっくりです。
あの苦悩と悲劇的な生涯も見事に演じており、これを超える容保像は二度とお目にかかれないのでは?と思うほど。

松平容保/wikipediaより引用
徳川慶喜役の小泉孝太郎さんも、多面性のある人物像を見事に演じておりました。
もう書き切れないほどですが、出演者全員の魅力が大きく開化し、桜のように咲き誇った――。
そんな風に大声で叫びたいほど皆さんの演技が見事で、そこだけ切り取ってじっくりと見たい、そんなドラマです。
綾瀬さんは、今なお地元で愛されており、2018年まで「会津まつり」のゲストとして呼ばれるほど。
その後、新型コロナの影響で開催が中止され、復活後の2022年にも改めて参加してくれることは冒頭でも述べた通りです。
作品に注がれる地元からの愛。
これぞ『八重の桜』が得たものなのです!!
★
いかがでしょうか?
この原稿のために『八重の桜』のことをしみじみと思い返しています。
見終えた当初は不満点もありましたが、戊辰戦争150周年を越え、コロナ騒動を越えた本年……もうこんな思いしかこみ上げてきません。
『八重の桜』は最高だった――。
本作は、これからも再評価されることでしょう。
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【参考】
大河ドラマ『八重の桜』(→amazon)




