今回は信長の美濃攻略の合間に起きた「於久地城(小口城)の戦い」です。
相手は身内。
今川義元を討ち取って約2年が経過し、着々と地盤固めを進めていてもなお、まだ尾張に獅子身中の虫になりそうな勢力がいるのですから織田信長もシンドイ。
いい加減に仲直りすれば?
と現代人なら思うかもしれませんが、そうは簡単に呑み込めない事情がありました。
斎藤氏と手を組むなど許すまじ
永禄五年(1562年)6月下旬、織田信長は於久地城(小口城・愛知県丹羽郡)へ出陣しました。
犬山城の支城にあたります。
※黄色が信長の本拠地・清州城で、赤色が於久地城(小口城)
犬山城の城主は、信長のいとこ・織田信清です。
前述のとおり、今回もまた親族との戦いになります。
なぜまた身内との戦を始めたのか?
というと、深いような浅いような経緯がありました。
岩倉城の織田信賢(元・尾張上四郡の守護代)が息子に追放された後、その領地をどう分配するかで、信長と信清はいがみあっていたのですが……そのうち、信清は斎藤氏と手を組んで信長に対抗しようとしはじめたのです。
いわずもがな、斎藤氏は当時の信長にとって最大の敵。
そんな相手と身内が手を組もうとしているのですから、信長にとってはたまったものではありません。
そのため、支城である於久地城を攻めることになったというわけです。
「甲賀五十三家」と呼ばれる忍者の家系
近所かつ身内ということもあってか。
この戦では、信長の小姓衆や若衆が多く参加していたらしいことが、信長公記には書かれています。
まず小姓衆が城壁を打ち破り、数時間激戦を繰り広げた……とされています。
もちろん信長軍にも、犠牲者が出ております。
中でも若衆の一人・岩室長門という人物の戦死は、信長以下多くの人に惜しまれたといいます。
「長門」は通称で、正式な名前は岩室重休(しげよし)といいました。
彼の父についてはハッキリしておらず、岩室重利、あるいは岩室宗順だとされています。宗順の通称が「長門守」だったようなので、後者の可能性が高いでしょうか。
その場合「甲賀五十三家」と呼ばれる忍者の家系の一員ということになります。

重休が若衆だった、ということは見目が良いほうだったでしょうし、それで忍者の家系というとまるで漫画か小説のようですね。
忍者と信長の関係については、もうしばらくしてから触れる機会があるので、そこでまた詳しくお話しましょう。
正面から落とすのが難しいならば……
重休の他にも十数名の負傷者が出ていること。
於久地城が落ちたのはもう少し後であること。
そうした点から考えると、このときの戦はどちらが勝者とも敗者ともいい難い結果に終わったのでしょうね。
『信長公記』でも、あまり詳細には書かれていません。
正面から落とすのが難しいならば、それなりに下準備や計略が必要になります。
兵糧攻めや城下への焼き討ち。
内通者を作る――など、いろいろやり方がありますが、次に信長が取った下準備は、いかにも彼らしい奇抜なものでした。
どんな作戦だったのか?
続きはまた次回。
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参考文献
- 国史大辞典編集委員会編『国史大辞典』(全15巻17冊, 吉川弘文館, 1979年3月1日〜1997年4月1日, ISBN-13: 978-4642091244)
書誌・デジタル版案内: JapanKnowledge Lib(吉川弘文館『国史大辞典』コンテンツ案内) - 太田牛一(著)・中川太古(訳)『現代語訳 信長公記(新人物文庫 お-11-1)』(KADOKAWA, 2013年10月9日, ISBN-13: 978-4046000019)
出版社: KADOKAWA公式サイト(書誌情報) |
Amazon: 文庫版商品ページ - 日本史史料研究会編『信長研究の最前線――ここまでわかった「革新者」の実像(歴史新書y 049)』(洋泉社, 2014年10月, ISBN-13: 978-4800305084)
書誌: 版元ドットコム(洋泉社・書誌情報) |
Amazon: 新書版商品ページ - 谷口克広『織田信長合戦全録――桶狭間から本能寺まで(中公新書 1625)』(中央公論新社, 2002年1月25日, ISBN-13: 978-4121016256)
出版社: 中央公論新社公式サイト(中公新書・書誌情報) |
Amazon: 新書版商品ページ - 谷口克広『信長と消えた家臣たち――失脚・粛清・謀反(中公新書 1907)』(中央公論新社, 2007年7月25日, ISBN-13: 978-4121019073)
出版社: 中央公論新社・中公eブックス(作品紹介) |
Amazon: 新書版商品ページ - 谷口克広『織田信長家臣人名辞典(第2版)』(吉川弘文館, 2010年11月, ISBN-13: 978-4642014571)
書誌: 吉川弘文館(商品公式ページ) |
Amazon: 商品ページ - 峰岸純夫・片桐昭彦(編)『戦国武将合戦事典』(吉川弘文館, 2005年3月1日, ISBN-13: 978-4642013437)
書誌: 吉川弘文館(商品公式ページ) |
Amazon: 商品ページ




